2010年3月9日火曜日

生活世界の設計科学の成立条件

三石博行


生活世界の姿 生活主体と生活環境の相補依存性


自己(生活主体)とその環境(生活対象)は相互相補的、相互束縛的な関係にある。自己は生活環境を具体的に構成する生活対象によって造られ、生活対象は生活主体によって造られる。生活主体と生活環境の機能や構造を生活世界と言う。生活者の社会生活的役割(内的要素)や制度(外的要素)や生活意識(内的要素)や生活行為(外的要素)等々、生活主体と生活対象は不可分の関係にある。

例えば、社会(生活)的役割は、社会(生活)制度によって生活者に要求、期待された社会的観念であり生活者個人の生活意識である。しかし、生活者個人でなくある生活者の集団的行為の繰り返し、つまりある生活行為の社会化によって、社会(生活)制度は確立する。

その社会生活制度の成立によって、生活者の生活役割意識が生活者を規定し、その個人の生活環境と生活意識を形成する。生活役割に関する意識を根拠とする生活行為によって、社会制度は運営され維持される。

生活世界が成立しているのは、生活意識によって生み出される生活行為とその生産物(生活環境、生活対象)とそれによって形成される生活意識(役割やモラル等)の、限りない生活主体と生活対象の相互循環型の再生産、構築と脱構築、維持と改良の運動によるものである。


人工物化の過程、社会化、労働と生産過程

また、社会(生活)的生産行為によって生み出される生産物は、すでに、その目的を生産物の物質的形態の中に取り込んでいる。採石の例に取ってみよう。石は、特定の目的で採掘され活用されている。活用目的によって石の種類や採石の仕方は変わる。例えば、鉄道線路や舗装道路のバラスは、岩石の種類もバラスの大きさも異なるのである。

採掘時に、石はすでにその利用目的(役割を与えられ)で採掘加工される。バラスの役割(利用目的)によって採掘の方法や技術’生産過程の決まりやシステム)が異なる。同じ、「バラス」と呼ばれる人工物(生産物)も、その利用目的によって、バラスの大きさ、硬さが異なるのである。

つまり、その自然の石は、採掘という生産行為を通じて、バラスという人間生活や生産活動など社会的機能を担う人工物になる。

勿論、抽象名詞と呼ばれる素材的背景を持たない情報世界がある。しかし、例えば「論理」と呼ばれる抽象名詞ですら「数式」「論理式」「論理的記述」と少なくとも文字や数字、つまりは紙やデスクトップの電子素材を通じて物理的に現れる素材的世界(実在)を背景にしなければ、表現不可能である。

また、「愛」も恋人や家族というある個人の具体的な行為やその結果生じる生活世界の具体的事象を背景にしているのである。神への愛と呼ばれる最も抽象的な世界があるとしても、それは生きている個人の生命や生活との関係で語られるだろう。

その意味で、我々の観ている世界、関わり生活している世界は、その世界の名称性(名目性)とその世界の実在性(物質性)を前提にしているといえる。


生活世界のプログラム構造

生活主体と生活環境によって構成された世界を生活世界と言う。その世界は、生活主体の意識と生活環境の表象など生活情報と生活主体や環境の物質的、生物的、社会文化的、精神的様式や素材によって構成されている生活資源からなる。生活情報とは生活資源のパターン、つまり形相(情報)を意味する。

また、生活資源とは、生活主体や生活環境を構成する要素、それらの要素の関係、その関係の関係等々を総合的に表現したものである。要素の物質・エネルギー的側面を生活素材と考える。また、要素の情報的側面を生活様式と考える。

生活主体の身体や精神も生活世界を構成する要素である。それを生活世界の内的要素と考える。生活環境は生活主体を取り巻く要素であるので、それを生活世界の外的要素と呼ぶ。


自己組織性の設計科学としての生活(科)学の成立条件

吉田民人の人工物システム科学やプログラム科学論から、生活世界を構成している機能-構造を生活世界のシステムと呼ぶことが出来る。

また、その生活世界のシステムは、生活主体と生活環境を構成する生活素材と生活様式によって構成されており、それらの構成要素とその関係式を総称して生活世界のプログラムと考える。生活学は生活世界の認識科学として生活システム科学であり、生活世界の改良科学として生活設計科学であると言える。

それらの生活世界(人工物)の認識/設計科学を展開するために、物質的法則、生物学的(シグナル性プログラム秩序)、人間社会科学的(シンボル性プログラム秩序)の三つの拡大ディスプリンからの総合的(俯瞰的)解釈が要求されるのである。

人間社会科学の対象とする世界(人工物に関する様相と実在の世界)は、それらの存在の情報性と物質性、様式と素材、形相と質料が相補的に成立している世界である。その世界解釈の理論として「人工物システム論」「設計科学論」「人工物プログラム科学論」がある。


font size="4" color=#00008b">設計科学としての生活学の課題

人工物プログラム科学論的視点
生活資源論
生活情報論
生活改善の政策科学的視点
生活学教育論
科学技術文明社会の中の生活空間の機能構造分析
生活改良の構造分析



参考
三石博行のホームページ 「プログラム科学論」
hhttp://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/kenkyu_01_03.html


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