2010年12月16日木曜日

進行する核拡散を食い止められるだろうか

三石博行

核拡散を防ぐために必要な国際政治課題


瀬戸際外交の切り札としての核所有

1974年にインドは初めての核実験を行い、1998年5月11日と13日に合計5回の核実験を繰り返した。その直後、1998年5月28日にパキスタンが地下核実験に行う。そして、2006年10月10日に北朝鮮が初めての地下核実験を行った。そして、現在、イランが核開発を加速させ、核はさらに拡散しようとしている。

核を持つ国々は、他国からの軍事攻撃に対する抑止力を手に入れることが出来た。そして、同時に核を持たない国は、核を持つ国からの軍事的圧迫を受けることになる。核所有国と非所有国の間に生じた軍事力の不均等関係によって、国際政治が動き出すことになる。

つまり、北朝鮮が核所有国の紋章を彼らが持つことで、如何に経済力(現実の国力)が弱くとも、彼ら大胆不敵な瀬戸際外交を続けられる所以を示すのである。アメリカによってイラクの核兵器開発を阻止する名目で繰り広げられた2003年3月からのイラク戦争の教訓に学び、北朝鮮はアメリカの攻撃の前に、2006年10月に核開発を成功させたのである。

核を持たない反米外交を行う国は、イラクの運命を辿る。そうでないためには、北朝鮮のように核を所有することで、アメリカに対しても瀬戸際外交が可能になる。イラク戦争と北朝鮮の核開発の二つの歴史的事実の教訓は、多くの反米外交を行っている国々の教訓となったに違いない。その一つの典型としてイランの核開発がある。


イラク戦争の歴史的負債 北朝鮮とイランの防衛のための核開発

当分、イランだけでなく、多くの発展途上国が自国の独自外交路線を維持するために、アメリカからの政治的圧力に屈しないために、核を所有する方向で動き出すことを止めることが出来ないかもしれない。それらの政府の存続が核の所有か非所有の条件に掛かってくる以上、秘かに、核開発の計画は進行し続けるだろう。

イラク戦争の歴史的評価は、今後1世紀の時間を掛けて行われることとなるが、あの戦争が軍事大国は如何なる場合でも小国政府の独自外交路線に干渉できる帝国主義の時代の国際政治の決まり、帝国主義の政治作法が存続し続けていることを証明した。そして、帝国主義的な力関係に屈服しないためには、戦前、日本が選択したように軍事大国になることが唯一の方法であると理解された。その結果が、北朝鮮とイランの現政権の外交政策として反映されることになる。


国連防衛会議と国連軍の形成

小沢一郎氏をはじめとして、日本の政治家の中でも、「国際紛争解決のための軍事的執行能力を持つ国連軍の形成」を21世紀の国際政治のテーマにした人々が居る。この視点は、脆くも、21世紀の突端に、アメリカのイラク戦争によって、粉々に粉砕された。

しかし、国際紛争によって核戦争が起こること、また核の力を使って瀬戸際外交を行うこと、核拡散が進行することを防ぐためには、もう一度、国際紛争の解決に必要な国連機関の設定、その機関が国際紛争を解決するための執行力を持つ国連防衛会議や国連軍の構想が必要となる。イラクのクウェート侵攻を国連が非難し、国連を中心とした連合軍が形成された歴史があった。その教訓に、もう一度、学ぶ必要がある。

また、同時に、国連の決議や議論の過程を無視して、アメリカが行った2003年3月のイラク侵攻が、上記した国連防衛会議と国連軍の形成の構想を破壊した歴史的経験にも学ばなければならないだろう。

大国のやり方が一方的に通ることで、国際社会の平和は、一時的には大国の巨大な軍事力に抑制された平和な社会を醸し出すことが出来るかもしれないが、いつか、力を得た周辺国家、発展途上国によって、厳しい反撃の機会を用意することに繋がるのである。

イランが核所有国家になり、アメリカやイスラエルの中東での軍事的力に対して、瀬戸際外交を展開する切符を手に入れるなら、中東はさらに世界戦争や核戦争の危険に晒されることになるだろう。そうした事態が生じないように、日本は外交を展開しなければならない。





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