2011年2月7日月曜日

河村氏当選の意味 地方から生まれる民主主義政治の潮流

ネット上での国民的な政策議論と地方政治変革の議論形成を

三石博行


世襲化した議会制民主主義国家日本への批判

2011年2月6日、名古屋市長選挙、愛知県知事選挙、市議会補欠選挙が行われ、河村たけし率いる陣営が大勝した。(1)

河村たけし名古屋市長は、地方から民主主義社会を構築すると呼びかけてきた。彼は、市民税の減税をスローガンに掲げ、議会のあり方を暴露した。日本の議会制民主主義制度に群がる世襲議員たちの最大の関心は、自らの議員職の保持であり、保身である。毛頭、市民のために働く気持ちのない人々であると河村市長は、世襲制議員たちを批判した。

その形骸化した議会運営と利権主義を打破するために、河村市長が取り組んだ意最初の課題は、自ら市長としての報酬を三分の一800万円に下げ、そして議員の報酬額を大幅に下げる提案であった。彼は、議員活動は本来ボランティア的活動であるべきと考え、その制度を作るために、市民の地域社会での活動を基盤とした地方議会のあり方を提案した。

勿論、このような提案に対して、自民党や公明党などの保守派政党の議員は勿論のこと、民主党の議員まで反対した。反対議員たちの本音は、議員報酬の大幅な削減である。つまり、不況の中で生活の苦しくなった市民たち集めている税金、その税金の一部である彼らの議員報酬が減少することが、その反対理由であることを否定する積もりも無いのである。

河村たけし氏が圧倒的に市民の支援を得るのは、誰が市民のために政治を行っているかという現実から来ていると謂える。その意味で、今回の選挙は、明らかに議会への不満を意味するものである。


地方から日本の民主化運動を起こす

名古屋市での、地方から巻き起こった議会・行政改革の運動に対して、大きな関心が集まった。そして、その河村氏の活動に対して、多くの意見が出された。

中でもこれまで知識人から出た河村氏への批判に私は耳を疑った。つまり、彼らの批判は、「本来地方議会では、市長が政策提案を行い、議員達はその提案に対するチェック機能であり、河村氏が提案するように、議員が市の政策や条例提案をすべきではない」という考えや、「河村氏が自分の意見に賛成する議員を擁立すれば、上記したように市長と議員の役割分担を決めている地方の民主主義制度が揺らぐことになる。つまり、市長が提案する制度や法令に対して、議会はそれを批判的に検討する機能を失う」という内容のものであった。

この批判をはじめて述べたのは、2010年の夏、NHKのニュースに登場した地方自治や政策にかんする専門家(某大学教授)であった。彼のあまりにも、現実の課題を直視しない形式的な批判に対して私は唖然とした。そして、この発言は、その後大きな影響力を持ち、河村氏への批判の材料として活用され、報道機関もそれと類似したことを述べてきた。この批判の生じる背景に鹿児島県阿久根市の竹原前市長の言動への批判が背後にあることは疑えない。しかし、竹原前阿久根市長の言動と河村たけし名古屋市長のそれとを混同することは、河村氏の発言や行動の内容、つまり、市民運動として市政改革を取り組んできた経過と内容を理解していなかったと言うべきではないだろうか。

2011年2月7日の朝のTBSテレビの「みのもんたの朝ズバ!」でもある評論家が同じ質問をしていた。勿論、その質問に河村氏は明確に答えた。質問した評論家もその的外れの質問に少し恥じていたようにも見えた。しかし、このTBSテレビ番組は、NHKと違い、河村氏への評論家の批判に対して河村氏が直接反論の機会を得ていることであった。つまり、民主主義社会である限り、表現の自由は保障される。河村氏への批判はあって然るべきだし、それが報道されることも当然である。TBSテレビはその場合、河村氏に反論の機会を与えた。


既成政党に頼れない・政治改革の主体は我々である

地方の活性化、地方分権制度を確立しなければ、現在の日本の活性化は望めない。この考えは以前、民主党は政権を取る前に述べたことであり、多くの支持者を得た。しかし、その後、民主党では、名古屋や愛知県の民主党の地方組織と対立した河村氏の対する支援は無かった。

つまり、民主党はこの時選んだのは、地方分権化や地方から政治を変えるという政策政治でなく、地方の民主党市会議員の利権を守る人脈政治であった。この民主党の選択は、この政党が政治思想を持たない政党党であることを明らかにしたようだ。

低迷する国政、それは正しく、政治思想を欠いた現在の民主党政権に対する批判である。国民は多分、民主党への絶望感で自民党支持に変更することはないだろう。何故なら、現在の日本の低迷を作った張本人は自民党政権であったことを忘れる訳がない。しかし、民主党への期待はずれも大きき。

政党の代理人政治の姿勢を我々国民が変えない限り、常に、我々は政治に裏切られ続け、この国を衰退の一路に導くだろう。その責任を自民党にも民主党にも求めることは間違いだろう。つまり、我々国民が政策理念を語り、具体的政策を提案し、議論する場を作る必要がある。


インターネットを武器にしよう

その手段を我々はすでに手に入れている。それはインターネットである。すでに、インタネット上で、政策を提案する「政策空間」や「構想日本」のサイトがあり、各部門の政策専門家たちが全国からの寄せられる政策提案を検討選択して記載している。こうしたサイトが多く登場し、多くの政策への意見が述べられることによって、国民的な政策議論が起こるのではないだろうか。そして、この大衆的な政策提案の市民運動を起こすことが出来ないだろうか。

そしてmixiやFacebookのような意見交換サイトである。そして、その手段が有効に働いた実例も知っている。つまり、現在、北アフリカで進行している民主化運動に意見交換サイトの果たした役割は非常に大きい。この意見サイトで地方活性化の議論を起こすことも出来る。

すでにmixiに「河村たけし軍団」なるグループがあるようだ。それがどんなグループであれ、市民がそれぞれの地域でその地方課題を考え、そしてその地域の地方政治改革を積極的に行うための意見交換グループを立ち上げる必要がある。そして、その場は、自然発生的に生まれるだろうと思われる。


参考資料

(1) 中日新聞 2011年2月7日朝刊
「愛知県知事選、名古屋市長選、市議会解散の是非を問う住民投票の「トリプル投票」から一夜明けた7日午前、知事選で初当選した元自民党衆院議員大村秀章氏(50)と、市長への再選を圧勝で決めた前市長河村たかし氏(62)がそれぞれ始動した。河村氏は当選証書を受け取り、そのまま執務をスタートさせた。」
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/vsshigikai/list/201102/CK2011020702000188.html

(2)政策空間
http://www.policyspace.com/about.php

(3)構想日本
http://www.kosonippon.org/




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