2012年11月7日水曜日

体制の保守、改革と破棄と呼ばれる政策の三つの形態

政治改革の課題(3)

三石博行



政治的な問題解決手段としての政策

コトバンク(世界大百科事典 第2版の解説)によると、政策とは「一定の意図を実現するために用意される行動案もしくは活動方針を広く政策というが,文脈に応じてかなり多義的に用いられる」と説明されている。政策は英語では、Policyという単語である。この意味は「政党や会社あるいはその他の組織である一つの集団が決定を行う一つの行動計画や目標のセット、あるいは決定や行動が準拠する一つの原則や一組の原則」(Wikipedia)であると説明されている。

コトバンク(世界大百科事典 第2版の解説)によると、政策とは「一定の意図を実現するために用意される行動案もしくは活動方針を広く政策というが,文脈に応じてかなり多義的に用いられる」と説明されている。政策は英語では、Policyという単語である。この意味は「政党や会社あるいはその他の組織である一つの集団が決定を行う一つの行動計画や目標のセット、あるいは決定や行動が準拠する一つの原則や一組の原則」(Wikipedia)であると説明されている。

問題解決の手段や行為を表す一般的な用語として「対策」と言う用語がつかわれている。では、政策と対策の違いとは何か。前者が政府や自治体等の公共体が行う政治的な問題解決手段や行為を意味し、後者は問題解決の手段や行為一般を意味していると言える。問題解決に対する行為を一般的に対策とすれば、その対策という行為が政治的課題に限定されることで政策という概念となる。つまり、政策とは政治的な問題解決策という意味である。



政策の惰性態と保守性

一般的な政策は存在しない。政策とは特定の何かに対する政策である。つまり、ある具体的な政治的目標を持つ。しかも、その具体的な政治目標である以上、ある具体的な政治体制に於いて生じている課題である。政策とはある具体的政治体制上の法的、組織的課題を改革修正し、ある具体的な制度上の持続、修正や廃止に必要な立法上及び行政上の作業である。

政治的目標を持たない政策はない。仮に、長年続けられている政策があるとしても、その政策は持続しているということに政治的意味を持っている。その意味で、ある具体的な政治的目標を実現するために計画的に維持、修正、廃止される政治的行為を政策と呼ぶ。

政府や政権与党に対して「政策を持たない」とか「無策」という批判が起こる。その場合の「政策を持たない」という表現は、「現在ある政策は有効性を持たないのに、その政策の修正は廃止、もしくは、新しい政策を出さない」という意味である。つまり、政治体制とは政策行為主体であるかぎり、すべての行政機能は政策行為として動いている。政策がないというのは、ある具体的な社会政治文化問題の解決やそれらの課題の合理的運営を行うために必要な社会政治制度、つまり立法や行政機能が存在していないという意味である。

政策とは、ある具体的で日常的な行政的行為である。そのことは、政策の保守性を意味する。つまり、政策はその政策を常に維持しようとする傾向を持つ。それを政策の惰性態と呼ぶことにする。何故なら、政策に不都合がないのに、その政策を変更することは、変更された政策によってシステムの損害のリスクが生じることを意味する。システムに損害を与えない政策は維持し保存することが最もシステムが消費するエネルギーを少なくすることになる。これが、政策の保守性や惰性態に関する「限界資源活用経済合理性」理論(仮説)からの説明となる。



政策の刷新と変更

政策が有効に機能しないことを行政や社会システムの機能麻痺状態と呼ぶ。行政の日常的業務に支障が生じている状態を行政の機能不全と呼ぶ。つまり、政策の問題処理能力が低下するために、社会システムの運営に支障を来たしている状態が起る。それを解決するには政策の修正、破棄、更新が必要となる。

政治的行為とはその政策の有効性を検証し、その維持、修正、破棄、更新を決定することを意味する。政策は常に日常的に行政や立法機関の機能として取り行われる判断や施行基準である。

例えば、伝統的で慣習的な政策が機能麻痺を起こすとき、社会システムの中で慣例的に機能していた社会構造の運営効率が落ちていく。社会運営に費やす資源が多くなることで、その社会システムの運営に巨額の費用が必要となる。その浪費的システムによって国力は衰え、人々は貧困生活に喘ぐことになる。

つまり、政策とは国家がその制度を維持するために、所有し活用できる資源をより有効に活用する形態を意味している。国家権力中枢によってそれらの資源が乱用され、国家機能が麻痺するまでにその乱用が放置される時、そこに制度内部での改革が生まれる。しかし、国家機能が麻痺しないまでも、国家権力中枢を占める特権者たちはその資源を自分達のものとして利用するだろう。これが、国家を構成する社会制度や権力構造とその国家の資源運用のあり方の「限界資源活用経済合理性」理論(仮説)からの説明となる。



体制崩壊としての政策体系の変更(政策のパラダイムチェンジ)

しかし、政策の刷新を繰り返し行っても、システムが機能不全から脱却できない状態にある場合には、そのシステム自体の制度改革が必要となる。その場合、これまでの政策に貫かれた社会思想と制度理念の全体の変革が求められる。この制度自体の変更を革命と呼ぶのだが、例えば、社会史の中で、最も典型的な革命は市民革命である。古い封建制度が新興階級(市民階級)の生産様式を疎外するとき、二つの利害の異なる階級が衝突することになる。社会がより合理的な経済制度を選ぶことによってその衝突の決着が付けられる。つまり、より生産力や社会資源力を生み出す階級が勝利し、その階級が最も都合よく運営できる国家制度が生まれる。それを革命と呼んでいる。

しかし、世界で進む近代化や資本主義社会の形成や発展の過程は、18世紀以降の欧米社会のそれらの歴史の繰り返しではない。つまり、欧米型の資本主義社会形成過程が世界の全ての近代化や工業化の普遍的な形態ではない。近代化過程や資本主義化は国によって異なるのである。例えば、列強の植民地支配から国家を守るために、近代国家大日本帝国では、天皇制による絶対君主制下で資本主義政策を推進した。欧米の社会史から観ると近代国家日本には、民主主義以前の絶対君主制と資本主義社会が同時に存在している状態であった。つまり、大日本帝国という絶対君主制国家が近代化と呼ばれる資本主義生産体制形成の先頭に立っていた。

天皇制と資本主義生産様式の強化は、西洋の社会からは矛盾した社会制度に見えるのだが、日本の歴史からは、この二つをもって国力を発展させるのが最も合理的な選択であった。つまり、「限界資源活用経済合理性」理論(仮説)からの日本の近代化過程に関する説明例である。

同様の説明は近代化のために社会主義経済を選んだロシアや中国にも当てはまるのである(2)。例えば、社会主義体制化で進む自由主義経済は国家政策として産業や国家企業による世界市場での競争力を得ることで、急激に発展することになる。しかし、その体制を更に発展させるためには、国内の産業制度を自由主義経済体制によって強化しなければならない。その自由主義経済の発展は、それを進めた社会主義権力構造自体を破壊することになる。

つまり、政策とはその政策を生み出す社会システムの一部である。政策の基本的な目的はその社会制度を維持するためにある。つまり政策は制度保存のために執り行われる政治的行為であると言える。このことを政策の惰性態や政策の刷新という概念で述べた。しかし、それらの政策を生み出す社会システムがその政策の刷新や変革をもっても機能不全を繰り返す時に、社会システム(国家)はその制度自体を根本から変えることを迫られる。

国家の政治制度が根本的に変わることを革命と呼んでいる。例えば、絶対君主制社会から国民主権国家へと革命によって政策の根本理念が変化する。つまり政策パラダイムチェンジを意味する。過去の政策理念は破壊され、新しい政策理念が創り出される。それの新しい政策理念によって、新しい国家(社会システム)は維持され、発展して行くのである。

つまり、「ある国家制度やその機能が麻痺(機能不全状態)している場合、しかも、その制度内での改革では機能不全状態を解消できない場合には、国家制度の抜本的変革が行なわれる。つまり、ある国家形態(社会生物個体)の保存の限界は、その社会生物個体の死を以って、その母体(社会生物種・人類)を保存しなければならない。個体保存よりも種の保存が優先されるのが生物の世界の掟である。そのように、社会生物世界でも、この掟は守られる。社会生物体が、その社会生物個体の死をもって種(人類)の保存を行なうことを革命と呼んでいる。」(1)、これが、「限界資源活用経済合理性」理論(仮説)からの、革命による政策パラダイム変換の解釈である。



参考資料

1、三石博行 「生態・社会資源の限界と国家の形態 -政治改革の課題(2)-」
http://mitsuishi.blogspot.jp/2012/11/blog-post_5.html

2、三石博行 「中国の近代化・民主化過程を理解しよう 」
http://mitsuishi.blogspot.jp/2010/12/blog-post_1850.html

3、三石博行 「ブログ文書集 国民運動としての政治改革」
http://mitsuishi.blogspot.jp/2011/06/blog-post_9428.html

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