2012年4月13日金曜日

HKK・公共放送は誰のために「原発事故報道の検証」作業を行ったのか

国民のための国民の公共放送が民主主義の成熟に繋がる


三石博行


民主主義の成熟を担う公共放送の社会的機能のために

国民主権、民主主義社会日本でのNHK・公共放送の社会的機能は大きい。正しく国民のための報道を行い。そして国民に支援され、国民が参画する運営を行うことで、公共放送は国民主権国家の大切な情報報道機能となると信じている。その意味で、小泉政権時代に行政改革の課題で取り上げられた公共放送の廃止・民営化の提案に反対だ。

しかし、今回のNHKの原発事故の初期の報道には大きな疑問を感じた。そして、インターネットにNHKの報道に関する多くの批判が流れた。このことをNHKの運営委員会(執行部)や報道編集責任者は重く受け止めたと思う。その後、NHKは原発事故に関して素晴らしい報道を続けた。その報道の内容は世界的にも評価されるものであるし、今後もその報道番組が世界中の原発問題で引用されることになると思う。

しかし、今回、NHKが作成した、NHKの原発事故報道に関する検証に関する番組を見た時、原発事故直後に報道した番組から受けた不信感を思い出させた。この不信感は長年、国民がNHKの官僚的な体質や政府批判を恐れ国民に正しくない報道をしてきたのではないかという感情に根ざすように思われた。

そこで、民主主義社会の大切な機能としての公共放送の在り方を考えなければならないと思った。つまり、国民主権国家では国民のための国民による国民の報道機能・公共放送が絶対に必要である。その機能を担うのがNHKである。公共放送を廃止することは、民主主義の成熟を妨害する政策である。その意味で、NHKは、今回の原発事故に関する検証の在り方を、再度、根本的に見直し、点検しなければならないと思う。


間違いだらけの原発事故報道とお粗末な原発事故報道の検証番組

先日、NHKの原発事故報道の検証作業を行った番組(NHK)を見た。3月11日、東日本大震災の直後、大津波に飲み込まれる東北の町の悲惨な映像に完全に滅入っていた時、東京電力福島第一原子力発電所で冷却装置の電源喪失が伝えられた。始め、電源の一部が喪失しているという情報であったが、次第に、全電源喪失の事態であると伝えら始めた。

3月11日(金曜日)の夕刻から3月13日まで、テレビ画面から離れられない状態で、地震や津波被害に関する情報と原発事故の情報を追いかけていた。NHKが原発事故の解説に起用したのが東大教授の関村直人氏であった。彼は、一貫して原発事故の重大性を否定し続けた。そして水素爆発が生じる筈がないと断言したその二、三時間後に一号機が爆発した。しかし、彼は爆発で飛び散る建屋、灰色の煙を画面で見ながら「安全のために放射性物質を放出している」爆発的開弁作業の光景であると説明した。しかも、格納容器が壊れていないために、多量の放射性物質が放出されることはないとまで言った。

こうしたテレビ場面を見ながら激しい怒りがこみ上げ、ブログに書いた。国民の命を守ろうとしないNHKの報道姿勢と大学教員(専門家)の態度。この映像が残る限り、NHKは当時の原発報道への責任を永久に(歴史的に)逃れることはできないのである。

それが、今回のNHKの原発事故報道の検証番組では、何一つとして語られなかった。それどころか、NHKの原発事故報道が評価されていた。一体、NHKの誰がこの検証番組をつくったのか、これこそ、NHKが今後、またその公共放送の責任を歴史的に問われる材料となるだろう。そして、高度な情報化社会では、NHKの流した番組を歴史的に葬ることはできない。この番組はNHKの汚点となるだろう。

報道の検証作業を報道機関に任せてはならない

こうした中で、唯一、原発事故の報道への公正な検証作業が進んでいる。それを行っているのは、民放ではない。市民の手によって市民の報道機能を構築しようとしているNPOである。OurPlanet-TV(代表理事白石草氏)が行った「徹底検証!テレビは原発事故をどう伝えたか?」(前半)(後半)を是非とも見てほしい。

報道が事実を伝えなければ民主主義社会は形成されない。特に公共放送はその社会的責任をもっている。NHKは、国民の税金(強制的に徴収する受信料)によって運営され、国民の選んだ国会に於いて経営委員が選出承認されている公共報道機関である。その意味においても、今回の原発報道で誤った情報を流し、またそのために多くの人々が被曝したこと、一体、公共放送は何を守ろうとしたのか、そう問われた。その答えは明らかである。

つまり、あの時点で(今は違うが)NHKが守ろうとしたのは国民ではなく、東電や原子力ムラではなかったか。そう極論されても仕方がない。その証拠が、今回の検証番組であった。NHKは当時の原発報道の事実を隠そうとした。NHKの作成したこの番組は原発事故報道をした3.11の時点にNHKの評価を落としてしまったようだ。こんなみっともないことをしていたら、世界の報道機関に、そして未来の人々に笑われるだろう。

NHkへの受信料不払い運動が起っても当然だろう。NHKは、今、国民のための報道機関として姿勢を厳しく問われている。そして、その検証作業を彼らに任せてはならないことが、今回の番組、NHKの原発事故報道の自己点検(検証)作業で明らかになった。


原発事故報道を徹底的に検証しよう

OurPlanet-TV(代表理事白石草氏)が作成した「徹底検証!テレビは原発事故をどう伝えたか?」(前半)(後半)を紹介します。この番組から、私達は災害報道の在り方や報道機関の取るべき態度について考える機会を得ることが出来ると思う。

OurPlanet-TV制作「徹底検証!テレビは原発事故をどう伝えたか?(前半)」


OurPlanet-TV制作「徹底検証!テレビは原発事故をどう伝えたか?(後半)」




参考資料

OurPlanet-TV

伊藤 守著 『テレビは原発事故をどう伝えたのか』 (平凡社新書)2012.1


--------------------------------------------------------------------------------
関連ブログ文書集

三石博行 ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」

三石博行 ブログ文書集「民主主義文化としての報道機能について」

三石博行 ブログ文書集「市民運動論」


2012年4月14日、文書加筆 
2012年4月16日、誤字修正
(120413a)
--------------------------------------------------------------------------------

0 件のコメント:

コメントを投稿