使い捨てをしない生活は可能か
三石博行
槌田劭さんの魅力ある話
先週日曜日(5月23日)に京都大学農学部で第14回縮小社会研究会が開催された。
私の尊敬する人々の一人、槌田劭(つちだ・たかし)さんが、お話をされた。これまで何回かの槌田さんの講演会に参加したが、殆ど同じような話の内容であった。今回が4回目なので、殆どの話を覚えている。しかし、まるで好きなクラッシクの曲を聴いているように、槌田さんの話は、何回聴いても新鮮で飽きることがないのだ。そのことに、実は驚いている。
槌田さんは1968年(全共闘時代と呼んでいます)の学生運動から問われた大学や大学研究者への課題を真面目すぎるほど真面目に受け止められ、1973年に市民や学生と一緒に「使い捨てを考える会」を結成し、リヤカーを引っ張って古紙回収を始めました。その後、京都大学工学部助教授を辞めてしまいました。本当にびっくりするぐらい変わった人(真面目すぎて)と言われていました。
その後、精華短期大学で教職に就かれましたが、専門の金属工学を全く辞めて、もっぱら環境問題や資源や食糧の再生可能な社会のために運動、啓蒙活動や研究をされてきました。教育者としても非常に大きな業績(学校法人の理事長となり精華短期大学を京都精華大学にした)を持って居られますが、そのことは何一つとして皆さんの前でお話されたことはない。
槌田さんの声は、細い身体から創造も出来ないほど力強い。音量は少し小さ目だが、流暢に言葉が流れ、一つひとつの音節がしっかりと区切られ、まるで教会の牧師さんのお話のように、説得力のある事例を出しながら、みごとに説教を組立ていく。明らかに、槌田さんは、講演者と言うよりも、槌田教思想(教)の伝達者(教祖)と言うべきだろう。彼の迫力に満ちた説教、いつの間にか、その気迫と説得力に私たちはのみ込まれてしまう。
こうした話の力は、彼のことばが彼の生きている世界の中から染み出しているからだろう。つまり、生きる現実から彼は我々に話しかけているのである。
槌田さんのお話を聞くたびに、「もしかして、吉田松陰や武市半平太もこんな口調で話していたのかもしれない」と私は思う。時代の黎明期に登場する思想家のように、槌田さんはとうとうと「使い捨てを考える」生き方とは何かを語る。
今、使い捨てを考えるとはどういうことなのだろうか
現代社会に生きていて、使い捨てしないという生き方は不可能に近い。例えば、衣類などはどうだろうか。衣類は捨てにくいもので、どんなに古いものでも、捨てられずに、タンスの奥、押し入れや物置にしまい込んでしまう。そして、家の中には古い衣類がたまっていく。
その中には、亡くなった両親の衣類もあった。昔の人は、服を沢山持っていないが、良い生地の服を持っていた。捨てるのが惜しくて貰ったが、結局、一回も使わず、家の奥にしまい込んでいた。体型が変化して着られなくなったもの、流行遅れのもの、少しシミが着いたもの、それらを困った人々にあげようとため込んでいた。そこで、市民団体に連絡すると、「もうそういうものは誰も貰いません」と断わられた。1970年までの日本と2010年代の日本は違うのだと電話口から聞こえる市民運動家の声を通じて理解した。
使い捨てを考えるということは、使い捨てをせざるを得ないという現代のライフスタイルでは不可能であることを示すだけではないか。それでも、使い捨てをしないことを心がける意味はどこにあるのだろうか。
つまり、使い捨てを考えるという課題は、使い捨てをせざるを得ない社会の在り方を考えると理解していいのだろうか。なるべく使い捨てをしない。例えば、食べ物を捨てない、生ごみをコンポストに入れて肥料として再利用する、食器洗いの水やお風呂の水は再利用しる、庭には雨水を撒く、古紙をリサイクルに回す、ペットボトルやプラスチックのリサイクルに協力する、スーパーには買い物袋を持っていく、等々。
しかし、私たちは現代社会の生活環境の中で、使い捨てを考えないライフスタイルを強制され、使い捨てる便利さの上に日常生活が営まれていることは否定できないだろう。この現実が問いかけている課題、「それでも使い捨てを考えるということの意義」とは何か、使い捨てを考える会を持続したり、使い捨てを考えるという活動を続けるためには、この問い掛けに答えなければならないだろう。
使い捨てをしない社会や生活はどのように可能か
どれくらい私一人の生活が環境に負荷を与えているのか。住んでいる家、暖房や冷房、テレビやステレオ、照明、コンピュータ、その他家電(掃除機や洗濯機等々)が消費している電気、上水道や下水道。生活のすべてがエネルギー消費なくしては成立していない。それが、今の日本社会での、私たちの生活環境である。
その生活環境とは使い捨てをすることで成立しているともいえる。つまり、使い捨てをしなければ家の中は古いもの(つまり多量の電気エネルギー消費する家電等々)、使えないもの(故障しても修理出来ないもの、修理代が新品購入費より高い場合があるもの)で身動きが出来なくなる。狭い日本の住宅では、役に立たないものはサッサと捨てなければ生活が出来なくなっている。使い捨てをしながら少しでも快適な住環境を維持している。これが現実の私たちの生活なのだ。
使い捨てをせざる得ない現代の生活スタイルを少しでも使い捨てをしないようにするためには、出来る限り消費しない生活様式を取り入れなければならない。
無駄なものは買わない。例えば100円ショップで、安いという理由で無駄なもの、結局は質が劣るために、使わなくなるようなものを買い込んでいないか。また、着もしない安売りの服、美味しくもない安売りの食糧、安いから買うという生活スタイルで、家の中にごみが増えていないか。無駄な買い物をしないということが、結局、使い捨てをしないと言うことになる。つまり、使い捨てをしないためには、良いものを買う習慣が必要なのだろうか。貧乏人でなく、金持ちのライフスタイルが求められるのだろうか。
出来るだけ資源やエネルギーを節約する。例えば、水道水を庭に撒かない。そのため雨水、お風呂の水、炊事排水を利用する。太陽熱や光のエネルギーを活用する。台所や庭ででる有機物を土に返す。小さな庭があれば、野菜を植える。雨水タンク、風呂水再利用排水施設、太陽光パネル、太陽熱パネル等々、これまた贅沢な施設が必要となる。
使い捨てをしないことは不可能だが、使い捨てを少なくするために、結局、高価なものを買い、結果的には、高価なごみを作ることになる。
本当に使い捨てを考えることは難しい。今の生活レベルを1970年以前に戻すとすれば、少し、使い捨てをしない生活様式が可能になりそうだ。しかし、今よりも快適な生活環境ではないことは確かだ。平均寿命も低くなる。外国にも簡単に行けそうもない。色々な海外の食べ物も入らない。あのころはバナナが高かったし、高級品だった。
使い捨てを考えるためには、そうした時代に戻る覚悟が真剣に問われることになりそうだ。
「成長経済主義を越えて成熟循環型経済社会への転回のために」 目次
http://mitsuishi.blogspot.jp/2015/01/blog-post_72.html
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哲学に於いて生活とはそのすべての思索の根拠である。言い換えると哲学は、生きる行為、生活の場が前提になって成立する一つの思惟の形態であり、哲学は生きるための方法であり、道具であり、戦略であり、理念であると言える。また、哲学の入り口は生活点検作業である。何故なら、日常生活では無神経さや自己欺瞞は自然発生的に生まれるため、日常性と呼ばれる思惟の惰性形態に対して、反省と呼ばれる遡行作業を哲学は提供する。方法的懐疑や現象学的還元も、日常性へ埋没した惰性的自我を点検する方法である。生活の場から哲学を考え、哲学から生活の改善を求める運動を、ここでは生活運動と思想運動の相互関係と呼ぶ。そして、他者と共感しない哲学は意味を持たない。そこで、私の哲学を点検するためにこのブログを書くことにした。 2011年1月5日 三石博行 (MITSUISHI Hiroyuki)
2013年6月15日土曜日
2013年6月10日月曜日
「死体とうんこ」
総合地球環境研究所の副所長佐藤洋一郎氏に会ったとき、彼が現代の日本社会では「死体とうんこ」を隠す文化に成っていると話していた。
死体、つまり死、そしてうんこ、つまり生命と生成物の廃棄物はある意味で生命の姿の別の一面でもある。生があるから死がり、生きるすべてが死を待っているともいえる。死体を隠すことは、ある意味で、生を隠すことにならないか。
うんこについても同じようなことが言える。
つまり、生成されたものは利用活用され、そして廃棄される。有用なものが利用され、そして最後に消費され、分子レベルまで分解される。しかし、途中で消費されず、そのまま前の形を留め、または形が破壊され、ごみと呼ばれる廃棄物となっているものがある。
それらの廃棄物は、分解可能であれば、また別の生命体の栄養となる。その繰り返しをエコサイクルとか、食物連鎖とか、生態系とか呼んでいる。しかし、人工物の中には、自然に(生物や化学反応によって)分解されないものがある。それは、厄介なことを生態(生体)環境に引き起こす。
うんこは生命活動の中で生じる廃棄物である。言わば、生命が存在してからずーと生み出された廃棄物である。その廃棄物は最近人間が化学的に造りだした廃棄物とは違う。生態系の中では、その廃棄物は他の生命の栄養となる。また、その生命もその栄養を食べて、新しい廃棄物を生み出す。
つまり、うんこは生命と生命をつなぐ物質として自然の中では活躍している。うんこを生態系の食物連鎖の中に組み入れないシステム、下水処理場は、生態資源の無駄使いをしているともいえる。
また、うんこを隠すことは、生命と生命が食物連鎖によって繋ぎ合っていることを隠すことを意味する。つまり、うんこは生命について考える一つの契機を与えているのである。
「死体とうんこ」を隠す文化は、生命について考える契機を奪い、もしくは、その現実を見つめる機会を与えないようにしているようだ。
死を考える生活スタイルの中に、本当に生きることを知る生活環境や文化が形成されるだろう。 そう考えると冗談のように聞こえる「死体とうんこ」というテーマの深い意味が理解できるかもしれない。
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死体、つまり死、そしてうんこ、つまり生命と生成物の廃棄物はある意味で生命の姿の別の一面でもある。生があるから死がり、生きるすべてが死を待っているともいえる。死体を隠すことは、ある意味で、生を隠すことにならないか。
うんこについても同じようなことが言える。
つまり、生成されたものは利用活用され、そして廃棄される。有用なものが利用され、そして最後に消費され、分子レベルまで分解される。しかし、途中で消費されず、そのまま前の形を留め、または形が破壊され、ごみと呼ばれる廃棄物となっているものがある。
それらの廃棄物は、分解可能であれば、また別の生命体の栄養となる。その繰り返しをエコサイクルとか、食物連鎖とか、生態系とか呼んでいる。しかし、人工物の中には、自然に(生物や化学反応によって)分解されないものがある。それは、厄介なことを生態(生体)環境に引き起こす。
うんこは生命活動の中で生じる廃棄物である。言わば、生命が存在してからずーと生み出された廃棄物である。その廃棄物は最近人間が化学的に造りだした廃棄物とは違う。生態系の中では、その廃棄物は他の生命の栄養となる。また、その生命もその栄養を食べて、新しい廃棄物を生み出す。
つまり、うんこは生命と生命をつなぐ物質として自然の中では活躍している。うんこを生態系の食物連鎖の中に組み入れないシステム、下水処理場は、生態資源の無駄使いをしているともいえる。
また、うんこを隠すことは、生命と生命が食物連鎖によって繋ぎ合っていることを隠すことを意味する。つまり、うんこは生命について考える一つの契機を与えているのである。
「死体とうんこ」を隠す文化は、生命について考える契機を奪い、もしくは、その現実を見つめる機会を与えないようにしているようだ。
死を考える生活スタイルの中に、本当に生きることを知る生活環境や文化が形成されるだろう。 そう考えると冗談のように聞こえる「死体とうんこ」というテーマの深い意味が理解できるかもしれない。
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2013年6月8日土曜日
「文理融合と社会デザイン」と5つの政策実践(セッション)課題
政治社会学会(ASPOS)の2013年度大会の課題について(2)
三石博行
2013年度の政治社会学会総会及び研究大会は11月16日(土曜日)から17日(日曜日)の二日間、大阪府吹田市の千里金蘭大学で開催されることが決まった。2010年度(設立大会)から2012年度までの研究大会のテーマは「文理融合と人間社会科学の再生」であった(1)。
この三回の研究大会を踏まえながら、今回(第四回)の大会から「文理融合と社会デザイン」を研究大会のテーマに掲げた。今回はその第一回目の研究大会となる。この研究大会では、5つのセッションを設けた。以下、それらのセッションの課題に私の考えを関して述べる。
セッション「社会デザインと政策実践」
昨年の学会でセッション「プログラム科学とは何か」で設計科学としての政策学の方法論に関して議論した。文理融合型の研究は当然、問題解決に必要なあらゆる専門知識や技術を導入する学祭的プラグマティズムがこれからの政策学に求められている。
文理融合型政策実践の課題を展開するために、基礎理論を課題にした議論から、実際の政策実践の課題に焦点を合わせながら、具体的な理論的検証をその中で進める議論が必要とされている。そこで、今年度は、基礎理論に関する議論から一歩出て、その理論が現実の政策実践に応用可能なのかを検討したい。
これまでこの学会では、政策学を人間、文化や社会経済に関する設計科学、「社会デザイン」科学と位置づけてきた。そして、有効な「社会デザイン」を展開する科学、つまり政策提案や実践に関する検証作業、例えば、地域医療問題(医療政策という社会デザイン問題)、食糧問題や水問題を解決する社会デザイン(農業、環境、地方文化や産業、少子化政策)、脱原発・エネルギー政策と社会デザイン等々の課題に有効な「社会デザイン」論に関する議論を呼び掛けたい。
セッション「社会デザインと民主主義」
昨年の学会のセッションで、福島原発事故に関する議論を行った。この議論で指摘されたことは、技術的問題、エネルギー政策、原子力政策を進めるための制度上の課題があるということであった。一般に「原子力ムラ」と呼ばれる利権集団が形成され、技術的な安全問題、エネルギー政策上のリスク等々があったとしても、つまりこれまで原発事故、高速増殖炉や核燃料サイクルの失敗が続いてきたとしても、それらの事実を隠ぺいし、それらの問題を指摘し批判する人々を排除し続けてきた組織の在り方、人々の考え方、社会の在り方が問われなければならない。
福島原発事故問題が示す課題は、原子力政策を進める制度によって形成された「原子力ムラ」の利益集団と呼ばれる社会文化現象を徹底的に解明し、その構造が、実際は日本社会全体の構造問題として存在していることに気付く必要はないだろうか。
今、今後の日本社会の在り方が議論され、例えば、憲法改正の課題が議論されるようになった。この社会文化現象は評価すべきものである。国民が自らの国や社会の在り方や運営の仕方を議論し、自らの責任でそれを選ぶことは決して悪いことではない。そこで、この議論が国民のものとして位置付けられ、国民的議論を通じて、国民主権、民主主義社会の文化がさらに深く根付くかどうかが最も注目されるべき点である。
つまり、現在の日本社会で問われる課題は、すべてと言っていいほど「民主主義の在り方」にたどり着く。具体的な例を挙げれば切がない。「差別」、「暴力」、「いじめ」、「金融マフィア」、「少子化問題」、「子育て問題」、「女性の権利」等々、つまり、それらの社会文化現象の根底にある「秘密主義」、「官僚主義」、「学閥主義」、「学歴偏重」、「利権集団」、「多様性の排除論理」、「多様性排除」、「他者への差別」、「既得権益の維持」等々の社会構造の体質が挙げられる。
しかし、同時に、民主主義文化を発展させる運動や組織運営方法がある。例えば、「市民参画型運営」、「情報公開型」、「平等主義と役割機能主義」等々が挙げられる。これらの民主主義文化を構築する要素を取り入れた「社会デザイン」の設計が求められる。例えば、自然災害や社会災害に対する安全管理や危機管理体制、また復興計画や都市計画に至るまで、社会デザインの課題には、その最終構想のみでなく、その構築過程の設計図が求められているのである。
例えば、成田国際空港建設事業にみられるように、民主主義に基づく社会デザイン計画の手続き(一方的な立ち退き命令を出すという手段は民主主義国家の在り方と反する)が欠如することで、結果的には空港建設は大幅に遅れ、現在でも完成していない。その損失を考えると、社会デザインにとって民主主義的合意形成の果たす経済性が理解できるだろう。
セッション「教育と政治社会」
教育は百年の計と言われている。明治以来の国民国家の形成、近代化政策を進めることが出来たのも、また、それ以前の江戸時代の教育制度がなければ、明治維新や明治近代化政策も存在しなかったと言える。その意味で、今日の日本社会を形成構築した政策の一つに教育政策がある。
社会が大きな変革を迎える時期に、教育制度や政策が問われる。封建社会から近代国家への過渡期に国民教育制度が生まれ、また戦前の天皇制議会主義社会から戦後の国民主権国家への移行期に、民主主義教育が形成された。そして、今、我々が教育制度や教育政策を見直そうとしていることは、ある時代が終息し、新しい時代が生まれようとしているのだとも予測できる。この新しい時代と社会に最も適した人材育成を社会は教育改革の名のもとに実行しようとしている。
前記したように政治社会学会の目的を謳った会則第2条に「科学技術の著しい発展、地球温暖化問題の発生、グローバル化の急速な進展」等々、日本の政治社会や市民生活は、「これまで経験したことのない事態に直面し、さまざまな問題解決を迫られている」。その意味で、これらの教育はこれらの新しい社会や生活環境に必要とされる政策、制度や内容を求められている。
例えば、
1、国際化社会に適した人材教育(英語教育、PBL、国際教養学部、講義の英語化等々)。
2、すでに、学会指針の三本柱の二つ目の課題に挙げられているのが「リベラル・アーツの再検討と人文社会科学再生への道」、つまり科学技術文明社会で生産・消費・生活者の生き方に役立つリベラル・アーツの内容(人文社会系の入試内容の変更、理数系科目の補習教育等々)。
3、成熟した民主主義社会を発展構築する人材教育(市民運動、NGO、NPO、企業の教育参加)。
4、国際地域の安全と平和的共存に寄与できる人材教育や東アジア共同大学院制度の構築
5、先端産業への人的資源補充機能(実践的な社会人教育制度、専門資格検定制度)、
6、地域社会の活性化を支援する教育体制、
等々、幾つかの課題が簡単に列挙できる。しかし、これ以上に多くの課題が山積していることは言うまでもない。
また、「教育と政治社会」では、前記した「社会デザインと民主主義」の課題、つまり成熟した民主主義社会への形成過程で具体的に問われる課題、例えば、少子高齢化問題、教育政策や教育問題(いじめや高等教育問題)、医療政策、エネルギー政策、安全管理や危機管理政策、過疎化対策、地域経済活性化対策、異文化・異世代共生社会構築の課題解決で問われる「教育制度」や「教育政策」を取り上げる必要がある。
セッション「生態環境と政治社会」
20世紀後半、地球温暖化や生態環境問題を解決するために文理融合型の政策提案や実践が課題となった。この政治社会学会は設立当初から生態環境保全のための政策実現を課題に挙げて、研究活動を展開してきた。
2010年11月の政治社会学会設立記念研究大会ではセッション「理系と文系の研究者の協働による学際研究を目指して -地球研オアシスプロジェクトにおけるパイロット的事例」で「総合科学としての地球環境学」に関する報告があった。
2011年3月11日の福島原発事故の半年後に開催された第二回政治社会学会研究大会は、東日本大震災を受けて災害復旧や今後の減災への議論を深めるために関連する学会が連携し設立した学会連携・震災対応プロジェクトと連携して研究大会が企画された。そして、特別講演(総括)(「パラダイム・シフト-グローバル市民社会と新しい公共を目指して-」)、二つのセッション(「東日本大震災と日本経済・地域経済・政策決定」と「福島原発事故を考える:広島・長崎・チェルノブイリの経験から」)、二つの共通論題(「地球環境コンソーシアム構想:『国際社会の知』の形成に向けて」と「自然科学と社会科学における歴史的アプローチの異同」)と大会の5つのプログラムを生態環境と政治社会の課題が占めた。つまり、東日本大震災・福島原発事故に関する生態環境と政治社会のテーマで第2回研究大会は行われ(た)と言える。
前回、第三回目の研究大会では「生態環境と政治社会」の課題は、二つのセッション「自然科学と社会科学の歴史的アプローチの異同:パートⅡ」と「福島原発事故調査をめぐる自然科学と社会科学」、そして北澤宏一先生の基調講演「福島原発事故に学ぶ-これからの日本のエネルギーと科学技術-」が生態環境と政治社会のテーマに即して企画された。
今回、第四回研究大会は、これまでの政治社会学会が推し進めてきた「生態環境と政治社会」のテーマを継承しさらに発展させたい。つまり、持続可能な生態環境を確立するために問われる政治社会制度や政策に関する議論が必要である。それらの議論を地域社会での政策実践やまたこれからの資源、エネルギー、食糧、農業問題に関する政具体的な策提案や政策実践の検証作業として展開できないかと考えている。
政策提言型会員公募セッション
政治社学会では、昨年(第3回研究大会)から、若手研究者の研究発表の場を提供することを目的にして「政策提言型会員公募セッション」を開催してきた。このセッションでは、研究大会のテーマ「文理融合と社会デザイン」に関する幅広い研究発表を募集している。
昨年の研究大会でも、多くの募集者が集まり、その募集者の中からセッション責任者(新川達郎先生)によって研究発表者を絞って、研究発表を依頼した。今年は、昨年の反省に立って、応募した研究発表課題を、昨年と同じくセッション責任者(新川達郎先生)によって予め発表者を選別することになる。
しかし、発表できない応募者にはすべてポスターセッションでの発表の機会を与えることになる。できるだけ多くの若手研究者に研究発表の場を提供するために、今年からポスターセッションでの発表の機会を提供することになった。
問題解決を課題とする学会活動を目指す
以上、第四回研究大会のテーマと「文理融合と社会デザイン」の意味と課題について述べ、その課題を展開するために準備した5つのセッションの趣旨を説明した。
この「学会テーマとセッション課題について」の議論はこれまでの企画委員会や理事会の議論に基づき書かれたものである。この文書を、企画委員、理事会のメンバーとセッション責任者に配布し、研究大会のプログラムをより具体的に進めたいと希望する。
また、基調講演者への依頼を行うにあたって、大会テーマの意味とセッションの趣旨を説明することで、今回の大会テーマに沿った講演テーマのお願いが可能になる。そのために以上の文章を作成した。
そして、時代の問題を常に取り上げ、その問題解決のために、すべての学問、技術、企業、行政、政府機関、国際機関、市民活動のすべての社会、経済、政治、文化、生活領域を超えて取り組む姿勢を示し、実践する学会、政治社会学会の今後の展開に寄与する第四回研究大会であることを期待したい。
引用、参考資料
(1)、 三石博行 「 政策科学の方法と実践的課題 「文理融合と社会デザイン」-政治社会学会(ASPOS)の2013年度大会の課題について(1)-」
http://mitsuishi.blogspot.jp/2013/06/blog-post_6.html
(2) 政治社会学会(ASPOS)ホームページ
http://aspos.web.fc2.com/
(3) 第三回政治社会学会総会及び研究大会プログラム
http://aspos.web.fc2.com/20121123-25aspos3.pdf
(4) 第三回政治社会学会総会及び研究大会報告要旨集
http://aspos.web.fc2.com/20121123-25abstract.pdf
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三石博行
2013年度の政治社会学会総会及び研究大会は11月16日(土曜日)から17日(日曜日)の二日間、大阪府吹田市の千里金蘭大学で開催されることが決まった。2010年度(設立大会)から2012年度までの研究大会のテーマは「文理融合と人間社会科学の再生」であった(1)。
この三回の研究大会を踏まえながら、今回(第四回)の大会から「文理融合と社会デザイン」を研究大会のテーマに掲げた。今回はその第一回目の研究大会となる。この研究大会では、5つのセッションを設けた。以下、それらのセッションの課題に私の考えを関して述べる。
セッション「社会デザインと政策実践」
昨年の学会でセッション「プログラム科学とは何か」で設計科学としての政策学の方法論に関して議論した。文理融合型の研究は当然、問題解決に必要なあらゆる専門知識や技術を導入する学祭的プラグマティズムがこれからの政策学に求められている。
文理融合型政策実践の課題を展開するために、基礎理論を課題にした議論から、実際の政策実践の課題に焦点を合わせながら、具体的な理論的検証をその中で進める議論が必要とされている。そこで、今年度は、基礎理論に関する議論から一歩出て、その理論が現実の政策実践に応用可能なのかを検討したい。
これまでこの学会では、政策学を人間、文化や社会経済に関する設計科学、「社会デザイン」科学と位置づけてきた。そして、有効な「社会デザイン」を展開する科学、つまり政策提案や実践に関する検証作業、例えば、地域医療問題(医療政策という社会デザイン問題)、食糧問題や水問題を解決する社会デザイン(農業、環境、地方文化や産業、少子化政策)、脱原発・エネルギー政策と社会デザイン等々の課題に有効な「社会デザイン」論に関する議論を呼び掛けたい。
セッション「社会デザインと民主主義」
昨年の学会のセッションで、福島原発事故に関する議論を行った。この議論で指摘されたことは、技術的問題、エネルギー政策、原子力政策を進めるための制度上の課題があるということであった。一般に「原子力ムラ」と呼ばれる利権集団が形成され、技術的な安全問題、エネルギー政策上のリスク等々があったとしても、つまりこれまで原発事故、高速増殖炉や核燃料サイクルの失敗が続いてきたとしても、それらの事実を隠ぺいし、それらの問題を指摘し批判する人々を排除し続けてきた組織の在り方、人々の考え方、社会の在り方が問われなければならない。
福島原発事故問題が示す課題は、原子力政策を進める制度によって形成された「原子力ムラ」の利益集団と呼ばれる社会文化現象を徹底的に解明し、その構造が、実際は日本社会全体の構造問題として存在していることに気付く必要はないだろうか。
今、今後の日本社会の在り方が議論され、例えば、憲法改正の課題が議論されるようになった。この社会文化現象は評価すべきものである。国民が自らの国や社会の在り方や運営の仕方を議論し、自らの責任でそれを選ぶことは決して悪いことではない。そこで、この議論が国民のものとして位置付けられ、国民的議論を通じて、国民主権、民主主義社会の文化がさらに深く根付くかどうかが最も注目されるべき点である。
つまり、現在の日本社会で問われる課題は、すべてと言っていいほど「民主主義の在り方」にたどり着く。具体的な例を挙げれば切がない。「差別」、「暴力」、「いじめ」、「金融マフィア」、「少子化問題」、「子育て問題」、「女性の権利」等々、つまり、それらの社会文化現象の根底にある「秘密主義」、「官僚主義」、「学閥主義」、「学歴偏重」、「利権集団」、「多様性の排除論理」、「多様性排除」、「他者への差別」、「既得権益の維持」等々の社会構造の体質が挙げられる。
しかし、同時に、民主主義文化を発展させる運動や組織運営方法がある。例えば、「市民参画型運営」、「情報公開型」、「平等主義と役割機能主義」等々が挙げられる。これらの民主主義文化を構築する要素を取り入れた「社会デザイン」の設計が求められる。例えば、自然災害や社会災害に対する安全管理や危機管理体制、また復興計画や都市計画に至るまで、社会デザインの課題には、その最終構想のみでなく、その構築過程の設計図が求められているのである。
例えば、成田国際空港建設事業にみられるように、民主主義に基づく社会デザイン計画の手続き(一方的な立ち退き命令を出すという手段は民主主義国家の在り方と反する)が欠如することで、結果的には空港建設は大幅に遅れ、現在でも完成していない。その損失を考えると、社会デザインにとって民主主義的合意形成の果たす経済性が理解できるだろう。
セッション「教育と政治社会」
教育は百年の計と言われている。明治以来の国民国家の形成、近代化政策を進めることが出来たのも、また、それ以前の江戸時代の教育制度がなければ、明治維新や明治近代化政策も存在しなかったと言える。その意味で、今日の日本社会を形成構築した政策の一つに教育政策がある。
社会が大きな変革を迎える時期に、教育制度や政策が問われる。封建社会から近代国家への過渡期に国民教育制度が生まれ、また戦前の天皇制議会主義社会から戦後の国民主権国家への移行期に、民主主義教育が形成された。そして、今、我々が教育制度や教育政策を見直そうとしていることは、ある時代が終息し、新しい時代が生まれようとしているのだとも予測できる。この新しい時代と社会に最も適した人材育成を社会は教育改革の名のもとに実行しようとしている。
前記したように政治社会学会の目的を謳った会則第2条に「科学技術の著しい発展、地球温暖化問題の発生、グローバル化の急速な進展」等々、日本の政治社会や市民生活は、「これまで経験したことのない事態に直面し、さまざまな問題解決を迫られている」。その意味で、これらの教育はこれらの新しい社会や生活環境に必要とされる政策、制度や内容を求められている。
例えば、
1、国際化社会に適した人材教育(英語教育、PBL、国際教養学部、講義の英語化等々)。
2、すでに、学会指針の三本柱の二つ目の課題に挙げられているのが「リベラル・アーツの再検討と人文社会科学再生への道」、つまり科学技術文明社会で生産・消費・生活者の生き方に役立つリベラル・アーツの内容(人文社会系の入試内容の変更、理数系科目の補習教育等々)。
3、成熟した民主主義社会を発展構築する人材教育(市民運動、NGO、NPO、企業の教育参加)。
4、国際地域の安全と平和的共存に寄与できる人材教育や東アジア共同大学院制度の構築
5、先端産業への人的資源補充機能(実践的な社会人教育制度、専門資格検定制度)、
6、地域社会の活性化を支援する教育体制、
等々、幾つかの課題が簡単に列挙できる。しかし、これ以上に多くの課題が山積していることは言うまでもない。
また、「教育と政治社会」では、前記した「社会デザインと民主主義」の課題、つまり成熟した民主主義社会への形成過程で具体的に問われる課題、例えば、少子高齢化問題、教育政策や教育問題(いじめや高等教育問題)、医療政策、エネルギー政策、安全管理や危機管理政策、過疎化対策、地域経済活性化対策、異文化・異世代共生社会構築の課題解決で問われる「教育制度」や「教育政策」を取り上げる必要がある。
セッション「生態環境と政治社会」
20世紀後半、地球温暖化や生態環境問題を解決するために文理融合型の政策提案や実践が課題となった。この政治社会学会は設立当初から生態環境保全のための政策実現を課題に挙げて、研究活動を展開してきた。
2010年11月の政治社会学会設立記念研究大会ではセッション「理系と文系の研究者の協働による学際研究を目指して -地球研オアシスプロジェクトにおけるパイロット的事例」で「総合科学としての地球環境学」に関する報告があった。
2011年3月11日の福島原発事故の半年後に開催された第二回政治社会学会研究大会は、東日本大震災を受けて災害復旧や今後の減災への議論を深めるために関連する学会が連携し設立した学会連携・震災対応プロジェクトと連携して研究大会が企画された。そして、特別講演(総括)(「パラダイム・シフト-グローバル市民社会と新しい公共を目指して-」)、二つのセッション(「東日本大震災と日本経済・地域経済・政策決定」と「福島原発事故を考える:広島・長崎・チェルノブイリの経験から」)、二つの共通論題(「地球環境コンソーシアム構想:『国際社会の知』の形成に向けて」と「自然科学と社会科学における歴史的アプローチの異同」)と大会の5つのプログラムを生態環境と政治社会の課題が占めた。つまり、東日本大震災・福島原発事故に関する生態環境と政治社会のテーマで第2回研究大会は行われ(た)と言える。
前回、第三回目の研究大会では「生態環境と政治社会」の課題は、二つのセッション「自然科学と社会科学の歴史的アプローチの異同:パートⅡ」と「福島原発事故調査をめぐる自然科学と社会科学」、そして北澤宏一先生の基調講演「福島原発事故に学ぶ-これからの日本のエネルギーと科学技術-」が生態環境と政治社会のテーマに即して企画された。
今回、第四回研究大会は、これまでの政治社会学会が推し進めてきた「生態環境と政治社会」のテーマを継承しさらに発展させたい。つまり、持続可能な生態環境を確立するために問われる政治社会制度や政策に関する議論が必要である。それらの議論を地域社会での政策実践やまたこれからの資源、エネルギー、食糧、農業問題に関する政具体的な策提案や政策実践の検証作業として展開できないかと考えている。
政策提言型会員公募セッション
政治社学会では、昨年(第3回研究大会)から、若手研究者の研究発表の場を提供することを目的にして「政策提言型会員公募セッション」を開催してきた。このセッションでは、研究大会のテーマ「文理融合と社会デザイン」に関する幅広い研究発表を募集している。
昨年の研究大会でも、多くの募集者が集まり、その募集者の中からセッション責任者(新川達郎先生)によって研究発表者を絞って、研究発表を依頼した。今年は、昨年の反省に立って、応募した研究発表課題を、昨年と同じくセッション責任者(新川達郎先生)によって予め発表者を選別することになる。
しかし、発表できない応募者にはすべてポスターセッションでの発表の機会を与えることになる。できるだけ多くの若手研究者に研究発表の場を提供するために、今年からポスターセッションでの発表の機会を提供することになった。
問題解決を課題とする学会活動を目指す
以上、第四回研究大会のテーマと「文理融合と社会デザイン」の意味と課題について述べ、その課題を展開するために準備した5つのセッションの趣旨を説明した。
この「学会テーマとセッション課題について」の議論はこれまでの企画委員会や理事会の議論に基づき書かれたものである。この文書を、企画委員、理事会のメンバーとセッション責任者に配布し、研究大会のプログラムをより具体的に進めたいと希望する。
また、基調講演者への依頼を行うにあたって、大会テーマの意味とセッションの趣旨を説明することで、今回の大会テーマに沿った講演テーマのお願いが可能になる。そのために以上の文章を作成した。
そして、時代の問題を常に取り上げ、その問題解決のために、すべての学問、技術、企業、行政、政府機関、国際機関、市民活動のすべての社会、経済、政治、文化、生活領域を超えて取り組む姿勢を示し、実践する学会、政治社会学会の今後の展開に寄与する第四回研究大会であることを期待したい。
引用、参考資料
(1)、 三石博行 「 政策科学の方法と実践的課題 「文理融合と社会デザイン」-政治社会学会(ASPOS)の2013年度大会の課題について(1)-」
http://mitsuishi.blogspot.jp/2013/06/blog-post_6.html
(2) 政治社会学会(ASPOS)ホームページ
http://aspos.web.fc2.com/
(3) 第三回政治社会学会総会及び研究大会プログラム
http://aspos.web.fc2.com/20121123-25aspos3.pdf
(4) 第三回政治社会学会総会及び研究大会報告要旨集
http://aspos.web.fc2.com/20121123-25abstract.pdf
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2013年6月6日木曜日
政策科学の方法と実践的課題 「文理融合と社会デザイン」
政治社会学会(ASPOS)の2013年度大会の課題について(1)
三石博行
政治社会学会の設立の趣旨と三つの課題
2010年10月に結成された21世紀型の学会活動を模索する政治社会学会(ASPOS)では、21世紀社会、科学技術文明社会での政治社会学、政策学の在り方を問題にしてきた。「政治学、経済学、法律学、社会学などの個別科学の垣根を取り払い、自然科学的知見を取り上げ、現状分析に基づくプログラム設計を中心とした問題解決型の新学会を目指して」(荒木義修2010)活動することがこの学会の設立趣旨であった。
本会の設立趣旨に基づき、「新たな社会に対応する学会指針の三本柱」(荒木義修2010)と呼ばれる学会の課題が述べられた。その一つは.「文理融合型の学際的研究を可能にする新たな視点の再開発 」であり、二つ目の課題は「リベラル・アーツの再検討と人文社会科学再生への道」である。そして、三つ目は「新たな社会構想:必要とされる理念の調和と叡智あるプログラム設計」(荒木義修2010)であった。
大会テーマ「文理融合と人間社会科学の再生」の目的とその意味
上記した三つの学会指針に即して、政治社会学の科学方法論としての文理融合型の研究方法が課題となった。第一回から第三回までの研究大会では「文理融合と人間社会科学の再生」が大会テーマとして取り上げられた。
2010年に人間社会科学分野から積極的に文理融合の方法論を取り上げることは決して斬新的なものではなかったが、この文理融合の方法論を政策実践の中で検証しようとする政治社会学会の試みは、人間社会科学での先端的研究として評価できる。
この先端的研究、つまり文理融合型の研究方法や研究制度が評価されたのは、環境問題に取り組む政策学であった。2011年3月11日の福島原発事故は、その先端性を一般性として再認識しなければ政策学は存立しないことを示したのである。つまり、現代社会の政策実践では、高度な先端科学技術、情報社会ネットワーク、社会経済システムの知識のすべてを動員する必要がある。言い換えると、文理融合型の学際的研究方法は、現代社会・21世紀社会での政策学が成立するための必要十分条件であると言える。
2012年の大会と福島原発事故
2012年研究大会(「文理融合と人間社会科学の再生」をテーマに取り上げた)では、文理融合型研究としての政治社会学や政策学の科学的方法論や基礎理論の課題が取り上げられた。例えば経済学の新潮流、経済物理学の紹介、環境問題の解決で求められる自然科学と社会科学の歴史的アプローチやその理論的考察、設計科学やプログラム科学と呼ばれる問題解決型学問に関する提案や報告がなされた。
これらの文理融合型研究を前提にした政策学の課題は、例えば地球環境問題や地球環境学、原発とエネルギー問題、原発問題を巡る独立調査委員会の課題、旧ソ連・カザフ共和国のセミパラチンスク核実験場での放射能汚染問題とその人間社会病理構造の分析、立法機関での自然科学的議論の成立条件の提案、原発問題と報道機関の批判的検証の研究報告の中で具体的に議論された。
また、現在の政治社会学・政策学の課題、例えば、市場万能主義(新自由主義経済)政策から公益資本主義の在り方、社会関係資本に関する議論、市場経済主義の再認識による効率的な企業運営と公正な政府政策の検証作業、新貨幣論(公共貨幣システム)による債務危機の回避を目指す政策提案、地方分権化を目指す広域自治体での政策課題として、問題解決を具体的に模索する課題へ展開応用された。
政治社会学会の趣旨と国内地域主義・国際地域連携
2012年の研究大会で「グローバル、リージョナル、ナショナル、ローカルを結びつける視点を重視した研究大会を持つ」(新川達郎2012)政治社会学会の在り方が展開した。
つまり、政治社会学会は国内での地域主義に基づく学会であると同時に、東アジア、特に韓国政治社会学会との国際共同研究大会を推進してきた。つまり国内の支部活動(地域での政治社会学会の開催)と韓国政治社会学会と共同で開催される研究大会活動が、政治社会学会の特徴を形成してきた。
ナショナルとローカルを結びつける視点を展開している地域主義の学会運営と、グローバルとリージョナルを結びつける視点をもつ国際地域連携の学会の在り方に関する意味を考え、その意味に含まれる21世紀型学会活動の在り方を自覚的に理解する必要がある。
1、地域社会の政策実践に貢献する学会
政治社会学会は国内に九州政治社会学会、関西政治社会学会と関東政治社会学会の三つの支部(学会)によって構築されている。これらの三つの支部は地域における政治社会学会という名称となっている。学会の定款には、支部に関する定義やその役割に関する条文はない。支部でなく地域政治学科としたのは、それぞれの地域での課題となる政策実践の研究を、学会理事会(学会執行機関)が提案するのでなく、地域の特徴に合わせて、地域で展開発展されるべきという考え方が、学会設立当時から存在していたのではないだろうか。
つまり、政策実践とは、時代性や社会文化性と緊密に関連し、それらの個別的な条件に適応したものである。学問的方法論として文理融合、プログラム科学や設計科学を援用展開しながら、その理論や解釈に、さらに時代性と社会文化性の限定条件を与えることは、科学方法論としても先端的である。それらは、ある意味で現代解釈学の科学認識論に基づき、またある意味で科学理論を解釈の道具として位置付けるプラグマティズムの思想を持つと言える。政策実践に付随した社会文化性や時代性を対自化することで、それらの政策の地域文化的特徴を政策提案者が自覚的に理解することになる。つまり、政策実践とは、時代性と社会文化性に規定されている現場(生活実践や社会実践の場)から問題提起され、またそこでその有効性を検証される理論であり技術であると言える。
一般的な政策提案や政策実践は存在しない。それらは個別性、つまり時代性と社会文化性に規定されている現場を持ち、その現場での有効性を問われる。一般的な政策実践の有効性は存在しない。その意味で政策学研究の方法論(文理融合、プログラム科学や設計科学)は、時代性と社会文化性に規定されていると言える。
検証する場として生活や社会環境の中で政策提案や政策理論の実証が必要とされる。この政策学の理論や方法論から、先端的研究としての政策学の在り方が問われる。つまり、それは政策対象が持つ社会文化性や時代性を前提にした研究方法である。地域における政治社会学会活動は、そうした研究条件、地域社会や生活現場に根差した政策実践を前提にしていると言える。
言い換えると、政治社会学会活動が地域社会の政策実践に貢献することによって、政治社会学会が課題とした文理融合、プログラム科学や設計科学と呼ばれる学問的方法論の根底にある問題解決学的プラグマティズムの思想は鍛え抜かれることになる。それが、政治社会学会の国内地域学会による社会や生活現場主義の方法論を展開すると期待できるのである。
2、東アジアの平和的共存を目指すグローバル・リージョナルな学会活動
政治社会学会は発足当初から、韓国政治社会学会と共に研究活動を行っている。韓国の研究者が政治社会学会に参加し、また韓国で政治社会学会を組織し、一年毎に日韓相互で共同の政治社会学会を開催してきた。
昨年、2012年の研究大会では、東アジア問題に関する二つの国際セッション、一つは東アジアの国際関係に関するセッション、二つ目は東アジアの市民社会の課題に関するセッションが開催された。これらの国際セッションに、韓国を始め海外の研究者が参加した。今年度は、韓国で韓国政治社会学会の主催する国際会議に政治社会学会は参加することになっている。
2012年度研究大会のすぐ後に、政治社会学会は他の学会やNPOと共催してシンポジウム「東アジア共同体への道」(京都大学11月26日)を開催した。さらに、2013年1月12日から13日に東京外国語大学で他の学会と共催して第1回「アジア共生」ジョイントカンファレンス開催した。
政治社会学会会則第2条で、学会活動の目的を定めてある。その条文の中に、「科学技術の著しい発展、地球温暖化問題の発生、グローバル化の急速な進展など、私たちの 住んでいる政治社会(political society, John Locke, 1698)、すなわち市民社会( civil society) は、これまで経験したことのない事態に直面し、さまざまな問題解決を迫られている。」(会則第2条の部分)と記されている。
急速な国際化によって生じる課題を、とりわけ国際地域(グローバル・リージョナル)で共に対応しようとしている。この国際地域の連携は国際紛争や戦争によって生じた莫大な犠牲者や被害への反省に立って進められてきた。その代表例がEU(ヨーロッパ連合)である。
アジア共生や東アジアの平和的共存の願いは、第二次世界大戦やその前の、過去の侵略戦争を繰り返さないために、日本がその責任の所在として、積極的に取り組まなければならない課題であることは言うまでもない。しかし、現実の日本の政治はそうなっていない。寧ろ、逆に過去の過ちを再び繰り返すかのようにも思える。今、私たちは、東アジアでの国際地域(グローバル・リージョナル)連携を可能にするための現実的な提案や政策を検討しなければならない。
政治社会学会は21世紀の東アジア社会の重要な課題を設立の当初から展開してきた。その結果が、韓国政治社会学会との共同学会や他の学会(国内のみでなく国際的な) との「アジア共生」ジョイントカンファレンスである。
政策実践とその学問的探究の目的と政策実践の思想
学会活動の目的を定めた会則第2条では、「科学技術の著しい発展、地球温暖化問題の発生、グローバル化の急速な進展」など21世紀社会の新たな課題に対して、「従来の学問体系全体もパラダイム・シフトを求められ、自然科学ばかりでなく社会科学のあり方そのものが問われている。このような状況に対応するため、政治学、経済学、法律学、社会学などの個別科学の垣根を取り払い、自然科学的知見を取り上げ、現状分析に基づくプログラム設計を中心とした問題解決型の学際的学会をめざす。同時に、文理融合や社会科学の復権を模索しながら、新たな社会構築のための理念の調和、叡智あるプログラム設計を探究する。」(会則第2条の部分)と記されている。
つまり、政策実践の目的は、より良い市民社会、生活環境、民主主義文化の成熟にある。
その目的を実現するために、政治社会学会の設立趣旨に基づく「新たな社会に対応する学会指針の三本柱」(荒木義修2010)が提案された。三つの柱の一つは政策学を「文理融合型の学際的研究」として展開することであった。その具体的な展開目標として、文理融合型政策実践によって「政治学、経済学、法律学、社会学などの個別科学の垣根を取り払い」(荒木義修2010)、人文社会科学のパラダイム・シフトを促し、「人文社会科学再生への道」(荒木義修2010)を目指すことであった。そして、これらの研究と実践の展開の方向は、明らかに「新たな社会構想」(荒木義修2010)を形成するためであった。つまり、その社会構想とは21世紀社会で必要とされる問題解決学としての政策実践と理論であった。それを「理念の調和と叡智あるプログラム設計」(荒木義修2010)と呼んだ。
この問題提起と視点から、2010年から2012年までの研究大会のテーマに「文理融合と人間社会科学の再生」を掲げた。そして、「政策実践の目的は、より良い市民社会、生活環境、民主主義文化の成熟にある」という政策思想の原点に立ち帰ることが常に求められている。
第四回大会のテーマ 「文理融合と社会デザイン」の課題
21世紀社会(科学技術文明社会)での政策学(政治社会学)の大きな課題として、すべての経済社会文化政策の企画から実施に至るまで高度な専門知識が必要となる。しかも、政策決定に必要とされるそれらの専門的知識には、理系や文系の境界は存在していない。問われる課題は有効な政策のための知識ということである。つまり問題解決力を問われている研究、政策学研究の視点から言えば、21世紀の政策学は文理融合型の研究が大前提となる。
政治社会学会設立記念総会から3回目の総会まで、学会は理工系の科学技術と人文社会系科学技術の領域を超えて問題解決力を求める政策学の方法論や課題を議論してきた。その意味で、これまでの研究大会では、政治社会学会が提起する21世紀の政策学の方法論(プログラム科学や設計科学)、それらの実践的検証を社会の実現(原発問題や環境問題)に焦点を合わせながら、議論してきた。
上記した21世紀型政策学の基本課題を社会現実の中で議論し研究活動の蓄積を前提にして、さらに、それらの文理融合型政策学を具体的な社会課題の中で、「実践的な政策提案型研究活動」に展開するために、第四回大会のテーマを「文理融合と社会デザイン」とした。
この「文理融合と社会デザイン」のテーマは政治社会学会の第二期の研究活動を意味している。つまり、この学会がこれまで以上に「実践的な政策提案型研究活動」を展開することを課題にしていると言える。言い換えると、政治社会学会の会員があらゆる分野の政策提案やその実践の場により深く関係し自らの人間社会、生態文化、環境科学の研究を展開することを目指すための学会活動の方向を示しているとも言える。
2013年度研究大会テーマ「文理融合と社会デザイン」を展開するために、学会では2つの基調講演と5つのセッションを準備した。「社会デザインと政策実践」、「社会デザインと民主主義」、「教育と政治社会」、「生態環境と政治社会」と「政策提言型会員公募セッション」である。
引用、参考資料
(1) 政治社会学会(ASPOS)ホームページ
http://aspos.web.fc2.com/
「政治社会学会は、政治学、経済学、法律学、社会学などの個別科学を超え、自然科学的知見を取り上げ、現状分析に基づくプログラム設計を中心とした問題解決型の新学会を目指し2010年11月に発足しました」(政治社会学会ホームページ)
http://aspos.web.fc2.com/arakiaisatu.html/
(2) 政治社会学会の設立の趣旨
「科学技術の著しい発展、地球温暖化問題の発生、グローバル化の急速な進展など、私たちの住んでいる政治社会(political society, John Locke 1698)、すなわち市民社会(civil society)は、これまで経験したことのない事態に直面し、さまざまな問題解決を迫られています。しかし、これに呼応して従来の学問体系全体がパラダイム・シフトを求められていることに気づいている人はごく少数です。自然科学ばかりでなく社会科学のあり方そのものが問われています。このような状況に社会的に対応するため、2010年3月に、「政治社会学会」を立ち上げることにしました。
政治学、経済学、法律学、社会学などの個別科学の垣根を取り払い、自然科学的知見を取り上げ、現状分析に基づくプログラム設計を中心とした問題解決型の新学会を目指しています。同時に、文理融合や人文社会科学の再生を模索しながら、新たな社会の構築のために、必要と思われる理念の調和と叡智あるプログラム設計を探究していこうとするものです。ご賛同いただける方は、本会を通じて、積極的なご加入とご支援をお願い申し上げます。
なお、本学会では、潤滑な企画運営をはかるため、文理融合部会、政治社会学部会、政治経済学部会、国際社会学部会、国際交流部会、ポスター・セッション部会を設置しています。
【新たな社会に対応する学会指針の三本柱】
1.文理融合型の学際的研究を可能にする新たな視点の再開発
2.リベラル・アーツの再検討と人文社会科学再生への道
3.新たな社会構想:必要とされる理念の調和と叡智あるプログラム設計 」(荒木義修2010)
http://aspos.web.fc2.com/arakiaisatu.html/
(3) 第三回政治社会学会総会及び研究大会プログラム
http://aspos.web.fc2.com/20121123-25aspos3.pdf
(4) 第三回政治社会学会総会及び研究大会報告要旨集
http://aspos.web.fc2.com/20121123-25abstract.pdf
(5) 2013年度 第1回「アジアの共生」ジョイント・コンファレンス -大会テーマ「東アジア安全保障共同体と日米関係」プログラム –
http://aspos.web.fc2.com/jointconference.html
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三石博行
政治社会学会の設立の趣旨と三つの課題
2010年10月に結成された21世紀型の学会活動を模索する政治社会学会(ASPOS)では、21世紀社会、科学技術文明社会での政治社会学、政策学の在り方を問題にしてきた。「政治学、経済学、法律学、社会学などの個別科学の垣根を取り払い、自然科学的知見を取り上げ、現状分析に基づくプログラム設計を中心とした問題解決型の新学会を目指して」(荒木義修2010)活動することがこの学会の設立趣旨であった。
本会の設立趣旨に基づき、「新たな社会に対応する学会指針の三本柱」(荒木義修2010)と呼ばれる学会の課題が述べられた。その一つは.「文理融合型の学際的研究を可能にする新たな視点の再開発 」であり、二つ目の課題は「リベラル・アーツの再検討と人文社会科学再生への道」である。そして、三つ目は「新たな社会構想:必要とされる理念の調和と叡智あるプログラム設計」(荒木義修2010)であった。
大会テーマ「文理融合と人間社会科学の再生」の目的とその意味
上記した三つの学会指針に即して、政治社会学の科学方法論としての文理融合型の研究方法が課題となった。第一回から第三回までの研究大会では「文理融合と人間社会科学の再生」が大会テーマとして取り上げられた。
2010年に人間社会科学分野から積極的に文理融合の方法論を取り上げることは決して斬新的なものではなかったが、この文理融合の方法論を政策実践の中で検証しようとする政治社会学会の試みは、人間社会科学での先端的研究として評価できる。
この先端的研究、つまり文理融合型の研究方法や研究制度が評価されたのは、環境問題に取り組む政策学であった。2011年3月11日の福島原発事故は、その先端性を一般性として再認識しなければ政策学は存立しないことを示したのである。つまり、現代社会の政策実践では、高度な先端科学技術、情報社会ネットワーク、社会経済システムの知識のすべてを動員する必要がある。言い換えると、文理融合型の学際的研究方法は、現代社会・21世紀社会での政策学が成立するための必要十分条件であると言える。
2012年の大会と福島原発事故
2012年研究大会(「文理融合と人間社会科学の再生」をテーマに取り上げた)では、文理融合型研究としての政治社会学や政策学の科学的方法論や基礎理論の課題が取り上げられた。例えば経済学の新潮流、経済物理学の紹介、環境問題の解決で求められる自然科学と社会科学の歴史的アプローチやその理論的考察、設計科学やプログラム科学と呼ばれる問題解決型学問に関する提案や報告がなされた。
これらの文理融合型研究を前提にした政策学の課題は、例えば地球環境問題や地球環境学、原発とエネルギー問題、原発問題を巡る独立調査委員会の課題、旧ソ連・カザフ共和国のセミパラチンスク核実験場での放射能汚染問題とその人間社会病理構造の分析、立法機関での自然科学的議論の成立条件の提案、原発問題と報道機関の批判的検証の研究報告の中で具体的に議論された。
また、現在の政治社会学・政策学の課題、例えば、市場万能主義(新自由主義経済)政策から公益資本主義の在り方、社会関係資本に関する議論、市場経済主義の再認識による効率的な企業運営と公正な政府政策の検証作業、新貨幣論(公共貨幣システム)による債務危機の回避を目指す政策提案、地方分権化を目指す広域自治体での政策課題として、問題解決を具体的に模索する課題へ展開応用された。
政治社会学会の趣旨と国内地域主義・国際地域連携
2012年の研究大会で「グローバル、リージョナル、ナショナル、ローカルを結びつける視点を重視した研究大会を持つ」(新川達郎2012)政治社会学会の在り方が展開した。
つまり、政治社会学会は国内での地域主義に基づく学会であると同時に、東アジア、特に韓国政治社会学会との国際共同研究大会を推進してきた。つまり国内の支部活動(地域での政治社会学会の開催)と韓国政治社会学会と共同で開催される研究大会活動が、政治社会学会の特徴を形成してきた。
ナショナルとローカルを結びつける視点を展開している地域主義の学会運営と、グローバルとリージョナルを結びつける視点をもつ国際地域連携の学会の在り方に関する意味を考え、その意味に含まれる21世紀型学会活動の在り方を自覚的に理解する必要がある。
1、地域社会の政策実践に貢献する学会
政治社会学会は国内に九州政治社会学会、関西政治社会学会と関東政治社会学会の三つの支部(学会)によって構築されている。これらの三つの支部は地域における政治社会学会という名称となっている。学会の定款には、支部に関する定義やその役割に関する条文はない。支部でなく地域政治学科としたのは、それぞれの地域での課題となる政策実践の研究を、学会理事会(学会執行機関)が提案するのでなく、地域の特徴に合わせて、地域で展開発展されるべきという考え方が、学会設立当時から存在していたのではないだろうか。
つまり、政策実践とは、時代性や社会文化性と緊密に関連し、それらの個別的な条件に適応したものである。学問的方法論として文理融合、プログラム科学や設計科学を援用展開しながら、その理論や解釈に、さらに時代性と社会文化性の限定条件を与えることは、科学方法論としても先端的である。それらは、ある意味で現代解釈学の科学認識論に基づき、またある意味で科学理論を解釈の道具として位置付けるプラグマティズムの思想を持つと言える。政策実践に付随した社会文化性や時代性を対自化することで、それらの政策の地域文化的特徴を政策提案者が自覚的に理解することになる。つまり、政策実践とは、時代性と社会文化性に規定されている現場(生活実践や社会実践の場)から問題提起され、またそこでその有効性を検証される理論であり技術であると言える。
一般的な政策提案や政策実践は存在しない。それらは個別性、つまり時代性と社会文化性に規定されている現場を持ち、その現場での有効性を問われる。一般的な政策実践の有効性は存在しない。その意味で政策学研究の方法論(文理融合、プログラム科学や設計科学)は、時代性と社会文化性に規定されていると言える。
検証する場として生活や社会環境の中で政策提案や政策理論の実証が必要とされる。この政策学の理論や方法論から、先端的研究としての政策学の在り方が問われる。つまり、それは政策対象が持つ社会文化性や時代性を前提にした研究方法である。地域における政治社会学会活動は、そうした研究条件、地域社会や生活現場に根差した政策実践を前提にしていると言える。
言い換えると、政治社会学会活動が地域社会の政策実践に貢献することによって、政治社会学会が課題とした文理融合、プログラム科学や設計科学と呼ばれる学問的方法論の根底にある問題解決学的プラグマティズムの思想は鍛え抜かれることになる。それが、政治社会学会の国内地域学会による社会や生活現場主義の方法論を展開すると期待できるのである。
2、東アジアの平和的共存を目指すグローバル・リージョナルな学会活動
政治社会学会は発足当初から、韓国政治社会学会と共に研究活動を行っている。韓国の研究者が政治社会学会に参加し、また韓国で政治社会学会を組織し、一年毎に日韓相互で共同の政治社会学会を開催してきた。
昨年、2012年の研究大会では、東アジア問題に関する二つの国際セッション、一つは東アジアの国際関係に関するセッション、二つ目は東アジアの市民社会の課題に関するセッションが開催された。これらの国際セッションに、韓国を始め海外の研究者が参加した。今年度は、韓国で韓国政治社会学会の主催する国際会議に政治社会学会は参加することになっている。
2012年度研究大会のすぐ後に、政治社会学会は他の学会やNPOと共催してシンポジウム「東アジア共同体への道」(京都大学11月26日)を開催した。さらに、2013年1月12日から13日に東京外国語大学で他の学会と共催して第1回「アジア共生」ジョイントカンファレンス開催した。
政治社会学会会則第2条で、学会活動の目的を定めてある。その条文の中に、「科学技術の著しい発展、地球温暖化問題の発生、グローバル化の急速な進展など、私たちの 住んでいる政治社会(political society, John Locke, 1698)、すなわち市民社会( civil society) は、これまで経験したことのない事態に直面し、さまざまな問題解決を迫られている。」(会則第2条の部分)と記されている。
急速な国際化によって生じる課題を、とりわけ国際地域(グローバル・リージョナル)で共に対応しようとしている。この国際地域の連携は国際紛争や戦争によって生じた莫大な犠牲者や被害への反省に立って進められてきた。その代表例がEU(ヨーロッパ連合)である。
アジア共生や東アジアの平和的共存の願いは、第二次世界大戦やその前の、過去の侵略戦争を繰り返さないために、日本がその責任の所在として、積極的に取り組まなければならない課題であることは言うまでもない。しかし、現実の日本の政治はそうなっていない。寧ろ、逆に過去の過ちを再び繰り返すかのようにも思える。今、私たちは、東アジアでの国際地域(グローバル・リージョナル)連携を可能にするための現実的な提案や政策を検討しなければならない。
政治社会学会は21世紀の東アジア社会の重要な課題を設立の当初から展開してきた。その結果が、韓国政治社会学会との共同学会や他の学会(国内のみでなく国際的な) との「アジア共生」ジョイントカンファレンスである。
政策実践とその学問的探究の目的と政策実践の思想
学会活動の目的を定めた会則第2条では、「科学技術の著しい発展、地球温暖化問題の発生、グローバル化の急速な進展」など21世紀社会の新たな課題に対して、「従来の学問体系全体もパラダイム・シフトを求められ、自然科学ばかりでなく社会科学のあり方そのものが問われている。このような状況に対応するため、政治学、経済学、法律学、社会学などの個別科学の垣根を取り払い、自然科学的知見を取り上げ、現状分析に基づくプログラム設計を中心とした問題解決型の学際的学会をめざす。同時に、文理融合や社会科学の復権を模索しながら、新たな社会構築のための理念の調和、叡智あるプログラム設計を探究する。」(会則第2条の部分)と記されている。
つまり、政策実践の目的は、より良い市民社会、生活環境、民主主義文化の成熟にある。
その目的を実現するために、政治社会学会の設立趣旨に基づく「新たな社会に対応する学会指針の三本柱」(荒木義修2010)が提案された。三つの柱の一つは政策学を「文理融合型の学際的研究」として展開することであった。その具体的な展開目標として、文理融合型政策実践によって「政治学、経済学、法律学、社会学などの個別科学の垣根を取り払い」(荒木義修2010)、人文社会科学のパラダイム・シフトを促し、「人文社会科学再生への道」(荒木義修2010)を目指すことであった。そして、これらの研究と実践の展開の方向は、明らかに「新たな社会構想」(荒木義修2010)を形成するためであった。つまり、その社会構想とは21世紀社会で必要とされる問題解決学としての政策実践と理論であった。それを「理念の調和と叡智あるプログラム設計」(荒木義修2010)と呼んだ。
この問題提起と視点から、2010年から2012年までの研究大会のテーマに「文理融合と人間社会科学の再生」を掲げた。そして、「政策実践の目的は、より良い市民社会、生活環境、民主主義文化の成熟にある」という政策思想の原点に立ち帰ることが常に求められている。
第四回大会のテーマ 「文理融合と社会デザイン」の課題
21世紀社会(科学技術文明社会)での政策学(政治社会学)の大きな課題として、すべての経済社会文化政策の企画から実施に至るまで高度な専門知識が必要となる。しかも、政策決定に必要とされるそれらの専門的知識には、理系や文系の境界は存在していない。問われる課題は有効な政策のための知識ということである。つまり問題解決力を問われている研究、政策学研究の視点から言えば、21世紀の政策学は文理融合型の研究が大前提となる。
政治社会学会設立記念総会から3回目の総会まで、学会は理工系の科学技術と人文社会系科学技術の領域を超えて問題解決力を求める政策学の方法論や課題を議論してきた。その意味で、これまでの研究大会では、政治社会学会が提起する21世紀の政策学の方法論(プログラム科学や設計科学)、それらの実践的検証を社会の実現(原発問題や環境問題)に焦点を合わせながら、議論してきた。
上記した21世紀型政策学の基本課題を社会現実の中で議論し研究活動の蓄積を前提にして、さらに、それらの文理融合型政策学を具体的な社会課題の中で、「実践的な政策提案型研究活動」に展開するために、第四回大会のテーマを「文理融合と社会デザイン」とした。
この「文理融合と社会デザイン」のテーマは政治社会学会の第二期の研究活動を意味している。つまり、この学会がこれまで以上に「実践的な政策提案型研究活動」を展開することを課題にしていると言える。言い換えると、政治社会学会の会員があらゆる分野の政策提案やその実践の場により深く関係し自らの人間社会、生態文化、環境科学の研究を展開することを目指すための学会活動の方向を示しているとも言える。
2013年度研究大会テーマ「文理融合と社会デザイン」を展開するために、学会では2つの基調講演と5つのセッションを準備した。「社会デザインと政策実践」、「社会デザインと民主主義」、「教育と政治社会」、「生態環境と政治社会」と「政策提言型会員公募セッション」である。
引用、参考資料
(1) 政治社会学会(ASPOS)ホームページ
http://aspos.web.fc2.com/
「政治社会学会は、政治学、経済学、法律学、社会学などの個別科学を超え、自然科学的知見を取り上げ、現状分析に基づくプログラム設計を中心とした問題解決型の新学会を目指し2010年11月に発足しました」(政治社会学会ホームページ)
http://aspos.web.fc2.com/arakiaisatu.html/
(2) 政治社会学会の設立の趣旨
「科学技術の著しい発展、地球温暖化問題の発生、グローバル化の急速な進展など、私たちの住んでいる政治社会(political society, John Locke 1698)、すなわち市民社会(civil society)は、これまで経験したことのない事態に直面し、さまざまな問題解決を迫られています。しかし、これに呼応して従来の学問体系全体がパラダイム・シフトを求められていることに気づいている人はごく少数です。自然科学ばかりでなく社会科学のあり方そのものが問われています。このような状況に社会的に対応するため、2010年3月に、「政治社会学会」を立ち上げることにしました。
政治学、経済学、法律学、社会学などの個別科学の垣根を取り払い、自然科学的知見を取り上げ、現状分析に基づくプログラム設計を中心とした問題解決型の新学会を目指しています。同時に、文理融合や人文社会科学の再生を模索しながら、新たな社会の構築のために、必要と思われる理念の調和と叡智あるプログラム設計を探究していこうとするものです。ご賛同いただける方は、本会を通じて、積極的なご加入とご支援をお願い申し上げます。
なお、本学会では、潤滑な企画運営をはかるため、文理融合部会、政治社会学部会、政治経済学部会、国際社会学部会、国際交流部会、ポスター・セッション部会を設置しています。
【新たな社会に対応する学会指針の三本柱】
1.文理融合型の学際的研究を可能にする新たな視点の再開発
2.リベラル・アーツの再検討と人文社会科学再生への道
3.新たな社会構想:必要とされる理念の調和と叡智あるプログラム設計 」(荒木義修2010)
http://aspos.web.fc2.com/arakiaisatu.html/
(3) 第三回政治社会学会総会及び研究大会プログラム
http://aspos.web.fc2.com/20121123-25aspos3.pdf
(4) 第三回政治社会学会総会及び研究大会報告要旨集
http://aspos.web.fc2.com/20121123-25abstract.pdf
(5) 2013年度 第1回「アジアの共生」ジョイント・コンファレンス -大会テーマ「東アジア安全保障共同体と日米関係」プログラム –
http://aspos.web.fc2.com/jointconference.html
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個別的震災パターン分析と震災救助対策の検討、評価、改善の作業
災害政策の設計科学的展開を目指す
三石博行
個別的震災パターンと普遍的震災パターン
個別の震災パターンの分析を通じて、そのパターンの特殊性を理解するだけでなく、一般的な震災パターンを理解することが出来る。どの震災や災害でも起こる罹災地での救済活動の在り方、罹災直前に必要となる救援物資等々が、ここで言う一般的な震災パターンに属する。
ここで用語的な混乱を防ぐために、震災パターンを震災による被害の状況とそれに対する救援活動と定義する。そして、個別的震災パターンを、例えば阪神淡路大震災や東日本大震災のような個々の震災の被害状況やその救援活動と定義する。それに対して、どの震災でも一般的に生じる被災状況や救援活動の在り方を普遍的震災パターンと定義したい。
阪神淡路大震災の都市直下型震災状況は阪神淡路大震災の個別的震災パターンである。また、東日本大震災の原発事故、地震と津波による広域の災害状況やそれに対する救援活動の在り方は東日本大震災の個別的震災パターンである。そして、阪神淡路大震災や東日本大震災を含み他の震災でも共通する災害状況とそれに対する救援活動の在り方が普遍的震災パターンである。
言い換えると、個別的震災パターンの分析から、それに類似する震災パターンへの対応が可能になる。また、普遍的震災パターンの分析によって、震災や自然災害一般への救援体制に関する安全管理や危機管理の方針が検討されることになる。
個別的震災パターンの多様性
個別的震災パターンを構成する要素とは、地理的条件、気象的条件、生態環境的条件、経済的条件、文化的条件、政治的条件、地域社会的条件や技術的条件等々が挙げられる。それらの条件は幾つかの要素によって構成されている。また、条件を構成する要素の質的関係のみでなく、特に対立する要素間の相対的傾向、すなわち二つの要素間の相対的比率や二つの要素の存在確率という量的関係によっても決定されている。
地理的条件とは、都市直下型と呼ばれる阪神淡路大震災のような罹災地が都市に集中しているケースや東日本大震災のように都市や農村漁村を含む広域地域に罹災地が広がっているケースなどがある。例えば、地理的条件を列挙すると、都市型と村落型や僻地型、広域型と局所型、海岸地域型と山村地域型や山岳地域型等がある。それらの質的要素の存在比率の変化によって、多様な組み合わせが生まれ、それがそれぞれの震災の地理的条件の多様性を生み出しているのである。
気象的条件とは、基本的には気象を構成する基本要素である雨量、日照時間、気温、湿度によって決定されている。それらの組み合わせによって、季節的条件、気候的条件が生み出されるが、そればかりではない。風力や風向きなどがミクロ的要因として考えられる。そして、それらの要因が多様に組み合わされ、その要因の多様な量的変化によって多様な気象的条件が形成される。
生態環境的条件とは、上記の地理的条件と気象的条件によって形成された条件によって構成されている。例えば、南日本、西日本、東海、北陸、中部、南関東、北関東、東北太平洋岸、東北日本海岸等々と日本の地方を分類する特徴は、これらの地域固有の生態環境を構成している要素によって構築されている。それらの要素とは、例えば、海岸と内陸、緯度や経度、暖流と寒流、雨量、日照時間、気温、平地と山岳地、都市と農村等々である。さらに、それらの対立要因間の相対的比率によって、多様な生態環境条件が形成されることになる。
経済的条件とは、国民経済生産性や国内総生産(GDP)からや、世界経済の視点から先進国型、発展途上国型、貧困国型に分類することもできる。また、工業地帯型、商業地帯、サービス業地帯、農業地帯型、漁業地帯型のような産業構造からの分類も可能である。工業地帯型でも、重工業地帯から軽工業地帯まであり、さらに大企業地帯から中小企業地帯、ベンチャー産業から伝統産業地帯と、その姿は実に多様であると言える。同様のことは商業地帯、サービス業地帯、農業地帯型、漁業地帯型でもその産業規模やその他の要素、例えば伝統産業型やベンチャー産業型によって非常に多様な形態が存在する。また、産業構造からと国民経済生産性からの分類が組み合わさり、さらに新たな分類カテゴリーが形成される。例えば、農業地帯型でも国民経済生産性の高い地域もあれば、低い地域もある。
このように、上記したように震災パターンは、さらに多様な文化的条件、政治的条件、地域社会的条件や技術的条件等が考えられるのであるが、以上の条件を震災パターンの構成要素と考えるなら、それらの要素の組み合わせ(マトリックス)によって震災パターンの多様性が生み出されていると考えることが可能である。
震災パターンとは、「(幾つかの地理的条件・G=Σg(n)、幾つかの気象的条件・C=Σc(n)、幾つかの生態環境的条件・Ecol=ΣEcol(n)、幾つかの経済的条件・Econ=ΣEcon (n)、幾つかの文化的条件・Cul =ΣCul(n) 、幾つかの政治的条件・P=Σp(n)、幾つかの社会的条件・S=Σs(n)、幾つかの技術的条件・T=Σt(n))のマトリックス」構造である。
つまり、あるFの震災パターンとは、例えば、g(1) の地理的条件、c(4)の気象的条件の中から、Ecol(5)の生態環境的条件、Econ (8)の経済的条件、Cul(9)の文化的条件、p(o)の政治的条件、s(p)の社会的条件、t(l)の技術的条件というそれぞれの構成条件の中の一つの要素間の組み合わせによって構築されることになる。ある個別の震災パターンF(n)を以下の成立条件の要素の組み合わせとか関数的関係として表現できると思われる。
F(n)=(g(1),c(4),Ecol(5),Econ (8),Cul(9),p(o),s(p),t(l)) (1)
このモデルから明らかなように、個別的震災パターンも幾つかのその成立条件の組み合わせである。その意味で、震災(災害)パターンは多様であるが、そのパターンが無限にあるのではなく、非常に多くの可能なケースが考えられると言える。つまり、F(n)のパターン数はnの大きさによって決定されることになる。すべての震災パターンをF(太文字のF)とすれば、以下のように表現できるだろう。
F = ΣF(n) (2)
震災救助パターンに含まれる行動主体の内的要因の計量化
個々の震災パターンに対して救援活動が取り組まれることになる。現実の震災では、震災パターンを事前に分析し起こりうる可能な震災状況をシミレーションすることはない。ほとんど、震災が起こり、そこに発生している災害状況に応じて、可能な救援活動が取り組まれることになる。
前節で説明したように震災パターンは、地理的条件、気象的条件、生態環境的条件、経済的条件、文化的条件、政治的条件、地域社会的条件や技術的条件等々、言い換えると震災活動を行う主体の行動を決定づけている人間(活動主体)の持つ知識、能力、技能や方法等々、主体の行動力を決定している内的要因ではなく、むしろ、その活動主体を取り囲む環境的な要因(外的要因)である。
逆に、個別の震災パターンに対する震災救助パターンは、その活動を行う個人や集団のもつ知識、能力、技能、方法、スキル、経験に大きく依存しているのである。つまり、震災パターンが決まれば、そのパターンに即した震災対応が自動的に可能になる訳ではなく、上記した救助する人々の行動を決定している要素、行動主体を決定している要素(内的要因)を同時に組み込まなければならないのである。
震災救助活動を行う行動主体の要素(内的要因・A)とは、例えば、震災救助に関する知識(K)、その知識を生かす技能(スキル・S)、震災救助への情熱や意思(P)、モラル(M)、また震災救助を行う主体の精神的、肉体的健康状態(H)等も含まれる。つまり、それらの内的要因はこれまでの政策学では問われることがなかった要因であり、また正統派社会科学では問題として扱われることのなかった要因であると言える。言い方を変えると、この内的要因を持ち込むことで、「厳密な科学としての政策学」の成立が疑われる可能性すらある。
しかし、現実の震災救助活動の現場では、救助活動を担う人々の震災救助に関する知識、技能(スキル)、震災救助への意思、また震災救助を行う人々の健康状態が重要であることは言うまでもない。この現場の常識を以て、正統派社会学の「物質要素中心主義」を修正するならば、上記した内的要因を計量化する作業を行うことで、震災救助活動主体の多様な状況を想定することが出来る。
例えば、知識(K)、技能(S)、意思(P)、モラル(M)、健康状態(H)等の要因を計量化するために、それらの要因にレベル評価の程度を入れる。非常に良い「5」として、良い「4」、普通「3」、やや劣る「2」、非常に劣る「1」とすれば、質的変数を量的変数に変換することができる。この手法はすでに統計学で使われているので、決して目新しい方法ではない。
例えば、震災救助を行うある人の震災救助に関する知識は非常に良い状態K(5) 、技能(スキル)は良い状態S(4)、仕事への情熱も非常に高くP (5)、モラルも優れている状態M(4)、しかし健康状態が非常に悪い状態H (l) の場合、この救助活動の主体評価は、以下のように表現できる。
A(m)=(K(5),S(4),P (5),M(4),H (l)) (3)
このことは、震災救助主体のパターンも無限にあるのでなく、それぞれの要因の組み合わせによって多様に存在していることが理解できる。つまり、すべての震災救助主体のパターンをA(太文字のA)とすれば、Aは以下のように表現可能である。
A = ΣA(m) (4)
震災救助対策の分析とその改善
現実の震災時の社会的状況(Cs)は、個別の震災状況とそれに対する個別の救援活動状況によって構成されている。つまり、個別的震災パターンとそれに対する具体的な震災救助主体のパターンによって、現実の震災時の社会的状況が決定されていると言える。言い換えると、F(n)と A(m)の二つの要素によって、現実の震災時の社会的状況は構築されている。
上記した現実の震災時の社会的状況の概念を、前記した(1)と(3)の計量的概念を用いて、表現すると、以下のようになる。
Cs(p) = f(F(n), A(m)) (5)
すべての震災状況とは、この(5)式で示した、ある個別の個別的震災パターンとそれに対する具体的な震災救助主体のパターンとの関係によって生み出されたものである。現実の震災現象は、この(5)式で示したものとして現れる。
このことから、震災状況の現実がより被害の少ない状況になるように対策を考えることが課題となる。つまり、ある地域での過去の震災や災害の状況が教える課題は、その災害の個別的な特殊パターンのみでなく、災害時での救援活動の質に関する分析や解釈評価にある。災害時の救援活動の質をより詳しく分析し、その反省を次の災害に活かすことが、この分析の最終的目的であることは言うまでもない。
具体的な震災対策の検討課題、震災経験の蓄積と制度化、その評価
1995年1月17日に起こった阪神淡路大震災から今年で18年目を迎えた。この震災の教訓がその後の日本社会の震災対策に大きく影響を与えた。取り分け、ボランティア活動の意味を社会が理解し、その役割と社会的機能を震災や自然災害対策に活かす試みが行われてきた。阪神淡路大震災以来、震災のもみならず自然災害や事故、例を挙げると1997年に北陸福井の海岸で起きた重油タンカー「ナホトカ号」の事故でも原油による海岸汚染物質の除去作業に全国から多くのボランティアが集まった(1)。
今回の東日本大震災ではこれまで市民運動を経験したことのない人々が使命感に燃え積極的にネットワークを活用したボランティア活動を組織し、驚くべき力を発揮し全国的な支援活動を組織した(2)。西條剛央氏の組織した「ふんばろう日本支援プロジェクト」は行政の支援活動が行き届かない地域に必要な支援物資を送り、全国から参加してきたボランティアを必要に応じて手際よく罹災地に送り出した(3)。
阪神淡路大震災のボランティア活動の経験や教訓が他の災害に活用されたことは、そのボランティア活動(震災救済)が普遍的災害パターンとなったことを意味する。つまり、個別的震災パターンが異なる災害状況下で再現され活用され、ある一定の救援活動のプロトコールを作り出し、新たな個別的震災パターンの中で、発展的に展開し、その経験や教訓を蓄積し続けるのである。
災害はそれぞれの個別的な要因(個別的震災パターンと呼んだ)がある。したがって、それぞれの状況に対して災害救助活動は取り組まれている。しかも、これまでの災害救助活動の経験が、その取組に活かされる。また、それらの状況や経験を点検し、災害対策が制度化されることもある。
よりよい災害対策の事例として、個別の災害パターン(個別的震災パターン)をより分析的に理解する作業と、同時に災害救助活動の質、つまり震災救助主体のパターンの理解とその質的課題の解決を問題にすること、この二つの課題が同時に問題となる。
それぞれの地域によって予想される災害、震災のパターン分析をより具体的に行う必要がある。そのために、あらゆる調査施設、気象庁、国土庁、環境庁、市役所、通信会社のビックデータ、その他調査機関のデータ、大学研究機関、学会等々の情報の総合的分析や評価のシステムが必要となる。すでに、GPSのビックデータを基にした東日本大震災での避難行動に関する分析が行われている。
また、同時に、ボランティア活動の組織化やその運営、安否情報支援体制、救助情報の管理、避難所運営、救援物資の配給、生活情報支援等々、被災者支援活動の質を向上させるための研究、災害救助行動の分析と改善のための組織的な研究やその情報交換や政策展開が必要となるだろう。
引用、参考資料
(1) Wikipedia 「ナホトカ号重油流出事故」
(2) 西條剛央 『人を助けるすんごい仕組み――ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか』
(3) Wikipedia「西條剛央」より「西條は、『ふんばろう東日本支援プロジェクト』を設立、代表をつとめている。ふんばろう東日本支援プロジェクトは、構造構成主義が方法原理として採用されている。支援を行った避難所と個人宅避難所は延250箇所、物資の提供して頂いた方は、延2500人(団体や会社を含む)。冬物家電の提供では1万5千件に達している。」
(4) 三石博行 東日本大震災の分析と津波防波堤計画の合理的経済的な在り方とは http://mitsuishi.blogspot.jp/2013/05/blog-post_15.html
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関連ブログ文書集
三石博行 ブログ文書集「東日本大震災から復旧・復興、災害に強い社会建設を目指して」 http://mitsuishi.blogspot.jp/2011/03/blog-post_23.html
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三石博行
個別的震災パターンと普遍的震災パターン
個別の震災パターンの分析を通じて、そのパターンの特殊性を理解するだけでなく、一般的な震災パターンを理解することが出来る。どの震災や災害でも起こる罹災地での救済活動の在り方、罹災直前に必要となる救援物資等々が、ここで言う一般的な震災パターンに属する。
ここで用語的な混乱を防ぐために、震災パターンを震災による被害の状況とそれに対する救援活動と定義する。そして、個別的震災パターンを、例えば阪神淡路大震災や東日本大震災のような個々の震災の被害状況やその救援活動と定義する。それに対して、どの震災でも一般的に生じる被災状況や救援活動の在り方を普遍的震災パターンと定義したい。
阪神淡路大震災の都市直下型震災状況は阪神淡路大震災の個別的震災パターンである。また、東日本大震災の原発事故、地震と津波による広域の災害状況やそれに対する救援活動の在り方は東日本大震災の個別的震災パターンである。そして、阪神淡路大震災や東日本大震災を含み他の震災でも共通する災害状況とそれに対する救援活動の在り方が普遍的震災パターンである。
言い換えると、個別的震災パターンの分析から、それに類似する震災パターンへの対応が可能になる。また、普遍的震災パターンの分析によって、震災や自然災害一般への救援体制に関する安全管理や危機管理の方針が検討されることになる。
個別的震災パターンの多様性
個別的震災パターンを構成する要素とは、地理的条件、気象的条件、生態環境的条件、経済的条件、文化的条件、政治的条件、地域社会的条件や技術的条件等々が挙げられる。それらの条件は幾つかの要素によって構成されている。また、条件を構成する要素の質的関係のみでなく、特に対立する要素間の相対的傾向、すなわち二つの要素間の相対的比率や二つの要素の存在確率という量的関係によっても決定されている。
地理的条件とは、都市直下型と呼ばれる阪神淡路大震災のような罹災地が都市に集中しているケースや東日本大震災のように都市や農村漁村を含む広域地域に罹災地が広がっているケースなどがある。例えば、地理的条件を列挙すると、都市型と村落型や僻地型、広域型と局所型、海岸地域型と山村地域型や山岳地域型等がある。それらの質的要素の存在比率の変化によって、多様な組み合わせが生まれ、それがそれぞれの震災の地理的条件の多様性を生み出しているのである。
気象的条件とは、基本的には気象を構成する基本要素である雨量、日照時間、気温、湿度によって決定されている。それらの組み合わせによって、季節的条件、気候的条件が生み出されるが、そればかりではない。風力や風向きなどがミクロ的要因として考えられる。そして、それらの要因が多様に組み合わされ、その要因の多様な量的変化によって多様な気象的条件が形成される。
生態環境的条件とは、上記の地理的条件と気象的条件によって形成された条件によって構成されている。例えば、南日本、西日本、東海、北陸、中部、南関東、北関東、東北太平洋岸、東北日本海岸等々と日本の地方を分類する特徴は、これらの地域固有の生態環境を構成している要素によって構築されている。それらの要素とは、例えば、海岸と内陸、緯度や経度、暖流と寒流、雨量、日照時間、気温、平地と山岳地、都市と農村等々である。さらに、それらの対立要因間の相対的比率によって、多様な生態環境条件が形成されることになる。
経済的条件とは、国民経済生産性や国内総生産(GDP)からや、世界経済の視点から先進国型、発展途上国型、貧困国型に分類することもできる。また、工業地帯型、商業地帯、サービス業地帯、農業地帯型、漁業地帯型のような産業構造からの分類も可能である。工業地帯型でも、重工業地帯から軽工業地帯まであり、さらに大企業地帯から中小企業地帯、ベンチャー産業から伝統産業地帯と、その姿は実に多様であると言える。同様のことは商業地帯、サービス業地帯、農業地帯型、漁業地帯型でもその産業規模やその他の要素、例えば伝統産業型やベンチャー産業型によって非常に多様な形態が存在する。また、産業構造からと国民経済生産性からの分類が組み合わさり、さらに新たな分類カテゴリーが形成される。例えば、農業地帯型でも国民経済生産性の高い地域もあれば、低い地域もある。
このように、上記したように震災パターンは、さらに多様な文化的条件、政治的条件、地域社会的条件や技術的条件等が考えられるのであるが、以上の条件を震災パターンの構成要素と考えるなら、それらの要素の組み合わせ(マトリックス)によって震災パターンの多様性が生み出されていると考えることが可能である。
震災パターンとは、「(幾つかの地理的条件・G=Σg(n)、幾つかの気象的条件・C=Σc(n)、幾つかの生態環境的条件・Ecol=ΣEcol(n)、幾つかの経済的条件・Econ=ΣEcon (n)、幾つかの文化的条件・Cul =ΣCul(n) 、幾つかの政治的条件・P=Σp(n)、幾つかの社会的条件・S=Σs(n)、幾つかの技術的条件・T=Σt(n))のマトリックス」構造である。
つまり、あるFの震災パターンとは、例えば、g(1) の地理的条件、c(4)の気象的条件の中から、Ecol(5)の生態環境的条件、Econ (8)の経済的条件、Cul(9)の文化的条件、p(o)の政治的条件、s(p)の社会的条件、t(l)の技術的条件というそれぞれの構成条件の中の一つの要素間の組み合わせによって構築されることになる。ある個別の震災パターンF(n)を以下の成立条件の要素の組み合わせとか関数的関係として表現できると思われる。
F(n)=(g(1),c(4),Ecol(5),Econ (8),Cul(9),p(o),s(p),t(l)) (1)
このモデルから明らかなように、個別的震災パターンも幾つかのその成立条件の組み合わせである。その意味で、震災(災害)パターンは多様であるが、そのパターンが無限にあるのではなく、非常に多くの可能なケースが考えられると言える。つまり、F(n)のパターン数はnの大きさによって決定されることになる。すべての震災パターンをF(太文字のF)とすれば、以下のように表現できるだろう。
F = ΣF(n) (2)
震災救助パターンに含まれる行動主体の内的要因の計量化
個々の震災パターンに対して救援活動が取り組まれることになる。現実の震災では、震災パターンを事前に分析し起こりうる可能な震災状況をシミレーションすることはない。ほとんど、震災が起こり、そこに発生している災害状況に応じて、可能な救援活動が取り組まれることになる。
前節で説明したように震災パターンは、地理的条件、気象的条件、生態環境的条件、経済的条件、文化的条件、政治的条件、地域社会的条件や技術的条件等々、言い換えると震災活動を行う主体の行動を決定づけている人間(活動主体)の持つ知識、能力、技能や方法等々、主体の行動力を決定している内的要因ではなく、むしろ、その活動主体を取り囲む環境的な要因(外的要因)である。
逆に、個別の震災パターンに対する震災救助パターンは、その活動を行う個人や集団のもつ知識、能力、技能、方法、スキル、経験に大きく依存しているのである。つまり、震災パターンが決まれば、そのパターンに即した震災対応が自動的に可能になる訳ではなく、上記した救助する人々の行動を決定している要素、行動主体を決定している要素(内的要因)を同時に組み込まなければならないのである。
震災救助活動を行う行動主体の要素(内的要因・A)とは、例えば、震災救助に関する知識(K)、その知識を生かす技能(スキル・S)、震災救助への情熱や意思(P)、モラル(M)、また震災救助を行う主体の精神的、肉体的健康状態(H)等も含まれる。つまり、それらの内的要因はこれまでの政策学では問われることがなかった要因であり、また正統派社会科学では問題として扱われることのなかった要因であると言える。言い方を変えると、この内的要因を持ち込むことで、「厳密な科学としての政策学」の成立が疑われる可能性すらある。
しかし、現実の震災救助活動の現場では、救助活動を担う人々の震災救助に関する知識、技能(スキル)、震災救助への意思、また震災救助を行う人々の健康状態が重要であることは言うまでもない。この現場の常識を以て、正統派社会学の「物質要素中心主義」を修正するならば、上記した内的要因を計量化する作業を行うことで、震災救助活動主体の多様な状況を想定することが出来る。
例えば、知識(K)、技能(S)、意思(P)、モラル(M)、健康状態(H)等の要因を計量化するために、それらの要因にレベル評価の程度を入れる。非常に良い「5」として、良い「4」、普通「3」、やや劣る「2」、非常に劣る「1」とすれば、質的変数を量的変数に変換することができる。この手法はすでに統計学で使われているので、決して目新しい方法ではない。
例えば、震災救助を行うある人の震災救助に関する知識は非常に良い状態K(5) 、技能(スキル)は良い状態S(4)、仕事への情熱も非常に高くP (5)、モラルも優れている状態M(4)、しかし健康状態が非常に悪い状態H (l) の場合、この救助活動の主体評価は、以下のように表現できる。
A(m)=(K(5),S(4),P (5),M(4),H (l)) (3)
このことは、震災救助主体のパターンも無限にあるのでなく、それぞれの要因の組み合わせによって多様に存在していることが理解できる。つまり、すべての震災救助主体のパターンをA(太文字のA)とすれば、Aは以下のように表現可能である。
A = ΣA(m) (4)
震災救助対策の分析とその改善
現実の震災時の社会的状況(Cs)は、個別の震災状況とそれに対する個別の救援活動状況によって構成されている。つまり、個別的震災パターンとそれに対する具体的な震災救助主体のパターンによって、現実の震災時の社会的状況が決定されていると言える。言い換えると、F(n)と A(m)の二つの要素によって、現実の震災時の社会的状況は構築されている。
上記した現実の震災時の社会的状況の概念を、前記した(1)と(3)の計量的概念を用いて、表現すると、以下のようになる。
Cs(p) = f(F(n), A(m)) (5)
すべての震災状況とは、この(5)式で示した、ある個別の個別的震災パターンとそれに対する具体的な震災救助主体のパターンとの関係によって生み出されたものである。現実の震災現象は、この(5)式で示したものとして現れる。
このことから、震災状況の現実がより被害の少ない状況になるように対策を考えることが課題となる。つまり、ある地域での過去の震災や災害の状況が教える課題は、その災害の個別的な特殊パターンのみでなく、災害時での救援活動の質に関する分析や解釈評価にある。災害時の救援活動の質をより詳しく分析し、その反省を次の災害に活かすことが、この分析の最終的目的であることは言うまでもない。
具体的な震災対策の検討課題、震災経験の蓄積と制度化、その評価
1995年1月17日に起こった阪神淡路大震災から今年で18年目を迎えた。この震災の教訓がその後の日本社会の震災対策に大きく影響を与えた。取り分け、ボランティア活動の意味を社会が理解し、その役割と社会的機能を震災や自然災害対策に活かす試みが行われてきた。阪神淡路大震災以来、震災のもみならず自然災害や事故、例を挙げると1997年に北陸福井の海岸で起きた重油タンカー「ナホトカ号」の事故でも原油による海岸汚染物質の除去作業に全国から多くのボランティアが集まった(1)。
今回の東日本大震災ではこれまで市民運動を経験したことのない人々が使命感に燃え積極的にネットワークを活用したボランティア活動を組織し、驚くべき力を発揮し全国的な支援活動を組織した(2)。西條剛央氏の組織した「ふんばろう日本支援プロジェクト」は行政の支援活動が行き届かない地域に必要な支援物資を送り、全国から参加してきたボランティアを必要に応じて手際よく罹災地に送り出した(3)。
阪神淡路大震災のボランティア活動の経験や教訓が他の災害に活用されたことは、そのボランティア活動(震災救済)が普遍的災害パターンとなったことを意味する。つまり、個別的震災パターンが異なる災害状況下で再現され活用され、ある一定の救援活動のプロトコールを作り出し、新たな個別的震災パターンの中で、発展的に展開し、その経験や教訓を蓄積し続けるのである。
災害はそれぞれの個別的な要因(個別的震災パターンと呼んだ)がある。したがって、それぞれの状況に対して災害救助活動は取り組まれている。しかも、これまでの災害救助活動の経験が、その取組に活かされる。また、それらの状況や経験を点検し、災害対策が制度化されることもある。
よりよい災害対策の事例として、個別の災害パターン(個別的震災パターン)をより分析的に理解する作業と、同時に災害救助活動の質、つまり震災救助主体のパターンの理解とその質的課題の解決を問題にすること、この二つの課題が同時に問題となる。
それぞれの地域によって予想される災害、震災のパターン分析をより具体的に行う必要がある。そのために、あらゆる調査施設、気象庁、国土庁、環境庁、市役所、通信会社のビックデータ、その他調査機関のデータ、大学研究機関、学会等々の情報の総合的分析や評価のシステムが必要となる。すでに、GPSのビックデータを基にした東日本大震災での避難行動に関する分析が行われている。
また、同時に、ボランティア活動の組織化やその運営、安否情報支援体制、救助情報の管理、避難所運営、救援物資の配給、生活情報支援等々、被災者支援活動の質を向上させるための研究、災害救助行動の分析と改善のための組織的な研究やその情報交換や政策展開が必要となるだろう。
引用、参考資料
(1) Wikipedia 「ナホトカ号重油流出事故」
(2) 西條剛央 『人を助けるすんごい仕組み――ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか』
(3) Wikipedia「西條剛央」より「西條は、『ふんばろう東日本支援プロジェクト』を設立、代表をつとめている。ふんばろう東日本支援プロジェクトは、構造構成主義が方法原理として採用されている。支援を行った避難所と個人宅避難所は延250箇所、物資の提供して頂いた方は、延2500人(団体や会社を含む)。冬物家電の提供では1万5千件に達している。」
(4) 三石博行 東日本大震災の分析と津波防波堤計画の合理的経済的な在り方とは http://mitsuishi.blogspot.jp/2013/05/blog-post_15.html
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関連ブログ文書集
三石博行 ブログ文書集「東日本大震災から復旧・復興、災害に強い社会建設を目指して」 http://mitsuishi.blogspot.jp/2011/03/blog-post_23.html
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2013年6月5日水曜日
阪神大震災時に発行されたチラシの生活情報の質的変化と住民による震災時のチラシの発行の社会的必要性について
生活情報の危機の構築に関する課題として
三石博行
英文での論文 発表要旨
阪神淡路大震災に関する住民情報紙の調査は、災害時に市民が自主的に発行する生活情報のあり方を教えた。市民社会の発達した先進国では災害時の生活情報の危機管理を市民が担う力をもっている。この調査はその実例を示したものである。また、市民の発行する生活情報が市民の必要性に応じて変化する経過も調査で分かった。
38種類の震災に関する住民情報紙を調査し、それらの性質を理解するために情報紙の初動情報日、発行日数間隔、情報頻度(発行日数間隔)の要素を使って分析した。震災直後に発行された第一次生活情報(生命を守るために必要な生活情報)を記載した住民情報紙(第一期住民情報紙)、復旧活動(第二期住民情報紙)や復興活動(第三期住民情報紙)に関する住民情報紙の分類が可能になった。そして情報紙が、社会的要請を受けて、第一期、第二期と第三期の住民情報紙へと変遷することも理解できた。特に、生活情報の危機管理の在り方を考えるとき、第一期住民情報紙の発行を支える情報ボランティア運動の重要性が明らかになった。
国内の学会では、これまでの研究調査結果を報告する機会があった。そして、国際学会では一回の報告の機会があった。今回、取り分け災害時の住民情報紙に関する調査研究結果を英文にして報告する。
震災に関する住民情報紙のデータベースは神戸大学が収集していた。そのデータベースを当時龍谷大学経済学部河村研究室で卒論を書いていた学生と共に長い時間を掛けて調査を行い、そのデータをまとめた。
紙切れの集まりである住民情報紙に関する社会情報分析の視点からの調査研究の結果であるこの報告が意味するものは、震災時に必要とされる生活情報が、地方自治体組織や町内会によって提供されたのでなく、自発的に生み出されたボランティア運動によって担われていたという事実である。
このことは、震災時の生活情報の危機管理を考える上で、参考になると思われる。現在、生活情報の危機管理や安全管理の課題が、社会システムの中で問われている。災害に強い強固な安全管理システムを作ることは必要である。
しかし、その強固な社会の安全管理システムが壊れた時に考えなければならないのが危機管理である。社会システムの危機管理の形成は、安全管理のシステムと同じ発想を持って作ることは出来ない。この単純な発想が、現在、わが国では了解されていない。つまり、巨額の資金で、強固な建物や箱物を作る発想しか、社会経済システムの危機管理をイメージできないのである。
ここでは、危機管理はボランティア運動という市民文化であると位置付けられている。つまり、社会システムが、日常的に生活文化の中で、主体的な市民活動を育て、かつ、その意味を理解することが必要なのである。この問題提起を、この論文では行っているのである。
英文タイトル
「Considering the developmental form of the nature of resident-generated newsletters published during the Kobe Earthquake and their social necessity -To construct a risk management system that sensibly relates to living information- 」
キーワード
Aftermath of the Kobe Earthquake,(阪神淡路大震災の影響)
Risk management of daily living information,(生活情報の危機管理)
First release of information, News source (初動情報日)
Interval of news release, (発行日数間隔 情報頻度)
News duration, (発行継続日)
First period of information from residents, (第一期住民情報)
Second period of information from residents, (第二期住民情報)
Third period of information from residents, (第三期住民情報)
Evolving form of information from residents, (住民情報の進化)
論文ダウンロード
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_02_03/cMITShir12a.pdf
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関連ブログ文書集
三石博行 ブログ文書集「東日本大震災からの復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」
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三石博行
英文での論文 発表要旨
阪神淡路大震災に関する住民情報紙の調査は、災害時に市民が自主的に発行する生活情報のあり方を教えた。市民社会の発達した先進国では災害時の生活情報の危機管理を市民が担う力をもっている。この調査はその実例を示したものである。また、市民の発行する生活情報が市民の必要性に応じて変化する経過も調査で分かった。
38種類の震災に関する住民情報紙を調査し、それらの性質を理解するために情報紙の初動情報日、発行日数間隔、情報頻度(発行日数間隔)の要素を使って分析した。震災直後に発行された第一次生活情報(生命を守るために必要な生活情報)を記載した住民情報紙(第一期住民情報紙)、復旧活動(第二期住民情報紙)や復興活動(第三期住民情報紙)に関する住民情報紙の分類が可能になった。そして情報紙が、社会的要請を受けて、第一期、第二期と第三期の住民情報紙へと変遷することも理解できた。特に、生活情報の危機管理の在り方を考えるとき、第一期住民情報紙の発行を支える情報ボランティア運動の重要性が明らかになった。
国内の学会では、これまでの研究調査結果を報告する機会があった。そして、国際学会では一回の報告の機会があった。今回、取り分け災害時の住民情報紙に関する調査研究結果を英文にして報告する。
震災に関する住民情報紙のデータベースは神戸大学が収集していた。そのデータベースを当時龍谷大学経済学部河村研究室で卒論を書いていた学生と共に長い時間を掛けて調査を行い、そのデータをまとめた。
紙切れの集まりである住民情報紙に関する社会情報分析の視点からの調査研究の結果であるこの報告が意味するものは、震災時に必要とされる生活情報が、地方自治体組織や町内会によって提供されたのでなく、自発的に生み出されたボランティア運動によって担われていたという事実である。
このことは、震災時の生活情報の危機管理を考える上で、参考になると思われる。現在、生活情報の危機管理や安全管理の課題が、社会システムの中で問われている。災害に強い強固な安全管理システムを作ることは必要である。
しかし、その強固な社会の安全管理システムが壊れた時に考えなければならないのが危機管理である。社会システムの危機管理の形成は、安全管理のシステムと同じ発想を持って作ることは出来ない。この単純な発想が、現在、わが国では了解されていない。つまり、巨額の資金で、強固な建物や箱物を作る発想しか、社会経済システムの危機管理をイメージできないのである。
ここでは、危機管理はボランティア運動という市民文化であると位置付けられている。つまり、社会システムが、日常的に生活文化の中で、主体的な市民活動を育て、かつ、その意味を理解することが必要なのである。この問題提起を、この論文では行っているのである。
英文タイトル
「Considering the developmental form of the nature of resident-generated newsletters published during the Kobe Earthquake and their social necessity -To construct a risk management system that sensibly relates to living information- 」
キーワード
Aftermath of the Kobe Earthquake,(阪神淡路大震災の影響)
Risk management of daily living information,(生活情報の危機管理)
First release of information, News source (初動情報日)
Interval of news release, (発行日数間隔 情報頻度)
News duration, (発行継続日)
First period of information from residents, (第一期住民情報)
Second period of information from residents, (第二期住民情報)
Third period of information from residents, (第三期住民情報)
Evolving form of information from residents, (住民情報の進化)
論文ダウンロード
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_02_03/cMITShir12a.pdf
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