民主主義の危機(1)
三石博行
よく、政治家が悪いから良い国にならないと言ってしまう。しかし、そう言ってしまっていいのだろうかと思っている。何故なら、この発言には選挙権を持っている私の立場や責任は一切問われていないからだ。
問われることのない有権者の責任をよく現しているのが、選挙運動の時に流される候補者のメッセージである。選挙の時、「宜しくお願いします」「力を貸してください」と選挙カーからのあいさつが聞こえる。
簡単に言うと「一票を入れて欲しい」というお願いなのだが、お願いする人々のお願いを聞いて私は一票を入れるのだろうかと考えなければならない。つまり、これは誰のための選挙なのか。立候補者のための選挙なら、彼らのお願いを聞いてやって一票を投じることになる。
私たち有権者の意識がその程度である限り、「政治家が悪いので、政治が悪いので、国が良くならない」と言ってはならない。何故なら、すでに、その時点で、社会や国を少しでも良くために選挙に参加していないからだ。ましては投票にも行かないのだから、政治の責任を政治家のせいにするのは間違いなのだ。
国の運営は国民が行うと言うのが憲法で謳われている「国民主権」である。その代理人として我々は議員を選んでいる。それを間接民主主義と呼んでいた。若いころ、その間接民主主義がおかしいと言い出し、直接民主主義を主張したこともあった。しかし、国民全員を入れる議会場を造ることは不可能だ。そうだとすれば、より国民の総意を活かす間接民主主義の運営の仕方が必要だということになる。
まず、選挙に行くことだ。そして自分の意志で立候補者を選ぶことだ。もし、選ぶための資料がなければならない。そのために、立候補者のマニフェストを読むことになる。しかし、良いことばかり言って、やることはいつも別のこと、まったくマニフェストを実行しない、もしくはマニフェストと逆のことを平然と行う政党や政治家もいた。それで、私たちは、政党や立候補者がこれまで何をしてきたかを知る必要がある。よく言う自己評価や他者評価である。真面目な政治家や政党は自己評価を行っている。
しかし、殆どはそうでない。少なくとも、自己評価のない政治家には入れない方が良い。また、もっと積極的に政治的中立のNPOなどの評価があれば、それは大いに参考となる。その資料を参考にしながら、どの立候補者に自分の一票を投じればいいかを決めるとよい。これが間接民主主義で行うより国民主権の活かされている選挙だと思う。
そうした選挙であれば、国民は選挙で多数を占めた政党の政策を尊重するかもしれない。何故なら、それが日本国民の過半数の意見だからである。自分と異なる立場や意見が過半数を超えているという現実を真摯に受け止めることが出来るだろう。
しかし、それだからと言って何も自分の意見を変える必要はない。それでも納得いかない点を指摘し、それに対する批判をし、またそれに対する改善策を提案すればよい。次の選挙まで、多数派の政党の政策に反対する政党や団体と共に、政治活動を続ければいいのである。
それでも、既成政党が信頼できないなら、同じ意見を持つ人々をソーシャルメディアを駆使して組織し、積極的に政策提案活動や議員評価活動を起こすことも出来る。自分なりの政治への参加活動を始めることも国民主権では保証されているのである。
これらの全ての活動があって、民主主義は守られ、発展していく。今、日本で問題になっている「民主主義の危機」の問題は、安倍さんのやり方にあると言うよりも国民の政治意識の問題にあると言わなければならない。つまり、一言で言えば、「国民主権者」としての日本国民としての自分の責任を果たすことが求められている。そこから始めなければならない。
勿論、政治への参加とは、色々な参加の仕方があり、色々な意見があり、色々な提案があり、それらがすべて国民主権と呼ばれる異なる色彩空間にばら撒かれた色々な色の点として自分自身を自覚し、また隣の人を理解することから始めなければならないだろうと思う。
全国の有権者の半数近い人々が投票しない私たちの国で、当然、選ばれた人々は、そのことを緊急課題として解決しなければならない。国民が政治に責任を取る国にするための制度作りを急がなければならない。もちろん、政治家に任しては、この問題は解決しない。そのためには、自分たちの身近な人々、家族、友人、地域社会の人々と政治を語る生活文化を育てなければならない。そして、何よりも、小学校から国民主権と選挙をする国民の義務を教えなければならないだろう。
そのために、政党や政治家の政治活動に関する評価が社会に公開され、それを常に監視する社会文化を育てなければならないだろう。国民主権を守り、民主主義の社会文化を育てるためには、非常に多くのことをしなければならないことに気付くのである。
12月26日 フェイスブック記載文書
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