2011年12月1日木曜日

現在問われている社会改革の課題

成熟した社会・民主主義社会を発展させるために(3)

三石博行


主な社会改革課題について

現在問われている課題を分類しておく必要がある。これらの課題とは、大きく分けると政治制度改革、司法制度改革、行政制度改革、産業経済構造改革、教育文化改革、社会保険と福祉制度改革の6つの課題が挙げられる。緊急を要する財政問題、長期的視点に立ったエネルギー資源問題、歴史的経過を尊重しつつも新しい東アジアを中心とする外交問題等はそれらの6つの課題の複合領域の課題であると言える。

政治改革の課題

政治権力を取ること、政局問題が東日本大震災や福島原発事故で苦しむ国民の救済よりも先行する現在の既成政党の政治行動は政治家の政治理念の喪失によるものであるが、その政治理念を持たなくても政治家として活動できる状況がそれを生み出しているのである。そのためには政治家の活動に対して厳しい社会点検の制度が必要である。そして何よりも国民が社会改革を国民が議員達に任せるのでは、この社会改革は成功しないことを自覚しなければならない。

例えば、簡単に以下の制度改革が提案できる。
1、 選挙制度を巡る問題で、議員のマニフェスト達成率に関する情報公開義務、立候補者の実績とマニフェストの公開義務制度を国民参加で創る。つまり、選挙公約点検オンブスマン制度を創り、参加したい市民によって議員の政治活動評価を行い、それを公開する。
2、 街宣車で白い手袋を振って「宜しくお願いします」としか言わない選挙、そのために巨額の選挙資金を必要とす選挙運動の在り方を考える。政治家の政治活動を日常的に公共放送を活用して公開する制度。これは上記の課題とリンクする。議員の政治活動評価機関による評価の公開を公共放送のデータ通信機能やインターネットで公開することで、選挙期間に限定された選挙活動でなく、恒常的な議員評価システムを使った制度を前提とした選挙制度に改革する。
3、 国会議員定数の削減、小選挙区制の見直し、選挙区の見直し(これは道州制導入を前提として行う)
4、 都道府県議会議員の給与体系の見直し、ボランティア市民による地方自治の意思決定機能を創り、家業化している議員職を出来るだけ無くするような制度を創る。

司法制度改革の課題

クローズアップ現代(No3127)「証拠は誰のものか」で最近また問題となった冤罪事件が取り上げられた。この番組では、1986年3月に福井市の市営住宅で起きた女子中学生殺害事件の容疑者として前川彰司さんが逮捕され懲役7年の実刑を受けた冤罪事件が発生した背景が報道された。警察や検察官は不利な証拠を裁判に提出しない。また、証人証言をでっち上げている。殆ど、犯罪に近い行為が検察官によって行われ、そのことへの罪悪感はまったくなく、「不利な証拠は出さないのは当然」という発言を検察官が行っていた。

こうした検察官の考え方は、足利事件や凛の会事件の冤罪が大きく社会問題になった昨年以来、警察や検察に対して厳しく問われたにも拘わらず、検察にはその反省が微塵もない。犯罪と呼ばれる人権侵害を厳しく裁く検察が逆に人権侵害を犯し、しかもその犯罪への自覚すら持ち合わせていない。このことは本来その役割である民主主義国家を守る機能を果してはいないのである。そして、こうした冤罪問題はなぜ発生し続けるのか。また、検察に不利な証拠を隠すことが正当化されるなら、国民参加の司法制度を構築するために行われている裁判員制度自体が崩壊する危険を孕んでいると言えるのではないだろうか。

国民主権による司法制度を確立するためには、裁判員制度や検察審査会の制度をさらに検討し改革しなければならない。そして、その制度のためにも、検察の取り調べ室の記録情報、調査資料(証拠資料)の裁判員と弁護士への公開が法的に義務化される必要がある。

多くの課題の中で代表的な司法制度改革課題を以下に示す。
1、 冤罪の防止のための制度(警察の取り調べのやり方を抜本的に検討すること、そして検察の全資料を公開すること等々)
2、 最高裁判官の業績公開と国民審査制度、
3、 裁判員制度の充実
4、 検察審査会の在り方の再検討(小沢裁判に見られるように政治権力の介入や政治的利用の可能性を防ぐための課題分析と制度点検)


行政改革

行政改革の目的は行政機能の効率向上にある。効率のよい制度運営を行うことによって公共サービス商品の生産力を向上させることが出来る。具体的には、規制緩和、競争原理を活用した民間への業務委託、市民参画型運営、NPOやボランティア活動の活用等々が挙げられる。国民の総生産力が向上することが行政改革の評価となる。今、最も必要とされている行政改革を以下に示す。

行政改革のために現在、国民的な点検活動、例えばオンブスマンの設置を法定化し、「行政機関を外部から監視し、行政機関による国民の権利・利益の侵害に対する調査及び救済の勧告を図る」社会的な機能を構築すべきである。このオンブスマン(法的に行政機関を監視する公的制度)を、例えば市民の参加した委員会を設け、委員会の活動や調査結果の情報を公開する必要がある。


1、 地方分権制度。
2、 行政官採用試験制度、現在の国家公務員試験制度の見直し
3、 民間人、地方公務員と国家公務員の人的交流制度
4、 市民参画型地方行政


産業経済構造改革

産業経済政策は国も重要な課題の一つである。例えば、未来、持続可能な社会を形成するために、解決しなければならない課題として資源やエネルギー問題がある。福島原発事故以来、原発依存のエネルギー基本計画が見直され、新しいエネルギーとして再生可能エネルギーが取り上げられているが、そのエネルギー資源で十分なのか等々の課題がすでに問われている。

また、発展途上国や新興先進国が経済力、生産力を持つことで、これまでの国際産業地図は変化し続けるだろう。国内の多くの産業が新たに参入してくる新興国の産業に敗北しつづけるのも、歴史の流れであると言える。先進国日本は新しい産業を創造し、これまでの産業構造を変革し続けなければならないのである。

産業経済構造改革のために、国や地方自治体で専門家を入れ、また市民の参加を得た「産業経済構造改革委員会」を設け、国であれば経済産業省の専門官、大学、シンクタンク、企業、民間人を入れて各分野で委員会を設定して課題の検討と提案を行う委員会が必要となる。地方自治体でも、独自に自治体職員(専門官)、その地域社会の大学やシンクタンク、そして企業、民間人が参加した委員会を各課題別に設定して検討会議を行う必要がある。

高度知識社会・日本では、どの地方自治体でもこうした専門的な委員会を地域の人的資源を活用して形成することが出来る。それらの人的資源の活用とその成果の情報公開が、さらに市民の参加の産業経済構造改革を進めることが可能になる。

以下、産業経済構造とその制度改革の課題を示す。
1、 省エネ産業の育成と発展
2、 再生可能エネルギー産業の育成と発展
3、 高生産効率の生産、流通、商品管理システム改革
4、 人的資源の育成(技術技能伝達、再教育制度)
5、 出産、育児支援による女子労働の保護と確保の制度改革
6、 高齢者熟練労働力の活用


引用・参考資料

Wikipedia 「オンブスマン」


つづき


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ブログ文書集

1、ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_3562.html

2、ブログ文書集「東日本大震災の復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/blog-post_23.html

3、ブログ文書集「日本の政治改革への提言」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_9428.html

4、ブログ文書集「21世紀日本社会のための大学教育改革の提案」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/04/blog-post_6795.html

6、ブログ文書集「持続可能なエネルギー生産社会を目指すために」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_2842.html


12月7日、誤字修正
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