シンポジューム「東アジア共同体への道」(日韓同時通訳付き)
三石博行
危機に瀕した東アジア共同体構想
2012年11月26日月曜日の14時30分から17時30分(受付14時から)、京都大学 百周年時計台記念館 百周年記念ホールで、5つの国際交流団体(京都・奈良EU協会)と学術団体(政治社会学会(ASPOS) & 関西政治社会学会 同志社大学人文科学研究所第8研究、東京外国語大学国際関係研究所 龍谷大学アフラシア多文化研究センター)が共催して、シンポジューム「東アジア共同体への道」を開催することになりました。
シンポジューム「東アジア共同体への道」を開催する目的は、目覚しい経済成長を遂げた中国、台湾、韓国、ロシア極東地域を含む東(北東)アジア地域の今後の平和的共存関係を維持し発展するためのものです。この経済的協力を推進する平和的共存関係は東アジア共同体構想として発展してきました。
しかし、現在、尖閣諸島(魚釣島)や竹島(独島)の領有権問題によって、日韓中の東アジアの主要国間に外交上の大きな障害が立ち塞がっています。この障害は、単に日韓中の三国のこれまでの経済文化交流を阻害するに止まりません。領土問題が国家間の武力的衝突に発展してきた歴史を考えると、最悪の場合、日中間の軍事的衝突が生じる可能性もあります。
これまで、培ってきた経済関係や市民間の交流が、お互いに妥協できない領土問題を前面に出すことによって、崩壊する危機に晒されていると言えるのです。そして、東アジア共同体構想も消滅し、その目的である東(北東)アジアの平和的共存の可能性も大きく後退したことになります
国家の論理で領有権問題を争う次元からは、この東アジアの国際地域的な利益を見出すことは出来ないと思います。そこで、政府間レベルや外交上の問題として東(北東)アジアの課題を語るのではなく、これまで日韓中台露の間で進んだ企業、市民や研究者間の親密な交流を今まで以上に活発にしながら、民間の力でこれまでの交流の歴史を繋ぎとめる必要があります。
世界一の経済力の可能性をもつ東アジアの形成かあるいはその破壊か
この国際地域的な危機は、これまでの日中、日韓の関係の変化と理解することが出来るでしょう。今までのように、アジアの唯一の先進国日本と発展途上国中国や韓国の関係が変化し、経済力では中国は日本を追い越し、企業力では韓国のトップ企業が日本メーカよりも強い競争力を持つに至っています。
企業間の中国、台湾、韓国、ロシア極東地域での共同事業は進んでいます。その力が、東(北東)アジア共同体の基盤になっています。経済大国2位の中国と3位の日本、進展する韓国や台湾、そして発展するロシア極東部の経済力が集まるこの国際地域が21世紀の世界経済の中心になることは確かです。
つまり、この危機は見方を変えると、東アジア全体が経済競争力を付け、世界経済の中心になろうとしている一段階であると理解することも出来るのです。その意味で、この領有権問題として表面化した国家間の力関係の変化の基本構造を正しく理解することで、この紛争の解決が、寧ろ、次の東アジアの経済や文化交流の可能性を切り開く方向を与えると考えることも出来るのです。
こうした可能性を見出すためには、領有権問題を先送りにしてきた先人達の知恵を活かし、領有権問題があることを認めながらも、そのことよりも大きな利益、つまり経済発展によってもたらされる利益を共有することを優先すべきではないかと考えます。
今、東(北東)アジアで起ろうとしている地域国際紛争は、この地域が世界の中心となる可能性を持つ未来への道を破壊しようとしているのです。
政府に任せるだけでは問題は解決しない
民間人には国家間の紛争を直接解決する力はないでしょう。国家間の紛争は政府・外務省の外交官の努力によって解決されるでしょう。
しかし、これまで民間人によって、経済や文化の交流が続けられてきました。その交流によって出来上がった人的関係、相互の信頼や理解は、この紛争の解決に対しても、大きな力と知恵を提供するでしょう。
東アジアの平和的共存関係を考える時、今すぐに解決不可能な領有権問題を前面に出してしまうことは、国家間の武力紛争による決着の道しか残さない方法を選ぶことになるでしょう。つまり、今、領土問題解決のみを優先する外交は、未来の東アジアの可能性を破壊する行為に近いとも言えます。反日デモを過大に報道し、民族感情を扇動する世論や風潮に対しても警告を行なう必要があります。今、冷静で長期的な視点を持ってこの事態に対応する姿勢が求められているのです。
そして、何よりも、反日運動が中国や韓国で起こる意味を確りと日本国民は理解する理性をもたなければなりません。つまり、日本が過去に行った中国侵略、朝鮮植民地化、日中戦争と太平洋戦争での中国や韓国・朝鮮の国民の受けた甚大な被害を思い起こし、その戦争責任を受けとめる力を持たなければならないのです。戦争は日本国民にも甚大な被害を与えました。民間人の立場から、共に国家が起こした間違いを思い起こし、再び、この地域が国家の利害によって生じる戦禍にまみれることのないように努力すべきです。
しかし、こうした意見に対して、領土問題は絶対に譲れない問題であるとある政治家は言い、何よりもこの領土問題に東アジア諸国の国家間の外交課題を集中させようとする民族主義が台頭しようとしています。その背景には、各国の排他的な民族主義があります。それを報道も政治も助長させようとしているのが現状です。
この危険な状況に対して、長い東アジアの共存の道を切り開くための交流が提案されなければなりません。このシンポジュームはその一つです。私達は、市民、研究者や企業人の交流をさらに積極的に進めるために、このシンポジュームを呼びかけました。
政治社会学会は発足当時から、韓国の政治社会学会と共に研究活動を行い、韓国の著名な研究者も日本の学会に参加し、共に活動を続けてきました。同じように他の学会でも、東アジア間での研究交流を積極的に行っています。こうした伝統を今後も展開するために、この国際地域の研究者や市民は、さらに共同研究活動を展開する必要があります。
文化相互理解の果たす政治的影響力 第一回シンポジュームの課題
今回、第一回目のシンポジューム「東アジア共同体への道」では、一般財団法人ワンアジア財団(One Asia Foundation)の佐藤洋治理事長が基調講演を行います。一般財団法人ワンアジア財団は長年、一つのアジア、アジアの平和的共存を目指し教育研究文化活動を支援してきました。特に、アジアの平和に寄与するアジアの大学研究教育に多額の支援を行い続けています。最近は、ロシア極東地域の大学への教育研究支援活動にも取り組んでいます。
シンポジュウムの司会は政治社会学会理事長である荒木義修武蔵野大学教授が行う予定です。シンポジュームでの報告者は2名で、一人目のHyun-Chin Limソウル国立大学アジアセンター所長が「なぜ東アジア共同体を構築するのか- ナショナル・アイデンティティーを超えて-」と題する講演を行います。そして、二人目のHongik Chung(ソウル国立大学行政大学院名誉教授)が「Hallyu- 韓流とアジア-」と題する講演を行う予定です。
討論者として三名の日本の研究者が参加します。一人目は、清水耕介先生龍谷大学アフラシア多文化研究センター長です。二人目は大西広先生慶応義塾大学経済学部教授(京都大学名誉教授)です。三人目は渡辺啓貴先生(東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授)です。それぞれの視点から、二名の報告者に対してのコメントを行なう予定です。
今回のこのシンポジュームは、今、政治的課題になっている領土問題の解決について、真正面から討論するテーマのみを取り上げていません。寧ろ、国民文化の基盤となる民族文化とその国際的な交流活動をテーマにしています。政治的課題の解決を政治的方法に求める正攻法のみでなく、民族文化的課題の分析やその展開の可能性を語ること、さらにはアジアの平和的共存を目指す教育研究活動の支援の意味を語ることによって、長い視点から、問題を解決する姿勢を示そうとしていると思います。
「東アジア共同体への道」を語り合う機会は他にもたくさん作るべきだと思います。そして、その課題は多様で、まったく異なる意見が出されて然るべきであると思います。
今回、5つの団体、京都・奈良EU協会、政治社会学会(ASPOS) & 関西政治社会学会 同志社大学人文科学研究所第8研究、東京外国語大学国際関係研究所 龍谷大学アフラシア多文化研究センターの共催で行われるシンポジューム「東アジア共同体への道」もその一つです。
今、こうした時代に、私たちは、市民、研究者や企業人を中心とした分厚い層の民間人による、東(北東アジア)の民間人のための「東アジア共同体への道」について考え、意見交換をしたいと願っているのです。
是非とも、参加し、意見を述べてくださるようにお願いします。そして、このシンポジュームの後に行なわれる懇親会にも参加して、異なる国の研究者との交流を楽しんでください。
シンポジジューム「東アジア共同体への道」プログラム
日時:2012年11月26日(月曜日)14時30分から17時30分(受付14時00分)
会場:京都大学 百周年時計台記念館 百周年記念ホール
アクセス
【総合司会】
大賀 哲(九州大学大学院法学研究院・准教授/政治社会学会国際交流委員長)
【開会の辞】
三石博行(千里金蘭大学共通教育機構・ 教授/京都奈良EU協会・副理事長)
【基調講演】
佐藤洋治(ワンアジア財団理事長)
「アジア共同体の創生に向けて」
【シンポジューム】
司 会:
荒木義修(武蔵野大学政治経済学部・教授/政治社会学会・理事長)
報告1:「なぜ東アジア共同体を構築するのか- ナショナル・アイデンティティーを超えて-」
Hyun-Chin Lim(ソウル国立大学アジアセンター所長/ソウル国立大学社会科学部・学部長/韓国政治社会学会・会長)
報告2:「Hallyu- 韓流とアジア-」
Hongik Chung(ソウル国立大学行政大学院・名誉教授)
討論者
清水耕介(龍谷大学アフラシア多文化社会研究センター長)
大西 広(慶應義塾大学経済学部・教授/京都大学名誉教授)
渡辺啓貴(東京外国語大学大学院総合国際学研究院・教授)
懇親会
時間:18時30分から20時30分
場 所 :京都大学吉田キャンパス正門横「カンフォーラ」
参加費:2000円
連絡先
千里金蘭大学共通教育機構 三石研究室
〒565-0873 吹田市藤白台5-25-1
TEL:06-6872-7467 FAX:06-6872-7784
懇親会申込Email : labo.mitsuishi@gmail.com
チラシダウンロード
日本語チラシ
英語チラシ
2012年11月3日 誤字訂正
2012年11月5日 文書追加
Tweet
0 件のコメント:
コメントを投稿