三石博行
人を育てられない企業は社会的評価を受けない
仕事は、自分が生き、家族を養うために賃金を得る手段である。と同時に、社会と自分との関係を作り出す手段である。前者は仕事の成立条件である。後者は仕事の達成条件である。
仕事と呼ばれる以上、社会的必要性が前提になって成立している。すべての仕事も社会的需要があって成立している。そうでなければ、作った製品やサービスを売ることはできない。社会的評価はお金で示される。その評価が高い製品とは、よく売れる、高く売れることを意味する。
これを市場原理と呼んでいる。仕事は市場原理によって社会的につねに評価され続ける。それが仕事の宿命である。その評価を前提にして、前者の手段(生活の手段)を得ることができる。
社会的需要が少なくともあることが、後者の成立している条件である。それは沢山売れたということよりも、社会で必要とされている質を問題にして成立している。その意味で、仕事を通じて人は社会的存在となることができる。
企業は商品やサービスを社会に提供する事業を行っている。企業の評価はそこで働く人々の仕事の評価の総集合である。社会に評価される仕事をしている企業とは社会的評価を多く集める仕事人を多く抱えている企業であるといえる。
企業内で日常的に行われる一つ一つの作業の質、例えば医療受付業務、看護業務、レントゲン技師の技術、医師のスキル等々、一つの医療機関を例に取っても、それを構成している一人ひとりの仕事の質が、その医療機関の社会的評価となる。命を預ける患者の立場に立ち、精一杯の努力、質の高い医療サービスを日々目指す医療機関に対する評価が、その医療機関を活用する患者数となる。
どのような仕事でも、市場の原理が働き、社会的評価が日々に下されている。
つまり、企業は、職員に対して、社会が自分の仕事を必要とする関係を作り出すことが、自分が生きるため、家族を育てるために賃金を得る手段を成立させる条件であることを教育しなければならないだろう。
働いた結果の社会評価によって自分たちは生きることができるという企業教育が、利己性と利他性との矛盾関係を解消し、人々は労働によって社会化されるという企業の本来のあり方を教えるのである。
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