セクトから国民を守る法律の必要性
三石博行
1、21世紀は宗教の時代、そこで起こるセクトへの対策の必要性
こらまで、オーム真理教をはじめセクトによって国民は大きな被害を受けてきた。今回、1970年代から続いてきた旧統一教会の反社会的宗教活動が問題になっている。霊感商法等による巨額の献金、信者家庭の財政的破壊、合同結婚式、子供への信仰の強制、政治家との癒着による組織防衛等々、旧統一教会が行ってきた宗教活動と自称する行為が日本社会を揺るがす社会スキャンダルとなっている。
旧統一教会は日本では宗教法人として認可されている。その意味で、宗教法人法に守られ、税金等の優遇措置を受けている。それに対して、今、国民の中から、この宗教法人の法人資格を認めるべきでないという声が沸き起こっている。また、一方では、宗教法人資格を剥奪するのは信仰の自由に反するという批判もある。
科学技術文明社会が発展し続ける21世紀は他方で「宗教の世紀」とも言われている。何故なら、人々は科学技術的合理性によってのみ生きることは出来ない。生るものにとって死は避けがたい現実であり、その死に対して科学技術の知識では答えることが出来ない。何らかの生と死の課題に納得するために人は宗教を求めるかも知れない。その意味で、多くの人々がより宗教的課題に接することになる。
そうであれば、21世紀の社会ではオーム真理教や旧統一教会と同じように新しいセクトが発生し続けることを理解しておく必要がある。そして、今回の旧統一教会への対応を契機にして、今後、セクトから国民を守るための対策を考える必要があるだろう。
2、信条ではなく、行為を規制する法律の制定
セクト(旧統一教会)から日本の国民を守るためには、フランスの反セクト法、正式には「人権及び基本的自由の侵害をもたらすセクト的運動の防止及び取締りを強化するための2001年6月12日法律2001-504号」の日本版を制定することだ。大切なことは、この法律は「信条」に関しての規制しているのではなく、「行為」に対する規制していることだ。つまり、個人は何を信じても自由というのが「信条」の自由である。極端な言い方をすれば、「正義のためなら人を殺してもいい」と考えるのは自由だが、本当に人を殺した場合には「殺人罪」として裁かれることになる。
反セクト法では、まず、セクトを識別するための10の基準を定めている。つまり、この10項目の行動が実際に行われた場合に、その団体を反セクト法の対象として国民の「人権及び基本的自由の侵害」したとしてそれらの団体を「セクト的運動」として認定し、その「防止及び取締り」を行うことが出来る。
フランスの反セクト法で定められている「人権及び基本的自由の侵害」行為とは以下の10項目である。
・精神的不安定化
・法外な金銭要求
・元の生活からの意図的な引き離し
・身体の完全性への加害
・児童の加入強要
・何らかの反社会的な言質
・公序への侵害
・多大な司法的闘争
・通常の経済流通経路からの逸脱
・公権力への浸透の企て
2、民主的手法や人道的立場に立った段階を踏まえた法的制度
では、どのようにしてこの反セクト法が適用されるのか。その適用も民主主義の原則を踏まえなければならない
まず、第一段階は
・警察及び監督行政機関は、ある団体が国民から反セクト法違反の告訴を受けた場合、当該団体が反セクト法に定める違反項目(10項目)の中のいずれの項目に該当すると判断された場合、すみやかに、当該団体を告訴しなければならない。
・告訴を受け、裁判所は当該団体が反セクト法に該当するかどうか、被告(当該団体)と原告(告発人)をよび、その事実を審議しなければならない。 ・裁判所によって、当該団体が、反セクト法に違反すると判断された場合、当該団体は、それらの違反事項の内容によって、その損害を補償し、また違反行為を起こさないための改善策を提出しなければならない。
第二段階
・以前、裁判所によって反セクト法に違反したと判断された団体が、裁判所に提出した違反行為防止のための改善策や被害者への保障を実施していないと告訴され、それが裁判によって認められた場合、当該団体に対して改善策や被害者への補償を実施することを強制する判決が裁判所から出される。
第三段階
・当該団体が、上記第二段階での裁判所の判決を違反し、さらに反セクト法に規定された違反行為を繰り返し行う場合、当該団体に与えられている公共的立場(例えば宗教法人、社団法人、企業法人等)の資格を剥奪することが出来る。
・当該団体が、上記第二段階での裁判所の判決を無視し、さらに反社会的行為(反セクト法に違反する)を継続し、かつ被害者を増やしていると判断された場合、当該団体を刑事告訴することが出来る。
3,最も大切なことはそれを決定する民主的手段(過程)があること
反セクト法の対象は宗教団体だけでなく政治団体等にも及ぶ可能性がある。その意味で、反セクト法の在り方は民主主義と人権思想を十分に配慮し、その原則からはみ出てはならない。国民をセクトから守るための規制の必要性と共にそれらの規制を悪用する権力から国民を守らなければならない。そのため、こうした法律に関しては、国会(立法機関)だけでの議論ではなく、第三者委員会(専門家や異なるステイクホルダーの参加による)を設け、また、それらの議論の内容を公開することによって、国民の関心と参加のもとに決定すべきだと思う。
フェイスブック記載 2022年11月18日
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