2011年11月27日日曜日

再生可能エネルギー促進法とその問題点について(5)

持続可能なエネルギー生産社会を目指すために

三石博行


1-5、「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の簡単な解説

目的
「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の第一章総則では、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス(再生可能エネルギー)源の利用を促進し、それによって国民経済が健全に発達することを目的することが謳われている。この同法第一章総則の第一条(目的)と第二条(定義)は「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号)の第一条(目的)と第二条(定義)と殆ど変りない。

固定価格の決定
同法第二章「電気業者による再生可能エネルギー電気の調達等」第三条では 調達価格(再生エネルギー電気1KWhの価格)の決定は経済産業省設置法第18条によって資源エネルギー庁総合政策課が管轄する資源エネルギー調査会の意見を聴き経済産業大臣が行うことになっている。修正案によって資源エネルギー庁に国会の承認を得て経済産業大臣の任命した5人の委員による調達価格等算定委員会を設置し調達価格に関する意見を纏め経済産業大臣に提出することになった。

全再生エネルギー電気の買取義務
また、同法第二章では、電気業者は発電施設から再生可能エネルギー電気を供給する者からの接続請求及び電気の供給に対して契約(特定契約)の締結を原則として拒否することはできないとされている。これによって、今まで電力会社は風力発電所等からの電気購入を拒否してきた。しかし、今後はそれが出来なくなるのである。つまり、経済産業大臣が定める一定の期間・価格で電気業者は再生可能エネルギー電気を買い取る義務が生じた。固定価格買取制度によって社会が再生可能エネルギー発電設備へ投資を行うことを促進するのである。

しかし、同法第二章第五条二項で「当該電気業者による電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがあるとき」電力会社は再生可能エネルギー電気の供給者からの接続を拒否することが出来るとされている。この第二項での「電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれ」という曖昧な条文の表現が、今後電力会社によって適当に解釈され、接続を拒否される理由になる可能性を秘めている。

図表6 再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度



10kW未満

10~500kW

500kW以上

住宅用

余剰買取

全量買取

全量買取

非住宅用

全量買取

全量買取

全量買取

発電用

全量買取

全量買取

全量買取

図表7 太陽光発電以外の買取価格想定 



太陽光発電以外

太陽光発電

住宅用    

左記以外の事業所用、発電事業用等

買取価格

15~20円/kWhの範囲内

当初は高い買取価格を設定。

太陽光発電システムの価格低下に応じて、徐々に低減させる

買取期間

15~20年の範囲内

10年

15~20年の範囲内

引用 経済産業省「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」の概要


国民負担金(サーチャージ)の地域格差の是正
同法第三章「電気業者間の費用負担の調整」では、地域間でサーチャージの負担に不均衡が生じないよう前年度電気事業者が再生可能エネルギーの発電者から買い取った資金を一括でまとめ、その一括分を賦課金(サーチャージ)として電気の需要家から一律価格で回収する費用負担調整機関の「再生可能エネルギー促進付加金(サーチャージ)」回収(電気業者からの納付金)とその分配等を規定している。

費用負担調整機関の役割
同法第四章「費用負担調整機関」では、費用負担調整機関の組織、業務内容、義務と権限等に関する規則が述べられている。

同法の国民への周知と効率的運営
同法第五章「雑則」では、第29条でこの法律の広報活動による国民への周知、第30条では再生可能エネルギー電気の安定的で効率的な供給の確保のための研究開発の推進、第32条では再生可能エネルギー源の利用に伴う環境保全について環境大臣との緊密な連絡と協力を定めている。

費用負担調整機関の違反行為に関する罰則
同法第五章「罰則」では、費用負担調整機の業務違反に関する罰則が規定されている。

「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の特徴を以下に簡単に次の5点に纏めてみた
1、 再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度(FIT法)
2、 全再生可能エネルギー電気の買取義務(電気業者の買取義務)
3、 調達価格等算定委員会による買取価格調達作業の導入(買取価格見直し制度)
4、 再生可能エネルギー促進付加金(太陽光サーチャージ)の導入(国民負担)
5、 費用負担調整機関によるサーチャージの地域格差の是正


解説

1、太陽光発電促進付加金(太陽光サーチャージ)による太陽光発電の剰余電力買取制度によって、月々の電気料金の一部として,買取に要した費用を「太陽光発電促進付加金」とし,電気のご使用量に応じて国民が負担することになる。

引用 中国電気ホームページ http://www.energia.co.jp/taiyo_fukakin/

2、太陽光発電促進付加金単価の算定方法は、太陽光発電促進付加金単価は,買取に要した実績費用に基づき,以下の算定式により年度ごとに算定する。

引用 中国電気ホームページ http://www.energia.co.jp/taiyo_fukakin/

太陽光発電の買取から「太陽光発電促進付加金」によるご負担までの流れを説明すると、まず、1年間の買取に要した実績費用を翌年度の1年間に「太陽光発電促進付加金」とする。(太陽光発電促進付加金単価は年度を通して均一である。)

引用 中国電気ホームページ http://www.energia.co.jp/taiyo_fukakin/

3、費用負担調節機関はサーチャージ(国民の負担金額)の地域間格差をなくするために設けられたものである。固定価格買取制度によって電気業者の経営的負担が生じることを防ぐために設けられたのが「再生可能エネルギー促進付加金(サーチャージ)」である。再生可能エネルギーを導入する設置者の負担を国民が担う「再生可能エネルギー促進付加金(サーチャージ)」を導入した。電気料金にサーチャージを科すことで、再生可能エネルギーを買い取ることによって生じた負担金を消費者(国民)が支払うことになる。そのことによって、再生可能エネルギー電気を国が定め固定価格で買い取る電気事業者は経営的負担を被らないことになる。全量買い取り制度では「特定電気事業者」や「特定規模電気事業者」が再生可能エネルギー電気の供給が出来るようになった。再生可能エネルギーの発電所が、一般家庭以外にPPSや特定電気事業者が加わり、地域によって異なる再生可能エネルギー供給が生じ、全国に10ある電力会社ではサーチャージが異なる事態が発生する。例えば、実際2011年4月に徴収される額を例にとると、最も少ない北海道電力と北陸電力の1銭(0.01円)/KWh(キロワットアワー)と、最も多い九州電力の7銭(0.07円)/KWhでは7倍の開きが生じている。関西電力と東京電力は3銭(0.03円)/KWhのサーチャージ料金が発生する。例えば、サーチャージ料金が0.01円(北陸電力)と0.07円(九州電力)の場合、1ヵ月の電気使用量が300KWhの標準的な住宅の消費電力の場合にひと月約3円から約21円程度の負担となる。それらの地域間の不公平を解決するために「費用負担調整機関」が設立された。この機関の役割は、電気事業者が再生可能エネルギーの発電者から買い取った資金を一括でまとめ、その一括分をサーチャージとして電気の需要家から一律価格で回収した後、全国一律価格にして各電力会社に再配分するというものだ。それによってサーチャージ(負担請求金額)の地域間格差は実質なくなるのである。 (News Release経済産業省平成23年1月26日)


引用、参考資料

1、 経済産業省 資源エネルギー庁「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案について」 NewsRelease平成23年3月11日 資源エネルギー庁
2、 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案要綱」
3、 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(平成十四年法律第六十二号)
4、 「電気業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成23年法律第108号) 第五章 調達価格等算定委員会 
5、 調達価格等算定委員会令
6、 経済産業省 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」の概要、発表資http://www.meti.go.jp/press/20110311003/20110311003.html

つづき

1-6、「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の問題点  
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_3610.html


論文「再生可能エネルギー促進法とその問題点について」のダウンロード
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_03_04/cMITShir11a.pdf


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ブログ文書集

1、ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_3562.html

2、ブログ文書集「東日本大震災の復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/blog-post_23.html

3、ブログ文書集「日本の政治改革への提言」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_9428.html

4、ブログ文書集「21世紀日本社会のための大学教育改革の提案」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/04/blog-post_6795.html

12月8日、誤字修正

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