2016年8月22日月曜日

- 系統連結の課題 : 変動電圧の調整機能を創る課題とは何か (歴史的視点からの理解)-

自然エネルギー社会を目指して(1)


8月6日、PV-Netの中部地方ブロック代表の武田氏、愛知交流会の吉田幸二氏、都筑健PV-Net代表、系統連結の研究をしている大阪大学工学部の野間口氏、私を含め他のメンバーと、名古屋市の郊外で、系統連結の課題に関する調査を行った。

発電所から高圧送電線で送られる3万5千Vの電圧は第一変電所で6600Vに変換され、それが町の送電線に送られる。我々が街で見かける電柱には6600Vの電流とそれから220V(110V)の電流が流れている。それらは、発電所から第一変電所、そして自動変圧器やトランスと、常に、生産地(発電所)から消費地(家庭、企業、公共設備等)に一方的に流れる仕組みが出来上がっている。

電気の流れは、丁度、水の流れをイメージすればいいだろう。例えば、日常目にする田んぼの風景であるが、あれも、稲作が始まり、その生産量を上るために3、4千年掛けて我々の先祖が造り上げた灌漑システムである。高い所から低い所に流れる水の性質を利用し、広大に広がる水田地帯を創り上げるために、すべての田んぼに水を均等に配分する灌漑システムを作り上げたのである。今、自然に田んぼを流れる水も、そうした壮大で機密な設計、土木事業、日常の水路管理の努力によって、流れているのである。

それに比べると送電の歴史は明治初頭から約150年ぐらいしかない。これまで、単純に発電所から消費地へ、一方方向に作られる高低差を前提に、消費量の違いによって生じる電圧の高低変化を、変換器によって、微調整するだけでよかった。

しかし、消費地であった場所に、分散的に生産地が生まれる。これが、地消地産型の電力システムであるのだが、今までの、電気の流れと異なる事態を生むことになる。これが、系統連結問題として語られる課題である。

もし、220Vで調整されている送電線網内に多くの太陽光パネルが電気を生産すると、その生産量が消費量を越えた場合、その地域内での電圧がそこに送電する送電線の電圧よりも上ることになる。
丁度、ある地区の田んぼで湧き水が発生し、今まで、その田んぼに水を供給していた水路の水笠よりも高くなった場合を想定すると良く分かる。もし、排水機能がないなら、その田んぼは水浸しになるだろう。
電気の場合、水よりも大変である。つまり、電流が逆流することになる。その場合、電流の逆流を防ぐか、もしくは、逆流させ、それをより低い電圧地域に流すように工夫しなければならない。

一般に、こうした事態を避けるために、送電網には手動の変圧器がある。しかし、太陽光パネルや風力発電の場合、時間帯によって電圧が変動するため、手動で電気の流れを切り替えることは不可能に近い。そこで、自動変圧がある。それは、インターネットを通じて、逐次、電圧の変動情報が変圧器に送られ、その情報に従って、変圧器が電流の方向を調整する。

現在の自動電圧調整器で、技術的に部分的に電流の流れの方向をコントロールすることが出来る。その意味で、電気の地産地消のために電圧調整の課題は、負荷のではない。しかし、街のすべての電柱に自動電圧調整器を設置するコストを計算しなければならないだろう。
確かに、理屈の上では簡単な話も、現実には、極めて複雑に事態が進行している。我々の調査団は、吉田氏のこれまでの調査をフォローした。第一変電所から吉田氏の自宅までの送電線網を調べ、吉田氏が自宅で測定している野外電圧の測定装置とそこで測定されたデータ、さらには自宅の太陽光発電によって生産されている電気量のデータと売電データ、そして、その間に生じている系統電圧抑制の資料と野間口氏の理論的な研究論文を基にして、調査と議論を行った。

自然エネルギー社会を創るために、生産者が電気を創るというだけでなく、その電気の経済的な流れのシステムを創り出すことが必要だと思った。大昔の稲作文化を創りだそうとした人々が、稲の品種改良(発電効率の高いパネルの開発)、水田土壌の改良(安全なパネルのフレームは土台の開発)、水田の水はけの改良(最小地域内での電圧調整の開発)、灌漑システムの改良(広範囲な地域電圧調整の開発)等々を行ってきた歴史に深く学ぶ必要があると思った。

参考資料

PV-Net 「太陽光発電に係るさまざまな諸問題への提案書」
http://www.greenenergy.jp/pdf/press_release.pdf
吉田幸二著 『太陽光発電の普及・促進の影で』
http://www.greenenergy.jp/pdf/report.pdf
野間口大 その他6名 「分散型エネルギーシステム構築に向けた補助金制度計画と系統整備計画の連係シナリオの立案・評価」

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