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2022年8月8日月曜日

Covid-19パンデミックとウクライナ侵攻

二つの災害要因としてのグローバリゼーション 


三石博行


1、21世紀型の二つの災害

Covid-19パンデミックが起こった時、私はこの感染症災害は21世紀の社会の在り方を問いかける課題だと思った。そしてロシアのウクライナ侵攻が起こった時、こんな戦争 (他国を武力で侵略し領土を奪い取る帝国主義の植民地戦争)がこの21世紀に起こるのかと思った。しかし、良く考えると、核攻撃を辞さない侵略戦争とそれに怯えるNATO (ウクライナへの軍事支援をしながらも)の軍事的スタンス、情報戦、電子戦、ドボット兵器 (ドローン)、宇宙空間からの監視や軍事情報等々、この戦争はまさに20世紀型でない新しい戦争(21世紀型の)の姿をしていた。

また、Covid-19パンデミックはコロナウイルス(RNAウイルス)を病原体とし人々の基本的な生活経済活動、つまり人と人との接触(コミュニケーション)によって感染拡大する、自然要因と人工要因のハイブリッド型災害であり、21世紀社会経済がグローバリゼーション(世界規模の経済文化コミュニケーション拡大)によって進展している現状に最も関係・関連した災害である。

さらに、ロシアのウクライナ侵攻つまり戦争は、戦禍に苦しむ人々の立場から観れば、国家が起こす災害(軍事的外交政策という人工要因による)と解釈できる。つまり、広義の災害概念に戦争を入れることが可能だ。

二つの災害の共通項 グローバリゼーション


また、ロシアがウクライナ侵攻(軍事的外交政策)に踏み切った理由の一つに、ロシアの果たす国際経済上の立場がある。ロシアは小麦の輸出量は2019年では世界第一、2021年では世界第二である。また、原油生産量ランキング(OECD版)ではロシアは世界第一(原油輸出量は世界第二)であり、天然ガス(埋蔵量世界第一)輸出量では世界第一(2013年)である。

EUは全エネルギーの約40%をロシアの石油や天然ガスに依存している。この現実から、ロシア・プーチン政権はEUの経済的弱点を突くことが出来た。つまり、21世紀の社会文化はグローバリゼーションによって発展し続けている。経済グローバリゼーションの中で、ロシアはEUに対してエネルギー供給国の役割を果たしてきた。EUはロシアから石油や天然ガスをより安く購入するためのパイプラインをロシアと共に建設してきた。

EUの経済基盤としてロシアからの石油は天然ガスは不可欠な要素になっていた。言い換えると、ロシアはEU経済の土台を支えていた。もし、この土台が崩れるなら、EUの経済は成り立ったないことを理解していた。それは、ロシアがウクライナ侵攻をしても、EUが真正面から対立しないだろうという解釈を与える理由になり得た。そして、実際、ロシアは2022年7月になってドイツへの天然ガスの輸出を中止した。

21世紀の社会経済はグローバリゼーションによって発展すると信じていた我々は、Covid-19パンデミックによって、これまで構築してきた国際的生産拠点の分業化・サプライチェーンが新型コロナウイルスによって脆くも崩壊してしまったのを目の当たりし、また、ロシアは経済グローバリゼーションの流れの中で構築し続けて来たEUへのエネルギー供給者の立場を逆手に取って自国の軍事的外交政策 (ウクライナ侵攻)の手段にした。

つまり、Covid-19パンデミックは市場経済主義(新自由主義経済)によって発展してきた国際経済関係の弱点を私たちに知らしめた。ポストパンデミックで問われる課題として現在のグローバリゼーションの在り方が問われるだろう。また、ウクライナ侵攻はグローバリゼーションによって構築された経済関係を逆手に取って戦争の道具にされることを示した。

3、市民参画型ローカリゼーションとしてのポスト新自由主義的グローバリゼーションとは


当然のことだが、Covid-19パンデミックが終焉し、またロシアのウクライナ侵攻に対して国際的な和平が成立した後に、これまでの世界・国内経済を推進してきたグローバリゼーションの在り方が問われるだろう。例えば、これまでの安全保障の在り方が抜本的に再検討されるだろう。

例えば、安全保障の需要課題は軍事だけではない。つまり社会、文化、経済、エネルギー、防疫、医療、食糧、人口構成、社会政策、福祉、先端科学技術や教育等を含む総合的安全保障の概念が求められるだろう。それらの安全保障の概念は国家や社会(市民社会)の安全学(防災学)と関係して検討、発展、展開されるのではないかと思う。

これまでの経済文化の発展の原動力であった新自由主義的グローバリゼーションの何に問題があり、どのように変革すべきなのか。今後問われる課題の一つとして、グローバリゼーションとローカリゼーションの両立がある。どのような経済思想や政策をグローバリゼーションの前につけることによって、グローバリゼーションとローカリゼーションの両立、つまり、豊かな市民社会、民主主義社会と経済や文化のグローバリゼーションが調和するのか。その課題が具体的な地域社会の文化経済の発展をテーマにした社会実験(市民参画型ローカリゼーション)の中で試されるのではないだろうか。

参考資料


1,OADA「小麦の消費・輸出・在庫動向のデータを世界の主要な国・地域別に解説」/a>

2,
世界ランキング 国際統計格付センター 「ロシアの基本情報」/a>

3,
【ESGコラム】ロシア依存からの脱却が再生可能エネルギーに与える影響/a>

4,
「脱ロシア」がそう簡単には進まない理由/a>

5,施 光恒「理想的なポスト・グローバル化によって、国家と個人を幸せな時代へ向かわせる」
(1)
(2)
(3)

6,施 光恒 「ポストグローバル化に向かう世界とナショナリズムの意義」/a> 

facebook 記載 2021年7月16日

2019年9月11日水曜日

米中貿易戦争という21世紀国際社会での政治経済覇権闘争の構図

21世紀の国際社会構図形成の前哨段階としての米中経済戦争


三石博行


米中貿易戦争の彼方に何が見えてきたのか

米中二国間貿易収支の差、米国の対中貿易赤字をめぐって米中貿易戦争が起こったと理解した。しかし、この米中貿易戦争が示す課題は、大きく変貌し、その本題を露呈しつつある。つまり、それは、21世紀の世界、高度科学技術文明社会、国際化する経済や社会の在り方の課題である。

問題は、はじめ、トランプ米国大統領が主張した貿易収支の是正をめぐる課題から始まった。米国は、中国政府や企業が行っている海外提携企業への技術移転や公開制度の課題へと転化し、不平等な競走条件を指摘した。そして現在、米国の攻撃は中国の先端企業の国際化、取り分け中国のハイテク企業が展開しているIT国際インフラ事業・ITプラットフォームの中国化に向かっている。つまり、米国は、21世紀社会の脅威として中国を捉え、その対応・阻止へと問題を展開しているのである。言い換えると、これが米国の対中貿易戦争の本題であった。


新自由主義に基づく金融資本主義経済と国家統制経済主義による国家資本主義経済の二つの資本主義の対立

そこで、米中貿易戦争とは、高度科学技術文明社会・21世紀国際社会での二つの資本主義国家間の政治経済覇権闘争であることを明確に構図化しつつある。その特徴を以下、4点にまとめて挙げてみる。

一つ目は、この貿易摩擦の歴史的構図である。G7を代表する先進国は新自由主義に基づく金融資本主義経済を基本路線としている。しかし、新興国家、発展途上国や後進国では迅速な経済成長を実現する国家統制経済主義による国家資本主義経済を基本路線としている。つまり、米中貿易戦争・米中経済戦争とは、先進国型金融資本主義経済国家群と発展途上国型国家資本主義国家群の経済戦争の前哨段階を意味する。

二つ目は、この貿易摩擦を構造化している非妥協的な要素についてだある。つまり、米中の貿易戦争では、両国間に異なる自由貿易主義の解釈が存在している。中国の主張する自由貿易とは関税の撤廃である。しかし、米国のそれは特許権の保護や国家の企業経営への介入をめぐる課題、つまり中国の国営企業と欧米の民間企業の不平等な関係を指摘する課題である。欧米日企業からすると中国企業は国家によって過大にサポートされており、両者間には平等な競争条件が初めから存在しないという指摘である。その意味で、平等な経営条件を持たない両国の企業間には平等な競争関係が成立していないという考え方である。

三番目は、この二つの資本主義国家の経済構造が世界的な視点で観るなとどう評価されるか、もしくは二つを代表する勢力についての分析である。つまり、それらの二つの国々の間には異なる経済保護主義が存在している。新自由主義・金融資本主義経済国家群では、そこに所属し拠点を置く多国籍企業や国際企業がある。それらの企業は中小国家一国を超える財政力を持ち、またその所属国家にも必ずしも正当な納税義務も果たしていないのが現実である。しかし、それらの企業を擁護するためにG7を代表する先進国家連合では関税撤廃、自由貿易主義を主張してきた。他方、G20を構成する新興国群では、より安価な労働力や国家資本主義経済によって国際競争力をつけてきた。これらの国々、中国を代表とする国家資本主義経済国家群では関税によって貿易収支の赤字を防ぎながら、一方においては自由貿易によって国際収支の黒字を導いている。保護貿易主義や経済保護主義の立場から観れば、両方の国家群で、それぞれの段階によって、異なる貿易や国際経済政策が取られている。

最後にこの貿易戦争が向かう方向について述べる。20世紀型の国際経済覇権国家・米国の立場は、主に以下の3つ特徴をもっている。つまり、第1番目は、第2世界戦争後、そして東西冷戦終結後の国際的に唯一強大な軍事力を持つ国家として君臨してきた。第2番目は自国の通貨ドルを準国際通貨として世界金融資本システムを構築してきた。第3番目は、インターネットに代表される国際情報インフラを支配し、そのインフラに基づく、IT産業、ITプラットフォーム企業を独占してきた。この三つの要因によって、国際政治と経済の覇権を続けてきた。


新二つの資本主義国家群の国際的対立と日本・東アジア

しかし、21世紀になり、中国が新たな経済システム・国家資本主義経済体制を確立し躍進してきたことによって、米国一強時代は終焉を迎えようとしている。同時に、この米国の状況がトランプ政権に代表される「アメリカ第一主義・米国一強主義を維持するための経済政策」を展開している。それは、20世紀型の国際社会での米国一強主義ではなく、米国の国内経済中心主義による相対的な米国の経済強国や軍事強国への転換である。

米国は、これから何を優先しながら、外交を行うか、そのことが問われるだろう。21世紀の国際社会で進む新興国家や発展途上国の経済政策、国家資本主義経済国家の戦略に対して、どのような外交と内政を行うだろうか。また同時にそのことは、国家資本主義経済政策の産みの親であった日本、その政治経済政策によって導かれた近代日本の正と負の歴史、それを踏まえて出発した戦後民主国家日本の歴史、ポスト国家資本主義経済から新自由主義経済への変換を行った現在の日本の政治経済政策も同時に問われるだろう。

米中貿易戦争と日韓問題、そして香港や台湾での市民運動の本質を理解しなければならないだろう。つまり、東アジアでの政治経済強国中国の形成や先進国家としての韓国の台頭が今後の日本経済や社会に及ぼす影響と、日本の在り方を考えなければならないだろう。つまり、現在の日韓問題を考える時、米中貿易戦争の基本的な課題を前提にした考察が必要となるだろう。その意味で、日本や韓国の両方に側にも、そうして視点で問題を考え、また日韓関係を現実的な視点に立って解決し、中長期的視点に立って両国の関係を模索する意見は少ないように思える。

2019年9月11日 ファイスブック記載 


つづく