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2018年5月14日月曜日

『事業用太陽光発電施設等に対する地方自治体の条例等の制改訂状況の調査報告』完成


『事業用太陽光発電施設等に対する地方自治体の条例等の制改訂状況の調査報告』(吉田幸二  PV-Net調査研究室主任研究員)が2017年9月に完成し、さらに、2018年5月改定した報告書がPV-NetのWebサイトで公開されています。

電力比較サイト「エネチェンジ」でも紹介されています『事業用太陽光発電施設等に対する地方自治体の条例等の制改訂状況の調査報告』はPV-Net・吉田幸二 (PV-Net調査研究室 主任研究員 理事)が2016年2月から全国、地方自治体のPV条例を調査し、2017年9月にまとめられたものです。

この報告書はさらに今年5月までに新たに調査されたデータが追加され、報告書2017年5月版の改定がPV-Netのサイトで公開されています。さらに、調査データと共に吉田幸二理事主任研究員の専門的なコメントも掲載されています。この報告書は地方自治体の自然エネルギー社会への取り組みや政策等の調査研究を行う自治体や大学、シンクタンク等の専門家にとって極めて貴重なものであると評価されています。


レポートは以下のサイトから公開されています。

PV-Net(公認NPO太陽光発電所ネットワーク)Webサイト
http://www.greenenergy.jp/activity/database


「事業用太陽光発電施設等に対する地方自治体の条例等の制改訂状況の調査報告」
NPO 法人 太陽光発電所ネットワーク 調査研究室 主任研究員 吉田幸二
初稿 2017/02/12 最終稿 2018/05/06
http://www.greenenergy.jp/wordpress/wp-content/uploads/PV_localregulation_20180506.pdf


2017年1月5日木曜日

自然エネルギー社会を理解するために(1)

第四次産業構造から観る自然エネルギー産業形態と設計科学の必要性

三石博行


自然エネルギー産業は最も産業構造では、その土台を担う基本産業、つまり一次産業・エネルギー産業である。しかし、この産業は、科学技術文明社会によてt成立した新しい形態の一次産業であるといえる。この産業構造を理解するために、産業史の視点から分析する。

☆ ☆ ☆ ☆

これまで産業の種類を大きく三つの分類していた。資源を生産する一次産業、それらを加工する二次産業、そして加工された生産物を消費者により良く届け普及する三次産業である。こうした分類は、19世紀から20世紀前半までの工業社会を中心にして生まれた産業社会の概念であった。
科学技術が進歩し、ポスト工業社会が模索された20世紀後半の先進国では、第三次産業が産業構造の中で次第に大きな割合を占め始めた。そのことは、衣食住や生活手段・道具を質的向上、例えば家電等々、豊かな住宅環境、教育投資、教育環境充実を意味する二次生活資源、豊かな生活を求める生活行為によって生み出される生活素材や生活様式が充実し、その上で、人々は余暇や娯楽を楽しむ生活スタイルを形成して行ったことを意味する。

つまり、第三次産業とは人々の欲望を満たすためのサービスを提供する産業である。つまり、この第三次産業は、人々の欲望を満たすための生活行為によって生み出される生活素材や生活様式、言い換えると三次生活資源を生産、消費、再生産する産業構造を意味すると言える。

科学的知識が直接産業活動に関係し始めたのは技術という知識、つまり工業生産を支えた工学技術がある。代表的なものとして、電気工学(電磁気学の工学的応用)、機械工学(物理学全体の工学的応用)、化学工学(化学および物理学の工学的応用)、建築土木工学、、近代的農業生産を研究する農学、医学や薬学である。物理学や化学の成立、それらを土台とした自然科学的知識が産業活動に必要不可欠なものとなった。つまり、科学技術が社会構造の基本的知の核となり、その知的空間と理念によってすべての人間活動や社会機能が形成され始めた。この社会形態を科学技術文明社会と呼んだ。

科学技術文明社会では、人間の社会的行為は科学という行為を含ないで成立しえないことになる。上記した一次産業も科学技術的な行為を含み、その生産様式の合理化や効率化、また生産物の改良が行われる。

科学的行為の代表である研究や開発という人間行為によって成立する研究開発産業が生まれ、それらがこれまでの一次産業、二次産業と三次産業に結合関連して成長展開する。シンクタンクや研究所という研究開発を行う新しい産業が形成される。これを四次産業と呼ぶことにした。

☆ ☆ ☆ ☆

研究開発という人間的行為は、豊かな生活を求める人間行為、つまり二次生活資源を生み出す生活行為が前提に含まれている。しかし、そればかりではない。知的欲望を満たそうとする行為、つまり三次生活資源を生み出す生活行為がなければ成立しない。つまり、研究開発の行為は、主観的には知的欲望を満たすために行われる探究心と呼ばれる欲望を土台にし、それらの欲望から生まれる行為が、豊かな生活を目指すか、もしくは豊かな生活を破壊することになるかは、明らかにされない行為であるとも言える。

科学を「人間の業(ごう)」だと説明した梅竿忠男の科学に関する理解は深い。アイシュタインの質量とエネルギーに関係式は、原子爆弾にもなるし、その知識を平和的に応用しようというので原子力発電技術が開発された。いずれにしても、この人類が見つけ出した宇宙の法則、太陽エネルギーの正体は、人類を破滅に導くものになろうとしているのである。

科学技術の知識を追い求めることは、自然世界の究極の支配力を得ようとすることである。自然科学的知識のみでなく、人間社会と呼ばれる世界の規則・様式(機能)やその構造(社会や生活資源を構成する素材の構成)を理解し、かつその改良を企てる人間社会科学的知識も、同じように、人間社会的世界の究極の支配を試みているのである。

その意味で、20世紀後半から21世紀に掛けて、あらゆる産業活動、社会活動、そして生活活動(個人的行為を含む)は自然科学および人間社会科学とその応用科学(技術や政策)、総じて科学技術と結合関連して成立発展しているのである。現代の社会・生活資源を生産する一次産業は必然的に四次産業(研究開発産業)と結合関連しながら発展することになる。

☆ ☆ ☆ ☆

その代表的な事例として自然エネルギー産業がある。これまでエネルギー生産は一次産業に所属していた。それらのエネルギー資源はおもに自然界に埋蔵、もしくは自然物として存在していた。河川の流れ、石炭、石油、天然ガス、地熱、太陽熱、光合成で生産される植物資源、つまり森林や農作物、さらには生態環境や食物連鎖によってによって生産される動物、家畜資源、これらの資源は自然によって生産あれた素材やエネルギーと呼ばれるものである。これらのエネルギーや素材資源の生産が一次産業によって担われていた。

たとえば、太陽光発電も太陽光という自然エネルギーから電気を生産する訳でなので、一次産業である。しかし、太陽光を直接電気に変換する科学的知識とその生産を可能にした工学的技術によって成立する一次産業である。言い換えると、研究開発産業、四次産業を前提にして成立している一次産業である。

そのことは、現代の自然エネルギー生産産業を理解しる上で、極めて大切な視点を持ち込んでくる。それは単に、科学技術の恩恵によって成立している一次産業としての太陽光発電産業の理解ばかりでなく、人間の業としての科学を背景にして成立するエネルギー生産活動であることの自覚的理解である。

そのため、自然エネルギー生産活動には、必然的に科学主義と呼ばれる思想が入り込み、研究開発によって夢のような自然エネルギー生産が可能になるという「楽観主義」が自然発生する。この考え方は、将来あるべき現実的な自然エネルギー産業のあり方は進化の方向を誤らせる要因となる。つまり、これまでの工業生産型エネルギー産業のモデルがそのまま適用されてしまう。

工業生産型エネルギー産業とは、無限と思われた豊富で、しかも安易に採掘できた鉱物資源、化石燃料資源等を前提にして、巨大設備での大量生産型の産業形態を意味している。この発想によって、より集中的に生産性を高め、生産量を増やすという生産様式が自然エネルギー生産に持ち込まれる。その典型がメガソーラー、巨大風力発電、超大型水力発電である。そして極限の形態が、巨大な人工衛星の太陽光発電を行うための宇宙太陽光発電所となる。

これらの集中型生産様式は、これまでの一つの生産拠点で大量生産を行うことが工業生産性の効率を上げると考えられてきた工業社会の発想である。その視点から考えると、エネルギー変換率が20パーセントの太陽光発電パネルも、効率のいいいエネルギー生産ではないと思われるだろう。そうして、より効率の高い発電所を模索するだろう。

問題は、自然エネルギーを活用したエネルギー生産産業は、これまでの大型火力発電や大型水力発電、そして原子力発電所のような、生産(大型で集中型生産)は負荷のである。勿論、砂漠地帯では巨大な敷地面積を必要とするメガソーラーや、場合によっては大型風力発電所も可能かもしれない。しかし、私たちの日本では、山林を切り開く、また農地を覆い作るメガソーラーは環境破壊の要因となることは避けられない。

☆ ☆ ☆ ☆

もちろん、日本では、場所によってはメガソーラーも可能であるが、家の屋根や土手や荒地を活用した小規模の太陽発電所や風力発電所が最も適した自然エネルギー生産のスタイルとなるだろう。そうだとすると、中小型自然エネルギー生産の技術開発に取り組むと同時に、その生産様式を検討しなければならないだろおう。その意味で、市民共同自然エネルギー生産活動が適していると思われる。

言い方を変えると、省エネルギーを前提にして、将来の自然エネルギー生産社会を企画し創造する以外に道はないのである。地産地消型の産業の形が自然エネルギー産業の未来のモデルとして最も適した、必然的な形態であると言うことの意味は、この社会を形成するためには、科学技術や生産様式の問題だけでなく、ライフスタイル、地域社会の在り方、他の農業をはじめとする産業構造の在り方を含めて、未来の生活空間、社会空間、生態環境空間や国際社会との関係を含めた、すべての社会生活空間の設計企画と不可分であると言える。

そして、この設計思想、デザイン科学(設計科学)が同時に、再生可能資源・エネルギー社会の形成、自然エネルギー生産産業の在り方に問われいることを忘れてはならないのである。



PV-Net 形成までの時代的及び社会的背景 1

「日本の Prosumer 運動としての再生可能エネルギー生産運動の形成とその 課題 -PV-Net の事例からー 」(1) 

 2015年11月14日 第6回政治社会学会研究大会 「エネルギーセッション」 (広島大学) 

三石博行 




はじめに 

この論文は、生産消費者運動を前提にして成立している自然エネルギーを活用し電気を作る市民運 動(以下、自然エネルギー市民運動)や太陽光発電設備を自宅に設置した市民(以下、PV オーナ、 PV パイオニア)の成立に関する社会的背景やそれらの主体的条件の形成について述べたものである。

自然エネルギー市民運動が形成される時代的背景を、1960 年代の工業化社会の過程で起った公害問 題に遡って述べる。また、1960 年代に公害と呼ばれた地域的環境破壊が、1980 年代に大気汚染、 酸性雨という国境を越えた環境問題になり、そして地球温暖化や気象変動と呼ばれる国際環境問題 に広がる中で、それに対する市民や国、そして世界の取組に関して触れながら、自然エネルギー市 民運動が形成された歴史的経過について述べる。

エネルギーの消費者であり且つ生産者でもある自然エネルギー市民運動は、今までの消費者運動と は異なる課題を抱えた。その課題を解決するために、1990 年代の市民運動が模索し、そして確立し た運動主体の条件、取り分け、1970 年代の自主管理労働運動からの影響に関して触れる。この課題 は、今後のエネルギー市民運動の在り方や方向性に対して、貴重な提言を与えている。

今回の論文では、1990 年代から始まったエネルギー市民運動、取り分け著者が参加している NPO 太陽光発電所ネットワークが形成される背景と「太陽光発電設置者連絡会」(仮称)準備会までのそ の過程に焦点を絞り、自然エネルギー社会の条件である生産消費者運動の条件に関して述べる。


1、深刻化する環境問題、地球温暖化とその対策 


1-1、地域から地球的規模へ拡大した環境問題 

我国では、1960 年代の経済高度成長期に環境破壊が多く起こった。水銀汚染による水俣病、カドニ ューム汚染によるイタイイタイ病、大気汚染による四日市ぜんそくはその代表的な事例である(1)。 こうした経験が環境問題に対する日本人の意識を変えたとも言える。しかし、産業活動のみならず 現代的な生活文化によって環境破壊はより広範に広がった(2)。例えば、ヨーロッパ全体に広がった 大気汚染や酸性雨、その山林や淡水湖への被害が 1970 年後半から 1980 年代に掛けて報告されてい る(3)。 

産業活動や生活文化から引き起こされた大気汚染は、四日市ゼンソクのように市町村単位の狭い範 囲から、ヨーロッパの酸性雨のように国境を越えて近隣諸国広域の範囲に影響を与えるものへと拡 大した。そして、最終的には地球全体へ影響を引き起こす人工化学物質フロンガスによるオゾン層 破壊や二酸化炭素等の温暖化ガスによる地球温暖化や気象や気候変動を引き起こしている。 

炭酸ガスの大気中濃度の変動を例に取ると、1800 年までの大気中の二酸化炭素量は約 280ppm であ ったが、1800 年以後、増加傾向にあり、1900 年になって 368ppm まで増加し続け、近年その増加傾 向は急激となり、2006 年には 381ppm に達し(4)、2013 年には 396.0ppm に達したと WMO が報告し ている(5)。大気中の二酸化炭素量の増加と地球温暖化が相関している事実から、それらの温暖化物 質によって地球温暖化が生じているという主張がなされてきた。 

地球の平均気温は 1961 年から 1990 年を基準にすると、BC1000 年から BC1900 年まで殆ど変化なく、 その基準値から約 0.4 度から 0.2 度低い値を示している。しかし、1906 年から平均気温は上昇しは じめ 2006 年には基準値から約 0.4 度を超えた(6)。つまり、1000 年間の間に約 0.8 度の平均気温の上 昇が起こったことになる。しかも、その上昇は約 100 年間、つまり 1906 年から急激に生じている (7)。この事実から、今後の地球温暖化の予測がなされている。温暖化によって、生態系の受ける影 響や気象変動による自然災害等の影響が危惧されている。 



(1)  宇井純 『公害原論』 亜紀書房、1971 年
( 2)  大気環境の情報館 in 「独立行政法人 環境再生保全機構」 https://www.erca.go.jp/yobou/taiki/kangaeru/history/01.html 
(3)  「世界の酸性雨の現状 (01-08-01-22) 」in 「一般財団法人高度情報科学技術研究機構」 http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=01-08-01-22 
(4 )  気象庁 気候変動監視レポート 2001 WMO 温室ガス年報第 3 号(2007 年 11 月) http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0220a/contents/f_01_07.html
( 5)  Global annual mean mole fractions (2013.7.17) http://ds.data.jma.go.jp/gmd/wdcgg/pub/global/globalmean.html http://www.wmo.int/pages/about/index_en.html
( 6)  IPCC 第4次評価報告書 http://www.env.go.jp/press/files/jp/9125.pdf http://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th_rep.html 
(7 )  「地球の平均気温推移」in 「地球の大気と温暖化」 http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0220a/contents/f_01_08.html 

1-2、地球温暖化に対する国際社会の対応 


1988 年 6 月、NASA ゴダード宇宙センターのハンセン博士はアメリカ上院公聴会で「最近の異常気 象、とりわけ暑い気象が地球温暖化と関係していることは 99%の確率で正しい」と発言した。その 日はワシントンで記録的な猛暑日であった。マスコミがこの発ハンセン博士の発言を取り上げ、ワ シントンの猛暑は「地球温暖化による」と報道した。これを契機として地球温暖化説が一般にも広 まり始めたと言われている。

その後、科学者から地球温暖化が生じると、海水が膨張すると指摘され、また、氷山が溶け出すこ とによる海面上昇の予想が発表された。1988 年 11 月に、世界気象機関(WMO)と国連環境計画 (UNEP)によって「気候変動に関する政府間パネル Intergovernmental Panel on Climate Change IPCC」(8)が設立され、ジュネーブで「IPCC 第 1 回総会」が開かれた(9)。その報告が第 1 次評価報告 書(First Assessment Report )として 1990 年に発表された(10)。同報告書は、「人為起源の温室効果ガスがこのまま大気中に排出され続ければ、生態系や人類に重大な影響をおよぼす気候変化が生じる おそれがある」と警告を発した。

国連では地球規模の温暖化と気象変動に対して、「環境と開発に関する国際連合会議:United Nations Conference on Environment and Development、UNCED」が呼びかけられ、1992 年、国際連合 の主催でブラジルのリオ・デ・ジャネイロで第 1 回目の UNCED の会議が開催された(11)。

国際的な温暖化対策の実現を目指し、IPCC は、地球温暖化問題に対する国際的な枠組みを設定した 条約「国際気候変動に関する国際連合枠組条約 United Nations Framework Convention on Climate Change、UNFCCC、FCCC)」を 1993 年に成立させた。そして、1994 年 3 月 21 日からこの条約が施 行された(12)。さらに、この条約に基づき、1995 年から締約国会議 (Conference of the Parties、COP)が 毎年開催されることになった。


(8)  Intergovernmental Panel on Climate Change IPCC http://www.ipcc.ch/
(9)  気象庁 HP http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/
(10)  環境省 地球温暖化対策 HP http://www.env.go.jp/earth/ondanka/ipccinfo/IPCCgaiyo/report/IPCChyoukahoukokusho1.html
(11)  United Nations Conference on Environment and Development (UNCED) http://www.unep.org/Documents.multilingual/Default.asp?DocumentID=55&ArticleID=274&l=en
(12)  United Nations Framework Convention on Climate Change (UNFCCC)  http://unfccc.int/2860.php http://newsroom.unfccc.int/ 


1-3、京都議定書と日本政府の取り組み、エネルギー政策の中での地球温暖化対策 


第3回目締約国会議 Conference of the Parties (COP)、1997 年 12 月 16 日に京都で COP3 が開催された。 議定書の効力発生を 2005 年 2 月 16 日に定めた京都議定書が締結した(13)。我国は、2008 年から 2012 年までの期間中に、温室効果ガス 6 種の合計排出量を 1990 年に比べて 6%削減することを約 束した(14)。つまり、日本政府は、京都議定書で国際社会と約束した 6%の温室効果ガス排出量の削 減を実現しなければならない立場に立たされた。

地球温暖化対策への国際的関心の広がりの中、1997 年 12 月 16 日の京都議定書を提案した COP3 の 主催国として、日本政府は積極的に地球温暖化対策に取り組むことになった。同年 12 月 19 日に地 球温暖化対策推進本部(15)の設置を閣議決定し、1998 年 10 月 9 日に「地球温暖化対策の推進に関す る法律」が公布され、「(1)京都議定書目標達成計画を策定する、(2)社会経済活動その他の活動によ る温室効果ガスの排出の抑制等を促進するための措置を講ずる、等により、地球温暖化対策の推進 を図る」ことが法律に明記された(16)。

「地球温暖化対策の推進に関する法律」を施行するにあたり、同年 6 月 19 日、地球温暖化対策推 進本部は「地球温暖化対策推進大綱」を作成した。翌年、1999 年 4 月 7 日に「 地球温暖化対策の 推進に関する法律施行令」(17)が定められ、そして施行され、「地球温暖化対策の推進に関する法律」 が動きだした。

政府・地球温暖化対策推進本部と環境省は、「地球温暖化対策推進法の提案の背景・地球温暖化対 策推進法の構造等」の中で、京都議定書で国際公約した。①6%削減目標を達成するための今後の対策、②温室効果ガスの全てを対象にした取組を促進、③国民に開かれた形での計画的な取組を広く 促進、④地方公共団体の責任と役割、⑤啓発・広報、相談、推進員の研修、調査研究、製品情報提 供等を行うための国、都道府県の地球温暖化防止活動推進センターの設定を挙げた(18)。

「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づき、地球温暖化、環境問題についての情報サイト 「地球温暖化対策推進法/EICネット環境用語集」一般財団法人環境情報センター(19)、国際機関、 開発途上地域に対する環境協力を推進する環境省地球環境局の設定(20)、さらに、地方自治体の地球 温暖化防止関する「啓発・広報活動」「活動支援」「照会・相談活動」「調査・研究活動」「情報 提供活動」などを推進する全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA:Japan Center for Climate Change Action)(21)が設置された。

1990 年 10 月に政府は「地球温暖化防止行動計画」を立て、2000 年までに1人あたりの二酸化炭素 排出量を 1990 年レベルで安定化させる目標を立てた。1993 年に新エネルギー、省エネルギー、及 び地球環境技術の3分野の技術開発を推進するためニューサンシャイン計画(エネルギー環境領域 国際技術開発推進計画)をスタートさせ、太陽光、風力、燃料電池、等の技術開発を進めた(22)。

また、1993 年 3 月に、「エネルギー需給構造高度化法」「省エネ、リサイクル支援法」を成立させ た。更に、温室効果ガスを排出しないクリーンエネルギーとして原子力エネルギーを位置づけ、原 子力エネルギーの活用を推進した。つまり、政府の地球温暖化対策は、政府がこれまで、エネルギ ー安全保障政策の一貫として進められてきた原子力エネルギー活用と自然エネルギー普及が矛盾す ることなく繋がっていた。

そして、1994 年 6 月、総合エネルギー調査会は、これまでのエネルギー政策「長期エネルギー需給 見通し」の改定を行ない、京都議定書の温室効果ガス削減目標を前提にした「地球温暖化防止行動 計画」との整合性を取った。しかし、「長期エネルギー需給見通し」の中では、太陽、風力といっ た新エネルギーの供給量は、2000 年には1次エネルギーの2%、2010 年には3%程度の導入を見 込んでいるに過ぎなかった。

しかも、経済成長を前提にした政策によって見込まれる一次エネルギー総供給量の増加を前提にし ながら、「地球温暖化防止行動計画」を実行することは、化石燃料の消費を最大限抑制したとして も無理があり、その分、原子力に依存しなければならなくなった。つまり、1995 年の原子炉 47 基、 設備出力容量約 4000 万 Kwh を 2010 年には 7250 万 Kwh にまで拡大しなければならなかった。

2011 年 3 月 11 日の東電福島第一原発事故を予測できなかった当時の判断は、明らかに原発依存の 「長期エネルギー需給見通し」の誤りであり、自然エネルギーの活用へエネルギー政策を変換出来 なかった政府に責任があると言える。

「このように日本のエネルギー政策の変遷をみてみると、一貫して「経済成長維持」 を前提とし、 そこから見込まれるエネルギーを安定的に確保することを、最重要の命題としてきたことが分かる。 通産省の資料の中でも、今後のエネルギー政策に対する要請として、まず、「エネルギー需給の安 定」が挙げられ、次に「エネルギーの効率的供給、市場原理の重視」「地球環境問題への対応」と なっている。(資源エネルギー庁 強靭かつしなやかなエネルギービジョン)しかしながら今後は、 「二酸化炭素排出量の少ない産業への転換」等も含め、経済 成長のありかたから、根本的にエネル ギー政策そのもののありかたを検討していく事 の重要性も指摘されよう。」(23)

つまり、「日本のエネルギー政策は、通産省資源エネルギー庁の諮問機関が立案しており、行政組 織の特徴から見れば「産業政策従属型」となっている。しかしながらデンマークなどは、環境省が エネルギー政策を立案する、「環境政策従属型」であることが指摘される。今後わが国のエネルギ ー政策が、産業政策従属型の「エネルギー安定供給政策」か らの脱却をはかるには、行政組織の改 革なども同時に検討することが必要であろう。」(24)と藤沢裕美氏は述べている。



(13)  UNITED NATIONS「KYOTO PROTOCOL TO THE UNITED NATIONS FRAMEWORK CONVENTION ON CLIMATE CHANGE」 ⒛p, 1998  http://unfccc.int/resource/docs/convkp/kpeng.pdf
(14)  環境省 HP、気球環境・国際環境協力 地球温暖化対策 「気候変動枠組条約・京都議定書と国際交渉」 http://www.env.go.jp/earth/ondanka/cop.html
(15)  地球温暖化対策推進本部 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ondanka/
(16) 「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成十年十月九日法律第百十七号)
(17) 「地球温暖化対策の推進に関する法律施行令」 (平成十一年四月七日政令第百四十三号)
(18)  環境省「地球温暖化対策推進法の5つのポイント」http://www.env.go.jp/earth/ondanka/ondanref.pdf
(19)  EIC ネット 地球温暖化、環境問題についての情報サイト http://www.eic.or.jp/
(20) 環境省地球環境局 http://www.env.go.jp/earth/index.html#ondanka
(21) 地球温暖化防止活動推進センター http://www.jccca.org/
(22) 三石博行 「太陽光発電の将来性と問題点-再生可能エネルギー社会を実現するための課題-」45p、第 11 回縮小社会研究会 講演配布資料 京都大学 2012 年 9 月 30 日  http://shukusho.org/data/11-2.pdf
(23)  藤沢裕美 「日本のエネルギー政策の現状 その1」http://www.mskj.or.jp/report/276.html
(24)  藤沢裕美 「日本のエネルギー政策の現状 その1」http://www.mskj.or.jp/report/276.html


2、環境、エネルギー問題に取り組む市民運動 


2-1、高まる環境意識と国際環境市民運動 


1960 年代に入り、我国では、水俣病、イタイイタイ病や四日市ゼンソクに代表される公害病が、急 速に工業社会化する日本で蔓延した。そして、公害に対する市民・住民運動が 1960 年代から起こ り、環境問題に関する市民の意識は高まった。政府は 1967 年 8 月に公害対策基本法( 昭和 42 年 8 月 3 日法律第 132 号を公布し(25)、公害対策に乗り出した。多くの環境問題に取り組む市民運動や市 民活動が行われた。と同時に、そして、地方自治体も環境保護条例や環境保全条例を制定し、環境 保護に乗り出した。

また、大気汚染、酸性雨のように、1970 年代になると国境を超える公害問題が課題となっていた。 そして、それに対する国際的な取組が国家間でまた市民の間で始まっていた。1971 年に 4 か国の環 境団体によって国際的な環境市民運動 FoE (Friend of the Earth International)が結成され(26)、地球レベ ルでの環境問題を取り上げる市民運動が広がった。1970 年代後半になると、地球温暖化問題が取り 上げら、現代社会のライフスタイルを見直す人々が生れた。地球全体に広がる環境問題、環境汚染 に対して形成された国際的な環境市民運動に連携し、日本でも 世界 74 ヵ国に 200 万人のサポー ターを有する Friends of the Earth International のメンバー団体として 1980 年から FoE Japan が活動が 始めた(27)。

1988 年 11 月に Intergovernmental Panel on Climate Change (IPCC)が設立され、990 年に、地球温暖化 による海面上昇を指摘した IPCC 第 1 回総会の第 1 次評価報告書 (First Assessment Report)が発表さ れた。1989 年に気候変動に取り組む、90 カ国以上・850 の NGO からなる国際ネットワーク組織である CAN(Climate Action Network)気候行動ネットワークが設立された(28)。そして、日本でも CAN のメンバーとして NPO 法人気候ネットワークが 1998 年から活動を始めた(29)。

地球温暖化問題は、その原因となる温室効果ガスの抑制が必要である。そこで、化石燃料の消費を 抑制す課題が生じ、エネルギー問題や経済発展と直接関連して展開されることになる。そのため、 それぞれの国の経済的事情を前提にしながら地球温暖化問題の解決が求められる。つまり、国際会 議や国際サミットの動きに連携し、国際的コンセンサスを確立しながら地球温暖化問題の解決を進 めることになる。こした状況を踏まえ、市民運動の側からも、国際的なネットワーク運動、Action for Solidarity, Equality, Environment and Development Japan (A SEED Japan)/(青年による環境と開 発と協力と平等のための国際行動)(30)が。1991 年 10 月に組織された。

日本では、1973 年(第 1 次)と 1979 年(第 2 次)に始まったイル・ショックが起こった。国は、 原子力を基幹エネルギーとして位置付け、国家のエネルギー安全保障政策、エネルギー政策と打ち 立てった。それに対して、原子力発電所の危険性と核廃棄物の処理問題、環境問題に対して危惧す る社会的批判が起こった。その政策に反対する市民は地球温暖化対策として自然エネルギーの利用 を訴え、省エネルギーや自然エネルギーの普及を課題にした市民の意識が高まった。そして、1990 年代に入り自然エネルギーの普及を課題にした市民運動が始まった。と同時に、政府も国際的問題 となった地球温暖化対策に乗り出した。


(25)  UNITED NATIONS「KYOTO PROTOCOL TO THE UNITED NATIONS FRAMEWORK CONVENTION ON CLIMATE CHANGE」?p, 1998  http://unfccc.int/resource/docs/convkp/kpeng.pdf
(26)  環境省 HP、気球環境・国際環境協力 地球温暖化対策 「気候変動枠組条約・京都議定書と国際交渉」 http://www.env.go.jp/earth/ondanka/cop.html
(27)  「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成十年十月九日法律第百十七号)
(28)  「地球温暖化対策の推進に関する法律施行令」 (平成十一年四月七日政令第百四十三号 (29)  地球温暖化対策推進本部 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ondanka/
(30)  環境省「地球温暖化対策推進法の5つのポイント」http://www.env.go.jp/earth/ondanka/ondanref.pdf


2-2、自主管理生産者運動としての自然エネルギー市民運動へ 


自然エネルギーを利用し電気を作る市民運動、市民共同発電所運動が 1990 年代になって日本で始 まる。この課題はこれまでの市民運動とは異なる課題を問い掛けていた。つまり、エネルギー生産 設備を設置、維持管理する技術的課題も市民運動の一貫として組み込まれることになった。これま での市民運動は、公害運動や消費者運動に代表されるように、企業生産活動への批判や点検運動で あった。しかし、エネルギー生産を市民が担う活動は、それまで経験していない運動形態であった。

1970 年代に起こった自主管理労働組合運動では、労働者が職場を管理し、会社の経営や管理を担っ た。それまでの郎度運動のスタイル、つまり賃金値上げの要求運動とは違い、職場を維持するため に、労働者自らが経営に参加し、経営を維持した。この経験は、これまでの労働運動を含め消費者 運動や市民運動と異なる課題を持ち込んでいた。その課題こそが、今、エネルギー生産を担う市民 運動が必要としているものに他ならない。これまでの市民運動とは異なる課題を解決しなければな らなかった。その課題とは、運動を維持するために必要な資金、例えば事務所の維持や通信及び移 動等々の活動に必要な経費であるが、を参加した人々の会費で担えたこれまでの市民運動と異なり、 自然エネルギー市民運動の場合には、自然エネルギーを生産するために必要な設備や労力に関する 経費が必要となる。

また、自然エネルギー生産を運動課題とする自然エネルギー市民運動に取って、設備投資や設備の 維持費が発電によって生産した電気の価格を越えて高額であるなら、自然エネルギー生産を課題に する市民運動は成立し得ない。そこで、それを成立させるために、自然エネルギー市民運動を担う 人々は、それらの問題を解決しなければならなかった。当時、その課題を解決する唯一の方法は、ボランティアによる設備設置、その維持活動であった。1990 年代の自然エネルギー市民運動は、多 くの無償労働と募金活動によってしか成立しえない状態であったと言っても過言ではない。

しかし、観方を換えれば、自然エネルギー生産が利潤に結び付かない時代であったことが、自然エ ネルギー生産を市民運動として取り組む契機を与えたとも言えるのである。その逆境的条件に立ち 向かった人々には、新しい市民運動、生産消費運動を形成するための課題が与えられていたのであ る。
自然エネルギーを生産することが、地球温暖化や環境問題、更にはエネルギー資源枯渇問題を解決 する方法であるという自然エネルギー市民運動の目的が成立したとしても、それを実現するために は、消費者運動から生産活動を課題にする市民運動が必要とされていたのであった。しかも、その 生産活動は利益を前提にした企業活動が成り立ち得ない条件の下にあった。当時、この運動を担っ た人々が選択した運動形態は、自主管理生産運動であった。この運動形態は、すでにこれまで、自 主管理労働運動や無農薬農業を目指した農業運動の中で経験されていたのである。

自然エネルギー市民運動は、必然的に、これまでの自主管理労働運動や無農薬農業運動の経験を踏 襲することになる。つまり、運動を維持するための経営方法やスキルを獲得することが、運動の課 題となった。言い方を換えれば、安価に自然エネルギーを作る方法やスキルを見つけ出し、実践し、 それらの経験を点検し、反省し、改良を加え、さらに安価な生産活動を開発するという事が運動の 課題となった。この課題は、ベンチャー産業に挑む人々、新しい産業を興すために日夜奮闘してい る人々と同じ視点に立っている。自然エネルギー市民運動家や有機農業家、つまり生産者市民運動 の活動家も、新しい産業を興す企業家も、「働く」ことが賃金を得ることでなく、社会を変えるこ ととして理解されている点は共通していると言えるのである。

2-3、RPS 制度、FiT 法がもたらした自然エネルギー市民運動への影響、三つの自然 エネルギー市民運動 


A. 第一期自然エネルギー市民運動 

1990 年代の自然エネルギー市民運動では、その生産設備の建設とその管理に必要な資金や、安価に 自然エネルギーを生産ための方法や技能、それを持つ人材が必要であった。当然、業者に委託しな いで、自分たちの力で発電設備を作ることが最も安価である。それが出来ない場合は、運動の趣旨 を理解している業者の協力を求める。同時に、多くの賛同者を得て、組織を作り、会費や寄付金を 集める。そのためには、情報を広く社会に伝えることが必要であり、また、生産活動は参画型運動、 自主管理型運動、協働者のネットワーク形式という運動方法が選ばれた。この時代の自然エネルギ ー市民運動を第一期自然エネルギー市民運動と呼ぶことにした。


B. 第二期自然エネルギー市民運動 

しかし、2002 年 12 月に施行された「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」 RPS 制度( Renewables Portfolio Standard)(1)によって、状況は変化した。RPS 制度によって自然エネ ルギーから生産した電気を電力会社が買い取ることになった。この法律の施行以後、自然エネルギ ー市民運動は生産した電力の売電によって、ある程度の収入を確保することが可能になった。その 意味で、それ以前の自然エネルギー市民運動が課題にしていた資金確保が、売電によって可能にな ったとも言える。

1990 年代の自然エネルギー市民運動が解決しなければならなかった資金問題がこ の法律によって緩やかに解決可能になったともいえる。勿論、2002 年当時の発電システムコストが非常に高いために、この法律の成立によって、市民が発電所を容易に作ることが出来たわけではな い。しかし、発電システムコストは緩やかではあるが廉価化して行った。同時に、企業が新エネル ギー産業に参加する機会も生まれた。

その意味で、効率の悪い自然エネルギー市民運動の成立条件 が厳しくなったとも言える。一般社団法人 太陽光発電協会の資料によると、2002 年から 2012 年 4 月末までの国内における住宅用太陽光発電システムの累計設置件数は約 100 万件を突破した。(31) この時代、つまり、2002 年 12 月 RPS 法が成立し、次に述べる固定価格買取制度(FIT)が成立するま での期間の自然エネルギー市民運動を、第二期自然エネルギー市民運動と呼ぶことにした。


C. 第三期自然エネルギー市民運動 

さらに、2012 年から固定価格買取制度(32) が始まり、太陽光発電はビジネスになった。多くの企業 がメガソーラ建設に参加し、また、地域社会でも新しいビジネスとして太陽子発電事業が取り組ま れた。その意味で、固定価格買取制度以後の自然エネルギー市民運動は、それ以前の運動とは全く 異なる課題を持つことになる。

多くの市民が固定価格での電気の買取り制度によって生まれる実利 を目的にして住宅用太陽光発電施設を設置し始めた。しかも、その住宅用太陽光発電補助金申込受 付件数は、2012 年 4 月から 2014 年 3 月までに 592,382 件(33)、つまり 2 年間で約 60 万世帯で、明ら かに、FiT 法によって、多くの市民が太陽光発電施設を設置している。「太陽光発電システムを設置 している住宅の数は 2013 年(平成 25 年)で 157 万戸と 2008 年に比べ3倍と」なっている。(34)

つまり、FiT 法成立から、太陽光発電施設を自宅に設置することが、これまでの自然エネルギー市民 運動の意味としては成立しなくなった。市民は、自分の利益を目的にして、自然エネルギーから電 気を作るために太陽光発電施設を設置し始めている。2013 年の FIT 法施行以後の自然エネルギー市 民運動を第三期自然エネルギー市民運動と命名した。現在は第三期自然エネルギー市民運動の時代 である。それは、大衆化し、生活活動化した自然エネルギー生産活動に対して、これまでの自然エ ネルギー市民運動が問われている時代であるとも言えるだろう。


D. 自然エネルギー生産者消費者運動の三つの形態 

こうした自然エネルギー市民運動の期間分けは、RPS 法施行以前の自然エネルギー市民運動(第一期 自然エネルギー市民運動)を理解し、その運動が FIT 法施行以前、2002 年から 2012 年までにどのよ うな自然エネルギー市民運動の形態 (第二期自然エネルギー市民運動)に発展したかをさらに分析し、 そして、2013 年の FIT 法施行以後の自然エネルギー市民運動を第三期自然エネルギー市民運動の在 り方、言い換えると国民的な生産者消費者運動の方法と模索するために、行ったものである。

この自然エネルギー市民運動が、社会政策によって、その運動形態を変化させる中、2002 年までの 自然エネルギー市民運動を第一期自然エネルギー市民運動、2002 年から 2012 年の FIT 法施行まで の運動を第二期自然エネルギー市民運動、2013 年の FIT 法施行以後の自然エネルギー市民運動を第 三期自然エネルギー市民運動と分類した。これらの分類化によって、より鮮明に、時代や社会的背景を前提にして、自然エネルギー市民運動を理解しながら、運動主体が抱えた課題の分析を試みる ことが出来るのである。

しかし、この論文では、三つに分類された自然エネルギー市民運動のそれぞれの特徴は、それらの 比較分析は行わない。この論文では、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置 法」施行以前の自然エネルギー市民運動に限定した分析を試みる。


(31)  一般社団法人 太陽光発電協会 「住宅用太陽光発電システムの設置が累計 100 万件を突破」 http://www.jpea.gr.jp/pdf/t120517.pdf
(32)  三石博行「再生可能エネルギー促進法とその問題点について 持続可能なエネルギー生産社会を 目指すために」20p、2011 年 11 月 19 日 おおつ市民環境講座 配布資料
(33)  太陽光発電協会 「補助金申請の都道府県別集計データ」http://www.jpea.gr.jp/jpec/data/doc/pdat_uketsuke_20140801.pdf
(34)  総務省 「太陽光発電システムを設置している住宅の数」平成 26 年 9 月 5 日 http://www.stat.go.jp/info/wadai/pdf/018.pdf

2-4.1990 年代から 2002 年までの第一期自然エネルギー市民運動 


この期間(2002 年に RPS 法が施行される)までの第一期自然エネルギー市民運動と呼ばれる自然エ ネルギー市民運動を理解するためには、この時代の特徴を理解しなければならない。日本の現代史 の中でのこの 1990 年代という時代を理解することであるが、この論文では、必要とされる現代日 本史に関する考察を行う能力も時間的余裕もない。そのため、この考察を割愛する。

更に、この期間の自然エネルギー市民運動の全てを調査し尽くしたと訳ではない。つまり、ここで 言及されなかった自然エネルギー市民運動がある可能性を残している。その意味で、この議論は、 今後の調査を前提に、継続され、展開される。今回は、特に、PV-Net の母体を形成した自然エネル ギー市民運動についてのみ言及する。


A. エコテック、レクスタと自然エネルギー推進市民フォーラムの三位一体

エコテック(ワーカーズコープエコテック)は、「働く人が自ら出資し、働き、自立的に運営する 事業体」であると自らの組織を定義している。つまり、「労働者生産協同組合(ワーカーズコー プ)」という形態を取っている自主管理労働運動として、1993 年に設立された、日本で最も古い自 然エネルギー市民事業運動である(35)。

エコテックでは、通常の株式会社としての役割をもって、消費者に高い品質の製品を提供すること も運動の課題となっている。この自主管理労働組合的要素をもったエコテックが企業運営体でなく、 市民運動であり続けるために、取り入れるために、エコテックを「非営利(NPO)的な事業を目指 す」「市民事業」と自己規定し、自然エネルギー市民運動を形成するための有効な機能として自ら を位置づけた。当然、この運動を担う人々は自然エネルギー市民運動の開拓者となっていった。

また、同時に、エコテックと同じ理念を持つ自然エネルギー利用関連の事業を行うメンバーが運営 する 15 の市民事業体が連携し、経営と市民運動的機能性を相互に協力し合いながら、参加してい るメンバーの経営を堅持するために、「市民事業」組合、「自然エネルギーに関する事業協同組合 レクスタ」が、エコテックによって呼びかけられ、1994 年 12 月に結成した。(36)。

どのような市民運動であれ、その運動を維持するために、運動が依拠する生活が無ければならない。 生活活動に依拠した市民運動、社会運動や労働運動でなければ、その運動の存立条件が物質的にも 精神的にも成立しなくなる。その意味で、エコテックもレクスタも、極めて現実的な生活活動・生 産活動に依拠した自然エネルギー市民事業である。

この自然エネルギー市民事業を担った都筑健氏を中心とした人々が、「自然エネルギー推進市民フ ォーラム (Renewable Energy Promoting People`s Forum・REPP)(37)を形成する。このエコッテク、レク スタと自然エネルギー推進市民フォーラムの三つの組織によって、この時代の自然エネルギー市民 運動を展開するための条件を確保することが出来た。

つまり、エコテックは、自然エネルギーから電力を生産するための、専門的知識や技術、技能や必 要な資金を確保するための組織、太陽光発電設置業者としての企業であり、具体的、かつ現実的に 太陽光発電施設を設置するための手段を持っていた。エコテックは、太陽光発電事業に企業もビジ ネスとして手を出さない時代、自然エネルギー生産者運動が必要とした基本インフラを(資金、技 能、人材)の確保に寄与した。

さらに、自然エネルギーに関する事業協同組合レクスタは、エコッテクのように市民事業体と自ら の企業活動を位置づけ、自宅に太陽光発電施設を設置する市民や自然エネルギー市民運動をサポー トしたいと考える日本全国の企業や、またそれに賛同する企業の協同組合である。それらの企業活 動に必要な資金、資源(知的資源、人的資源、設備資源等々)の相互扶助を行うために作られた。 その事によって、個々の事業体の経営的安全保障を確立し、かつ積極的により安価なサービスの提 供も可能になる。

そして、自然エネルギー推進市民フォーラム  Renewable Energy Promoting People`s Forum(REPP)は、 自然エネルギー市民運動や PV パイオニアと呼ばれる太陽光発電に挑戦する市民を支援する市民運 動体である。この運動は、自然エネルギー活用が成立し得ないこの時代的な社会的な状況の中で、 自然エネルギー市民運動の旗印として、自然エネルギーを活用する市民やそれらの運動をサポート する機能を開発して行った。例えば、自然エネルギー市民運動の可能性を広く社会に呼びかけ、多 くの賛同者を得て、例えば寄付金を集めるたり、イベントを開いたりしながら、自然エネルギー社 会の未来を語る運動である。この組織を通じて、自然エネルギー運動、現実の運動の母体はエコテ ックやレクスタの活動を前提にして成立しているのであるが、自然エネルギー推進市民フォーラム は、それらの活動の情報を広く社会に伝える自然エネルギー市民運動の大衆化に寄与していた。

例えば、「PV 独立型システムを家庭内配線に持ち込み、電力会社とやりあう」原発問題に深い関心 を持つ市民、地球温暖化防止に自然エネルギーの活用を主張した人々は、それを実践する為に、自 宅や地域に、PV を設置する運動を始めた。この先駆的な運動とこの運動を推進した人々(PV パイオ ニア)を支えるために、エコッテクやレクスタは機能した。このエコテックやレクスタの下支えに よって、多くのパイオニアが生まれた(38)。

特に注目したい自然エネルギー推進市民フォーラムの活動として、自然エネルギー推進市民フォー ラム助成がある。1990 年代の始め、国の太陽光発電設置に関する補助金制度の前から、PV を自分 で設置したいと望んだ市民たち、採算を度外視して高額の太陽光発電装置を家に設置した人々「太 陽光発電の市民パイオニア PV パイオニア」(都筑健氏が呼んだ)である。これらの人々に対して、 自然エネルギー推進市民フォーラム助成は、大いに役立った。

また、自然エネルギー推進市民フォーラム助成は、自然エネルギー市民運動が目指した市民共同発 電所の建設にも大いに貢献した。例えば、この制度を活用して、NPO 法人足元から地球温暖化を考 える市民ネット・えどがわ(通称・足温ネット)は 1998 年 7 月市民立・江戸川第1発電所(太陽 光・5.4kW)を関東地域で初めて建設した。この市民運動は、1996 年 11 月に江戸川区内在住の市民 団体メンバーや区民たちで「気候フォーラム江戸川ネットワーク」実行委員会立ち上げ、そのフォ ーラムを 1997 年 1 月に、任意団体「足元から地球温暖化を考える市民ネット・えどがわ」として発 足させた。そして、新エネルギー財団助成、自然エネルギー推進市民フォーラム助成、草の根市民 基金・グラン助成を受けて、1998 年 7 月に市民共同発電所をを関東地域で初めて建設した。その後、 東京都より特定非営利活動(NPO)法人として認定を受け、団体名を「足元から地球温暖化を考える市 民ネットえどがわ」に変更した。(39)

まさに、PV パイオニアや自然エネルギー市民運動が生まれる PV 時代の黎明期に欠かせない存在と して、エコテック、レクスタと自然エネルギー推進市民フォーラムの三位一体の組織を理解するこ とができる。以上の分析は、エコテックやレクスタを市民運動のサポートとして位置づける従来の 市民運動論の側から観たのでなく、寧ろ、自然エネルギー社会を構築するための現実的な方法や手 段の構築を市民運動の一形態として位置づけ、その視点からエコテックやレクスタ、市民事業を生 産消費者運動に欠かせない市民運動の機能として観たのである。つまり、従来の市民運動論に潜む、 運動体の組織形式から観るのでなく、その組織の機能性から、組織の目的実行性の高い運動形態を 評価しようとして解釈したものである。


B. 太陽光・風力発電トラスト等の市民の市民共同発電所建設 

太陽光・風力発電トラストは、1994 年に、チェルノブイリやスリーマイル島、日本では福井県の美 浜原発などの事故が繰り返され中で、日本の原子力に依存したエネルギー政策を批判する知識人に よって、太陽光などの自然エネルギーを利用するエネルギー社会を実現するために始まった運動で ある。この会では、発電所の設置に関わる費用を各プロジェクトの参加者が共同で負担すること、 発電所は、屋根を提供できる方と共同で運営すること、そして、発電所で作った電気は、社会に届 けるため、系統連携を、市民発電所建設の基本理念として。太陽光風力発電トラストは 1994 年 8 月、日本初の「市民共同発電所・ひむか1号くん」(4.5Kw)を宮崎県の串間市に設置した。2001 年 7 月に、「ひむか3号くん」(3.75Kw)を設置した(40)。

この太陽光・風力発電トラストの運動は、関西の自然エネルギー市民運動に大きな影響を与えた。 例えば、1996 の秋に設立された「関西で初めての市民共同発電所をつくる会」は、「太陽光・風力 発電トラストの市民共同発電所に関する考え方」を参考にしながら、「市民の、市民による、市民 のための、共同発電所」設置プロジェクトを呼びかけた。このプロジェクトに 119 名の賛同者(大 学研究者、環境保護運動家、反原発運動家、滋賀県職員及び全国の自治体関係者、会社員、人権運 動家、文化人、芸術家、俳優や学生)が名前を連ねて、広範な市民の運動としての自然エネルギー 市民運動を目指した(41)。

「いしべに市民共同発電所をつくる会」は「関西で初めての市民共同発電所をつくる会」の呼びか けを受けて活動を始めた。そして、1997 年 6 月に関西で初めての市民共同発電所「てんとうむし1 号」を滋賀県湖南市に設置した(42)。

その後、滋賀県では、精力的に市民共同発電所の建設が進められる。その背景には、「市民の、市 民による、市民のための、共同発電所」設置プロジェクトを呼びかけた「市民共同発電所を作る会」 の代表世話人であった村本孝夫氏が、当時、滋賀大学教育学部教授であったことが考えられる。以 下、滋賀県で 2002 年までに設置された市民共同発電所を列記してみる。

☆ 大地に市民共同発電所をつくる会が 1997 年に滋賀県高島市の障害者施設屋根に「大地 1 号」 5.45kW を設置(43)する

☆  湖北・市民共同発電所“さといも”プロジェクト が 1998 年に 滋賀県長浜市の共働作業所屋 根 2.7kW の発電施設を設置(44)する

☆  市民共同発電所を作る会・おおつ が 2001 年に、滋賀県大津市のおおつ あいあい保育園の屋 根に「さんさんくん」5.22kW を設置(45)する

☆  風車村に市民共同発電所を設置する会 が 2001 年に滋賀県高島市の風車村に「ひかりちゃん」 2.9Kw を設置(46)

きょうとグリーンファンドは、 2000 年 3 月準備会を作り、2000 年 12 月に特定非営利活動法人取得 し、2001 年 3 月、京都市左京区の法然院・森のセンターに「おひさま発電所」1 号機を完成させた。 翌年 2002 年 2 月、京都市伏見区のあけぼの保育園「おひさま発電所」2 号機を完成させた。(47)

また、労働組合が積極的に支援した市民共同発電所もあった。「ふくい市民共同発電所を作る会」 は 200 年に福井市職員労働組合(福井県本部)に拠点を置き(48)、「個人や市民団体及び事業者など による, 単独の太陽光発電設備設置に対して補助」や「ヒートポンプを用いた地下水の利用につい て技術開発を実施」(49)した。

1997 年から 2001 年に多くの PV パイオニアが生まれ、11 の市民共同発電所が建設された。それら の市民発電所の規模は、いずれも、出力 6 ㎾未満のものであった。また、1990 年代から 2001 年ま での市民共同発電所建設運動に、1998 年に結成された NPO 法人気候ネットワーク(50)や 2000 年 9 月11 日に設立した特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所(51)が大きく貢献したことは言うに 及ばないことである。


C. 第一期自然エネルギー市民運動の特徴 生産者消費者市民運動の模索 

敢えて、第一期自然エネルギー市民運動の特徴を述べるなら、「エコテック、レクスタ、自然エネ ルギー推進市民フォーラム 」で述べた自然エネルギー市民運動を支える事業活動を「市民事業活動」 と呼び、働く人々の自主管理組織として運営することであった。この活動によって、市民共同発電 所設置を試みた自然エネルギー市民運動組織に大きな貢献をし続けてきた。例えば、「NPO 法人足 元から地球温暖化を考える市民ネット・えどがわ」は、自然エネルギー推進市民フォーラムから助 成を受けて太陽光発電設備を建設している。

しかし、自然エネルギー推進市民フォーラムの助成金は、エコテックと、レクスタ参加の企業活動 の支援によって集められたものである。多くの市民共同発電所の設置を助成するために、エコテッ クは大きな負担を背負うことになる。この負担は、無償の活動を要求する市民運動によって、結果 的に債務不履行とされる可能性もある。こうしてリスクを企業組織である市民事業体・エコテック は、どのようにして、受け止めてきかた、今後、調査しなければならない。

また、一方、「太陽光・風力発電トラスト」に代表され、そえに賛同した「市民の、市民による、 市民のための、共同発電所」設置プロジェクトを呼びかけた「関西で初めての市民共同発電所をつ くる会」の運動とその運動の中で生れた市民共同発電所の設置運動と市民共同発電所の運営のその 後の経過を調べると、殆どが、この時代、つまり第一期自然エネルギー市民運動の時代では、設定 後の維持に大変な労力を払っていたことが報告されている。

発電施設の管理や維持を、ボランティア運動を前提にした市民がどこまで担えたのか、また、故障 は修理の必要が生じたとき、これらの市民団体はどのようにしてそれを行ったか等々の困難が予測 されるのである。事実、こうした困難に出会った。そして、その時、市民運動としてどのように対 応したのだろうか。多くの課題が残される。

この第一期の自然エネルギー市民運動は、謂わば、生産者運動と消費者運動のどちらでもない中間 的な課題を、「太陽光・風力発電トラスト」に代表され大衆市民運動論者に、また同時に、エコテ ック」に代表される市民事業体の考え方に、それぞれ大きな課題を投げかけたと言える。その答え は、その二つの視点の異なる運動のその後の展開を調査する中から、見つけ出すことが可能となる。 そして、その後のこれらの運動の展開の現実から、自然エネルギーを活用した生産消費者の運動や 事業の在り方を巡る議論のための有意義な資料が準備されるのである。



(35)  エコテック(ワーカーズコープエコテック)1993 年設立 http://www.ecotechnet.com/
(36)  自然エネルギーに関する事業協同組合レクスタ  1994 年 12 月に設 http://www.rexta.or.jp/
(37)  自然エネルギー推進市民フォーラム  Renewable Energy Promoting People`s Forum(REPP) http://www.jca.apc.org/repp/home.htm
(38)  都筑健 「市民が支える太陽光発電システムの普及」Journal of JSES,Vol.28.No6,2002,pp1-8、
(37)  自然エネルギー推進市民フォーラム  Renewable Energy Promoting People`s Forum(REPP) http://www.jca.apc.org/repp/home.htm
(38)  都筑健 「市民が支える太陽光発電システムの普及」Journal of JSES,Vol.28.No6,2002,pp1-8、
(39)  NPO 法人足元から地球温暖化を考える市民ネット・えどがわ(通称・足温ネット)http://www.sokuonnet.org/,  https://www.facebook.com/sokuonnet/
(40)  太陽光・風力発電トラスト http://trust.watsystems.net/trust.html http://ha2.seikyou.ne.jp/home/ngnd/trust.html
(41)  関西で初めての「市民共同発電所を作る会」 http://trust.watsystems.net/project.html
(42)  いしべに市民共同発電所をつくる会  http://www.pref.shiga.lg.jp/f/eneshin/files/simin-kyoudouhatuden.pdf  http://trust.watsystems.net/project-tentoumusi.html
(43)  大地に市民共同発電所をつくる会  http://www.pref.shiga.lg.jp/f/eneshin/files/simin-kyoudouhatuden.pdf  http://www.pref.shiga.lg.jp/f/eneshin/files/3-3shimin.pdf  http://www.kikonet.org/wpcontent/uploads/2014/04/citizens-co-owned-renewables-report2007.pdf
(44)  湖北・市民共同発電所“さといも”プロジェクト  http://www.pref.shiga.lg.jp/f/eneshin/files/siminkyoudouhatuden.pd http://trust.watsystems.net/s-syui.html
(45)  市民共同発電所を作る会・おおつ http://www.pref.shiga.lg.jp/f/eneshin/files/simin-kyoudouhatuden.pdf  http://aoibiwako.shiga-saku.net/e515481.html
(46)  風車村に市民共同発電所を設置する会  http://www.pref.shiga.lg.jp/f/eneshin/files/simin-kyoudouhatuden.pdf  http://trust.watsystems.net/sinasahi-p.html
(47)  認定 NPO 法人 きょうとグリーンファンド http://www.kyoto-gf.org/
(48)  ふくい市民共同発電所を作る会 雪国における太陽光発電普及の取り組み 福井県本部/福井市職員労働組 合 http://www.jichiro.gr.jp/jichiken_kako/report/rep_tokushima29/jichiken/5/5_2_12.htm
(49)  査 蕾 竹歳一紀「日本の市民共同発電所 -市民の関わりと地域活性化への取組み-」桃山学院大学総合研究 所紀要 第 41 巻第1号 pp167-187 https://www.andrew.ac.jp/soken/pdf_3-1/sokenk212-2.pdf
(50)  NPO 法人気候ネットワーク  http://kikonet.org/link/index.html
(51)  特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所  http://www.isep.or.jp/  52


3、「太陽光発電設置者連絡会」(仮称)準備会を構成した人々 


3-1、東京電力の協力の背景 RPS 制度と増え続ける太陽光発電設備への対応 


こうした状況の中で、2002 年 7 月に東京電力株式会社(Tokyo Electric Power Company )(52、太陽光 発電を研究している大学研究者、環境自治体会議「The Coalition of Local Government for Environmental Initiative, Japan 」・全国地球温暖化防止活動推進センター)(53)や自然エネルギーを 推進する市民運動(自然エネルギー推進市民フォーラム(Renewable Energy Promoting People`s Forum(REPP))(54)とエネルギー・環境政策を考える会 )のメンバーと住宅用の太陽光発電設備を設 置している市民があつまって、「太陽光発電設置者連絡会」(仮称)準備会を立ち上げるための準備 活動が始まった。 

東京電力株式会社(東電)は 1992 年以来、送配電区間内に設置されている太陽光発電設備や風力 発電設備の余剰電力を、売電価格設定を基準にして約 14.8 円/kwh から 29.8 円/kwh の価格で購入し てきた(55)。東京電力配電区間内で、1992 年には太陽光発電施設が 3 件でその設置出力は 37kw であ った。それが、1996 年には設置件数は 1068 で設置出力は 4278Kw、2001 年には 19560 件の設置者 でその設置出力は 96522kw と急激に増加を続けていた(56)。さらに、2003 年には、約 57000 件の設 置者から約 9200 万 kwh の余剰電力を東電は購入したと報告されている(57)。 

当時、小泉政権は独占企業である電力会社にも、「聖域なき構造改革」を断行するために 2002 年 6 月 7 日に「電 気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成 14 年法律第 62 号) を成立させ、同年 12 月 6 日からこの法律は施行された。この法律は、電気事業者に対して、エネル ギーの安定的かつ適切な供給の確保を義務づけ、さらに毎年、その販売電力量に応じた一定割合以 上の新エネルギー等から発電される電気 の利用を義務化した制度、RPS 制度(Renewables Portfolio Standard)によって、新エネルギー等の更なる普及を図るものである(58)。 

2002 年 12 月に施行された RPS 制度(Renewables Portfolio Standard)によって、東電は太陽光発電を 含む自然エネルギーから作られる電気の利用が義務付けられ、その意味で住宅用太陽光発電設備か らの電力購入の必要性が生じたとも謂える。 

また、同時に、東京電力は配送電区間内で急激に増え続ける太陽光発電設備に対応するために、 2001 年から太陽光発電設置者へのアンケート調査を始め、2002 年に集計を行った(59)。言い換える と、それらの設備の設備出力とその発電量の正確なデータが必要となることを理解し、設置者の協 力が東電は必要であった。そのことが、この「太陽光発電設置者連絡会」(仮称)準備会を積極的に サポートした理由であると考えられる。 


(52)  東京電力株式会社 Tokyo Electric Power Company  http://www.tepco.co.jp/en/index-e.html 
(53)  The Coalition of Local Government for Environmental Initiative, Japan. 「環境自治体会議」 http://www.colgei.org/  
(54)  Renewable Energy Promoting People`s Forum(REPP)  自然エネルギー推進市民フォーラム http://www.jca.apc.org/repp/home.h 
(55)  東京電力株式会社 「東京電力の太陽光発電における余剰電力購入の実績」(2005 年 11 月 2 日) http://www.re-policy.jp/shinenekentou/2/1102toudenyojyou05.pdf 
(56) 「太陽光発電施設者連絡会(仮称)設立に向けてのお知らせ」東京電力株式会社 営業部「太陽光発電設置者 連絡会(仮称)準備会」連絡係作成、2002 年 7 月 17 日、「太陽光発電設置者連絡会準備会(仮称)準備会の設立 に向けて」の会議の配布資料「増え続ける太陽光発電施設件数と設置出力」 
(57)  東京電力株式会社 「東京電力の太陽光発電における余剰電力購入の実績」 (2005 年 11 月 2 日) http://www.re-policy.jp/shinenekentou/2/1102toudenyojyou05.pdf  
(58) 三石博行「再生可能エネルギー促進法とその問題点について 持続可能なエネルギー生産社会を目指すため に」20p、2011 年 11 月 19 日 おおつ市民環境講座 配布資料  http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_03_04/cMITShir11a.pdf   
(59)  「太陽光発電設置者連絡会」入会意向アンケート集計結果(平成 14 年 8 月 6 日現在)] 4p, 東京電力株式会社 営業部「太陽光発電設置者連絡会(仮称)準備会」連絡係作成 


3-2、経済的に豊かで環境意識の高い太陽光発電設置者

 

東京電力のニーズと地球温暖化対策として自然エネルギーの普及を課題にした地方自治体や市民運 動のニーズが、太陽光発電設置者の組織化という課題で結びつき、「太陽光発電設置者連絡会議(仮称)」の設置に向けての準備活動が 2002 年 2 月から取り組まれ、準備会の会議が頻繁に開かれ、 2002 年 10 月には「太陽光発電設置者連絡会(仮称)」の準備会からその発起人会へと発展した(60)。 

「太陽光発電設置者連絡会(仮称)」準備会は、東電のアンケートの集計(19560 名)を基にして、同会 の「趣旨に賛同し参加したい」(2004 名 約 10%)「興味があるので案内を送って欲しい」(3955 名 約 20%)と答えた太陽光発電設置者 5959 名(約 30%)に対して、より詳しいアンケート調査を行った (61)。2002 年 11 月 13 日を期限にアンケートを回収し、それを集計、統計処理を行った。この集計 から、5959 名の 46%の 2004 名が会への参加を希望し、36%の 3955 名が会からの情報提供を希望 していた。(62) 

会への参加と情報提供を希望する人々(5959 名)中で、太陽光設置の動機で最も多かったのが、環境 問題の解決(75.54%)で、その次が電気代の節約(62.7%)、三番目がエネルギー問題の解決(60.0%)であ った。76.1%の人が「太陽光発電システム」に「非常に満足、やや満足」と答えている。また、会 の目的に関するアンケートでは、社会への貢献と答えた人数が最も多く、46.6%を占めた。さらに、 「会の活動」に関しては「太陽光発電の普及推進」と答えた人が最も多く 65.7%を占めた(63)。 

太陽光発電設備費(システム価格)は、「1993 年の IKW 当たりのシステム価格は 250 万円、1994 年に は 200 万円、1995 年では 170、万円、1996 年では 120 万円と 4 年間で半分以下(0.47 倍に減少する) に減少した。しかし、1997 年(106 万円/KW)から 2001 年(75.8 万円/KW )の 5 年間でシステム価 格の減少率は3分2以下(0.72 倍に減少する)である。さらに、2002 年(71.0 万円/KW)から 2009 年(62 万円/KW)の 8 年間では僅かに 10 万円の減少(0.87 倍に減少する)であった。日本の太陽電 池システム価格は 2003 年から 2009 年までは、ほぼ横ばいに推移している。」(64) 

「太陽光発電設置者連絡会(仮称)」準備会のアンケートの、住宅用の太陽光発電設備のシステム容 量に関する調査結果から、2 ㎾未満が全体の 3.8%、2 ㎾から 3 ㎾が 30.2%、3 ㎾から 4 ㎾が 41.9%、 4 ㎾から 6 ㎾までが 20.8%、6 ㎾以上が 3.1%であった(65)。 設置時期は 2000 年が全体の 27.4%で 最も多く、次は 2001 年の 24.4%、三番目は 1999 年の 14.0%であった。2002 年は 9.8%と 2001 年 比べると極度に少なくなっている。その理由は補助金の減少によるものであると思われる。 

例えば、2002 年のシステム価格が 71.0 万円/KW で、それ以前のシステム価格は 2001 年が 75.8 万円 /KW 、1997 年が 106 万円/KW、1993 年が 250 万円/KW、1994 年は 200 万円、1995 年では 170 万円 /KW、そして 1996 年では 120 万円/KW、1993 年では IKW 当たり 250 万円もした。 

 つまり、アンケートの結果から、最も多い 41.9%の設置者が 3 ㎾から 4 ㎾の発電施設を 2000 年に 造ったとすると、2000 年のシステム価格は、殆ど 2001 年の 75.8 万円/KW のシステム価格と変わら ないので、2000 年に 3 ㎾から 4 ㎾の発電施設を設置した費用総額は、227.4 万円から 303.2 万円と なる。もし、それを 1997 年に設置したなら 1 ㎾あたり 106 万円の費用が掛かるので、318 万円から 424 万円必要となる。勿論、補助金があるので、上記した金額にはならない。例えば、2000 年には 前期(1 月から 6 月まで)の補助金は 1 ㎾あたり 27 万円であり、後期(7 月から 12 月まで)は、1㎾あ たり 18 万円である(66)。例えば、補助金額の大きい前期で 3 ㎾なら 81 万円で設置者の自己負担金は 146.4 万円となり、4 ㎾では補助金は 108 万円で、設置者の自己負担金は 195.20 万円となる。 

当時の設置者は少なくとも 100 万円以上 200 万円の投資金を必要とされた。つまり、よほど経済的 に余裕のある人でなければ、太陽光発電を設置することは出来ないと謂える。ましては、新築の家 の場合、土地、住宅への巨額の支出に加えて高価な太陽光発電設備を設置できる人々は極めて裕福 な人々であったことが理解できる。 

しかし、確認しなければならないことは、上記の分析が物語ることが、豊かな人が PV を設置した ということを述べているのではなく、彼らが豊かであったという事が PV を設置する条件の一つで あったと述べているのである。観方を換えれば、採算を度外視しても、地球温暖化問題や原発問題 に対して自然エネルギーの活用がその解決手段と信じるなら、PV を自宅に設置した問題意識の高い 人々である。これらの人々のことを都筑健氏は「PV パイオニア」と呼んだ。(67) 


(60)  資料「平成 14 年度「太陽光発電設置者連絡会」活動計画(案) 2002 年 4 月 9 日」1p 、資料「議事次第 太 陽光発電施設者連絡会(仮称)設立に向けて」4p, 2002 年 7 月 17 日、資料「太陽光発電施設者連絡会(仮称)設立 に向けて」8p, 2002 年 8 月 20 日、資料「太陽光発電施設者連絡会(仮称)発起人会」7p, 2002 年 10 月 15 日、 
(61)  太陽光発電設置者連絡会(仮称)準備会作成資料「今回のアンケートをお送りする皆さまの構成」2p, 2002 年 9 月 19 日 
(62)  環境自治体会議 環境政策研究所「太陽光発電設置者連絡会(仮称)「会のあり方」アンケート調査結果 (速報)」22p, 2002 年 11 月 22 日 
(63)  環境自治体会議 環境政策研究所「太陽光発電設置者連絡会(仮称)「会のあり方」アンケート調査結果 (速報)」22p, 2002 年 11 月 22 日 
(64)  三石博行 「太陽光発電の将来性と問題点-再生可能エネルギー社会を実現するための課題-」45p、第 11 回縮小社会研究会 講演配布資料 京都大学 2012 年 9 月 30 日 http://shukusho.org/data/11-2.pdf 
(65)  環境自治体会議 環境政策研究所「太陽光発電設置者連絡会(仮称)「会のあり方」アンケート調査結果 (速報)」22p, 2002 年 11 月 22 日 
(66)  中川修治 「家庭用太陽光発電設備普及と国の補助金制度(1994-2003+(2005)」  http://trust.watsystems.net/hojyokin2002matome.html  
(67)  都筑健 「市民が支える太陽光発電システムの普及」Journal of JSES,Vol.28.No6,2002,pp1-8、 


3-3、自然エネルギー市民運動を担った来た人々 


2002 年 7 月 17 日の開催された会議、「太陽光発電設置者連絡会議(仮称)」準備会の設置に向けての 会議、に第一期自然エネルギー市民運動を推進してきた自然エネルギー推進市民フォーラム (Renewable Energy Promoting People`s Forum(REPP)とエネルギー・環境政策を考える会 の中心メン バーが参加している。しかし、第一期自然エネルギー市民運動を担った「太陽光・風力発電トラス ト」に代表される、所謂、大衆市民運動として自然エネルギー市民運動を展開した人々は参加して いない。 

その考えられる理由の一つとして、元々、自然エネルギー市民運動を原子力発電に反対する立場か ら担ってきた「太陽光・風力発電トラスト」に代表される大衆市民運動グループは、原子力発電を 稼動している東京電力と共に、自然エネルギー生産を推進する「太陽光発電設置者連絡会議(仮称)」 に参加することを拒否した可能性がある。「太陽光発電設置者連絡会議(仮称)」の呼びかけ段階か ら、この会議を構成するメンバーとして、「太陽光・風力発電トラスト」に代表され原発反対運動 のメンバーは参加しなかったのである。 

自然エネルギー推進市民フォーラムを運営してきた自然エネルギー市民運動は、この会に積極的に 参加している。その考えられる背景には、彼らが、地球温暖化や原発問題を考えて、採算を顧みず、 自宅に PV を設置したいと願った多くの PV パイオニアと呼ばれる市民の活動をサポートしてきたこ とが考えられる。彼らは、PV パイオニアに出来るだけ安く設備を設置し、また、PV パイオニア達 が参画できる PV の設置業務を企画してきた。市民企業活動として、PV 設置を進める中で、身に付けた生活運動的発想がある。つまり、PV を入れた新しい生活スタイル、のちに都筑健が述べる「ソ ーラーライフ」(68)に繋がる考え方であった。 

また、自然エネルギー推進市民フォーラムの人々は、同時に、エコテックを経営し、レクスタを運 営してきた。太陽光発電施設の設置や管理維持に必要な資金問題、技術的サポート、市民事業の経 営的管理等々、それらの事業活動の中で身に付けて具体的で、現実的な問題解決の方法を身に付け てきたと言える。その現実主義的な考え方や実践的なプラグマティズムが、現実を度外視し、観念 的な運動に走りがちな自然エネルギー市民運動を、確りと持続可能な生活運動にしてきたとも言え る。 

その意味で、仮に原発に反対していても、東電とも協力し、PV パイオニアである当時の太陽光発電 設置者の現実的な利益となるための運動を展開したのである。「太陽光発電設置者連絡会議(仮称)」 を、太陽光発電設備設置者の利益向上にのみに視点を当て、それ以外の課題を持ち込み、連絡会が 他の原発反対運動団体や、ある政治的主張をサポートする団体になることを、自然エネルギー推進 市民フォーラムは、極力避けた。つまり、連絡会の目的は、あくまでも、PV 設置者の利益である。 そのためにのみ、組織理念をまとめ、誰でも参加できる組織にした。 

この考え方が、その後、「太陽光発電設置者連絡会議(仮称)」準備会から生まれた太陽光発電所ネ ットワーク(PV-Net)の運動の在り方を決定することになる。そして PV 設置者の利益を優先し、 誰でも参加できる組織としての PV-Net 運動の今日の組織や運動理念を決定づけていることも確かで ある。 

その背景には、自然エネルギー社会を構築すること、具体的には社会に PV 設置者が多くなること は、市民社会に自ずと、地産地消型の社会、生産消費者意識を持つ市民の台頭、自然エネルギーの 消費と生産に責任を持つ参画型社会の形成、それらの新しい市民社会と市民意識が形成されること を信じるという立場に立っているとも言えるだろう。そして、結果的に、環境問題や原発問題に、 その市民社会や市民意識は、最も現実的で有効な解決手段を見出すと信じた。これが、この準備会 の設置に向けての動いた自然エネルギー市民運動の担い手の、極めて公平な視点であったことは、 すでに 10 年以上の時間を経た今でも、理解できるのである。 


(68)  都筑健「ソーラーライフ」、PV-Net2013 年第五回理事会提出資料、3p、2013 年 7 月 

4、結論と問題提起  



今回の報告は、PV-Net(NPO 太陽光発電所ネットワーク)の形成の社会的背景、PV 時代の黎明期に 活躍した市民運動について述べた。PV パイオニアと呼ばれた市民たちの時代背景、自然エネルギー を活用し電気を生産する運動が成立した時代的社会的状況についてについて分析した。 

21 世紀になった広がりつつある市民運動・ここでは自然エネルギーから電力を生産する自然エネル ギー市民運動であるが、エネルギーの消費者であると同時にエネルギーの生産者である新しい時代 の市民の形成過程に若干触れた。この新しい時代の市民に関しては、すでに、トフラーが彼の名著、 第三の波の中で言及した、生産消費者(prosumer)のことである。 

自然エネルギー市民運動は、まさしく、生産消費者の形成を前提にして成立していると言える。そ の成立条件として、ここでは、自主管理市民事業について簡単に触れた。この事業スタイルが、自主管理労働組合の経験から生まれたと言うのは私の見解であるが、いずれにしても、過去の市民活 動や労働運動など、人々が取り組んだ社会の民主主義化や人権尊重の社会文化の形成、自然保護の ための活動など、人々の生活運動と社会運動が直接的に間接的に寄与している。 

未来の自然エネルギー社会を形成するために、それを支える科学技術の進歩だけでなく、新しい思 想、生活様式、社会思想、社会制度、産業形態、国際関係の全てが問われていると言っても過言で はない。自然エネルギー社会を実現するために、自然エネルギーの特性から地産地消型の社会や市 民参画型の小規模生産活動等々、生産活動、市民社会の在り方、生活の在り方の等々、あらゆる課 題が、自然エネルギー社会の実現の視点から、考え直さなければならない。 
いずれにしても化石燃料が枯渇し、人々は自然エネルギーを使って生きていく時代が来ることは確 かである。その場合、これまでの化石燃料がもたらした巨大生産と消費の産業システムや生活スタ イルは維持できない。それに代わる政治、経済、社会、生活の在り方を見つけ出さなければならな いだろう。 

そこには余りにも多くの課題が提起されていることは事実である。その時、現在は、極めて僅かな 影響力しかない自然エネルギー市民運動とその社会実験によって得られる数々の貴重な経験を確り と受け止め、深化させなければならないだろう。その意味で、この報告がその一部に触れることが 出来ることを期待したい。 

今後の研究課題として、その後の PV-Net の運動の分析を1のテーマで、そして現在の PV-Net の運 動課題について2のテーマで研究を続けていく。 

1、「日本の Prosumer 運動としての再生可能エネルギー生産運動の形成とその課題 -PV-Net の事 例からー 」(2) –第二期自然エネルギー市民運動としての PV-Net の課題とその時代的及び社会 的背景- 

2、「日本の Prosumer 運動としての再生可能エネルギー生産運動の形成とその課題 -PV-Net の事 例からー 」(3) –第三期自然エネルギー市民運動としての PV-Net の課題とその時代的及び社会 的背景- 
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 2015年11月14日 第6回政治社会学会研究大会 「エネルギーセッション」 (広島大学) での研究報告資料











2016年11月23日水曜日

今だからこそ強く問われる北東・南東アジアとの平和的共存への道


先日、11月19日土曜日、立命館大学茨木キャンパスで開催された国際アジア共同体学会の「東アジアエネルギー安全保障」の研究発表会を聴きに行った。京都奈良EU協会に参加し、EUのような地域国際連携が出来ないか、またPV-Netの運動に参加し、自然エネルギー社会を構築ができないかと考えている私にとって、この課題での研究報告を是非とも聴きたいと思った。非常に学ぶ参考になった。

特に、アメリカのトランプ政権が成立した後、アメリカの東アジア外交がそれほど大きく変化することはないにしても、その少しの変化で、日本のこれまでの東アジア外交、取り分け、対中国外交に大きな影響が出てくる可能性がある。

この学会の会長である進藤栄一先生が、11月18日発行の週刊金曜日で見事な分析をされていた。この状況が、今後の東アジア外交にプラスになるのか、もしくは対中国軍事力強化路線を選ぶのか、21世紀の日本の未来が掛かっているようにも思えた。

日本は、アメリアとの良好な関係を大切にすべきだが、同時に、東アジアの平和的共存に関して、中国やロシアとも友好関係を強化すべきである。経済協力、科学技術共同開発、環境問題への共同対策、北東アジアでのエネルギー資源の安全保障体制、教育文化の交流、先端医療福祉事業の共有化、等々、日本の経済力、科学技術力、教育力、文化力を発揮し、未来に繋がる平和外交を推進すべきである。

アメリカやイスラエルとの軍事産業の提携やそのための科学技術の共同開発へ向かう、現在の日本は、今、ここで、近隣の北東アジアの諸国との平和的共存関係を重視する方向に舵を切るべきだろう。その意味で、私は原発を推進し平和憲法を破棄しようとしている安倍政権であるが、阿部首相が進める対ロシア外交は支持し評価しているのである。


2016年11月22日 Blog記載

2016年8月22日月曜日

- 系統連結の課題 : 変動電圧の調整機能を創る課題とは何か (歴史的視点からの理解)-

自然エネルギー社会を目指して(1)


8月6日、PV-Netの中部地方ブロック代表の武田氏、愛知交流会の吉田幸二氏、都筑健PV-Net代表、系統連結の研究をしている大阪大学工学部の野間口氏、私を含め他のメンバーと、名古屋市の郊外で、系統連結の課題に関する調査を行った。

発電所から高圧送電線で送られる3万5千Vの電圧は第一変電所で6600Vに変換され、それが町の送電線に送られる。我々が街で見かける電柱には6600Vの電流とそれから220V(110V)の電流が流れている。それらは、発電所から第一変電所、そして自動変圧器やトランスと、常に、生産地(発電所)から消費地(家庭、企業、公共設備等)に一方的に流れる仕組みが出来上がっている。

電気の流れは、丁度、水の流れをイメージすればいいだろう。例えば、日常目にする田んぼの風景であるが、あれも、稲作が始まり、その生産量を上るために3、4千年掛けて我々の先祖が造り上げた灌漑システムである。高い所から低い所に流れる水の性質を利用し、広大に広がる水田地帯を創り上げるために、すべての田んぼに水を均等に配分する灌漑システムを作り上げたのである。今、自然に田んぼを流れる水も、そうした壮大で機密な設計、土木事業、日常の水路管理の努力によって、流れているのである。

それに比べると送電の歴史は明治初頭から約150年ぐらいしかない。これまで、単純に発電所から消費地へ、一方方向に作られる高低差を前提に、消費量の違いによって生じる電圧の高低変化を、変換器によって、微調整するだけでよかった。

しかし、消費地であった場所に、分散的に生産地が生まれる。これが、地消地産型の電力システムであるのだが、今までの、電気の流れと異なる事態を生むことになる。これが、系統連結問題として語られる課題である。

もし、220Vで調整されている送電線網内に多くの太陽光パネルが電気を生産すると、その生産量が消費量を越えた場合、その地域内での電圧がそこに送電する送電線の電圧よりも上ることになる。
丁度、ある地区の田んぼで湧き水が発生し、今まで、その田んぼに水を供給していた水路の水笠よりも高くなった場合を想定すると良く分かる。もし、排水機能がないなら、その田んぼは水浸しになるだろう。
電気の場合、水よりも大変である。つまり、電流が逆流することになる。その場合、電流の逆流を防ぐか、もしくは、逆流させ、それをより低い電圧地域に流すように工夫しなければならない。

一般に、こうした事態を避けるために、送電網には手動の変圧器がある。しかし、太陽光パネルや風力発電の場合、時間帯によって電圧が変動するため、手動で電気の流れを切り替えることは不可能に近い。そこで、自動変圧がある。それは、インターネットを通じて、逐次、電圧の変動情報が変圧器に送られ、その情報に従って、変圧器が電流の方向を調整する。

現在の自動電圧調整器で、技術的に部分的に電流の流れの方向をコントロールすることが出来る。その意味で、電気の地産地消のために電圧調整の課題は、負荷のではない。しかし、街のすべての電柱に自動電圧調整器を設置するコストを計算しなければならないだろう。
確かに、理屈の上では簡単な話も、現実には、極めて複雑に事態が進行している。我々の調査団は、吉田氏のこれまでの調査をフォローした。第一変電所から吉田氏の自宅までの送電線網を調べ、吉田氏が自宅で測定している野外電圧の測定装置とそこで測定されたデータ、さらには自宅の太陽光発電によって生産されている電気量のデータと売電データ、そして、その間に生じている系統電圧抑制の資料と野間口氏の理論的な研究論文を基にして、調査と議論を行った。

自然エネルギー社会を創るために、生産者が電気を創るというだけでなく、その電気の経済的な流れのシステムを創り出すことが必要だと思った。大昔の稲作文化を創りだそうとした人々が、稲の品種改良(発電効率の高いパネルの開発)、水田土壌の改良(安全なパネルのフレームは土台の開発)、水田の水はけの改良(最小地域内での電圧調整の開発)、灌漑システムの改良(広範囲な地域電圧調整の開発)等々を行ってきた歴史に深く学ぶ必要があると思った。

参考資料

PV-Net 「太陽光発電に係るさまざまな諸問題への提案書」
http://www.greenenergy.jp/pdf/press_release.pdf
吉田幸二著 『太陽光発電の普及・促進の影で』
http://www.greenenergy.jp/pdf/report.pdf
野間口大 その他6名 「分散型エネルギーシステム構築に向けた補助金制度計画と系統整備計画の連係シナリオの立案・評価」

2012年10月18日木曜日

太陽光発電システムは未来社会のエネルギー生産を担えるか

2-2、再生可能エネルギー社会の形成に向けて

第11回縮小社会研究会(9月30日、京都大学吉田キャンパス)での研究報告

三石博行


未来社会からみた太陽光発電システムの課題

9月30日、京都大学で第11回縮小社会研究会が開かれた。今回の研究会で「太陽光発電システムは縮小社会のエネルギー生産を担えるだろうか」というテーマで発表した。この発表で配布した資料「太陽光発電の将来性と問題点」は四つのテーマから成り立っている。  

1章、エネルギー消費量からみた現代社会の課題
2章、市場からみた太陽光発電システムの課題
3章、社会経済システムからみた太陽光発電システムの課題
4章、未来社会からみた太陽光発電システムの課題

この資料の1章から3章までのテーマは2011年12月18日に神戸市の神戸市勤労会館で開催された太陽光発電フォーラム(太陽光発電相談センター((財)ひょうご環境創造協会)NPO法人 太陽光発電所ネットワーク共催)での基調講演「再生可能エネルギー社会に進む中での太陽光発電の可能性と問題点」で報告したものである。

また、4章のテーマは2012年8月26日大阪市で開催された第二回PV-Net関西地域交流報告会「8月26日 太陽光発電交流集会 ますます活躍する太陽光発電」でおこなった報告「市民の声・市民の力・市民のエネルギー」で使われたものである。

今回の第11回縮小社会研究会での「太陽光発電システムは縮小社会のエネルギー生産を担えるだろうか」の発表に合わせて、第4章のテーマ「未来社会からみた太陽光発電システムの課題」をさらにすこし詳しく検討した。以下、今回の発表の要点を述べて見る。


3.11以後、市民の省エネ努力の成果は市民の底力を証明した

再生可能エネルギー生産技術開発よりも大量エネルギー消費社会を止めることが第一の課題である意見が出された。実際、今年夏に原発再稼働の理由となった電力不足に対して、市民は節電を行った。その結果、電力会社や政府の見解や予測を大幅に下回る節電効果を上げた。

3.11福島原発事故から1年目を経て日本のすべての原発はストップした。危険な原発に頼らない社会を目指すために、市民は節電に努めた。特に、夏の暑い時期に、節電することを要請された。しかし、政府は節電によっては、電力不足を解決できないとして、今年の夏前6月に、特に厳しい状況にある関西電力会社や関西経済連合会等の経営者組織の要請を受けて、活断層問題の解決していない大飯原発の再稼働を認めた。

実際、今年夏に原発再稼働の理由となった電力不足に対して、市民は節電を行った。その結果、猛暑による電力不足の発生、大停電の危険性を訴えていた電力会社や政府の見解や予測を大幅に下回る消費電力量を示した。現在、最も多い夏場の消費電力量は、当時予測されていた電力不足量を越えることはなく、つまり大飯原発を稼働させる必要のない状態であったことが判明している。

他方、気象データから夏の猛暑で温度が上がるごとに死亡者(熱中症による)が増えるという報告がなされている。確かに、震災以前の2010年には、熱中症によって救急搬送された件数がそれ以前よりも多くなっている(4)。しかも、熱中症によって死亡するケースは高齢者が高い確率を占めている。また、2011年7から9月までの3カ月間に、「熱中症で救急搬送された人は全国で約4万人であった。このうち重症患者の60%は室内で熱中症になり、44%が65歳以上の高齢者(総務省消防庁の資料)であったと報告されている。

省エネや節電によって、弱者がその被害を受けることは避けられない事実である。節電への努力が弱者切り捨てになることは避けなければならない。高齢者の熱中症を予防する試みと節電の試みの両立は可能なのか。そこに縮小社会研究会のテーマが存在している。高齢者の熱中症の原因の一つが、一人暮らしの高齢者人口の増加や、自宅とじ込もりの生活スタイル、高い電気代を惜しむ経済的理由にあると考えられている。その原因を解決すること、つまり、家に閉じこもりがちな高齢者が、涼しい共同施設で一緒に暑い夏を過ごす地域社会の取組を提案することで、節電と高齢者支援の二つの対策を両立できる。

縮小社会研究会の調査研究テーマは、この例に示したように、節電や省エネルギー、節約やリサイクルの課題を、一見、関係のない社会問題、少子高齢社会、教育、地域経済の活性化等々の現在の社会で問われている問題に関連して、解決策を提案することである。


固定価格買い取り制度によって暫定的に進む再生可能エネルギー生産(太陽光発電)とその課題

福島原発事故以来、日本社会(世界)で、原発に依存しないエネルギー政策が検討され始めている。原発の代わりに大量の化石燃料を使用している。しかし、地球温暖化現象を考えるなら(大気中の二酸化炭素量の増加は温暖化現象に関係ないという意見もあるが)はその解答に成りえないことも明らかである。原発や巨大火力発電システムが未来社会のエネルギー生産様式ではないという結論を得た現在、それに代わるエネルギーとは再生可能エネルギー以外にないということになる。

更に、再生可能エネルギー生産のためのシステムがその目的である化石燃料や原発によるエネルギー生産価格よりも高く、またそれらのシステムは技術的に貧弱であり頻発する故障等のトラブルによって、生み出すゴミ(再生可能エネルギーシステムの廃棄物)処理のコスト計算が正確に出されていないという批判もある。

そうした批判の最も集中している太陽光発電システムについて今回はその技術レベルの現状、システムの普及状況に関して取り上げる。最近の日経新聞の記事によれば(、7月から始まった再生エネルギーによる電力の固定価格買い取り制度によって、今年の7月と8月に登録された住宅用パネルの電力容量は30.6万kw、メガソーラー発電(非住宅用)は72.5万kw、つまり102.5万Kwの電力を太陽光発電システムで生産可能になった。政府・経済産業省は2012年度末まで、住宅用パネルの電力容量は150万kwとメガソーラー発電は50万kw、つまり合計して200万Kwの電力供給を試算していたが、その半分を2カ月間で達成した。つまり、6ヶ月間の計画の半分を2カ月間で達成したのである。

このことは、日本での太陽光発電システムが急激に普及することを意味している。この調子で太陽光発電システムが普及するなら、2012年度末には、太陽光発電システムだけで300万kwの電力を生産することになる。つまり原発3基分の電力が6ヶ月間で生産可能となるのである。もし、原発50基分の電力を太陽光発電によって生産しようとするなら、8年弱の年数で可能になる。

しかも、固定価格買い取り制度によって7月から8月の2カ月間で生産された再生可能エネルギー量は130万kwとなっている。つまり、2か月間で生産された再生可能エネルギー量は原発の1基分を越えるものである。この調子で生産が進めば、1年間に780万kwを生産することになる。つまり、原発1基の発電を100万kwとして計算して、原発50基分の電力(5000万kw)を、再生可能エネルギー生産システムの建設期間6年3カ月弱で、生産することになるのである。

再生可能エネルギー生産が進むことで、原発のみならず化石燃料による発電施設の必要性は無くなるだろう。火力発電所で必要とする化石燃料の輸入コスト年間約2兆円分が不要となる。つまり、国家の資金2兆円が海外に流出しなくなる。

しかし、原発不要の事態をもっとも恐れる人々は原子力ムラの人々である。これらの人々の反撃をかわすためにも、敢えて、再生可能エネルギー社会の可能性を検討し、そこに潜む大きな落とし穴や誤解を見つけ出す必要がある。原子力ムラの人々だけでなく、環境問題を考える人々をも含める人々からも投げかけられている疑問に答え、批判に耐えられる再生可能エネルギー社会形成の企画案が問われている。

それらの疑問や批判を抱えながらも、固定価格買い取り制度に便乗し(後押しされて)再生可能エネルギー生産が始まろうとしている。この後押しに依存しているだけでは、今後の再生可能エネルギー社会の形成や方向を確立することはできない。そこで、敢えて再生可能エネルギー社会の在り方を疑う必要があるのである。

特に太陽光発電システムはその疑問の中にあると言える。そこで、このシステムの技術や生産コストの現状を報告しながら、太陽光発電システムは未来社会のエネルギー生産の中心技術に成り得るか課題を検討する必要がある。


再生可能エネルギー社会形成のために問われる課題

世界のエネルギー消費量を太陽光発電システムで賄うことは可能か

エネルギー問題を語る時に常にその立場が問われる。何故なら、エネルギー問題ほど世界経済の現状、先進国と発展途上国の生活格差を反映しているものはないからである。殆どのエネルギー消費を先進国が独占している。また、あらゆる政治的手段を用いて先進国はエネルギーの独占を維持している。

そこで再生可能エネルギー社会の課題を、そのシステム建設が進む先進国(我が国もその一員)に限定せず、世界全体の人々が必要とするエネルギーを賄うための技術やエネルギー生産システムとして考える。世界全体で必要なエネルギーを再生可能エネルギーによって賄うことができるのかという疑問を前提にして、太陽光発電システムの技術やコストに関する議論の視点を立てることにした。

そして、現在のパネルの発電効率や実際の発電量から試算できる世界の一次エネルギー消費量を生産するために必要なパネル面積や設置費用を具体的に計算する。それらの仮説によって試算された数字の実現可能性をさらに検討する。


太陽光発電システムを普及させるために必要な市場原理とその課題

固定価格買い取り制度の導入によって、現在の太陽光発電システムのコストは、投資した分を回収し利益を上げることが可能であると市場は理解した。その結果が上記した今年7月と8月の2か月間の住宅用パネルとメガソーラーによる102.5万Kwの太陽光発電による電力生産であった。これらの電力生産量の増加は政策によって導かれたものである。

しかし、固定価格買い取り制度によって高く設定された再生可能エネルギーによる電力料金負担は電力消費者(国民)が担うことになる。つまり、この制度では、コスト的に高い再生可能エネルギーを生産することによって、国民は高い電気料金を負担することになる。つまり、固定価格買い取り制度によって、パネルを持たない人々はパネルを設置した人々がつくる高い電気を買うための負担を強いられることになる。そのことは、この制度自体が持続可能な制度でないことを意味する。

再生可能エネルギー社会を創るためにはその社会制度が持続可能な形で運営されることが必要となる。現在は 新しいシステムを社会化するために政府が政策として推進することは必要であるとしても、その制度によって負担する人々が増えるために、いずれその制度への批判が起ることは避けられない。そのためには、以下に示す市場原理の導入による、市民の自主的な選択行為としての再生可能エネルギーによる電力の購入制度が必要となる。

市民の自主的な選択行為とは、再生可能エネルギーによる電力料金の負担を自覚的に市民が受け入れる行為である。その行為が可能になる制度が必要である。例えば、すでに北欧で実施されているのだが、生産方法の違いによって電力料金が異なる制度、太陽光発電による電気料金、風力発電による電気料金、火力発電による電気料金や原発による電気料金が明記される。その上で、市民はどの電力を買うかを選択することが出来る制度である。この制度の導入によって、市場で人気のある電気が決まる。その電気の需要によって、その電気の供給も決まることになる。つまり、市場原理を導入して、それぞれの電気生産による料金制度を導入し、市場の判断によって、生産調整を行う制度である。

つまり、国家の介入による固定価格買い取り制度に依存し続けることでは、健康な再生可能エネルギー社会の建設の在り方は望めない。そこで市場原理を導入し、生産者間のペア-な競争によって生じるパネル価格の廉価化が生まれる。さらに、市場原理によって進む生産者の消費者への敏感な感覚の育成、例えば、消費者が生産者へのクレームを通じて生じる消費者による技術や製品の改良アドバイスが生まれる。そのクレームは助言を受ける生産者が消費者のニーズを取り入れることで新しい商品開発が促進されるのである。

また、現在の独占企業としての電力会社を少なくとも市場原理で運営される企業へと変革する必要がある。すでに政府もそのための政策を打ち出している。その一つが民間企業の電力産業への自由参加であり、発電と送電部門の分離(発送電分離)である。電力会社も一般の企業と同じような市場原理で運営されるべきだろう。そうでない限り、健全な企業経営を確立することは困難であると言える。


スマートグリッド(次世代送電網)によって総エネルギー消費量は増えないか

もともと、停電が頻発するアメリカで、中規模地域の送電を調整する機能として開発されたスマートグリッドは、風力や太陽光のように気象条件に左右されやすい不安定な電力と、至って安定した電力供給が可能な小型水力発電、バイオマス、海流発電や地熱発電等を組み合わせ、その上に火力発電によって需要の殺到する時間帯の電力をその需要量の変動に合わせて電力量を調整する、謂わば、電気供給制御システムを持つ送電網を意味する。

発電が集中型の巨大生産システムから分散型の小規模生産システムへと変化する再生可能エネルギーを活用する社会では、安定した電力供給が大きな問題となる。その解決策として脚光を浴びているシステム「スマートグリッド」とは、地産地消型の分散型エネルギーシステムを創り出す技術である。

不足電力のみならず、過剰電力の調整を行うことによってエネルギー効率を上げることが出来る。過剰時には火力発電による調整だけでなく、蓄電施設への余剰電力の蓄積を行い。不足時にはそれらの蓄電装置からの放電によって、不足電力の補充を行う。そのことによって、火力発電に必要な化石燃料の使用を最も経済的な値に近付けることが可能になる。スマートグリッド区域の蓄電効果を高めるために電気自動車用のバッテリーを活用する提案が出ている。つまり、スマートグリッドは再生可能エネルギー社会の実現には不可欠の社会システムの一つであると言える。

しかし、その必要条件が根本から問われている。それは、スマートグリッドを行うための巨大な情報処理機能の必要性であり、その情報処理機能を維持するために必要とされる電力である。現在の情報社会では、情報処理機器が消費する電力は莫大なものになりつつある。スマートグリッドは電力調整のための無数の情報処理機器を必要とする。その無数のCPUを動かすためにどれだけの電力が必要とされるのか、その総消費量は不明である。

つまり、夢のようなスマートグリッドの発想は、巨大科学技術システムやエネルギーや資源の大量消費を前提とし成立している技術システムであると言える。この制度自体がエネルギー消費量を出来るだけ少なくしようという発想を受け入れていない。そのため、スマートグリッドを地産地消型の再生可能エネルギー社会に導入することは困難であると言えるかもしれない。

もし、分散型エネルギーシステムでは制御機能が重大な役割を果たすと考えるなら(それしか道はないと思うなら)、スマートグリッドの徹底した省エネルギー技術の開発が必要となるだろう。


生産者として位置付けられていない住宅用パネル設置者の立場

住宅用発電所と非住宅用発電所の違いは、電力生産者が個人用住宅の屋根にパネルを設定しその電気を住宅用に利用しながら売電しているか、発電した電力を個人用に一切利用せず全て売電しているかの違いであると言える。またもう一つの分類として10kw以下の発電規模かそれ以上の発電規模かによっても分類されている。

これまでの太陽光発電は住宅用発電所が圧倒的に多く、その世帯数は今年の8月で100万世帯を越えた。しかし、固定価格買い取り制度によって、太陽光発電を事業とする企業が生まれ、今年の7月と8月に登録されたメガソーラー発電(非住宅用)は72.5万kwで住宅用パネルの電力容量は30.6万kwの約2.4倍となっている。つまり、固定価格買い取り制度の続く条件下では、この2カ月間の傾向が今後も続くと予測される。その意味で今後はメガソーラー発電が太陽光発電の主流を占める可能性が大きくなるだろう。

しかし、いずれにしても、固定価格買い取り制度がある限り住宅用発電によって生産される電力も今後も増えつづけることは明らかである。2か月間で30.6万kwの住宅用パネルの電力が増えるなら、一年間にその6倍、つまり184万kwの電力(原発約2基分)を増産し続けることになる。その発電機能は無視できないし、社会資本として高く評価しなければならない。

しかし、住宅用のパネル設置者はパネルの消費者として企業や社会から位置付けられているだけで、電力生産者としての位置付けが明確にされていない。例えば、住宅用の発電は余剰電力、つまり家庭で使用された電気を除いた分の電力のみが「買い取り」の対象となっている。

仮に、住宅用の発電所は家庭で電気を使うのだから、その余剰分のみを買い取りの対象とすることを認めたとしても、今年度の非住宅用パネルの設置者に対して42円の買い取り価格の設定が20年とされているのに対して、住宅用では10年とされている。つまり、非住宅用の半分の年数しか設定されていないのである。

このことは、住宅用パネルが社会資本として評価されていないことを意味するのである。そのことが、今後、以下に列挙する住宅用発電所の抱える問題に発展することになる。

1、住宅用パネルの事故や故障の問題解決
2、住宅用パネルの発電効率の低下、パネルの劣化問題に対する企業の補修や保障問題
3、自然災害時の住宅用パネルによる二次災害を防ぐための対策の遅れ


求められる生産者生協運動(再生可能エネルギー生産者市民運動)と市民参画型民主主義

アメリカのように、降水量が少なく日照時間の長い、しかも誰も使っていない広大な砂漠のような土地のない日本では、企業活動として太陽光パネル事業に参加するためには、土地問題を解決しなければならない。最も日本に相応しいパネル設置場所は屋根である。問題は、個人や企業、もしくは公共施設の屋根を有効利用するためのアイデアや方法が問われる。

一つの考え方はNPO法人PV-Netが進めている「市民ファンドサポートセンター」である。市民が自分たちの生活区域で出資者を集め基金団体(ファンド)を作り、その地区で利用出来るスペースに100kw以内のパネルを設置する運動である。また、ファンドに参加するメンバーの中には、自宅の屋根にファンドが出資するパネルを設置することも可能となる。自宅の屋根に設置したパネルはファンドのメンバーである屋根の所有者が日常的に管理する。勿論、その管理は無償のボランティア運動で支えるばかりでなく、そこに住む会員(屋根の所有者)の仕事となる。ファンドはボランティア運動と自分の実益を満たすものでなければならない。

市民ファンドに参加し、パネルを設置する人も、またファンドへの資金提供のみを行う人も、これら市民がエネルギー生産者であることが、自宅のパネルだけでなく共同出資のパネルも生産者として市民ファンドとして活動している。

この活動はこれまでの生活様式と異なり、エネルギー生産者の組合のようなイメージを持つことになる。つまり市民がエネルギー資源を生産する社会では、再生可能エネルギー生産者市民運動が形成され、エネルギー消費者であり生産者である市民の新しい運動が生まれるだろう。この再生可能エネルギー生産者の運動では、参画型の市民民主主義文化が基礎にない限り発展しないのである。


生き延びるために総力を結集すること

これからの社会は資源枯渇問題を抱え、また先進国では人口減少が進む時代である。その中で、現在のすべての力、技術開発、社会経済政策、市民運動、企業力等々、考えられるすべての力を動員し総力戦で、太陽光発電システム開発に取り組まなければ、このシステムが一次エネルギーの供給源となる未来はない。

結論から言うと、現在の太陽光発電システムの技術や生産コストから考えると、太陽光発電システムで将来の人類のすべての一次エネルギーを賄うことは不可能である。現在、固定価格買い取り制度によって、高く買われている太陽光発電を、健全な市場競争の中で、他の電力に負けないものとするための努力が必要である。



「成長経済主義を越えて成熟循環型経済社会への転回のために」 目次
http://mitsuishi.blogspot.jp/2015/01/blog-post_72.html



講演資料 第11回縮小社会研究会 研究発表
(資料をダウロードする場合には以下の論文タイトルをクリックする)
三石博行「太陽光発電システムは縮小社会のエネルギー生産を担えるだろうか」2012年9月30日 京都大学 (PDFファイルにリンク)

参考資料

1、縮小社会研究会 http://vibration.jp/shrink/ 10月14日、毎日新聞 朝刊 面  書評「松久寛編著 縮小社会への道」が記載される。 松久寛 『縮小社会への道 ―原発も経済成長もいらない幸福な社会を目指して―』日刊工業新聞社 2012年4月 220p

2、PV-Net関西地域交流会HP
http://kansai.greenenergy.jp/2012.9.5osakashinbun.pdf

3、小野雅司 環境健康研究領域総合影響評価研究室 「救急搬送データから見る熱中症患者の増加」『環境儀 No32 APRIL 2009 』 国立環境研究所の研究情報誌 ISSN 1346-776X http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/32/32.pdfX

4、本川 裕『社会実情データ図鑑』 「熱中症死亡者数の推移」 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1962.html

5、厚生労働省『厚生労働省ホームーページ』「平成22年の熱中症による死亡者数について ~全死亡者数の約8割(79.3%)が65歳以上~」 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001g7ag.html

6、株式会社インターネットインフィニティー 『介護専門職員サイト』「ケアマネジメントオンライン」 http://www.caremanagement.jp/?action_contents_season=true&page=summer2012

7、日本経済新聞夕刊 2面 9月26日発行

8、NPO法人PV-Net HP 「市民ファンドサポートセンター」 http://www.greenenergy.jp/citizen_plant/index.html

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2012年10月5日金曜日

未来社会からみた太陽光発電システムの課題

太陽光発電の将来性と問題点


三石博行


4-1、省エネ・創エネによる経済成長の可能性


現代科学技術文明構造の変革・「高度農工文明」への道(佐藤進氏の提案から)
我々は、経済成長は多量のエネルギーや資源の消費を必要とすると考えている。事実、資本主義社会は多量のエネルギーと資源を消費できる生産様式を作り出し、生産力を向上させ、安価の商品を大量生産しながら、発展して来た。

19世紀中期の機械制工場生産の導入、20世紀の機械制大工業や重化学工業の形成によって人類がこれまで経験したことのない生産能力を獲得し、また同時に多量のエネルギーと資源を消費しながら、現在まで、豊かな経済社会を創り出してきたのである。

言い換えると、エネルギーや資源の消費を減らすための条件として、経済成長は止まり、後退することは避けられないと考えるのが一般的である。そして、我々は、今まで繰り返してきたように、枯渇する資源エネルギーを巡る将来に起こる紛争(現実にイラクやリビアで欧米先進諸国によって、自由と民主主義の名のもとに、独裁政権の軍事的攻撃と政権転覆が起っているし、また、竹島(独島)や尖閣諸島(魚釣島)での日韓、日中の領有権問題が地域国際社会の平和的共存を脅かす事件として発展しつつある)を、今後も避けることができないと感じている。

21世紀の世界の平和を脅かす資源エネルギー占有を巡る紛争や戦争を回避するために、資源(食糧を含む)、エネルギーの各国の自給率を上げることが課題となるだろう。つまり、人類が末長く生き延び、今後も豊かな生活環境を持続するため、資源エネルギー自給、再生可能なエネルギー生産、省エネルギー・エネルギー効率の高い生産様式や資源リサイクル等々の社会経済技術と生活文化環境の構築が必要となるだろう。

1佐藤進先生(以後、佐藤氏と称す)は、すでに1970年代から、第四次産業(情報産業)の後にくる新しい産業、高度ソフト農工産業を提案していた。佐藤氏によると、この社会経済システムは、再生可能な自然エネルギー(水力、潮力、地熱や太陽エネルギー)を活用し、分散型小規模生産様式によって運営される。現在の再生可能エネルギー社会の課題を佐藤氏は1970年代当時から理解しのである。

つまり、再生可能エネルギー社会の成立は根本的に大量生産様式の社会と相反する新しい社会経済制度や科学技術が求められていると佐藤氏は述べている。この新しい社会制度はエコロジー思想に基づくものである。それらの未来社会を「高度ソフト農工文明」や「高度農工文明」と佐藤氏は呼だ。

佐藤氏が提案したポスト情報社会としての「高度農工文明」社会は、今、21世紀になって、真剣に議論され、社会経済制度や技術的可能性が研究されつつある。太陽光発電システムが一般化することによって、そのエネルギー生産の特性である分散型の生産によって、エネルギーの地産地消が行われえることになる。それらの地産地消型の生産消費文化は、すでに、1970年代から続けられてきた安全食品を求める市民運動が先駆的に切り開いてきたものであった。

資源エネルギーの大量消費こそ経済成長の条件であると信じて疑わなかった高度経済成長に酔いしれた日本社会の中で、リサイクル市民運動、例えば「使い捨てを考える会」や農産物の地産地消を運動してきた市民運動の地道な蓄積こそが、資源エネルギーの消費抑制と豊かな生活文化の両立の道を示す可能性を持っていると言えないだろうか。

それは、これまで日本の太陽電池や太陽光発電システムの産業化に貢献し続けてきたNEDO(政府の国家戦略)に対して、その役割と戦略方針、さらには機構の機能性をも問われることになるだろう。これまでの公共研究機関としてのNEDO指導力によって、今後の状況を切り開いていくためには、この問いかけを敏感に検証点検する機能性が社会経済システムの中に必要となるだろう。

技術革新よる経済成長と省エネの両立
1970代の日本社会で、「経済成長は資源エネルギーの大量消費によって可能になる」という資本主義社会の命題から逸脱した経済現象が起った。第一次から第二次オイルショックと呼ばれた原油の高騰によって日本経済は厳しい状況を迫られた。高騰した原油価格による経済的打撃を、使用原料の節約、つまり省エネルギー・資源対策で乗り切ろうとした。省エネ対策は、燃料や電気の使用上の工夫による節約や技術革新による生産システムの省エネルギー・資源のための技術開発が進んだ。国を挙げての省エネ技術の開発によって、高効率の生産システムを創り上げた。エネルギー・資源の消費量の逓減と生産性の向上が拮抗することなく実現したのである。

この経済・技術革新による国民経済への現象は、国内の一次エネルギー需要の変化に対する経済成長率(GDP増加率)の関係から観察することが出来る。この定量的関係を「エネルギーのGDP弾性値」と呼んでいる。以下、その関係式(2)を示す。

エネルギーのGDP弾性値 = エネルギーの需要の伸び率 / GDPの伸び率(式2)

省エネルギー技術の開発によって、エネルギーのGDP弾性値は変化することになる。「経済成長は資源エネルギーの大量消費によって可能になる」(命題1)というこれまでの資本主義経済の命題に対して、「経済成長は技術開発によって可能になる」(命題2)と「資源エネルギー利用の効率を上げる技術開発によって、一定資源エネルギー使用量に対する生産効率を高める」(命題3)という二つの命題を準備しなければならない。

命題2は、これまで技術革新と生産効率との関係として述べられてきた。この命題2を前提にして、資源エネルギー利用効率を上げる技術開発を行うことが、生産性の向上と矛盾しないということが論理的に帰結できる。つまり、命題3は、命題2から論理的に導くことが可能な命題であると言える。 この命題が成立するためには、エネルギーのGDP弾性値は1以下を示す観測値(データ)が必要となる。

つまり、 年間のGDPの伸び率をその期間の一次エネルギーの需要の伸び率から割ることよって算出される値をエネルギーの所得弾性値と呼ぶ。この GDP弾性値を使って、使ってエネルギー消費量と国民経済の成長の関係の推移を分析する方法が取られる。

図表15に1965年から2009年までの日本のGDP(各産業別と全体の)と一次エネルギー供給量の推移を示した。第一次石油危機(1974年)と第二次石油危機(1979年)がその期間に起こった。そのため、日本では省エネ対策を国家プロジェクトとして取り組んだ。GDPは右肩上がりを続けながらも1973年から1987年まで一次エネルギーの供給量は横ばいとなる。しかし、この間GDPは約230兆円から約380兆円へと増加している。つまり、国家プロジェクトの省エネ対策の結果、一次エネルギー供給量(消費量)の増加を抑えながらGDPを増やすことが出来たのである。

図表15 GDPと一次エネルギー供給の推移(国内 1965年から2009年)













引用 財団法人日本エネルギー研究所計量分析ユニット編『図解 エネルギー・経済データの読み方入門』p7

図表16に、1890年から2009年までの日本のエネルギー消費とGDPの伸び率から計算されるGDP弾性値(式2で示した)のデータを示した。1885年から2009年までのエネルギー消費量の年間増減率とエネルギーのGNP弾性値を図表16に示した。この図表16から、エネルギーのGDP弾性値が1以下を示す期間は、1950年から1960年の間が0.83、1970年から1975年の間が0.44、1975年から1980年の間が0.60、1980年から1985年の間が0.09、1985年から1990年の間が0.70、である。

この図表からも、1970年代から1980年代の20年間、日本ではGDPは成長しながらも、エネルギーのGNP弾性値は1以下を示している。つまり、省エネと経済成長が共に進んでいることが示されている。

図表16 エネルギー消費のGNP弾性値 (日本、1890年から2009年まで)












引用 財団法人日本エネルギー研究所計量分析ユニット編『図解 エネルギー・経済データの読み方入門』p9

言い換えると、1970年代から1980年代の20年間の時代、自動車産業では省エネエンジンの開発やロボット技術を駆使した生産性の効率化が進んだ時代であった。つまり、この時代に限って言えば、産業構造の省エネ化や省エネ製品の開発によって一次エネルギー消費量を抑えながら経済成長を可能にしていたのである。

脱化石燃料・脱原発エネルギー利用と再生可能エネルギー普及を可能にする条件 現在の一次エネルギー需要量の殆どを化石燃料が占めている。省エネとは化石燃料の消費を抑えるという別名でもある。特に、100%に近い化石燃料を海外から輸入している我が国での省エネ政策とは、エネルギー資源の海外依存度を減らすということを意味し、省エネルギー政策は国防政策と関連することになる。また、高騰する原油価格は一次的な現象でなく、化石燃料埋蔵量の減少つまり資源の希少化による価格高騰の現象であり、今後も高騰し続けるだろうという意見もある。

また、化石燃料使用によって生じた廃棄物・二酸化炭素や排熱による環境負荷と気象等環境変化が引き起こす経済効果も評価(4章2節(再生可能エネルギー生産コストの相対的評価で述べるが)しなければならない。

そこで日本政府は、原子力発電所の建設を進め、一次エネルギーの自給率を高め、脱化石燃料依存率を低下させるエネルギー政策を取ってきた。しかし、その政策が福島原発事故によって根本的に見直されようとしている。現在まで最も安価な電力として評価されてきた原子力発電による電力価格は、福島原発事故で発生した全ての被害額を算定し、それらのリスクを設置された全ての原発の経費や放射性廃棄物の処分と数万年以上の管理費用を予測計算するなら、おそらく高額になるだろうと言われている。

つまり、原油の高騰や原発事故による原子力エネルギー利用による発電のリスクが存在する以上、再生可能エネルギー資源の利用を進めるべきであるという考え方と高価なエネルギー利用によって日本経済は国際競争力を失うという考え方がある。とは言え、「エネルギーは100年の計」と言われるように、長期的視点に立ってエネルギー問題は考えなければならない。

現在、確かに再生可能エネルギーの生産コストが化石燃料や原子力燃料よりも高く評価されている。しかし、今後の資源枯渇や事故のリスク等々のエネルギー価格の高騰要因を長期的視点に立って考慮しなければならない。その上で、今後、再生可能エネルギー資源価格は相対的に低くなると予測できる。しかし、これは幾つかの仮定を入れての予測に過ぎない。

現在、国家の政策として再生可能エネルギー利用が進んでいる。つまり、国民の税金を使い、高い再生可能エネルギーを無理に使っているとも言える。国家の政策に再生可能エネルギー社会の建設を依存する限り、その実現は困難である。健全な市場の力で、つまり市民の自発的な経済活動として再生可能エネルギー資源の活用を進める必要がある。

市場の判断基準とは、一言で言えば、再生可能エネルギーの生産コストが化石燃料や原子力燃料でのその生産コストよりも低い条件を意味する。再生可能エネルギーの生産コストを低くする条件や課題については既に2章で議論した。その条件を改善する環境として、技術革新や生産規模の拡大がある。そのために政府の前提的な支援政策が必要となる。

すでに第2章で議論したが、一般に再生可能エネルギー資源の利用では、初期投資及びその破棄に関する費用以外に、システム稼働に必要な燃料費は不要であると考えられている。そこで、太陽光発電システムの製造と破棄・リサイクルの経費が少なく、システムのエネルギー生産効率が高く、しかも稼働年数が長く、故障が少ないという条件が得られるなら、太陽光発電システムによるエネルギー生産コストは下がる。

以下、簡単にその条件を列挙した。
1、再生可能エネルギー生産設備の生産とリサイクルに必要なエネルギー使用量とその生産システムが生み出すエネルギー量との関係から導かれるエネルギー回収年数が短いこと。
2、システム設置と維持管理コストが一定年度間のエネルギー生産コストより低いこと。
3、エネルギーの質(時間的地理的に変動し続けるエネルギー需要の特性に対応しえる供給側のエネルギーの特性)が高いこと。
4、市民による再生可能エネルギーシステム管理が可能であり、エネルギー生産者の大衆化が進むこと。

再生可能エネルギー生産による経済成長
持続可能な社会経済システムを構築するために再生可能な自然資源を活用したエネルギー生産(創エネ)が課題となっている。この再生可能エネルギーの生産は新しい技術開発によって可能となる。言うまでもなく、省エネと創エネを組み合わせることで、積極的に一次エネルギー需要に占める化石燃料量を少なくすることが出来る。

現在、国内で消費される一次エネルギーの殆どを化石燃料と原子力燃料に依存している。再生可能エネルギーの占める割合は4%で、その殆どが水力発電である。その数字がそのまま日本のエネルギー自給率を示している。今後、太陽光発電をはじめ再生可能エネルギーの生産が増加していくことでエネルギー自給率は向上する。そのことは国内でのエネルギー生産量としてGDPを押し上げることを意味する。それと同時に、一次エネルギー資源を国外から輸入する量が減少する。

例えば、国内での一次エネルギー消費量から再生可能エネルギーによって生産された分を差し引くことによって得られる値は、海外から輸入された化石燃料や原子力燃料等と考えることが出来る。この値を非再生可能エネルギー消費量と呼ぶことにする。

(2)式を応用して、この非再生可能エネルギーの年間消費量の伸び率とGDPの伸び率の関係から、非再生可能エネルギーのGDP弾性値を仮定してみる。この関係式を(3)式に示す。

非再生可能エネルギーのGDP弾性値 = 非再生可能エネルギーの需要の伸び率 / GDPの伸び率)(式3)

この(3)式は、再生可能エネルギー生産が普及する社会、例えばその割合が10%以上になる社会の場合には、(2)式で導いたエネルギーのGDP弾性値に相当すると考えられる。従って、その値が1以下を示す社会では、化石燃料等を中心とする一次エネルギー消費量を抑制もしくは減少させながら経済成長を維持もしくは発展していると解釈できる。

再生可能エネルギー生産システム(太陽光発電システム)の普及によって国内エネルギー生産量は増加し、そのシステムが積極的に経済成長に寄与していることを意味する。また同時に、非再生可能エネルギーGDP弾性値を1以下に抑えることで化石燃料等の省エネ技術や社会システムが発展していることを意味する。再生可能エネルギー生産によって積極的に経済発展を進めながら、省エネによって再生可能エネルギーの高効率利用を更に可能にすることになる。

太陽光発電によって太陽光パネルを生産する社会・再生可能エネルギー社会
現在の再生可能エネルギー生産システムは化石燃料や原子力発電を活用して生産している。太陽光発電システムを大量に生産するためにはより多くの化石燃料や原子力エネルギーを必要とする。言わば、地球温暖化ガスを多量に排出しながら太陽光パネルを生産し、原発で生産する電気を使いながら風力発電を作るという状態が、再生可能エネルギー社会を創りだすための過渡的な段階で起る。

もし、太陽光発電システム等を作るために必要なエネルギーを、限りなく今後も、化石燃料や原子力エネルギーに依存しなければならないとすると、再生可能エネルギー社会を作るために余分なエネルギーが必要となる。それでは、再生可能エネルギー社会を目指すという目的に反した、再生可能エネルギーシステムを作るという、本末転倒の事態が生じる。つまり、再生可能エネルギーシステムの形成を行うために、いつまでも化石燃料や原子力エネルギーに依存する必要があるなら、再生エネルギー社会の建設自体がその目的と異なる間違がったエネルギー政策である。

ここで言う再生可能エネルギー社会とは一次エネルギー消費量の大半を再生可能エネルギー生産によって賄うことが出来る社会であり、再生可能エネルギーによって、再生可能エネルギー生産システムを生産することが出来ることがその成立条件となる。

例えば、太陽電池の生産によって、太陽光発電を行うことが出来る。その発電によって、さらに太陽電池の生産を可能にする。再生可能エネルギー生産システムの自己組織性が形成されて成立する社会である。自然エネルギー生産と消費による自然エネルギー生産システムの増殖過程を持つ、自己組織性の自然エネルギー生産システム社会を、再生可能エネルギー社会と呼ぶことにする。

再生可能エネルギーの生産による再生可能エネルギー施設の生産が可能になることで、太陽電池とそれによる太陽エネルギー生産は相互にループしながら、経済を発展させるのではないだろうか。この経済システムを山崎養世氏は「太陽経済」と呼んだ。そして、山崎養世氏は「太陽からのエネルギーを活用し、資源とエネルギーを節約し、水と食糧を確保して、人類は自らを救い、人間性を守ること」を課題にした太陽経済を広める活動「太陽経済の会」を行っている。

経済成長と省エネルギーが共存する条件として、省エネと創エネの技術革新が課題となっている。太陽光や太陽熱の利用技術のみでなく、他の再生可能エネルギー生産技術や省エネルギー技術の向上とその技術導入、社会経済インフラの再整備によって経済成長は保障され、同時に化石燃料依存度は確実に低下するだろう。また同時にそれらの新しい再生可能エネルギー産業の形成によって雇用が生まれることも確かである。雇用の創出によって消費は開発されるだろう。当然のことながら、新しい産業、再生可能エネルギー産業の形成によって経済活動は活発化することになる。


4-2、太陽光発電で全世界のエネルギーを賄うことが出来るか 


日本の年間総発電量を賄うパネルの広さは琵琶湖の15倍(理論値)、12倍(現実値)となる
産業総合技術研究所の作田宏一氏は、日本の年間総発電量を1.000.000GWh(10億万KWh)とする場合、等価稼働時間を1時間で10%の発電効率をもつ太陽光発電システムの必要容量は1.000GW(0.1億万KW)として、約10.000 K㎡(1万平方キロメートル)の面積が必要であると報告している( )。縦横100㎞の正方形の面積である。この面積は、琵琶湖の面積が約670平方キロメートルであるから、琵琶湖の約15倍の面積が必要となる。

例えば、実際、筆者が観測し集計してきた住宅用の太陽光発電システムの発電量のデータを活用して、上記の課題、世界のすべての消費エネルギーを太陽光発電で賄う条件を計算してみる。図表17に示すように、シャープNE-132型のモジュール(発電効率10-12%)40枚(38.48平方メートル)の太陽光発電システム(2004年設置)で設置から2011年までの発電量の年間平均値は4665KWh/年となる。



図表17 シャープNE-132型のモジュール40枚の面積と価格(2004年)





筆者の太陽光システムと地理的条件が異なることをここでは無視して、この太陽光システムを使って10億万KWh/年間の発電を行うためには、0.825万平方キロメートルのパネルが必要となる。作田宏一氏が理論的に導いたパネル面積の0.825倍の面積となる。つまり、筆者の自宅のシャープNE-132型のモジュールを使って日本の年間総発電量を満たすパネル面積は琵琶湖の12倍の面積となるのである。またそのパネルを設置するために必要な資金は約750兆円に相当する。現在のパネル価格は2004年時点よりも安くなっている。現在では上記のパネル面積に相当する価格は約200万円であると言われている。仮に、価格が半分になったとしても、約325兆円の資金が必要となる。

また、2008年度の日本の一次エネルギー消費量は約58億トンTOEである。1TOEは1.1628万kwhに相当するので、年間6.74億万kwhの電力量となる。つまり、この年間の日本のエネルギー消費量を満たすために必要なパネル面積は55,660平方キロメートルで琵琶湖の約83倍、九州と四国を合わせた面積に相当する。 このことから、日本の一次エネルギー年間消費量を発電効率10-12%の多結晶太陽光発電システムで補うことは非現実的であると言えるだろう。

変換効率約10%のパネルで世界の1次エネルギー消費を賄うパネルの広さは 桑野幸徳氏は1989年に「ジェネシス計画」と称する太陽光発電による世界規模のエネルギー自給システムを提案した。2010年の世界の1次エネルギー消費は、原油換算で年間140億キロリットルとなると1989年に桑野氏は予測した。

現在では変換効率はよくなったが、当時、桑野氏は変換効率10%の太陽電池で、2010年に必要となる世界の一次エネルギー量を140億Kリットルと仮定し、そのエネルギーをエネルギー変換率10%の太陽光発電システムで生産するとして、その電気エネルギーを生産するために必要な太陽光発電システムの面積が800Km×800Km(640,000平方Km)と換算している。

つまり、東京と広島間の距離を二辺とする正方形の面積(世界の全ての砂漠の4%)で、原油140億リットルの一次エネルギーを太陽光発電で生産できると仮定した。しかも、アフリカの砂漠に巨大な太陽光発電システムを造り、その電気を直流電力融通幹線網で世界中に送電するGENESIS (Global Energy Network Equipped with Solar cells and International Superconductor grids)を桑野氏は提案している。

実際、桑野氏の予測に近い値、2010年のBP Statistical Review of World Energy の資料によると120億トン(石油換算トン)である。図表17に示すように、2010年度の世界の1次エネルギー消費量は120億TOE、つまり135.5兆KWhの電力量となる(1TOEは電気量に換算して1.1628万KWhであるので、120億TOEは139.5兆KWhとなる)。また、2035年には168.4億TOE、つまり195.8兆KWhの1次エネルギーの消費量が予測されている。25年間で増加する1次エネルギー消費量は56.3兆KWhと仮定されている。

図表18 世界の1次エネルギー消費量増加率(2035年)




例えば、筆者が実際観測し集計してきた住宅用の太陽光発電システム(シャープNE-132型のモジュール(発電効率10-12%)40枚、38.48平方メートル)の発電量の図表17に示したデータを活用して、上記した日本の年間総電力量と一次エネルギー消費量を賄うために必要な面積と金額を予測してみる。

2010年度の世界の一次エネルギー消費量を賄うために必要な太陽光パネルの面積は約115万平方キロメートとなった。シャープNE-132型のモジュール40枚38.48平方メートルを設置し屋根が299億軒数必要となる。つまり、このモジュール(発電効率10-12%)を使って世界の年間総発電量を賄うために必要な太陽光パネルの総面積は琵琶湖の1716倍の面積、日本の国土の約3倍の面積が必要となるのである。

さらに、この発電システムの設置に350万円が必要であったとすれば、115万平方キロメートルのパネルを設置するためには、これだけのパネルを設置するシステム価格は10.4京円(104,689兆円)必要となる。現在の日本の国家予算(80兆円)の約1309倍である。 2035年度の世界の1次エネルギー消費予測量は168.4億TOCであると仮定すると、2010年度の約140.3%の増加となる。すると、391.1億軒数の同じタイプの太陽光発電システム(シャープNE-132型のモジュール40枚38.48平方メートル)を載せている家が必要で、約162万平方キロのパネルが必要となる。つまり、1000Km×1620Km(1620,000平方Km)、日本の面積が約37.8万平方キロであるから、その4.3倍の広さの太陽光パネルが必要となる。

また、上記と同じ条件でそのパネル設置に必要な予算は約14.7京円となる。つまり、今後20年から25年間掛けて、世界が12京円の予算つまり(年間平均7300兆円から5800兆円)の予算を太陽光発電システムに費やすなら、2035年には、世界の1次エネルギーを太陽光発電で賄うことができる。


図表19 図表16の条件で世界の1次エネルギー量を生産するために必要な面積と財源






しかし、2010年度の世界のGDPは約629.1兆ドルで、1ドル100円として換算すれば6291兆円となる。2035年までに世界の1次エネルギーをすべて太陽光発電システムで賄うために必要となる太陽光発電システムへの年間投資金額は7300兆円から5800兆円であるから、世界のGDPに匹敵する太陽光発電システムへの投資が必要となることが理解できる。

以上の議論から、2035年までに世界のすべての1次エネルギーを太陽光発電システムで賄うことは、現状の太陽光発電システムのシステム価格、電源コスト、発電効率の状態では非常に困難であることが理解できるだろう。

また、現在のシステムの耐久性を考慮するなら、10年間で発電効率が仮に20%低下し、20年間の試用期間中に必要となるパネルの補修費用を考えると、現状の太陽光発電システムで世界の1次エネルギーを賄うことは夢のまた夢であると言える。

今後の技術革新によってどこまで太陽エネルギー利用は改良可能か 第3章3-1の図表13の「PV2030+による太陽光発電技術開発シナリオ」で示したように、発電効率はNDDOの計画に従い、2020年までにモジュール変換率20%に、2030年でモジュール変換率25%に改良され、また発電コストやシステム価格も逓減するなら、上記した条件は大きく変わることになる。単純に計算しても、1KWhの発電に必要な太陽光パネル面積は2020年には2010年の半分、2030年にはさらに少なくなる。仮に、2035年では現在の発電効率の3倍の電気を生産できると仮定するなら、図表18に示すように、2035年に必要な太陽光システムの面積は日本列島の約1.4倍の広さとなる。


図表20 図表16の3倍の条件で世界の1次エネルギー量を生産するために必要な面積と財源






2012年1月16日の環境ビジネスのニュースによると「物質・材料研究機構の深田直樹グループリーダーは、現在主流となっているシリコン太陽電池において、シリコンナノ構造体を機能的に複合化させることで、接合面積を100倍以上にできる新構造の太陽電池材料を開発した。シリコン材料の削減による低コスト化と変換効率向上を両立させる、これまでにない新しい太陽電池材料として、5年後に実用化する予定」であると報道されている。

この報道記事の通り、同一面積で現在の太陽発電量の100倍の電気を発電することが可能になり、また発電コストが非常に安くなるならば、世界のすべての1次エネルギーを太陽光発電によって賄うという計画は決して不可能だとは言えないだろう。 しかし、それらの革命的な技術を使った太陽光発電パネルの生産はまだ実現してはいない。殆どと言っていいほど現状では実現不可能に近く、その計画の可能性を楽観的には予測できないことは事実である。そして、21世紀の半ばまでに太陽光発電システムのみで人類が必要とするエネルギーを賄うことは可能であるとは言えない。

また、すべての再生可能エネルギーを活用して人類が消費する1次エネルギーの生産が可能になるとは言えない。そして、予測を上回る勢いで世界の1次エネルギー消費量が増え続ける可能性も否定できない。そう考えるなら、再生可能エネルギーによって世界のすべての1次エネルギーを賄うことは殆ど可能性のないほど困難であるとしか言えないのである。


4-3、太陽光発電システムの普及を進めるための課題

再生可能エネルギー生産コストの相対的評価
上記の議論から太陽光発電システムを使って現在の消費エネルギーを賄うことが非常に困難であることに気付くのである。しかし、このことは、即、原子力発電や化石燃料発電を維持推進することを意味するわけではない。
これまでの原子力発電による電力料金の計算方法に大きな欠陥がある。例えば研究開発費等々の政府補助金(国民の税金)や福島原発事故処理費(これも税金)は含まれていない。その上で政府試算の原発の発電原価は5.9円となっていた。

しかし、これまで初期トラブル、老朽化によるトラブル、さらに頻発する事故による停止は、今までも頻繁に起っている。その上、原発の過剰電力を捨てる「揚水発電所」の建設費、原発依存が招く過剰設備、原発立地対策費を支払っている。今回の福島原発事故処理の経費(被害者救済、放射能除染、事故処理、廃炉、高放射性物質の処理等々に必要な費用)が必要となる。その意味で、原発の経済的な再評価を行う必要性を訴える指摘を否定することはできない。

もし、これらのすべての費用を原発の発電原価に組み込むなら、予想をはるかに超える電気料金になることは避けられない。その意味で原子力エネルギーによる発電原価は、今後、再生可能エネルギーの原価より安いと言うことにはならないのである。しかし、そこには再生可能エネルギーのコストが今以上に安くなるという条件を満たすことが前提となっている。

また、化石燃料の使用による大気中の二酸化炭素の増加とそれによる地球温暖化現象が問題にされてきた。地球の温暖化現象への二酸化炭素の影響に関しては異論も出されている。しかし、現実の地球の温暖化はこの半世紀に進んだ。そして同時に大気中の二酸化炭素量も増加した。仮に、その二つの要因が温暖化に関係がないとしても、大気中の二酸化炭素量を増やすことは、これまでの地球規模の生態系にとって大きな変化があることには違いない。その生態系の変化がもたらす気象へのリスク、温暖化現象をまったく否定することは出来ないという立場も成立する。

この仮定に立って、二酸化炭素の排出の経済効果を考える。つまり、気象や生態環境の変動がもたらす災害、例えば都市のヒートランド現象等によるゲリラ豪雨、集中豪雨、雷雨、竜巻の発生による洪水、深層崩壊、土砂崩れ等の災害の発生、さらには北極、南極や高山地帯の氷河溶解による海面上昇と高潮の危険性等々の自然災害の増加による経済的被害を試算する必要がある。世界規模の自然災害の増加と大気中に排出された二酸化炭素量との関係を精密に求めることは難しい。しかし、その相関関係から導かれる二酸化炭素排出量の価格を仮定することは可能である。

その意味で、化石燃料を使ったエネルギー生産(熱や発電)は出来るだけ低く抑えるべきであるという意見が出されてきた。当然、この意見に便乗して原子力発電(原発)の建設が提案されてきた。しかし、原発の熱効率は悪く、例えば沸騰水型の原子炉では33%であると評価されている。つまり、この原子炉では三分の二の熱を捨てながら発電を行なっているのである。 以上の議論から、原子力発電コストや化石燃料発電コスト試算の中に放射能汚染や温暖化という環境破壊の被害コストを計算する必要がある。

社会資本としての太陽光発電システムの位置付け パネルの消費者かエネルギーの生産者か
2012年7月1日から固定価格買い取り制度が始まった。その2ヶ月後の9月に住宅用パネルの設置件数は100万世帯を超えた。この制度が存在する前から日本の太陽光発電の主流は住宅用パネルである。つまり、日本では高額の資金を出して太陽光発電を設置する人々が他の国々に比べて相対的に多くいるといえる。それは日本人の環境意識の高さであるとも評価できるだろう。

日経新聞によると、今年(2012年)の7月と8月の2ヶ月間で認定を受けた住宅用パネルの電力容量は30.6万kwであり、メガソーラー発電(非住宅用)は72.5万kw、風力発電は26.2万kw、等々、再生可能エネルギー全体で130万kwとなっている。政府・経済産業省は2012年度末まで、住宅用パネルの電力容量は150万kw、メガソーラー発電は50万kw、風力発電は38万kw、等々、再生可能エネルギー全体で250万kwの導入を予測していたが、その予測の半分をすでに2ヶ月間で達成した( )。 この数値が示す意味は、固定価格買い取り制度は再生可能エネルギーの普及に大きく貢献していること、また、住宅用や非住宅用(メガソーラー)の太陽光発電パネルの設置は今後も急速に進むことを意味する。

今年度の1kwhの買い取り価格は住宅用太陽光発電と非住宅用(メガソーラー)太陽光発電では42円と設定されている。この価格で住宅用太陽光発電は10年間、非住宅用(メガソーラー)太陽光発電は20年間買い取り価格を保障される。そのために、多くの市民や企業が売電による利益を目的にしてパネルを設置している。買い取り価格が高めに設定されている限り、今後もパネル設置は進む。

この固定価格買い取り制度によって再生可能エネルギーによる電力の生産が進む。つまり、原子力発電所や火力発電所のような50万kw以上の大型の発電施設に代わって、1万kwクラスのメガソーラーや10kw以下の住宅用太陽光発電所が至るところに設置される。それらの小規模発電所は電気を生産する施設である。また、原発などの大型発電所と異なりこれらの小規模発電所は電力消費地に設置されている。その意味で、送電時の電力ロスが少ないのである。

しかし、同時に、太陽光発電の普及はそのシステムが抱える幾つかの重大な問題を提起している。その一つが太陽光パネルの劣化問題である。産業技術研究所の太陽光発電工学研究センターの加藤和彦博士らが運営するボランティア団体「PVRessQ!」はこれまでの483件の住宅用パネル(10年以内の発電システム)の調査のデータを公開している。そのデータによると、運転開始からで483件中100件(全体の21%)の発電所がパワーコンディションの修理・交換を行なった。そして、483件中78件(全体の16%)が太陽電池モジュール1枚以上の交換を行なったと報告されている。

太陽電池モジュールの交換に至るパネルの故障の主な原因は、モジュールの素材である半導体の故障というよりも、モジュール間やパネル間を接合する部分の劣化による電気抵抗の発生と発熱によってモジュールが壊れるケースが多いとの報告があった。

京セラが1983年に国内で初めて、太陽光発電システムを商品化した。それからシャープが2000年から大量生産を行なった。つまり、太陽光発電システムが市場に出てから約12年の歳月しか経っていない。その意味で、このシステムの持久性を検証するデータは多くないのである。それにも拘わらず、2000年以降のパネルの保障期間は10年となっていた。また現在では20年と言われている。

2000年代当時1kwあたり80万以上した高額な設備である住宅用太陽光発電システムの10年間の保障期間中に、製造業者にはその保守点検を行なう義務はない。例えば、トヨタ自動車を初め、日本の自動車メーカーで新車を買った場合、少なくとも1、2年の間、無料の保守点検がサービスとして付いている。しかし、車と同じ位、いやそれ以上の高額な太陽光発電システムに対して、販売業者の保守点検の義務もなければ、勿論、サービスもないのである。

10年以内の太陽光発電システムの21%がパワーコンディションの修理・交換を行ない、またその16%が太陽電池モジュールの交換(一枚以上)をしたという調査結果からすれば、現在、100万世帯に普及した住宅用太陽光発電システムや非住宅用メガソーラーのシステムの故障が大きな社会問題となることは明らかである。そして、この社会問題を正しく解決することが出来なければ、太陽光発電システムの設定に投資しようとする市民や企業の数は激減することは明らかである。

パネル製造企業や政府は、太陽光発電システムの劣化、故障の問題を解決する方法を早急に見つけ出さなければならないだろう。特に、安価な中国・台湾製や韓国製が市場を席巻しようとしている。それらの20年保障を謳うパネルを設置した市民や企業が、今後、10年以内、もしくは10年後に果たして故障したパネルを無料で修理して貰えるのかが深刻に問われているともいえるだろう。

言い換えると、政府も企業も住宅用パネル設置者を高額な電気製品の消費者としてしか位置付けていないことが問われていると言える。太陽光発電システムを導入する市民は、パネル業者から観れば消費者である。しかし、同時に、社会からみれば電気の生産者である。太陽光発電の経済的で社会的な効果を評価するために、固定価格買い取り制度が作られたのである。その意味で、エネルギー生産を行なう社会資本として住宅用の太陽光発電所を位置付けるには、価格の買い取り制度のみでなく、太陽光発電所の保守と修理に関する制度が必要となると言える。

太陽光システムの危機管理と生産技術の開発
東日本大震災時に太陽光発電システムの被害状態に関する現地調査を、NPO法人太陽光発電所ネットワークは東京工業大学ソリューション研究機構 黒川浩助特任教授と共同で進めた。この調査によって東日本大震災時の住宅用パネルの被害状況が判明した。その報告書の中から、特記すべき課題を以下に述べる。

一つ目の課題は、パネルを設置することによって屋根の強度が確保され、その結果地震による屋根の被害がパネル設置家屋は相対的に少なかったという調査結果であった。
二つ目の課題は、地震によって壊れない強固なパネルによって、その後も発電を続けるために、しかも接続箱にある回線切断用設備が活用されていないので、その部分に発電によって生じた熱が発生する。その熱によって結果的に電線が燃えて、さらにその火災によって電気がショートし電線が炭化したのである。この事故を予防するためには、災害時には回線を切断しておく必要がある。そうしなければ、太陽光発電による家屋の火災が発生する可能性が起こるのである。
さらに三つ目の課題は、災害時には太陽光発電システムの自立機能を使い、停電時でも電気を供給できることも証明された。しかし、中規模の住宅用太陽光発電システムには自立運転機能がない場合もあり、パワーコンの自立分電盤機能を追加する必要が求められた。

こうした調査結果は太陽光発電システムの安全管理や危機管理機能を向上させるために評価できる。政府や業者が、今回調査を行なったNPO法人(PV-Net や再生可能エネルギー協会)と大学研究機関と協力し、太陽光発電システムの改良を進める必要がある。

4-4再生可能エネルギー生産管理システムの普及化を促進する新しい文化、社会のあり方

これまで太陽光発電システムの技術的課題に関して議論してきた。これまでの議論から、太陽光発電システムの限界もその可能性も、このシステムの技術的改良に委ねられているという結論が出てくる。しかし、「4-2、太陽光発電で全世界のエネルギーを賄うことが出来るか」で議論したように、発電効率を上げることや、生産価格を下げることなどの太陽光発電システムの生産に関する技術的な議論の限界を理解しておく必要がある。

つまり、太陽光発電システムによって世界や日本の一次エネルギー消費量の大半を生産することが不可能に近い計画であるなら、他の再生可能エネルギーを導入し、また省エネ技術を駆使して、再生可能エネルギー社会の構築という困難な課題に取り組むべきである。つまり、太陽光以外の再生可能エネルギー(太陽熱、バイオマス、風力、潮力、地熱、排熱、水力等々)の活用と電力生産や省エネルギーの技術開発を急ぐべきである。 しかし、再生可能エネルギー社会を構築するためには、技術的な課題だけでなく、社会文化や生活文化の課題が問われている。

集中型生産様式から分散型生産様式へ 再生可能エネルギー生産の特徴は、生産能力が大規模化できないことである。原子力発電や大型火力発電と違い、小規模の発電能力しかもっていない。例えば、10万kwのメガソーラー発電所を建設するには広い敷地が必要となる。固定買い取り制度を活かして、多くの企業がメガソーラー発電所の建設にビジネスチャンスを感じている。休耕作地、日照条件のよい山林、空き地等々の利用を考えている。しかし、殺到するメガソーラーの建設の需要で、こうした土地は高騰しつつある。設置場所の借地金が高騰すると発電から得られる利益は落ちることになる。つまり、経済的なメガソーラーの設置は、格安の借地でなければ、自治体が提供する公共地か自己所有地となるだろう。

広大な砂漠を活用して太陽光発電システムが出来る国々の事情と異なり、平野面積の狭く、人口の多い我が国では、狭い平野に太陽光発電や風力発電を立てることは困難である。パネルの設置場所に休耕田や家屋の屋根利用が計画されている。食糧自給率が30%以下である我が国の食料資源の自給問題を考えると、休耕田を利用することは困難になる。我が国の地理的や文化的事情に適した太陽光発電所の条件を見つけ出す必要がある。

この我が国の地理的条件や発電資源の特性から、太陽光発電に限らず、風力発電、小規模水力発電、地熱利用、潮流発電等々の再生可能エネルギー生産の規模が限定される。設置価格の安い中小規模発電所を効率よく配置連係させるネットワーク設計とその経済的環境条件を確立する技術開発が求められている。

この技術開発の課題の一つが、地域電力調整制御システムの開発である。風力や太陽光による発電は、気象や時間によって発電量が変動する。そのため、質の悪い電気と評価されている。つまり安定供給が出来ないのである。この弱点を克服するために、一つはスマートグリッド、コミュニティグリッドと呼ばれるネットワーク型のエネルギーの供給需要と制御調整機能が必要となる。このネットワーク型のエネルギー需要供給システムを、別名、エネルギーの地産地消型と呼ぶことができる。

言い換えると、再生可能エネルギー社会は、これまでの生産様式である集中型、大量生産と流通方式と異なる産業構造や社会制度の構築、つまり分散型の生産システム、分権型の社会システムが形成されることになる。この分散型社会が集中型社会よりも経済的であり、生産やコミュニケーションの効率がよいということが前提となる。

この前提を受けて社会経済システムが確立するための条件は、資源の有限性やその枯渇問題が顕在化していることにある。つまり、これまでの大量生産制度を支えていた要因の一つは、化石燃料資源を代表として天然資源は無限にあるという考え方であった。しかし、資源の枯渇問題は年々深刻化しつつあり、資源のリサイクル等による再利用によって、持続可能な資源利用リサイクルを創らなければならない。その循環型サイクルを維持するために小規模化の技術と生産システムが再評価されることになる。

資源の枯渇問題を抱えた21世紀の社会経済は、必然的に分散型社会へと変化していくことになると言える。しかし、現実は先進国の優位な経済力を背景に資源の独占化を維持しようとしている。だが、力を増す発展途上国や新興国の台頭によって、資源の独占的な支配構造もそう長くは続かないだろう。その意味で、先進国は分散型生産様式を取り入れ、いち早く持続可能な社会経済システムの構築を目指す必要があるだろう。すでにヨーロッパ社会が先行して持続可能な社会のための実験を進めている。

地産地消型エネルギー生産と地方分権化と国際地域共同化
エネルギーの安定供給化を可能にするためには、地方分権化と国際地域共同化が必要となる。地方分権化とは地域共同体の役割を重視する社会制度である。つまり、地方分権によって広域地域自治体の形成が可能になり、エネルギー生産に関連する社会資源の共同利用を可能にすることができる。 広域地域自治体(市民参加を前提にした地域社会運営)を土台とした国のかたちから逆算して考えるなら、地域国際共同体の形成が課題となる。言い換えると、地方分権化による広域地方自治体の形成によって地方の多様性が生まれる。その社会の多様性が日本社会の国際化を進めるのである。中央集権的な国家から地方文化の多様性が失われる。その分、国際化に必要な要件を失うことになるのである。

言い換えると、分散型社会の経済合理性は、ネットワーク型社会によって生まれる。つまり、分散型社会は地方分権化を要求する。そして、地方分権化は社会の多様性を生み出す。その結果、社会の多様性によって分散型社会は地域国際社会での経済文化競争力を獲得することになるのである。 同じように、分散型エネルギー社会の多様なエネルギー生産活動によって広域地域自治体の安定した経済活動が保障され、エネルギーの需要と供給のネットワークを地域国際共同体に広げることも可能となる。具体的にはEUのエネルギーネットワークを模範にしながら、東アジア共同体のエネルギーネットワークを構想することも可能となる。

市民参画社会によって発展する再生可能エネルギー社会システム
エネルギーの地産地消型によって分散型エネルギー生産システムは有効に機能する。その機能を支えるのは、単にスマートグリッドの情報処理や制御技術だけではない。分散型生産システムに必要なきめ細かい生産地と消費地のコミュニケーション力であり、そのコミュニケーション力を維持発展する力は市民参画型社会によって形成される。

生産者であり消費者である市民によって、資源の有効活用を生み出す生活文化が形成され、それをリサイクル文化と呼ぶこともできるが、大量消費生活への反省や環境保全を生活文化とするライフスタイルの形成が行なわれ、人々の豊かさの評価尺度が、消費財の価格評価から、生活の質(QOL)を重視した生活文化やライフスタイルへ移行することになる。

人権や平和、共存やコミュニケーションが社会文化の評価の基準となり、社会サービス業務への市民参加(ボランティアやNPOの役割)が国民総生産の一要因として評価され、こころを持つと呼ばれる良質の福祉環境が形成され、また生態環境が生活の豊かさの一要因となるだろう。 このように、大量消費文化を支えていた経済主義から脱却していくとき、経済の分散型社会の経済効率は向上するといえる。その意味は、これまで経済主義の評価していた資源概念が大きく変化し、産業生産に有用な資源のみでなく、家庭生活に必要なあらゆる資源(愛、思いやりや協力)を含めて経済活動として評価されることになるだろう。

市民参画社会とは、生活重視の考え方に立った人々によって創られる社会を意味する。それらの社会生産力とは、豊かで多様な生活資源の生産を意味する。その生産に有用なシステムを経済効率の高い制度として評価することになる。つまり、資源の無駄遣いから、平和や人権主義によって生み出される生活の豊かさの形成と向上を経済活動として捉える社会形成が市民参画社会の究極の課題となるのである。

例えば、欧米や日本ではエネルギー自給率の向上を目指すために固定価格買い取り制度が確立した。その制度は、ドイツの例にみられるように、市場原理を取り入れながら、システム価格の逓減に即して順次固定価格を見直す必要がある。日本では、その見直し制度が再生可能エネルギー経済や社会政策の専門家で作る委員会によって行われる。こうした再生可能エネルギー社会を発展維持する政府の活動(専門委員会の議事録や答申内容)の情報を市民に公開し、市民参加の意見聴取会を開く必要がある。

分散型エネルギー生産社会では、市民がエネルギーの生産者となる。市民参画型社会を形成しない限り分散型エネルギーシステムの経済合理性は確保されない。その経済合理性の基本要因は市民がエネルギー生産に参加することで成立している。つまり、この生産様式が成立するには、市民民主主義文化の形成発展が条件となる。

言い換えると、市民民主主義文化によってエネルギー問題のみでなく、社会福祉、健康、子育て環境、社会の危機管理や安全管理、教育や文化、環境保護、人権、国際交流、平和活動等々、今、集中型社会が抱える経済負担の大きな社会要因を市民が参画しやすい社会規模にすることによって、分散型社会でのエネルギー生産力は向上するのである。

メガソーラー発電所と家庭発電所の違いから来る課題
現在、二つの太陽光発電所スタイルがある。一つは非住宅用のメガソーラー発電所であり、もう一つは住宅用の発電所である。その二つの太陽光発電所は分散型エネルギーシステムを担い、また他の発電所とのネットワークによってより安定した電力を地域社会に提供できる。

しかし、メガソーラー型はこれまでの集中生産型により近く、現在の産業システムから最も期待される太陽光発電所である。それに比べて、家庭発電所は殆ど現代の日本の産業システムから期待されないだろう。そのため、政府が家庭用太陽光発電所を重視するというのは、殆ど、その発電機能に関する期待からでなく、パネル製造業者の需要先としての役割が主な理由となるだろう。 言い換えると、家庭用発電所ネットワークであるNPO法人太陽光発電所ネットワーク(PV-Net)の今後の社会的役割やその活動の在り方が問題となると言える。以下、その問題を検討するために、二つの課題を列挙する。

一つは、家庭用発電所の意味をエネルギー政策上、社会や政府、産業界に理解させること。二つ目は、PV-Net運動の意味を再度確認し、家庭用発電所の発展と維持のために活動の在り方を検討すること。以上の二つの課題を展開するための、議論をはじめる必要がある。

とりわけ、住宅用の太陽光発電システムの普及によって多様なサポート企業やNPOが生まれる。これらの企業や団体は太陽光発電所の管理者となった市民、もしくは管理者になろうとする市民のニーズによって発展する。

これらのニーズを満たすために、NPO的な企業が形成され、市民参画型社会の経済構造の大きな要素を作り上げてゆく。つまり社会貢献度の高さを企業活動の目標に掲げる企業文化が生まれるのである。この企業文化は分散型社会の構築に貢献するのである。

消費者・生産者(プロシュマー)の組合運動
1960年代、市民社会の発達とともに形成された日本の消費者運動、その始まりは安い商品による生活支援活動であった。1970年代になると、この消費者運動は安全な商品の提供による生活支援運動に展開した。

太陽光発電所ネットワークは、その意味で、全く新しい運動である。何故なら、環境保全や再生可能エネルギー社会に貢献するために高額の太陽光発電システムを購入した消費者であり、また同時に、そこで生産した電気を電力会社に売る生産者でもある。つまり、消費者・生産者運動(プロシュマー運動、プロシュマーとはアメリカの経済学者トフラーの用語)である。

この新しい運動の形成は21世紀の市民の在り方を意味している。20世紀後半は消費者や勤労者として市民は位置づけられていた。しかし、21世紀は、生産者としての市民の役割が大きく評価されつつある。それは、商売や中小企業の経営者という市民のみでなく、太陽光パネルを始め、他の再生可能エネルギー生産に投資する市民、また、環境保全や自然エネルギー生産のNPO活動に投資する市民としての、言い換えると、社会や経済活動に参画する市民という、概念を意味する。この新しい市民のイメージが太陽光発電所ネットワークの中で語らなければならないものである。

そこで、この運動は、以下の二つの課題が具体的に検討されなければならない。一つは、消費者運動としての在りかた。つまり、太陽光発電システム購入者の利益を擁護する活動の在り方が問われる。さらに、もう一つは生産者運動としての在り方、つまり、買電に関する利益を擁護する活動が問われる。

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13.(ZNEK 11A) 財団法人 日本エネルギー研究所 計量分析ユニット編 『図解 エネルギー・経済データの読み方入門』財団法人、省エネルギーセンタ― 2011.10.12、改訂3版、348p 
14.濱川圭弘、太和田善久 編著 『太陽光が育くむ地球のエネルギー 光合成から光発電へ』、大阪大学出版会、2009.10.16、132p、
15.鷲田豊明『環境とエネルギーの経済分析』白桃書房、1992年10月6日刊)http://eco.genv.sophia.ac.jp/book/sosyo/so-4-3.html
16.桑野幸徳 「太陽光発電の実力は」PowerPoint資料 17p
17.http://www.natureasia.com/japan/nature_cafe/reports/videos/111609/presentation-kuwano.pdf
18.桑野幸徳 『太陽電池はどのように発明され、成長したのか -太陽電池開発の歴史-』オーム社、2011.8.11、430p
19.桑野幸徳・近藤道雄 監修 『図解 最新 太陽光発電のすべて』オーム社、2011.6.1、255p
20.瀬川浩司、小関珠音、加藤謙介 編著『サイエンス徹底図解 太陽電池のしくみ』 新星出版社、2010.5、183p
21.NEDO成果報告書「太陽光発電評価の調査研究」(2001年3月)
22.和田木哲哉 『爆発する太陽電池産業 25兆円市場の現状と未来』 東洋経済新報社、2008.11.27、178p 
23.濱川圭弘、太和田善久 編著 『太陽光が育くむ地球のエネルギー 光合成から光発電へ』、大阪大学出版会、2009.10.16、132p、
24.濱川圭弘編著 『太陽光発電』 ㈱会社シーエムシー、1995.5.20、210p
25.京セラ(㈱ソーラーエネルギー事業部 編著 『太陽エネルギーへの挑戦』 清文社 2000.9.30、318p
26.NEDO『NEDO再生可能エネルギー技術白書』平成22年7月27日 http://www.nedo.go.jp/library/ne_hakusyo_index.html
27.(KONIm 08A) 小西正暉、鈴木竜宏、蒲谷滋記 『太陽光発電システムがわかる本』 株式会社工業調査会、2008.7.10、321p
28.三石博行 [再生可能エネルギー促進法とその問題点について -持続可能なエネルギー生産社会を目指すために-」おおつ市民環境塾講座講演の資料(論文)、2011年11月19日http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_03_04/cMITShir11a.pdf
29.石川憲二 『自然エネルギーの可能性と限界 風力・太陽光発電の実力と現実解』 株式会社オーム社、2010.7.25、190p.
30.『月刊環境ビジネス』「大特集 スマートグリッドPART1 激化する開発競争」  2011.12月号 VOL.114、pp16⁻68
31.財団法人 エネルギー総合工学研究所 「エネルギー講座」http://www.iae.or.jp/energyinfo/mokuji1.html
32.経済産業省 資源エネルギー庁 「長期エネルギー需要見通し」http://www.enecho.meti.go.jp/topics/080523.htm
33.加藤和彦 『太陽光発電システムの不具合事例ファイル』日刊工業新聞社、 2010年7月、 144p 34.加藤和彦 「原点にかえろう-太陽光発電とはなにか? Going Back to the Beginning – What is the PV System?」 太陽エネルギー Vol.38 No.3、2007年、pp3-6
35.佐藤進『科学技術とは何か』三一書房、1978年11月15日、262p
36.佐藤進『価値の選択‐科学技術文明を越えて‐ 』三一書房、1982年10月11日、306p
37.佐藤進『現代科学と人間 ‐人類は生き残りうるか‐ 』三一書房 1987年1月31日、244p
38.『月刊環境ビジネス』「急加速する低価格化と見えざる課題 再生可能エネルギーコストの真実」2012.3月号 VOL.117
39.環境エネルギー政策研究所(ISEP) 編 『自然エネルギー白書 2012』 七つ森書館 2012年5月、269p

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-太陽光発電の将来性と問題点- 」のダウンロード

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「成長経済主義を越えて成熟循環型経済社会への転回のために」 目次
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2012年10月17日 誤字、文書修正


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