2007年12月18日火曜日

プログラム科学論研究の今日の課題とは

何故、プログラム科学論研究が問題となるのか


千里金蘭大学短期大学部准教授 哲学博士 三石博行

吉田民人のプログラム科学論の哲学的位置付けの必要性
1、 1990年代から吉田民人によって提案された「プログラム科学論」は、科学技術文明社会の基盤概念、哲学を課題にしたものである。現代哲学の主な課題の一つとして科学技術哲学があるが、このプログラム科学論は、その意味で、我々の文明社会の基盤を問題にした哲学、科学哲学である。
2、 このプログラム科学論が成立するまでの吉田民人の研究は、人文社会学で展開して来た言語・記号による情報概念と遺伝子生物学で確立してきた遺伝、免疫学や脳神経生理学から提起された情報概念、また情報科学や工学の発展によって示された情報概念を一つ学問的体系として説明することであった。吉田民人が自己組織性の情報科学の概念を確立した概念によって、生命活動から言語や精神活動までの存在形態は、一貫して、情報とその情報の自己組織性を前提によって構築されているという統一的な解釈を可能にした。
3、 吉田民人は、自己組織性の情報科学の成立以後、その科学認識理論に含まれる重大な課題、つまり自己組織性を前提にして成立する情報に関する科学、代表的な生物学や情報工学の科学認識論が、これまでの物理世界を課題にしてきた科学認識論と基本的に異なる科学哲学的地平(パラダイム)にあることを述べてきた。 この新しい科学哲学の提案は、自己組織性の情報科学の中に萌芽し展開し続けてきたのでる。
4、 情報工学を前提にした現代産業、遺伝子学を基礎とする先端生物工学、現代農業や先端医療の発展に観られるように、現代技術文明社会の基盤概念を構築するものとしてプログラムの科学哲学的概念を問題にしなければならない。言い換えると、今日の科学や技術、生活や文化は、多様な情報とそれを構成している多層な情報によって構築されている。それらの情報処理や伝達はある特定のプロトコール(約束事)を前提にして成立している。また、れらの多様で多層な情報空間の位相間もインターフェイスプロトコール(プログラム)によって情報伝達が確立している。
5、 現代科学技術文明は、経済活動の国際化や高度情報化社会に見られるように、現実の生産活動や生活世界を、大きく変えてきた。その基盤技術や基盤科学を支えている科学哲学として、自己組織性の情報概念やプログラム科学論があると謂える。現代科学技術文明の基盤概念を解剖し、その時代的課題を考察するためにも、吉田民人のプログラム科学論の哲学的研究は、今後、ますます必要とされる。
6、 つまり、科学哲学としての「プログラム科学論」の研究は21世紀の科学技術文明社会における人間社会科学の科学基礎理論を提起することになるだろう。その意味で、プログラム科学論の一分野として吉田民人が位置付けた「人工物プログラム科学論」は人間社会学の基礎理論・科学哲学として展開すると考えられる。何故なら、科学技術の課題抜きに語れない21世紀の人間社会学において、プログラム科学論は、現代科学技術に関する科学哲学として位置付けられるのみでなく、人間・社会・文化・生態学の科学哲学論を提起することになるからである。工学から言語学、宗教学までを含む領域横断的、融合型の人工物に関する人間・社会・文化・農工医・生態学が、今後、展開される必要性をプログラム科学論・科学哲学は予言している。そして新たな人間社会文化学の展開の触媒として、それらの科学哲学的位置付けをサポートすることになると考えられる。その意味で、プログラム科学論の哲学的研究は、今、必要とされているのである。

学際的横断的領域の知、問題解決の知、体系的知の統一形態を求められる哲学研究
1、 多くの基礎理論の研究が、莫大な労力の必要性を問われるように、プログラム科学論の研究でも、吉田民人の常人ばなれした研究履歴、哲学や社会科学はもとより、情報学から遺伝子学までの科学的概念の理解を求められることになる。哲学の課題を取上げたとしても、プログラム科学論の背景となる理論、例えば分析哲学、機能主義、構造主義、プログマティズム、存在論、解釈学、現象学の理解も必要とされている。
2、 しかも、このプログラム科学論は、具体的な問題への解決力を持った知であり、哲学であることを吉田民人が主張してきた。そのため、この科学哲学研究は、具体的な課題、つまり、現代科学技術時代の文明や生活世界に生じている社会病理、生活病理の題解決に対して有効な知であることが求められる。
3、 さらに、吉田民人が自己組織性の情報科学論で情報概念を体系化して展開したように、プログラム概念を遺伝子から言語、文化、法律やイデオロギーに至るまで、統一的に理解できる概念構築を要請されている。このように、プログラム科学論の哲学的研究は莫大な研究プログラムを前提にして始まることになる。

日本で形成展開された科学哲学・プログラム科学論の国際的紹介の必要性
1、2005年10月に開催された第一回国際システム研究学会連合会で、吉田民人は「大文字の第二次科学革命 -情報論的転回-」と題する基調報告を行った。その報告への国際的な反響は大きかった。その後、ヨーロッパのシステム論や記号論の研究者の関心は高く、吉田民人の基調報告は、国際的に紹介されていった。
2、 吉田民人の「プログラム科学論」は、日本の理論社会学研究の中で提案された理論である。これまで、日本の近代学問史の中では、西田幾多郎の「哲学」、柳田國男の「民俗学」、今和次郎の「考現学」、篭山京の「生活構造論」、梅棹忠夫の「文明生態史観」、海原猛の「歴史文化記号分析」等々と、多くの独創的な哲学、人間社会学の理論が提案されてきた。吉田の理論、自己組織性の情報概念、情報科学の科学パラダイム論、プログラム科学論など、日本の哲学や社会科学基礎論から提案された理論である。
3、これまで、私はヨーロッパ、特にフランスの研究者との研究交流を続ける中で、吉田民人のプログラム科学論を紹介しきた。同様に、吉田民人の「プログラム科学論」も、日本発の科学論と人間社会学理論である。この先進的な日本の人間社会科学基礎論を世界に紹介することは意義があると考える。

自己組織性のプログラムとしてのプログラム科学論の哲学的点検作業
1、吉田民人によって提案された情報概念やプログラム概念は、さらに具体的な科学技術の現場で研究する人々の実践的な知を基にしながら、また、哲学研究者の厳密な概念点検を基にしながら点検探求されなければならない。その意味で、プログラム科学論研究は、プログラム科学論の科学認識論の中に、再度、投入され、その中で解体、融合、再結晶の作業を続けることになる。そのことが、プログラム科学論のあり方を物語ることを、吉田民人自身がよく理解しているのである。
2、つまり、この研究は、新たな科学技術文明時代の先駆けのための一歩を進めるためのものであり、決して、完成されることが目的ではないと思われる。この研究プログラムが、時代性と社会文化性の条件をもって、自己組織的にプログラムされ続けられることが前提となっているからである。
3、 機能・構造主義の分析概念をより緻密に展開し、しかも、情報処理(展開)と自己組織性(進化)の時間性を持つ存在形態を解明するためにプログラム科学論は準備された。その準備過程の中で、特に哲学的課題に注目すれば、例えば、現象学的存在論への批判、つまりポスト現象学の提案、社会構築主義への批判、つまり汎構築主義の提案、物理主義への批判、つまり進化論的存在論の提案、等々と、吉田民人は多くの哲学的課題を、提案し続けてきた。我々、日本の科学哲学研究者は、これらの哲学批判(新たな科学哲学)を受け止め、研究する必要性はないのだろうか。

参考
三石博行のホームページ 「哲学」「プログラム科学論」
http://sites.google.com/site/mitsuishihiroyukihomupeji/ningen-shakai-kagaku

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2007年10月20日

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