2010年3月24日水曜日

自己組織性の設計科学とは

三石博行

綿引研究室の吉田ゼミナールでの議論

1、自己組織性の設計科学という概念について

いれまで技術論と呼ばれた概念は、一般に自然科学的側面でしか定義されてこなかった。
そこでこの技術概念をプログラム科学論の立場で考え直してみる。

人工物プログラム論からみた技術概念は3つに分類される。
a,応用法則科学としての技術論とは工学系技術学
b,応用シグナル系プログラム科学としての技術論は農学、医学系の技術学
c,応用シンボル系プログラム科学としての技術論は法学、政治学、経済経営学の技術学

つまり、それらの三つのうちaを代表するのが工業である。そしてbを代表するのが農業や医療となる。勿論、aとbの融合系が薬品工業となる。cを代表するものとして福祉、政治、経済、家族、文化等々の政策がある。それらのすべてが技術である。つまり、応用科学的な技術と応用人間社会学的な政策は共にプログラム科学論的な技術論として共通している。

問題はそれらの技術が融合的で総合的な形態を持っている。これが科学技術文明社会での技術の社会的姿であることを理解しなければならない。


プログラム科学論的な技術論とは、その技術性の科学理論的背景とそれらの融合状態を理解するための知識である。問題は、現実の社会現象としての技術が上記したa,b,cの三つの科学理論上の形態を全て持つ融合型技術であることであり、それらの理解、つまり、科学技術と政治社会経済政策の不可分の形態の理解とそれらの分析を進めるために、吉田民人流に呼べば「プログラム科学論」が必要となる。

そして科学技術不可分の形態である政治社会経済政策を提案するために「設計科学」の概念が必要とされるのである。

しかし現実の政策論は個別社会の特殊性を前提にし、それが設計概念の初期条件を決定している。そのことは政策を企画する場合に、教科書的な一般論からはじめることはない。その政策(技術)の経験的方法には、それなりの根拠がある。その経験的合理性の根拠を説明するのが設計科学の理論である。

地域社会の現実や歴史的背景をもった個別形態(初期条件)を前提にして展開される地域政策学と、それらの地域社会の個別的形態の体系的理解を進めるあめに、プログラム科学論の示す進化論的存在形態の理論が必要となる。一般に社会学ではこれらを経済制度や生産様式による社会制度の歴史的形態と呼んできたが、プログラム科学論では、それを進化論的存在形態と呼ぶことになる。

多様な社会経済的形態の統一的な理解の背景に、設計科学論がプログラム科学論が援用されることになる。
そして、その多様性を生み出す生きたプログラムのあり方を「自己組織性」と呼び、それによって出来上がっている現実の社会経済の動態的なあり方を表現するために「自己組織性の設計科学」という概念が用いられることになる。

地域社会の現実を前提にして研究される政策学は「自己組織性の設計科学論」によって、理論経済学や理論社会学の正統派社会経済学の威圧から、現実の社会問題解決型学問としての科学的存在理由を述べることが出来る。

技術が科学の下に置かれた古い時代と同じように、問題解決型地域社会政策論が理論社会科学の従属学として理解されるのは、そこに古い技術論の理解があるからである。プログラム科学論的、設計科学論的な理解を前提にすることによって、技術や政策は、科学を展開発展した実験として、設計科学の中心的方法と位置づけあれるのである。

今、我々は、問題解決のための科学、つまり技術と科学の融合、自由領域総合科学技術的展開をしなければならない。それらの総合的知識の提案によって、問題解決力を強化する技術と政策を展開しなければならない。
それが設計科学のあり方である。

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