2015年1月17日土曜日

フェイブック芸術評論文集 序文

- 酔っ払いの無礼講としての作品批評 - 


三石博行


フェイブックでは沢山の芸術家がアトリエを開き絵画や写真を展示している。また、音楽コンサートルームで作曲した曲まで演奏して聴かせてくれる。そして、展示された作品にフェイスブック友人たちからコメントが書かれる。コメントを読むのも面白い。勝手な解釈が殆どのコメントで書かれている。中には、賛同できるものもある。

このフェイスブック展示会では、アーティストの展示作品の下に落書き帳が用意されている。そのフェイスブック落書き帳に友人たちが思うままに勝手な解釈を書き込む。アーティストもそれを楽しむ。これを「酔っ払いの無礼講のようなものだ」とフェイブック友人の写真家の森一生さんが言っていた。全く同感である。

鑑賞者(私のこと)はアーティストの作品に勝手なコメント・評論をしたがる。展示会場や美術館の観客は作品を観ながらブツブツと独り言を言っている。また、多くの観客は作品とその横に書かれている解説に読みふけっている。そして、多くの場合、解説が作品の評価となる。殆どの鑑賞者は解説のコピーのような評論を始める。そこで、私は、展覧会に行ったら一切解説を読まないことにした。

パリの印象派美術館でルノアールの絵が展示されていた。印象派の絵は私を含めて多くの日本人が好む画風である。巨匠ルノアールの絵であるから、どれも素晴らしい絵だと思うのが当たり前なのだが、私には、一つか二つの絵が、どうしても「駄作」に観えて仕方がなかった。それで、この巨匠の絵の前で「これは駄作だな」(日本語)と言ってしまった。横にいた妻(私より絵画に詳しい)が、私の手を引っ張って「マー、何て不謹慎なことを。。。」と小さな声(日本語)で囁いた。そこは幸いパリ、日本語は分からない。それで、少し大きな声で、印象派美術館の中で、巨匠ルノアールの絵を「駄作」と言っても横にいるフランス人には分からないのである。

もし、これらの絵を「ルノアールの描いた絵だ」と前もってコメントされないで、どこか場末のカフェーで観たなら、多くの人が私と同じく「この絵はルノアールの真似をしているようだが、駄作だなー」というかも知れない。それくらい、我々は、自分の感性で観ていると言うよりも「誰の作品か」とか「その作品紹介に何が書かれていたか」という偏見で作品を観ている。


その点では、フェイブック展示会はいい。別に自分を有名だと自負している様子もないアーティストたちが自由に展示会を開いて、無造作に作品を展示している。まるで、カフェーで似顔絵を描いて日銭を稼いでいるモジリアニの様に(フェイブック展示会では日銭も稼げないのだが)、そして、フェイブック展示会の公開「落書き帳」には得体の知れないフェイブック友人たちからでたらめなコメントが送ってくる。私もその一人で勝手なコメントを書き続けている。もちろん、殆どのフェイブック友人達は親切で、楽しいコメントを書いてくれるのだが、殆どチンプンカンプンな内容であるのではないかと思う。

しかし、何しろこのフェイブック落書き帳は、酔っ払いたちの落書きを許している世にも稀な手帳である。フェイブックでのトンチンカンな書き込み(実は私が最もトンチンカンな書き込みをしているのだが)を通じて、私は多くのフェイスブック友だちと、芸術評論めいた書き込みを続けることができた。この勝手な落書きも、皆が寄って集ってやりだすと、不思議なことに、なにか体を成してくるもんである。そこで、私は皆さんのアイデアを貰いながら、素人集団の勝手なコメント、「酔っ払いの無礼講としての作品批評」を書くことにした。殆ど間違いだらけの批評を集めて、これも一つの作品となることを理解した。

つまり、評論・コメントとは、評論を受ける側に評論される課題が在ると言うよりも、むしろ、評論をしなければならない側(私ですが)に、評論することの意味があるのです。アーティストの作品にコメントしながら、実は、自分の言いたいことを探しているのです。評論とは評論家のためにあるのであって、何もアーティストのためにあるのではないのです。従って、アーティストは、軽く、私の批評に耳を傾け、それらの殆ど間違いだらけの評論には、「今日の、つまみは大して美味しくもないが、珍しいなー」という具合に、軽く、酒の足し、つまり作品作成のために役立つものだけ摘み取れば良いのだと思います。酒の足し程度のものが、私が呼ぶフェイスブック評論なのです。

これから始まる私の素人評論は、言わば「酔っ払いの無礼講」であり、「書きたい放題の落書き」です。その点を、どうか、その点をお許し願いたい。


芸術評論文集「芸術評論落書き帳」目次
http://mitsuishi.blogspot.jp/2015/01/blog-post_1.html

フェイブック2015年1月17日記載

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