2012年2月16日木曜日

エネルギー消費量からみた現代社会の課題

太陽光発電の将来性と問題点

三石博行

1-1 、文明のエネルギー史観(神田淳氏の視点から)

私たちは人類史の中で最高の豊かさを手に入れている。この豊かさは18世紀にヨーロッパで始まった産業革命によって可能になった。神田淳氏は『持続可能な文明の創造』の中で、これまでの人類が形成してきた文明の根底に、人類が制御できたエネルギーの姿があることを述べている。神田氏はそれを「文明のエネルギー史観」と呼んだ。

生物学的視点に立てば、哺乳動物の寿命はそれぞれの種の個体(成熟した)の平均体重の0.2乗に比例すると言われる。本川達雄氏によると、その方程式でヒトの寿命を計算すると26.3年となる。そして、考古学調査から縄文人の平均寿命は31歳であったことが判明している。しかし、現代の日本人(女性)の場合には83歳である。縄文人と現代人の決定的違いはエネルギー使用量である。極論すれば、その寿命の差を可能にしたのがこのエネルギー使用量であると言えると神田氏は述べている。

人類は個体が生み出す生物的エネルギーのみでなく、自然のエネルギーを個体保存のために活用することが出来るようになった。それはことば、道具の発見と共に人類を特徴付ける大きな発見であったと言える。これが神田氏のエネルギー史観の基調となり、その後の人類史を活用したエネルギーの形態で分類する所以になる。

例えば、人類の文明の起源として火の使用をその特徴とするなら、第一期の文明は木材資源を活用した火力エネルギー文明と呼ぶことが出来る。この木材火力エネルギー文明時代は古代から中世まで続く。そして、同時に古代から中世、家畜動力、水力(水車)、風力(風車)が開発されるが、それらは主要なエネルギーではなかった。

そして、火力エネルギー文明が木炭・木材から石炭に代わることで産業革命が起こる。火力による製鉄(それまでは木炭によって製鉄が行われていた)、その鉄を用いた道具・機械の大型化、工業機械、そして蒸気機関の発明が次の石炭による火力エネルギー文明が20世紀前半まで続く。この石炭(化石燃料)を火力原料としたのが第二期のエネルギー文明(化石燃料エネルギー文明)である。

1882年のジェームズ・アトキンソンの内燃機関の発明から始まる石油を原料とする火力エネルギー革命が起る。そのエネルギー革命を推進したのは20世紀のアメリカの自動車産業である。そして今日まで、石油を使った新しいエネルギー革命が起り現代社会の経済や文化の姿を生み出している。(Wikipedia内燃機関) つまり、化石燃料である石油エネルギーも第二期の化石燃料エネルギー文明の中に組み込まれることになる。

人類が火(生体エネルギー以外のエネルギー)を生存活動に活用したことが、人と他の動物の明確な境界を生み出し、そのエネルギー活用領域を拡大することで、人類は自然資源の加工能力や社会生産力を得て、さらにその力(知性と経済力)をもって生活文化、経済活動、社会制度、文明を創ってきた。この文明の発展の原動力に神田氏はエネルギー資源の生産と活用の技術史を文明のエネルギー史観と呼んだのである。(KANDsu11A)

これまで、人類の歴史を経済制度や道具(生産手段)で理解する考え方はあった。著者も生活情報や生活資源の視点から歴史観を述べたことがある。エネルギー史観はそれらの歴史観と同類の考え方でありまったく目新しいものではないが、持続可能な社会の在り方を模索するために現代社会の巨大エネルギー消費の社会構造を理解することは必要である。今まで多くの専門家がその課題に取り組んできた。それらの研究や提言の歴史(経過)を「エネルギー史観」という考え方で纏め上げることは、今後の研究の視点に役立つと言える。


1-2、増えつづける世界の人口とネルギー消費量

17世紀の産業革命以来、人類が使用するエネルギーは莫大な量に膨れ上がった。その最大の原因は世界の人口の増加である。図表1(世界の人口の推移)から以下のことが理解できる。つまり、産業革命以前の18世紀初頭の世界の人口は10億人以下であった。1950年には25億人、そして1987年にはその2倍の50億人、つまり37年間で世界人口は2倍に増え、2009年には68億人(59年間に約2.7倍強)に増えた。現在、2011年には70億人といわれている。そして、国連人口基金は2050年には世界人口は91億人に到達すると予測している。

図表1 世界人口の推移 ※画像をクリックすると大きくなります

出典 国連人口基金東京事務所資料 (KANDsu11 p81)

グレゴリー・クラークの資料によると、紀元前10世紀から18世紀後半の産業革命までは一人当たりの所得(最低生存費水準)は殆ど変化していない。この均衡状態をマルサス的均衡の状態とかマルサスの罠(文末用語解説を参考)と呼んでいる。図表2の相対尺度1はこの均衡状態、つまりマスサスの罠と呼ばれる人口が増加しない状態を意味している。つまり、この状態では人口の変動はありえないのである。そして、産業革命によって一人あたりの生産力が増加、その結果、一人当たりの所得が増えつづける。その所得の増加と図表1の人口の増加は不可分の関係にあると言える。そして、この図表1の2050年の世界の人口の推移(91億人)の仮定には、国民所得が増加しつづけるという前提で予測される人口であると言える。

図表2 世界史における人口一人あたりの所得の変化 ※画像をクリックすると大きくなります

出典 グレゴリー・クラーク『10万円の世界経済史』 上巻p14-15 (KANDsu11A p81)

2010年の『エネルギー白書』(世界銀行年次報告、World BankのWorld Development Indicatorsのデータ)によると、世界のエネルギー消費量(一次エネルギー)は経済成長とともに増加を続け、1965年の38億TOE(原油換算トン、Tonne of Oil Equivalent)、つまり41TW(テラワット) (410億KW)から年平均2.6%で増加し続け、2008年には113億TOE、つまり130TW(テラワット)(1300億KW)に達したと報告されている。43年間に約3.2倍に増えたことになる。
 
図表3はWord Bankの調査した2009年の世界の国々の一人当たりのGDPのランキングを示したものである。1位のモナコは国民一人当たりの1年間のGDPは186,175US$である。日本は22位で39,738US$(1ドルを77円として約306万円)となる。日本に比べて、例えば食糧を要求して立ち上がったアラブの春のチュニジア(ランキングは103位)は一人当たりの所得は3,792$、つまり日本の10分の1、エジプトは2,270$で日本の17分の1の所得となる。186位のコンゴ民主共和国は国民一人当たり160$で、日本の何と249分の1である。

図表3, 世界銀による1人当たりGDP世界ランキング(2009年)※画像をクリックすると大きくなります

出典 フリー百科事典Wikipedia 「国の国内総生産順序リスト(1人当たり為替レート)(KANDsu11A p85)

この数値が即、国民生活の質を表現するものではないとしても、明らかに現在、先進国と発展途上国との国民所得の差は非常に大きいのである。当然、発展途上国の国民は豊かな生活を求める。その結果として世界のエネルギー消費量は今後急増することは避けられないのである。
例えば、GDP(国内総生産量)が世界2位である中国(58,786億US$)は、国民一人当たりのGDPは3,744US$(日本の10分の1以下)である。しかし、中国の今後の経済成長を考えると、容易に国民一人当たりのGDPが上がり続ける。つまり、発展途上国でのエネルギー消費量はそれに比例して増加し続ける。

IEAの資料(図表4)によると世界の一次エネルギー消費量は約年率2%で増加を続け、2035年には石油換算量16,386(百万トン)163億トン(約1900億KW)となると予測されている。近年の新興国や途上国での消費量の急激な増加の動向を考えると、その予測以上の一次エネルギー消費量が必要となる可能性も否定できない。しかし、将来、有限な地球資源量を考えると、2050年の予測人口91億人の実現可能性は疑問視されるかもしれない。そして、逆に経済成長を支える一次エネルギー供給(消費量)が不足する可能性を否定できないのである。

図表4 「世界の一次エネルギー供給(消費)」 ※画像をクリックすると大きくなります

出典 IEA 「Energy Balances of OECD Countries」「Energy Balances of Non-OECD Countries」(ZNEK 11A p59))  (ZNEK 11A p59)

マルサスの理論に従えば、世界の人口は増加しないというこの未来の予測は人口淘汰という熾烈な試練が未来に生じることを意味するのである。人口淘汰は、出産の抑制、堕胎、間引き、乳幼児死亡率の増大、餓死等だけではない。それは、資源エネルギーを巡る世界的な紛争(国際地域的、もしくは全世界的な戦争)が起こることも意味しているのである。


1-3 、省エネルギー社会を期待された情報化社会・第三の波の社会(A.トフラー氏の視点から)

石炭による火力エネルギーを活用することで可能になった産業革命以前の社会では、ことによって、それまで農業を中心とした社会であった。

石器時代を代表する自然素材そのものを利用して道具を作っていた時代では、人々の生活は他の動物と同じように与えられた自然環境の条件に厳しく限定され生存していた。人々は生態系の中で与えられた食料を捕獲しながら生活していた。この時代を生産様式の視点から観るなら、狩猟社会と呼ぶことができる。

そして人類は自然素材を加工しより優れた道具を作ることによって、この与えられた自然環境(生態系)の中で生存していた生活環境から人工的環境を形成することが可能になる。例えば、焼畑や灌漑によって生態環境に手を加え食料生産を行う農業と呼ばれる生産様式を開発することによって、農耕地(畑や穀物果樹園)を作りより効率よく食料を生産することが出来るようになった。

与えられた生態環境に束縛されて生活をしていた狩猟時代から自然生態環境に手を加え食料を生産した農耕時代が登場する。農耕文明を発展させることによって、人類は以前よりもより効率の良く生産物を手にいれることができた。この農耕文明をもたらした農業革命をアルビン・トフラーは第一の波と呼んだ。

トフラーは、産業革命によって生まれた工業生産を中心とする社会を第二の波の社会と呼んだ。この第二の波の社会では、大量生産、大量流通、大量教育、マスメディア、大量のレクリエーション、大衆娯楽等の産業文化や過去の二つの世界戦争を特徴付けたに大量破壊兵器による総力戦、そして大企業を中心とする生産の規格化や標準化が行われ、19世紀に登場した国民国家、帝国主義と呼ばれる強い国家体制、それを維持し発展させた官僚機能の中央集権、社会機能の首都(主要都市)への集中化、国家的規範によって国の津々浦々まで統制のとれた社会制度(警察や官僚組織)が形成された。徴兵は国民の義務となり、国家という権力に今まで経験したことのない強烈な規則(法律)で支配されることになった。

そして、第二次世界戦争が終わり、植民地主義を土台とする資本主義経済(帝国主義)への非難が高まり、また情報科学技術が発展することによって、第三の波とよばれる脱産業社会(脱工業化社会)への流れが始まった。先進国とよばれる発達した資本主義社会の国民は民主主義や人権尊厳を社会理念とする成熟した社会の在り方を模索することになる。トフラーはこの社会への流れを第三の波と呼んだ。トフラーはこの第三の波へと変化する社会を、情報化時代、情報化社会、情報革命等の造語を創り説明をしたのであった。

情報化社会はトヨタ生産システムに代表される部品ストック量の軽減、流通の合理的配分、インターネットによる紙情報による伝達の消滅、つまり情報伝達のための物質資源利用の軽減、テレビ会議(インターネット上での会議)による運送機関利用の軽減、シミュレーション技術による開発コストの削減、インターネット上での動画配信による大衆娯楽施設(装備)の個人化等々、資源とエネルギーを節約し、結果的に省エネルギー社会の入り口を創ると期待されたのである。


1-4、三つの産業革命、躍進するIT産業による巨大エネルギー消費社会の出現(藤原洋氏の視点から)

しかし今、情報化社会が省エネルギー社会を導いていることに対する点検が始まっている。その問題を投げかけた一人として藤原洋氏の第4の産業革命の概念がある。その中で、藤原氏は情報化社会を第3の産業革命(3つの波)と位置付け、その社会は巨大なエネルギー消費社会であると述べた。まず、藤原氏の四つの産業革命に関する概念を簡単に紹介する。

18世紀のイギリスを起点として始まる産業革命を第一次産業革命と藤原氏は呼んだ。蒸気機関とは石炭を燃やし熱を発生させ、その熱で水を蒸気に変え、その蒸気の力で動力を動かす外燃機関である。つまり、エンジンを直接動かしている物質は高温の蒸気(水)である。水が蒸気になることで18cc(水分子1モル当たりの重さ)の体積が1気圧で22.4リットルに増える。さらに高温にすることでその体積はさらに増える。この熱力学の法則を活用し、膨張した体積を動力源としたのが蒸気機関である。その意味で藤原氏は第一次産業革命を蒸気機関による動力革命によって生み出されたと述べている。

石油を原料として生み出された内燃機関は、シリンダーの中で酸素と揮発性炭化水素(石油)が化学反応(燃焼反応)を起こし、その熱と生成されたガス(二酸化炭素や水蒸気)によってシリンダーが上下運度を起こす。そこで藤原氏はこの内燃機関による生産技術の変化を第二次産業革命と呼んでいる。また、石油は単に燃料となるばかりでなく、化学合成工業の原料となった。第二次産業革命によって化学繊維、プラスチックなどの化学合成素材(新素材)が生み出された。化学変化をエネルギーの動力や産業資源として新しい重化学産業が生み出された。石油化学工業や内燃機関による自動車や運輸産業が引き起こす新しい産業形成過程を第二次産業革命と藤原氏は呼んだのである。

1950年代以後、情報・通信に関する科学技術の進歩によってコンピュータ産業、情報産業が発展する。この情報通信技術によって導かれた産業構造の変化を第三の産業革命と藤原氏は呼んだ。このデジタル情報革命の進展によって期待された省エネルギーは実現しなかった。情報処理技術の進歩によって情報処理の高速化が日進月歩で進んでいる。半導体の集積密度は18から24ヵ月で倍増すると技術革新の流れの規則性をムーアの法則と呼んでいる。また、ネットワーク情報通信では「森の法則」とよばれるブロードバンドトラフィックは加入者の倍増に対して指数関数的に増大するというと規則が成立している。このムーアの法則や森の法則が意味することは、今後もIT産業は飛躍的に進歩し続けるという予測である。

携帯電話の普及等々、中国、ブラジル、ロシアやインド等の新興国や発展途上国での情報化社会は益々進み、莫大な情報の入力、蓄積と出力の高速化が必要とされる。その情報処理に必要とされるエネルギーは莫大なものになろうとしている。例えば、2006年の米アクセンチュア社のレポートによるとデータセンターの電力消費量は600億KWhで、全米の電力消費量の1.5%を占めた。

わが国でも、このIT産業による巨大な電力消費問題に対応するため、経済産業省が2008年にグリーンITプロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトはIT機器による電力消費量は2025年には全電力消費量の40%に達し、2050年には50%に達するだろうと予測した。つまり、IT産業の躍進によって発展する第三の産業革命(第三の波)の延長には巨大な電力消費社会があり、そのために原子力発電等の導入が提案される結果となっている。


1-5 、現代科学技術文明社会・巨大エネルギー消費社会の課題

トフラーは第三の波、参画型の民主主義社会の土台となる情報化社会に未来の産業や社会システムの発展を望んでいた。しかし、その社会は、藤原洋氏が指摘したように、巨大な電気エネルギーを消費する社会であった。科学技術の力によって情報処理機能によって動く最先端の生産システムを創り、情報通信を駆使してより効率よい流通や生産管理を行い、巨大な生産力を獲得してきた。それらの現代科学技術文明に支えられた資本主義の社会では、より大きな利益を求めるために、日々、生産効率を上げるための努力が払われている。そのすべてのエネルギーを化石燃料や原子力によって得てきた。それらのエネルギー資源なくしては、現在の生産システム、社会システムや生活システムは成立しないのである。

21世紀は20世紀の科学技術文明社会を先導してきた欧米や日本だけでなく、発展途上国の経済発展も始まり、その速度は加速度的に高まっている。人口の多い中国、インド、インドネシア等の国々の経済発展によって、更に多くのエネルギーが必要となっている。生活の豊かさ(人間の当然の権利)を求める世界の人々によって、世界のエネルギーの消費量はさらに増加し続ける。巨大エネルギー消費社会は全世界に波及し続け、究極的にはエネルギーの枯渇問題や巨大なエネルギー消費によってさらに深刻化する異常気象(地球温暖化等々)や環境破壊が進むことは避けられないのである。

また、エネルギー枯渇問題は、暫定的には高騰する化石燃料を主体とするエネルギー資源問題として現れるだろう。そこに起る問題は昨年エジプトで起った小麦粉等の食糧の不足で生じる市民の暴動、そして今年1月からアラブの春とよばれる市民の反乱と独裁政権の終焉等々、政治的問題に発展した。しかし、市民が政権を取ったとしてもエネルギーや資源の絶対量は不足し続けるだろう。つまり、石油資源に依存する社会や国の貧困化は人口増大に拍車を掛けながら、次第に深刻化することは避けられないのである。しかも、東電福島原発事故が示しているように、原子力エネルギーの活用は上記した貧困化対策へのベストな解決策を与えるとは思われない。

言い換えると、20世紀社会は、社会経済システムは生産力の向上を目指して構築、改革、再編され続けてきた。しかし、21世紀の社会は、巨大なエネルギー消費社会からの脱却が問われている。その確実な解決策はない。しかも、その解決策を早急に探し求めなければならないことは明らかである。これまでにあった社会発展の理念を変換することが問われている。そして、化石燃料や原子力エネルギーに依存しない社会経済システムを構築しなければならないことも問われている。

エネルギーききが世界を襲い、列強(帝国主義)の国々が20世紀初頭に繰り広げられたたエネルギー資源の争奪をめぐる国際的な紛争(世界戦争)が起らないために、今、何をすべきかを考えなければならない。それはこれまでの社会理念と全く異なる社会モデル(例えば縮小社会)を提起するだろう。いずれにしても、生活の豊かさを求める発展途上国の人々、先進国の豊かな生活を持続したい人々、殆どがエネルギー消費量の極端な削減策には同意しないだろう。

そこで、民主主義(資本主義)と現代科学技術文明によって生み出された豊かな生活の質を維持し、また獲得し続けることを前提にしたエネルギー政策が問われることになる。その二つの課題、つまり生活の豊かさ(巨大なエネルギー資源の消費によって成立する社会)と化石燃料や原子力エネルギーへの依存をなくし、再生可能なエネルギー消費社会を創ることは矛盾なく成立するだろうか。その二つの課題が成立するための条件を考えなければならないのである。そして、以上のエネルギー消費量から観た現代科学技術文明社会に関する議論から解決しなければならない3つの課題を挙げる。

1、 再生可能エネルギー技術と社会経済システムの開発
2、 省エネルギー技術と社会システムの開発
3、 食糧、資源エネルギー問題や人口問題の解決、資源問題で生じる国際紛争への対応と資源独占・争奪をめぐる世界戦争の回避


用語解説

1、マルサスの罠

マルサスは、彼の有名な『人口論』の中で「人口は生産物の増加速度を上回る速さで増加を続けている」と述べている。そのため、「労働投入量を増やせば増やすほど生産量は増加するが、追加的増分(生産物の)はしだいに小さくなる」関係(限界生産力逓減の法則)が生じる。つまり、貧困化が生じる。

その貧困によって、「余分な人口は淘汰される。現実には、出産の抑制、堕胎、間引き、乳幼児死亡率の増大、餓死等が起こる」ことになる。そのことによって人口増加は抑制される。これを最低生存費均衡の理論と呼んでいる。マルサスの基本仮定によって人口は常に増加する傾向を持つのだが、その人口増加は最低生存費均衡の理論によってある水準に留まる。

つまり、世界人口の増加が産業革命以前になかったように、結局、人口は増加も減少もしなくなる。「この均衡状態をマルサス的均衡の状態(Malthusian equilibrium)あるいはマルサスの罠(Malthusian trap)と呼んでいる。マルサスの罠の状態では、1人当りの所得は最低生存費水準であるから、所得の一部を貯蓄にまわす余裕はない」生活状態にある。この状況では所得はすべて消費され、その殆どが生きるため必要な生活資源に使われることになる。

参考 鳥居泰彦『経済発展理論』東洋経済新報社、1979年
http://phrik.misc.hit-u.ac.jp/Asami/Jugyo/2005/socdev/week2/malthus1.html


2、国民総所得、国民総生産、国内総生産

「国民総所得(Gross National Income)とは、略してGNIと呼び、1990年代半ば以前に経済活動の指標として使われていた国民総生産 (GNP, Gross National Product)と、税制の計算上の適用有無の違いがあるもの近い指標である。日本の国民経済計算(国民所得統計)では、2000年に大幅な体系の変更が行われた際に統計の項目として新たに設けられた。」現在経済指標として多く使われている国内総生産 (GDP, Gross Domestic Product) は海外や自国の企業全てが国内での生産量を示す。

その国内総生産に「海外からの所得の純受取」を加えたものが国民総生産である。(Wikipedia)
製造業を中心として国内で生産を続けていた1990年代までの日本は国内総生産が大きかった。しかし、海外に工場を移し、また海外の企業を買収してそこで生産をするようになってから、国内総生産は減少している。つまり、2000年代になると日本は、国民総所得(国民総生産)の大きな割合を海外からの所得の純受取に依存するようになっている。

また、「海外への融資の利回りで得た国民総生産と国民総所得は、名目では一致するが、実質では若干の差がある。これは、実質国民総所得では、実質国民総生産は考慮されていない、輸出入価格の変化によって生じる実質的な所得の増加分を「交易利得」として加えているためである。」(Wikipedia)


参考資料


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2、 (KANDsu11) 神田淳『持続可能文明の創造』 株式会社エネルギーフォーラム2011.7.6、
3、 (Wikipedia) Wikipedia 「内燃機関」
4、 電気連合会 「図表で語るエネルギーの基礎2008-2009」 
http://www.fepc.or.jp/library/publication/pamphlet/pdf/enekiso08_09.pdf
5、  鳥居泰彦『経済発展理論』東洋経済新報社、1979年
http://phrik.misc.hit-u.ac.jp/Asami/Jugyo/2005/socdev/week2/malthus1.html
6、 (FJHAh 10A ) 藤原洋 『第4の産業革命』 朝日新聞出版 2010.7.30、207p
7、 経済産業省 『平成22年度 エネルギーに関する年次報告 第179回国会(臨時会提出)』242p
8、 経済産業省 「平成22年度 エネルギーに関する年次報告 概要」 平成22年10月 5p
9、 (NISIt 11A)西山孝 別所昌彦(まさひこ)『統計データからみる 地球環境・資源エネルギー論』 丸善出版社、2011.4.30、163p
10、 (YAMAk 02A)山田興一、小宮山宏著 『太陽光発電工学 太陽電池の基礎からシステム評価まで』 日経BP社、2002.10.7、254p
11、 (ZNEK 11A) 財団法人 日本エネルギー研究所 計量分析ユニット編 『図解 エネルギー・経済データの読み方入門』財団法人、省エネルギーセンタ― 2011.10.12、改訂3版、 348p 
12、 濱川圭弘、太和田善久 編著 『太陽光が育くむ地球のエネルギー 光合成から光発電へ』、大阪大学出版会、2009.10.16、132p、
13、 鷲田豊明『環境とエネルギーの経済分析』白桃書房、1992年10月6日刊)http://eco.genv.sophia.ac.jp/book/sosyo/so-4-3.html
14、 桑野幸徳 「太陽光発電の実力は」PowerPoint資料 17p
http://www.natureasia.com/japan/nature_cafe/reports/videos/111609/presentation-kuwano.pdf
15、 桑野幸徳 『太陽電池はどのように発明され、成長したのか -太陽電池開発の歴史-』オーム社、2011.8.11、430p
16、 桑野幸徳・近藤道雄 監修 『図解 最新 太陽光発電のすべて』オーム社、2011.6.1、255p 
17、 瀬川浩司、小関珠音、加藤謙介 編著『サイエンス徹底図解 太陽電池のしくみ』 新星出版社、2010.5、183p
18、 NEDO成果報告書「太陽光発電評価の調査研究」(2001年3月)
19、 和田木哲哉 『爆発する太陽電池産業 25兆円市場の現状と未来』 東洋経済新報社、2008.11.27、178p 
20、 濱川圭弘、太和田善久 編著 『太陽光が育くむ地球のエネルギー 光合成から光発電へ』、大阪大学出版会、2009.10.16、132p、
21、 濱川圭弘編著 『太陽光発電』 ㈱会社シーエムシー、1995.5.20、210p
22、 京セラ(㈱ソーラーエネルギー事業部 編著 『太陽エネルギーへの挑戦』 清文社 2000.9.30、318p
23、 NEDO『NEDO再生可能エネルギー技術白書』平成22年7月27日 http://www.nedo.go.jp/library/ne_hakusyo_index.html
24、 (KONIm 08A) 小西正暉、鈴木竜宏、蒲谷滋記 『太陽光発電システムがわかる本』 株式会社工業調査会、2008.7.10、321p
25、 三石博行 [再生可能エネルギー促進法とその問題点について -持続可能なエネルギー生産社会を目指すために-」おおつ市民環境塾講座講演の資料(論文)、2011年11月19日http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_03_04/cMITShir11a.pdf
26、 石川憲二 『自然エネルギーの可能性と限界 風力・太陽光発電の実力と現実解』 株式会社オーム社、2010.7.25、190p.
27、 『月刊環境ビジネス』「大特集 スマートグリッドPART1 激化する開発競争」  2011.12月号 VOL.114、pp16⁻68


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1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

 島根大学の客員教授である久保田邦親博士らがこの境界潤滑の原理をついに解明。名称はCCSCモデル「通称、ナノダイヤモンド理論」は開発合金Xの高面圧摺動特性を説明できるだけでなく、その他の境界潤滑現象にかかわる広い説明が可能で、更なる機械の高性能化に展望が開かれたとする識者もある。幅広い分野に応用でき今後潤滑油の開発指針となってゆくことも期待されている。それらを駆使し機械損失を大幅に小さくできるという話である。