2020年7月1日水曜日

パンデミック対策にむけて(c)

ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策(3)

21世紀型の災害、パンデミックの構造

三石博行



3、災害学的視点からのパンデミックへの対策 

災害としてのパンデミックの特徴を理解しなければならない。その特徴を災害学の中で検討された課題に照らし合わせて分析することで、パンデミックへの科学的、合理的な対応を検討することが出来る。まず、今回の今回のCOVID-19感染症にはワクチンや治療薬がない。つまり安対策がない状態の災害である。

3-1、二つの災害形態:安全管理可能な疾病災害と安全管理不可能な疾病災害

パンデミックの特徴を災害学の中で検討された課題に照らし合わせて分析することで、その科学的で合理的な対応を検討することが出来る。まず、疾病災害の中には予防対策が出来ている安全管理可能な災害と予防策が全くない安全管理不可能な災害の二つの形態があることを理解しなければならない。毎年流行するインフルエンザは前者に分類され、COVID-19感染症は後者に分類される。その二つの感染症流行に関して安全学の視点に立って分析する。
一つ目はインフルエンザ、つまり、ワクチン・予防対策がある感染症の流行の事例である。毎年、インフルエンザが流行している。その意味で、インフルエンザウイルス(病原菌)による世界的流行は日常化している。そして、それに対する対策、例えばワクチン開発やその接種も常態化し、日本では、毎年、春先にそれまでに流行したインフルエンザから、その年の秋から冬にかけて流行する可能性のある複数のインフルエンザを予測し、ワクチンを開発している。ワクチン開、言い換えると感染症災害への安全管理体制が確立している場合には、人々の生命を奪い、生活経済を破壊し、医療や経済の社会インフラを危機に導く感染爆発や流行を防ぐことができる。
二つ目はCOVID-19感染症、つまり、ワクチン・予防対策の全くない感染症の流行の事例である。未知の病原菌によっておこる感染症の流行に対して予防手段は最初からない。つまり、安全対策がない状態で危険なものに接することになる。未知の病原菌による疾病とはそれを事前に防ぐ方法(安全対策)を取ることが不可能な状態として登場する。そのため甚大な被害が生じる。例えば、1918年から1920年にわたって世界で初めておこったインフルエンザの大流行(スペインかぜ)に対して疫学的、医学的対処は取られず、その結果、ヨーロッパで1700万人から5000万人が犠牲になったと言われている。
未知の病原菌によっておこる感染症では感染原因の解明が急がれる。病原体の微生物学的、遺伝学的解明、感染者の症状、病理的特徴の調査、感染者の検査方法の確立が急がれる。これらが新型の感染症への最初の基本的な課題である。そして、病原体の感染に関する疫学的調査、感染媒体や感染経路の判明を急がなければならない。何故なら感染拡大防止策の遅れによって甚大な被害を出すからである。そして、それによって引き起こされる感染患者数の多発は、医療機関への過大な負担を招き、医療崩壊の原因となる。医療崩壊によって多数の犠牲者が生まれることになる。
予防策、安全対策のない場合の災害で最も恐れることは破局的な被害である。つまり、感染症の場合には医療崩壊による爆発的な犠牲者の発生、それによって人々の生活は奪われ、結果的に甚大な社会経済的な被害の原因となる。
この場合での感染症への基本的な対策は、ワクチンや治療薬の開発である。それらの開発が最も優先的な課題となるのであるが、ワクチン開発は新型感染症の場合には最低1年、長くて2年の期間が必要とされると言われている。と同時に、安全対策のない災害では甚大な被害を避けることは出来ないため、それらの被害を最小限に食い止める他の臨時の対策を見つけなければならないのでる。


目次、『ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策 -21世紀型の災害、パンデミックの構造-』

0 件のコメント: