2010年3月2日火曜日

科学技術文明社会での企業の危機管理

三石博行


科学技術文明社会と消費者意識


科学技術社会では「科学の大衆化」や「大学・高等教育の大衆化」が起こる。市民は、極めて高度な科学技術的知識にTVや雑誌、新聞等で日常的に触れる機会に恵まれており、先端科学技術の知識を理解することができる。

そのことによって、企業が開発した先端科学技術の知識も、また先端医療の発展で開発されてきた治療法に関しても、その原理から理解することができる。インターネット上ではそれらの技術に関する解説が数多く紹介されている。

こうした科学技術文明社会では、1960年代水俣で発生した公害病のように「感染するかもしれない奇病」とか「原因不明の祟り」とかいう中世的魔女狩り的な流言は通用しなくなる。公害と呼ばれた環境破壊による健康障害の原因の解明も専門家の公式見解を待つまでもなく、市民の力でその原因を分析調査することができる。そうなれば、チッソ水俣の企業のように、環境と健康破壊の責任を20年近く認めないという行動は不可能になる。

1990年代後半から2000年のはじめに、日本の経営者は三菱自動車、雪印、ミートボール等々、クレーム問題の解決方法を誤り、真摯に問題解決に努力しなかった企業は、社会から葬り去られることになる。この厳しい消費者の対応、消費者をごまかすことの恐ろしさを日本の企業は学んだ。


企業の危機管理としてのクレーム対策

現在の企業の危機管理の中に、クレーム対策が入っていなければ、その企業や経営体は存続条件を満たしていないと言われても仕方がないのである。

クレーム対策が経営にとって重大な経営戦略を意味する時代、それはそのクレームに学ぶという経営学的視点がなければならない。今回のトヨタの対応も、クレームを[アメリカのバッシング」だと言って済まされない状況を知ったと思う。企業内でのクレーム対応の点検やクレーム対策を企業文化とし得ない組織は、存続できない。

クレーム対応の仕方、それは原因を科学技術的な説明で明確に答え、それに対する対応、その解決策も専門的な視点から説明しなければならない。素人に専門的な問題を話して無駄だという企業は、その場で、淘汰されるかもしれない。

なぜ効果があるのか、なぜ価値があるのか、それらの科学的説明がなされなければならない。その情報公開を前提にしなければ、商品評価は得られない。そして、公開した説明に即した効果がない場合には、当然、消費者からクレームが掛かる。

これが現代の消費者社会の姿である。その消費者の要求を理解しない企業は、今後、存続できないだろう。それが、企業の問われる危機管理の一つとなるのである。


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