民主主義と報道機能(2)
三石博行
マスコミ報道は二つの要素を宿命として持っている。一つは、現状の政治権力の擁護機能である。もう一つは企業としての利益維持である。つまり、企業運営の成立しない報道(生産)活動はしない。その意味で、報道(情報生産)活動は市場原理に即して行われる。政治権力と真っ向から対立することは、経営上得策ではない。宣伝広告を出す企業を名指しで批判することは営業上不味い。一方市場(国民)のニーズを無視して紙面を編集することは顧客を失うため注意しなければならない。
こうした企業組織としてのマスコミについて理解をしておくことによって、国家のエネルギー戦略、つまり国策の原発設置の推進や巨額の広告費用を払う電力会社が推進する原発設置に対してマスコミがこれまで何遍となく繰り返された原発事故に対して根本的な批判を避けてきたのは当然の行為であると理解できるのである。また、日本の戦中のマスコミの果たした役割こそが、マスコミ報道機能の真の姿であることも納得できるのである。
また、東電福島第一原発事故によって、国民的な批判が盛り上がる中で、もし、マスコミが「原発推進」を言い続けるなら、多分、そのマスコミに対する国民的な批判が生じるだろう。そのことは顧客の喪失を意味する。そのリスクを冒してまで、いままでの主張(原発推進の主張)を言い続けることは得策ではないと判断するだろう。おまけに、原発事故処理で東電は今までのようにマスコミに広告を出すことは出来ない。もし、東電が広告を出すなら、その代金を被害者救済に回すべきだと国民から批判されるだろう。その意味で、マスコミが東電を批判することによる不利益は消えたことになる。そして、今まで、原発推進を言い続けたトーク番組が、原発批判をするようになるのである。金の切れ目が縁の切れ目であることは資本主義社会の道理であるが、マスコミの報道(情報生産)活動は端的にそして直接的にそのことを物語っている。
マスコミ活動に政治的志向性や社会的理念を求めることが間違いなのである。それらの報道(情報生産活動)は資本の論理で行われている以上、首尾一貫しない、また事実を報道しない、そして積極的に真実を隠蔽するマスコミをまじめに批判することが実は滑稽なのだろう。そして、こうした私企業としてのマスコミの情報生産活動の到着地点をアメリカのマスコミ報道に見ることが出来る。世界で何が起こっているか、マスコミの報道から聞こえてこない。ゲームはトーク、スポーツ、娯楽番組が殆どである。
そして、これらの私企業活動のマスコミの究極の姿を見るとき、公共性を持たない(持ち得ない)私企業の営業活動で、公共空間の電波伝達という資源を独占している彼らに対する対策が必要となることを痛感するのである。この空間は国民のものである。つまり、その電波を伝える空間を所有しているのは私企業ではない。彼らは、自分たちの企業利益のために、国民の所有する電波伝達空間を利用しているのである。
参考資料
ブログ文書集「民主主義社会の発展のための報道機能のありかた」
1、民間報道機関の公共性と報道の自由の確立に必要な改革
1-2、「私企業としての報道活動と電波伝達空間の所有権」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/10/blog-post.html
1-3、「民間報道の報道の自由とその国民的監視機能の必要性」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/12/blog-post_02.html
2、公共報道機関の必要性とその独自性を擁護するために必要な改革
2-1、国家の利益を擁護する情報機能としての公共報道の宿命
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/12/blog-post_527.html
2-2、公共報道機能の独立権の成立条件とは
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/12/blog-post_5219.html
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東日本大震災関連ブログ文書集
1、ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_3562.html
2、ブログ文書集「東日本大震災の復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/blog-post_23.html
3、ブログ文書集「日本の政治改革への提言」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_9428.html
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2011年11月1日、誤字修正
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