2019年9月14日土曜日

日本の朝鮮半島植民地化はその近代化にはたして寄与したか

-日韓の異なる歴史認識を支える理論の点検を代表する植民地近代化論-


三石博行


はじめに 植民地近代化論とは何か

日韓関係の歴史認識をめぐる課題の中に、で日韓併合によって朝鮮半島の近代化・工業化が進んだという考えと、それに対する批判の二つの論争がある。この二つの解釈は日韓併合や日本の植民地主義を評価する側とそうでない側の極めて大切な論点である。そこで、植民地支配が朝鮮半島の近代化に寄与したという考えについて分析してみようと思う。このテーマに関しては多くの先行研究論文が存在している。それらの全てに目を通すことは出来ないので、主な論文を参考にすることにした。その上で、考えを述べることにした。

1、近代化とは何か

1-1、鹿鳴館と反射炉建設、二つの西洋文化の導入形態

まず、近代化とは何かという定義について考えてみる。例えば日本の歴史を紐解くとき、不平等条約に苦しむ明治政府が欧米列強に日本が西洋文明をいち早く取り入れた近代国家であることを示すため鹿鳴館を建設し日本の上流社会の人々が洋服を身に着け西洋の音楽と舞踊を嗜んでいる光景を創りだした。このことを近代化の一貫であると述べることが出来るだろうか。つまり、近代化とは西洋の物まねと意味するのだろうか。

また、1872年10月14日に明治政府は日本で初めての鉄道を新橋駅 - 横浜駅(現桜木町駅)間に開通させた。この鉄道は海外の技術と技術者によって敷設されたものである。当初、枕木をはじめすべての敷設材料をイギリスから輸入しる予定であったがこの敷設計画にあたったイギリス人エドモンド・モレルの意向によって国産の木材が使われた。全線29キロの日本初の鉄道が開通したのである。鉄道敷設は近代国家日本の富国強兵政策の一貫として取り組まれ、その後、全国に鉄道網が敷設された。鉄道建設のための技術、例えばレール用の鉄鋼素材やトンネル掘削技術等々、海外の技術を導入しながらそれらを自国で生産に必要な技術開発が行われた。

近代産業にとって製鉄工業は基幹産業の一つである。江戸時代末期に、伊豆国、江戸、佐賀藩、薩摩藩、水戸藩、鳥取藩、萩藩や島原藩などで反射炉の建設が行われ西洋式の大砲の製造に必要な上質の製鉄技術が導入された。それらの技術によって江戸末期、1862年には小型蒸気船軍艦建造も可能になっていた。

また、自前の技術改良による反射炉建設技術から始まる日本の製鉄工業は、1875年明治政府が工部省管轄の釜石鉱山の製鉄事業を立ち上げ、本格的に始まった。その後この製鉄事業を軌道に乗せるために1885年に民営化が行われ、釜石・田中製鉄所が出来た。また、明治政府は富国強兵策の一貫として官営大製鉄所の建設に着手し、1896年官営八幡製鉄所の官制発布し、ドイツの技術を導入して工場建設を行った。

このように近代化を語る場合、引用される事例は殆どが西洋の技術の導入であり、それによる新しい産業、工業や新しい流通システム、鉄道や船舶の建設であり、洋風建築技術や土木技術等々、西洋の科学技術の導入を近代化と呼んでいる。つまり、この概念からは、上記した洋服を身に纏い西洋の舞踊物まねをした鹿鳴館も近代化の概念に入ることにはならないだろうか。

近代化を国民国家とそれを担う国民の形成という概念から観るなら、西洋の物まねをした鹿鳴館とオランダの書物から学びながらも日本の技術を駆使して建設した反射炉は全く異なるものであると癒える。何故なら、近代化とは西洋文化や技術を文化的異なる東洋日本に持ち込む作業である。単にその技術を導入するだけでは、その技術の再生産が日本では不可能となる。つまり、国民国家とは日本人が近代国家的自我を形成し、日本人による日本人のための近代国家になることによってはじめて成立する概念である。西洋の技術に関する日本への導入も、その技術が日本人になじみ日本人の思考や技能となることで、日本で再生産が可能になる。それら一連の技術や生産工程等の日本化を改良と呼んでいる。

言い換えると、日本で日本人によって生産工程が機能するように、西洋の技術が日本風に解釈される必要がある。その日本風の解釈を改良と呼んでいる。もし、改良という作業が機能しない場合には、近代化は進まない。それは近代化ではなく、文化的侵略として理解され、また伝統技能や生産システムを解体する植民地政策として解釈されることになる。

多くの場合、近代化の基本概念や観念構造に関する議論を行わず、単に海外の技術導入を近代化と理解していたことによって多くの技術導入過程における失敗や混乱を生み出したのである。それらの反省にたって、新らためて近代化とは何かという基本的概念について考えなければならないのである。


つづく 

1-2、近代化過程のプログラム科学論的解釈

1-3、植民地で近代化は可能か


2019年9月14日 ファイスブック記載 

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