2020年7月6日月曜日

パンデミック対策にむけて(d)

ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策(4

21世紀型の災害、パンデミックの構造

三石博行



3-2、予防策のない新型感染症対策期間:第一期


COVID-19のように、新型感染症に対する予防策・ワクチンや治療薬はない場合、疾病流行を根本的に抑えることはできない。しかも、ワクチンや新薬の開発に長期間の時間が必要とされる。こうした条件下で感染症の流行を抑えなければならない。この状況は「武器を持たないで戦う」ことを意味する。
その場合、まず、防御(感染予防の対策)を固めなければならない。そして、出来るだけ早く武器(ワクチンや治療薬)を手に入れなければならない。また、COVID-19の感染を防ぐための武器になりそうなもの、少しでも有効なものを集め、当分は、それらを総動員して闘わなければならない。このような不利な条件では、人命と経済への被害を最小限に食い止めながら、有効な攻撃手段(ワクチンや治療薬)を得るまで持ちこたえなければならない。こうした状況が現在の我々の置かれている現実である。つまり、この状況下では、完全に被害を防ぐことは出来ないため、より被害を少なくするための戦術を選ぶしかない。
このような状況の期間を第一期と呼ぶことにする。第一期の感染症流行防止対策は主に三つのテーマ、重要かつ最優先の課題、科学的でより現実的な対策と経済的かつ合理的な政策に分類することができる

A、最も重要かつ最優先の課題

A1、病原体の遺伝子、感染媒体、感染症の病理的特徴に関する情報 
未知の病原体である以上、その病原体の微生物学的分類や解明、遺伝子解析とその解明、また感染媒体や感染経路の疫学的特徴、さらに感染症の病理的特徴に関する情報が必要となる。COVID-19感染症の場合、中国の医学論文がそれらの情報提供に大きく貢献した。COVID-19の遺伝子構造、症例、特に無症状の感染者の存在、年齢層による死亡率の違い、特に持病者や高齢者の高死亡率、肺炎の特徴等々、多くの情報が提供された。最初にCOVID-19感染症と闘った中国の医療従事者、科学者の努力に感謝しなければならない。彼らの治療、調査、研究の努力によって、ワクチンや治療薬の開発への基本的な知識や情報が提供され、検査キットの開発、検体方法、感染対策、防疫方法、臨床判断、治療方法等、初期の感染症対策が可能になった。
A2、ワクチン・治療薬の開発 
最も優先される課題の一つがワクチンや新治療薬の早期開発である。今回のCOVID-19感染症に関するワクチン開発は、527日時点で、世界全体で125件の開発案件が報告されている。その中の10件がすでに人に直接投与する臨床試験まで進んでいると言われている。また、治療薬に関しては既存の治療薬で新型コロナウイスに援用可能なものを見つけ出すのが最も経済的である。しかし、同時に新薬の開発を進める必要がある。すでに、武田薬品工業は米CSLベーリングなど10社と提携協力しながら抗SARS-CoV-2高度免疫グロブリン製剤の開発が進み、2020年の夏には成人患者を対象としたグローバル試験を始める予定である。その他、米国の国際的な製薬会社であるイーライリリー・アンド・カンパニーによるSARS-CoV-2に対する抗体医薬「LY-CoV555」、米メルクによる抗ウイルス薬「EIDD-2801」、米ビル・バイオテクノロジーによる抗ウイルス抗体(VIR-7831VIR-7832)等々、新薬の開発は進んでいる。[i]) 
A3、検査キッドと検査体制の確立 
同じように急がれるのが、検査キットの開発と生産である。COVID-19の遺伝子情報が記載された中国の科学論文から、COVID-19の検査キットの開発は他の国でも可能になった。また、中国の医学論文からCOVID-19感染症の特徴が世界へと伝わった。それにより、他の国々で、逸早い疫学的対策が検討された。そして、COVID-19に対する検査キットは現在大量生産されている。
A4、予測される危機的状況に対する公衆衛生・医療体制の確立 
この段階では、公衆衛生や医療体制が崩壊しないための対策が急務である。そのために、現存する体制、組織、制度、資源の状態を精査しその限界を評価委分析し、予測される危機的状況に対する課題を明確にしておかなければならない。そして、改善対策をいち早く行うために必要なすべての対策、政策に至急取り掛からなければならない。例えば、今回、医療現場では、医療従事者が感染から身を守る最低限の防御、医療用マスク、感染防御服等々の不足が問題となった。それらの状況を解決できない状態で医療や福祉等の現場では混乱、集団感染の発生、それらの病院機能の停止という最悪の事態が起こっていた。特に、医療機関で集団発生が頻繁に起こっている日本の事例に関して詳細に調査しなければならない。そして、人工呼吸器等の重症患者の治療機器が全く不足したイタリアや米国、ニューヨーク州での医療崩壊の原因に関する調査も今後課題となる。その一方で、例えばベトナム、台湾や韓国等、医療崩壊が起こらない課題に成功した国々もあった。失敗した国々や成功した国々の第一期の公衆衛生や医療体制に関する対策を比較検討することで、第一期の最重要課題、公衆衛生や医療体制の危機管理にかんする課題をさらに分析することができるだろう。

B、科学的でより現実的な対策

B1、感染拡大を防ぐ人と人との空間的隔離(ソーシャルディスタンス)の設定 
感染者を非感染者から隔離することが感染症学の最も初歩的な防疫の手段である。感染者を特定できない状況では人と人との間に隔離(ソーシャルディス)を設けることで感染を防ぐことができる。特に、検査方法が確立していな時代、感染を防ぐ方法としてこの隔離方法が用いられた。今回のCOVID-19感染予防にソーシャルディスが殆どの国で用いられた。
我が国でも、感染を防ぐために、例えば、国は三密(三つの密な空間)、一つが密閉空間(換気が悪い場所)、二つめが密集空間(人が集まって過ごすような場所)と三つめが密接空間(不特定多数の人が接触する可能性の高い場所)の三つの状態を自主的に避けること国民に要請した。三密状態のある交通機関等を避けるため不要不急の外出の自粛、また、休校や休業が市民に要請された。しかし、日本で取られた感染防止のための行動要請は強制力を持たないものであった。
一方で、感染爆発が起こったイタリアでは外出規制は強制された。イタリアの感染者は2020221日に3人から32日に2036人と10日間で679倍も増えた。この感染爆発を食い止めるため、タリアでは町、市の封鎖(ロックダウン)が行われた。ロックダウンは究極的な隔離対策である。中国武漢でもロックダウンが行われ、感染を食い止めることに成功した。ロックダウンは非常に効果的な感染防止策であるのだが、他方において、ロックダウンは市民生活、経済や社会活動に大きな負担や犠牲を強いる。
感染拡大を防ぐためにソーシャルディスタンスを置くことは必要である。人と人との空間的隔離の設定には、不要不急の外出自粛、休業、移動制限、町の閉鎖による移動禁止(ロックダウン)はは必要である。特に、感染拡大を防ぐための行動規制は感染流行の状況によって変化する。最も軽いものは、外出した場合に一定の空間的距離を要請することから、最も厳しいものが完全な外出禁止やロックダウンである。
B2、検査体制確立、経済的な感染者隔離
また、病原体に対する精度の高い検査(PCR検査)がある場合には、検査によって感染者を判明し、それらの感染者を医療機関へ隔離し、感染拡大を防ぐ方法が有効である。今回、COVID-19感染流行を防ぐ手段としてPCR検査が活用された。日本では、225日に厚生労働省の中に、新型コロナウイルスクラスター対策班の設置し、COVID-19検査によって感染者を見つけ、その行動履歴を調べ、感染経路や感染集団(クラスター)の発生を調査した。
PCR検査は感染者を特定する唯一の科学的手段である。感染の爆発的拡大が起きている場合には、その方法を活用して、感染者集団を物理的に社会から隔離することができる。PCR検査による隔離方法は、感染爆発が起きている場合に、感染確認者を全員入院させなければならないため、医療機関の崩壊の原因となると言われた。しかし、PCR検査をしないで感染者を放置するなら、それが感染を拡大する原因となることは明らかである。つまり検査体制を強化することと、それによって確認できた感染者を何らかの方法で隔離することは一体化した感染対策である。
医療機関での感染患者の受け入れ体制を確立すること、そして十分なPCR検査を行うこと、それらの二つの条件を整備することによって、感染者をもれなく見つけ出し、社会から隔離することが出来る。感染者を特定の空間(医療施設)に集めることで、社会空間全体の中の感染者の隔離の効率は高くなる。高い隔離効率はより経済的効果を生み出す。何故なら非感染者の多い社会では、人々の社会経済活動への規制を強化しなくても済むからである。その意味で、科学技術の進んだ社会では、徹底的なPCR検査による感染者の隔離方法が用いられるのである。
B3、既存治療薬の援用 
新型感染症に対する治療薬の開発は時間を要するため、すでにある治療薬を利用・活用する必要がある。例えば、COVID-19感染症に対して、米国のFDA(食品医薬品局)が51日に使用を許可し、日本でも5月7日に厚生労働省が特別承認されたレムデシビル(製品名・ベクルリー)が治療薬として活用されている。
また、2014年に日本で承認された抗インフルエンザウイルス薬ファビピラビルはCOVID-19感染症には正式に使用できないものの、新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスであるので、ウイルスの遺伝子複製酵素であるRNAポリメラーゼを阻害する効果を示す可能性があると期待されおり、臨床現場では試験的に使われている。このように、すでに治療薬として使われていたものを援用することは、安全検査はクリアーされており、もし、医療効果が確認されるなら、新薬の開発よりはコスト安となる。


目次、『ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策 -21世紀型の災害、パンデミックの構造-』



2020年7月3日金曜日

デジタル日記を書くこと



6月から、デジタル日記を書くことにした。一日の予定やその進捗状況の点検、毎日が連続しているために、今日のテーマは昨日のテーマの延長線上にある。そして、昨日の結果から今日の作業が始まる。こうした連続した毎日毎日の作業の予定や点検は、デジタル化した日記で反復される文章が簡単に記述化される。これも一種の「知的生産の技術」ということになるだろう。

ふと湧き出る詩も、その日記の中に書いている。その意味で、これまでフェイスブックに書いていたものが、日記になった。その分、自分の中の自分と会話が出来る。

本来、人にみせることを前提にしてわたしごとを書くもの、例えばエッセイ、感想、評論等々の書きものは、かなり難しい。私の姿を本音で書くためにはかかなり勇気が必要だ。多分、偉い小説家はそれが出来るのだろうが、しかし私にはそれは出来ない。

その意味で、フェイスブックに日記を書くということが出来るのは、よほどの人だけだろう。私は余りにも未熟なので、と言うか、欺瞞的な人間なので、それは出来ない。しかし他方で、それが出来るようになりたいとも思う。

哲学の意味は、現実の自分と向き合う力や方法を得るための思索活動だと思う。もし、自分の在りのままを書ける力を得るなら、もう哲学は必要ないでろうと思う。

2020年6月29日フェイスブックに投稿

時間の中の私 (詩)

三石博行


私という存在、
それは現実のいう混沌の世界
問題と呼ばれる現象の中に、
問題発生の中、問題提起の中に、
ただ、
呼吸し、
脈打ち、
生きているのだ。


私という存在、
それは過去という微分された時間
記憶と呼ばれる評価の中に、
悔いや痛みの導火線として、
安らぎや拘りの深海の底で、
耳を傾け、
声を発し、
生きているのだ。


私という存在、
それは未来という一次元方向への確信
それは希望という幻想
それは打ち続く脈拍
それは瞬間という現実

2020年6月12日 作成 
6月29日 フェイスブックに投稿

詩集 『心象色彩の館』

2020年7月1日水曜日

パンデミック対策にむけて(c)

ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策(3)

21世紀型の災害、パンデミックの構造

三石博行



3、災害学的視点からのパンデミックへの対策 

災害としてのパンデミックの特徴を理解しなければならない。その特徴を災害学の中で検討された課題に照らし合わせて分析することで、パンデミックへの科学的、合理的な対応を検討することが出来る。まず、今回の今回のCOVID-19感染症にはワクチンや治療薬がない。つまり安対策がない状態の災害である。

3-1、二つの災害形態:安全管理可能な疾病災害と安全管理不可能な疾病災害

パンデミックの特徴を災害学の中で検討された課題に照らし合わせて分析することで、その科学的で合理的な対応を検討することが出来る。まず、疾病災害の中には予防対策が出来ている安全管理可能な災害と予防策が全くない安全管理不可能な災害の二つの形態があることを理解しなければならない。毎年流行するインフルエンザは前者に分類され、COVID-19感染症は後者に分類される。その二つの感染症流行に関して安全学の視点に立って分析する。
一つ目はインフルエンザ、つまり、ワクチン・予防対策がある感染症の流行の事例である。毎年、インフルエンザが流行している。その意味で、インフルエンザウイルス(病原菌)による世界的流行は日常化している。そして、それに対する対策、例えばワクチン開発やその接種も常態化し、日本では、毎年、春先にそれまでに流行したインフルエンザから、その年の秋から冬にかけて流行する可能性のある複数のインフルエンザを予測し、ワクチンを開発している。ワクチン開、言い換えると感染症災害への安全管理体制が確立している場合には、人々の生命を奪い、生活経済を破壊し、医療や経済の社会インフラを危機に導く感染爆発や流行を防ぐことができる。
二つ目はCOVID-19感染症、つまり、ワクチン・予防対策の全くない感染症の流行の事例である。未知の病原菌によっておこる感染症の流行に対して予防手段は最初からない。つまり、安全対策がない状態で危険なものに接することになる。未知の病原菌による疾病とはそれを事前に防ぐ方法(安全対策)を取ることが不可能な状態として登場する。そのため甚大な被害が生じる。例えば、1918年から1920年にわたって世界で初めておこったインフルエンザの大流行(スペインかぜ)に対して疫学的、医学的対処は取られず、その結果、ヨーロッパで1700万人から5000万人が犠牲になったと言われている。
未知の病原菌によっておこる感染症では感染原因の解明が急がれる。病原体の微生物学的、遺伝学的解明、感染者の症状、病理的特徴の調査、感染者の検査方法の確立が急がれる。これらが新型の感染症への最初の基本的な課題である。そして、病原体の感染に関する疫学的調査、感染媒体や感染経路の判明を急がなければならない。何故なら感染拡大防止策の遅れによって甚大な被害を出すからである。そして、それによって引き起こされる感染患者数の多発は、医療機関への過大な負担を招き、医療崩壊の原因となる。医療崩壊によって多数の犠牲者が生まれることになる。
予防策、安全対策のない場合の災害で最も恐れることは破局的な被害である。つまり、感染症の場合には医療崩壊による爆発的な犠牲者の発生、それによって人々の生活は奪われ、結果的に甚大な社会経済的な被害の原因となる。
この場合での感染症への基本的な対策は、ワクチンや治療薬の開発である。それらの開発が最も優先的な課題となるのであるが、ワクチン開発は新型感染症の場合には最低1年、長くて2年の期間が必要とされると言われている。と同時に、安全対策のない災害では甚大な被害を避けることは出来ないため、それらの被害を最小限に食い止める他の臨時の対策を見つけなければならないのでる。


目次、『ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策 -21世紀型の災害、パンデミックの構造-』

パンデミック対策にむけて(b)

ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策(2)

21世紀型の災害、パンデミックの構造

三石博行

2、ハイブリッド型災害としてのパンデミック

ハイブリッド型災害としてパンデミックを位置付けること、さらに、この種の災害は21世紀社会で常態化することを前提にして、ハイブリッド型災害の自然的要素、社会経済的要素、そして文明的要素を分析し、総合的な対策の検討が必要となる。

2-1、病原菌による疾病(自然的要素)

疾病災害を引き起こす病原菌も地球上に存在している生命の一つであり、生態環境系の中の一つの生物に過ぎない。その意味で、病原菌による疾病は生命現象の一部である。そして、疾病は生物の進化史と共にあり、また人類の歴史と共にある。疾病は生物・人が病原体によってその生命活動を破壊される病理的現象に過ぎない。
つまり、病原体による人の感染被害は自然現象の一つであり、人の病気は人と病原体(細菌や微生物等)との生物的生存競争や共存の一形態である。また、人が病気になることによって、その病原体は彼らの生存領域を拡大し、また人を病死させることでその生存環境を失うことになる。
さらに、人が病原体に対する抵抗力や抗体を持ち病気にならないことは、人がよりよい生存条件を獲得したことを意味する。逆に、そのことによって病原体は彼らの生存領域を失うことである。そこで、病原体も進化し、人の抗体を無効化させながら種を維持しようとするだろう。また、人が治療薬を開発し病気を治癒することは、病原体にとっては生存環境を失うことを意味する。そこで病原体は治療薬に対して抗体や無毒化する代謝経路を確立してその治療薬(化学物質)から身を守る。
人も細菌も生存競争と共存の関係を繰り返しながら、生命体の進化に関係し、生命活動の持続に寄与してきた。そして、今現在も、生命現象の一部として人と病原体(微生物)の生存競争や共存は終わることなく続いている。その意味で、生命現象の一部として疾病があり、疾病とは生命活動とよばれる自然現象であるともいえる。

2-2、疾病大流行の社会経済的被害(社会経済的要素)

パンデミックは人類が都市を建設した時代から存在している。そして、パンデミックは、古代社会より中世社会に多く発生し、また中世社会より近代社会や現代社会で、大型化していきた。パンデミックとは、病原菌による感染症であると同時に、都市化、人口増加、熱帯雨林の開発等々によって引き起こされている人工災害の側面を持つ。パンデミックの特徴を理解するために、その感染拡大の人工災害としての解明が求められる。例えば、以下の課題が挙げられる。
1、感染拡大の要因としての社会経済的要素
2、感染拡大の要因としての生活文化的要素、生活文化習慣
3、感染拡大の要因としての生態文化的要素
4、感染拡大防止対策、政策、制度等の社会政治的要因
パンデミックの人工災害的要素を理解することで、病原体の特性、その感染経路や感染媒体等の疫学調査対象を社会や生活環境に広げることが出来る。

2-3、ハイブリッド型災害としてのパンデミックへの三つの課題と解決のための対策

上記したようにパンデミックは、生物、医学的課題としてお疾病とその爆発的感染の背景となる社会文化的課題のハイブリッド型の災害であるため、その対策は、自然科学系の学問を土台とする感染症、疫学、医学的処置と同時に社会経済学的知識を基本とする公衆衛生、医療、社会、経済政策が求められる。さらに、パンデミックが都市化、人口増加、環境破壊等によって引き起こされているとすれば、その地球規模の文明論的課題も検討されなければならないだろう。
つまり、パンデミックへの対策は基本的には三つある。一つは公衆衛生、防疫や医療対策である。二つ目は、社会経済対策である。三つ目が地球温暖化対策と類似した文明論的対策、つまり持続可能な人類社会を構築するための対策である。
これらの基本課題の中で、ここでは、ハイブリッド型の災害であるパンデミックへの公衆衛生や医療対策に関して述べる。まず、自然科学系の学問を土台にする対策を以下に列挙した。
1、病原菌の微生物学的理解、遺伝子解明
2、感染症学的理解、COVID-19感染につての科学的理解、
3、疫学的理解、感染経路、感染媒体の調査、クラスター対策
4、免疫遺伝学的研究、ワクチン開発、PCR検査、抗体検査
5、臨床学的理解、感染症に関する臨床医学的調査、医療の確立
それらの上記した対策は、それをサポートする公衆衛生や医療体制の課題に繋がる。つまり、敏速に疾病対策を行う公衆衛生や医療政策や、その政策を決定する立法、その政策を実行する行政機関の課題が問題となる。
1、感染症を治療するための医療体制の確立
2、感染拡大を防ぐための防疫、公衆衛生制度の確立
3、感染拡大を要因となる社会経済的要因の解明とその解決策
さらに、ハイブリッド型の災害であるパンデミックへの生態文化・文明論的課題とその対策に関して述べる。
1、病原体の起源に関する調査研究とその対策
2、感染症の歴史に関する研究
3、感染経路や感染方法の生活文化的要素に関する調査研究
4、各国の感染防止対策やそれらの制度の調査、比較研究
以上、三つの異なる課題と対策に関して述べた。それらの課題に関する調査や研究は異なる専門分野の人々によって担われることになる。そのため、以下に示す三つの課題、専門分野毎の調査研究チーム、首相をリーダとして、各省官僚、政治家と専門家チームの代表による俯瞰的立場に立った横断型の対策会議、さらに、上記二つの議事録や調査資料の情報公開による大学や民間研究機関でのパンデミックに関する持続的な研究活動の推進のための組織化(制度化)について述べる。
1、各専門分野の委員会を構築する。例えば、病原体の微生物や遺伝子学の研究チーム、防疫や感染対策研究チーム、感染症の治療チーム、検査、検査体制の研究チーム、感染予防や公衆衛生制度に関する研究チーム、経済的影響に関する調査研究チーム、海外の感染対策に関する調査研究チーム、社会や生活、文化環境への影響に関する調査研究チーム、教育や保育、女性の社会的活動への影響に関する調査研究チーム等々、課題別にそれに関する多様な視点を持つ専門家を幅広く集め研究チームを組織する。それらの異なる分野の専門家による現状の理解と問題解決の対策を提言してもらう。
2、政府は異なる専門家集団による意見を俯瞰的に理解し、現状にマッチした政策検討を行う「対策会議」を組織する。この会議は官邸、各省官僚、政治家と専門家チームの代表によって構成される。首相が対策会議の議長を務め政府として対応する。
3、さらに、これらの専門分野の委員会や対策会議の議事録や調査資料は保存され、情報公開されなければならない。何故なら、21世紀の世界では、パンデミック(ハイブリッド型災害)は常態化する可能性が大きく、これらの研究調査資料が大学や企業研究者の次のパンデミック対策の研究資料となり、近未来に必ず起こるパンデミックに対して強い社会文化を構築するための材料になるからである。
21世紀社会で常態化するパンデミックに対して強い社会文化を構築、ハイブリッド型災害との闘いは上記した三つの課題、公衆衛生、防疫や医療対策、社会経済政策、学術的研究による文明論的検討が必要とされる。

目次、『ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策 -21世紀型の災害、パンデミックの構造-』

パンデミック対策にむけて(a)

ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策(1)

21世紀型の災害、パンデミックの構造

三石博行

1、災害の三つの形態:自然要因、人工要因と自然・人工要因

災害は、その原因や災害要因によって大きく二つのパターンに分類することができる。一つは自然現象によって引き起こされる災害パターンである。これを自然災害と呼んでいる。もう一つは人間が作り出した人工物によって引き起こされる災害パターンである。これを人工災害と呼ぶことにする。また、この二つの要因を同時に持つ災害パターンがある。これを、ここでは自然要因と人工要因のハイブリッド型災害と呼ぶことにする。しかし、現実の災害は、純粋に自然災害や人工災害に分類されるより、自然災害であったとしても人工的要素を含むものが多い。 

1-1、自然現象による災害、自然災害

地球の自然環境とは、地球の大気、海洋の運動、気象現象や地球のマントルや地殻、そしてプレート等の運動、火山活動、地球を取り巻く太陽系の運動、さらには太陽系や太陽系外の小惑星の運動等々によって地球環境が受けきたあらゆる自然現象を意味する。これらの自然現象の中に、自然災害と呼ばれる自然現象が含まれる。自然環境による人間社会への破壊的影響を自然災害と呼んでいる。
人々が自然現象に支配され、その自然の成り行きをそのまま生産や社会文化活動に活用する近代以前の社会では、自然災害は絶対的な自然の姿の一つとして受け止められてきた。しかし、人類が自然現象を支配する法則を理解し、それらの法則を活用するようになることで、自然現象としての自然災害も、その原因を科学的に理解することができた。
自然災害の原因を解明することで、災害の根本原因を防ぐことはできないのだが、それによって被害を受ける建造物等の人工物の災害防止策を検討し改良することが出来た。

1-2、人工物による社会や人への災害、人工災害

人間活動の結果引き起こされる災害を人工災害と呼んでいる。例えば、食料生産や消費活動に付随する食品被害、移動の手段の開発、発展してきた交通手段、自動車や道路等によって生じる交通事故や交通災害、生産活動、技術の開発や発展の中で生じる労働災害や職業病、住環境の改善、建築技術、生活環境の改善によって生じる火災等、劣悪な都市衛生環境等々が例に挙げられる。また、社会経済活動を支える巨大なエネルギー生産、電力産業によって引き起こされる環境破壊、原発事故、そして、国家防衛のための最新兵器開発や大量殺人兵器・原子爆弾等による被害、戦争災害も人工物による社会や人への被害、人工災害の一つであると言えるだろう。
人工災害は、生産活動の巨大化によってその規模を拡大してきた。18世紀から19世紀に掛けて欧米社会でおこった産業革命、20世紀の重化学工業化、巨大工業地帯や巨大都市の形成によって、自然生態系の破壊、大気汚染、ヒートアイランド現象等々、環境汚染が深刻化した。また、人工物による環境汚染(公害)は、工業化の進む発展途上国でも現在深刻な問題となっている。

1-3、自然現象と社会的要因による災害、ハイブリッド型災害

近年の災害の殆どが自然・人工災害、つまりハイブリッド型に分類される。例えば、大雨が洪水という災害を引き起こすが、同時に、荒れ果てた人工林の森から伐採し放置された木材が増水した河川を流れ出て、下流域の人家を破壊する洪水と廃棄木材によるハイブリッド型の水害が起こっている。
近年、このハイブリッド型の災害の事例として、人々の生活や産業活動によって排出される化学物質、例えばフッ素化合物によるオゾン層の破壊、また地球温暖化ガス(二酸化炭素やメタンガス)による地球温暖化、そしてその温暖化による異常気象、巨大台風や大雨、異常乾燥とそれによる森林火災、また海面上昇による高波や田畑の海面への沈没被害等々が報告されている。
ハイブリッド型災害に関して、以下三つの課題、多様な災害形態、総合型災害学、国際協力による解決が挙げられる。
1、ハイブリッド型災害は、21世紀社会、科学技術文明社会化、情報社会化、国際経済化、巨大都市化の形成と共に、広範で多様な形態を取りながら発生し続ける。人類がこれまでに経験したことのない未来社会の災害のパターンである。しかも、世界では多様な産業化、工業社会化があるため、この種の災害もそれぞれの国によって異なる特徴を持つ。それらの共通する形態や多様な形態を同時に理解する必要がある。
2、これまでの甚大な災害は自然災害(大雨、洪水、地震、火山活動、台風等々)であると考えられた。従って、災害学のテーマは自然災害の研究が中心であった。しかし、この後、全世界に被害を与える地球温暖化等ハイブリッド型災害が課題となる。その対策は災害原因である自然的要素や人工的要素の分析やそれに対する文理融合型の対策が求められる。つまり、この災害科学は総合型災害学を必要としている。
3、ハイブリッド型の災害、例えば地球温暖化やパンデミックの特徴は被害の範囲が国を超え、世界の至る所で起こることである。ある特定の地域で発生した温暖化ガスは簡単に国境を越え世界に広がる。また、病原体も社会経済の国際化による人々の国際的な移動によっての世界に広がる。そのため、この災害の解決方法は国際協調によって行わなければならない。一国内で温暖化ガスを削減したとしても地球温暖化を防ぐことは出来ない。同様に、一国内で感染病の流行を抑えたとしても、国際化社会では感染は他の国々から常時侵入し続ける。自然災害では災害国内で対策が取られていたが、ハイブリッド型災害、パンデミックでは一国内での災害対策は通用しなくなる。国際協働機関と歩調を合わせながら、国際協力の基にした一国の災害対策が求められる。パイブリッド型災害の解決方法として、国際機関(WHO等)の形成と改善、感染症の調査研究、ワクチン、治療薬開発の世界的連携が求められる。


目次、『ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策 -21世紀型の災害、パンデミックの構造-』

1章、災害の三つの形態:自然要因、人工要因と自然・人工要因

1-1、自然現象による災害、自然災害
1-2、人工物による社会や人への災害、人工災害
1-3、自然現象と社会的要因による災害、ハイブリッド型災害


2章、ハイブリッド型災害としてのパンデミック

2-1、病原菌による疾病(自然的要素)
2-2、疾病大流行の社会経済的被害(社会経済的要素)
2-3、ハイブリッド型災害としてのパンデミックへの三つの課題と解決のための対策


3章、災害学的視点からのパンデミックへの対策 

3-1、二つの災害形態:安全管理可能な疾病災害と安全管理不可能な疾病災害

3-2、予防策のない新型感染症対策期間:第一期

A、最も重要かつ最優先の課題(国、大学、企業が担う防疫政策)
A1、病原体の遺伝子、感染媒体、感染症の病理的特徴に関する情報
A2、ワクチン・治療薬の開発
A3、検査キッドと検査体制の確立
A4、予測される危機的状況に対する公衆衛生・医療体制の確立

B、科学的でより現実的な対策(健康保険行政と医療行政)
B1、感染拡大を防ぐ人と人との空間的隔離(ソーシャルディスタンス)の設定 
B2、検査体制確立、経済的な感染者隔離
B3、既存治療薬の援用 

C、合理的、経済的な政策(政府)
C1、既存の体制の敏速な援用と最適な体制のための改革: 
C2、人命や生活被害と社会や経済被害の双方を最小限に食い止める政治的判断:
C3、国民と国家の負担を最小限に食い止めるための経済政策:
C4 、感染症拡大と格差社会
C5 、総合的にパンデミック対策を担う政府機関と地方自治体の体制



2020年5月4日月曜日

COVID-19感染防止に対して、日本政府は正常な科学的判断力を持っているだろか。(4)

4、公衆衛生学の基本、隔離の概念

a. 感染症とは

感染症とは病原菌が人から人へと感染して起こる病気の一般的名称である。感染症を引き起こす原因(病原体)は、寄生虫・細菌・真菌・ウイルス・異常プリオン等がある。感染を引き起こす病原体の種類によって感染症は種類は異り、その研究分野も異なることになる。例えば、微生物による感染症を研究する学問は微生物学、細菌によるそれは細菌学。ウイルス感染に関する学問はウイルス学、真菌や寄生虫による真菌学や寄生虫学も感染症学の中に分類される。

また、病原体の種類によって感染症の病名が決定される。例えば、RNAウイルスのインフルエンザウイルスがインフルエンザの病原体であり、これまでA型からC型のインフルエンザウイルス3種類が存在すると言われてきた。

今回の新型コロナウイルス感染もRNAウイルスであり、「ウイルス粒子表面のエンベロープ(膜構造)に、花弁状の長いスパイク蛋白の突起(S蛋白、約 20 nm)を持ち、外観がコロナ(太陽の光冠)に似ていることからその名が付けられた」(Wikipedia)と言われている。はじめてコロナウイルスが発見されたのは1960年代で、ニワトリの伝染性気管支炎ウイルスであったが、その後、風邪をひいたヒト患者の鼻腔からの2つのウイルスが発見された。そして、2003年にSARS-CoV、2004年にHCoV NL63、2005年にHKU1、2012年にMERS-CoV、2019年に2019新型コロナウイルス (COVID-19) が発見されている。


b ,PCR検査、感染確認者と非感染確認者の確認・隔離の方法 

色々な病原体による感染が、その病原体によって生じる感染症を引き起こすのであるなら、当然ながら、感染しないように病原体との接触を避けることが、感染症対策の基本となる。

病原体の感染能力を調べることが感染症対策の基本となる。つまり、今回の新型コロナウイスは飛沫感染や接触感染が問題となっている。接触感染の場合でも素材によってCOVID-19の生存時間が分析されていた。そして、プラスチック素材が銅などの金属より、コロナウイルスの生存時間が長いことなどが判明していた。

感染予防の基本として、病原体に触れないこと、つまり感染者との接触を避けることが原則となる。そのため、まず感染者を探し出さなければならない。感染者の調査は、まず、病原体に侵された感染者がもつ病状の医学的判明がなされなければならない。医学的な診断によって感染症の疑いがなされ、それを正確に診断するために生物学的検査が行われる。今回問題となっているPCR検査は、RNAウイルスの遺伝子を検出する検査である。この方法を用いて、感染者か非感染者かを判断することが出来る。


C,  感染症対策としての隔離 PCR検査による感染確認者のあぶり出し

感染症予防のための隔離とは感染者から非感染者を引き離すこと、つまり、非感染者と感染者の間に感染しない距離(物理的な)を築くことである。これが最も原始的・初歩的な感染症予防策である。当然のこととして感染者を見つけ出すことがその感染症対策の第一の課題となる。

感染者を見つけ出すために、前記したように感染者が持つ病理的特徴(症状)を細かく観察、診断する作業(診察)が必要となる。今回のCOVID-19でも、これまでの臨床データから、色々な症状が取り上げられている。そして、COVID-19の症状は、さらに多くの臨床事例から、付け加えられてきた。

問題はそれらの症状群の中の一つが充たされるなら、すべて検査の対象となると言うことになる。それが隈なく感染者を見つけ出す方法であり最善の手段となる。PCR検査による感染確認者のあぶり出しは、感染確認者から非感染者を隔離するためのもっとも有効な手段である。

しかし、今回のCOVID-19感染症が、その隔離を困難にしているのは、無症状の感染者が存在することであった。つまり、病理的特徴(症状)を確認できない感染者が存在していることがCOVID-19感染の拡大を広めている。言い換えると、COVID-19は、極めて対処しにくい病原体(敵)である。病理的特徴をもって感染可能者を判明し、検査し、感染確認を行うことが不可能となる。つまり、感染症対策としての隔離が困難になるのである。

そのため、もし、COVID-19と戦うためには、感染者が持つ病理的特徴(症状群)をさらに詳細かつ繊細に見つけ出し、それらの一つがある場合にはすべてPCR検査を行い、感染の確認を急ぐべきなのである。


D、科学的感染症対策としての検証が必要、しかし時間がない。

しかし、不思議なことに、日本では、今までPCR検査の対象者は、それらの症状の全てを持つ場合に限定され、それらの症状群の中の一つの症状がなければ、検査の対象から切り捨てられてきた。これは、感染症対策としては全く間違いであり、出来る限り多くの感染者を見つけ出し、非感染者が感染者と接する機会を出来る限り少なくする手段を自ら放棄する行為であると言いようがないのである。それも、日本が、感染症の専門家をして、世界七不思議の感染症対策を行っているという、話となっている。

PCR検査を徹底的に行った韓国やドイツをはじめ多くの先進国の感染症対策と異なり、PCR検査を出来るだけ控えた日本の対策の根拠は何か。その考え方を列記してみた。

1、PCR検査を行い、多くの陽性者(感染確認者)が出れば、医療崩壊が起こる。(この考え方は2月から3月に掛けて、多くの感染症専門家や政治家たちまでもが主張していた意見であったことは事実である。

2、PCR検査は極めて難しい検査であり、日本では困難である。この考え方は多くの報道機関が、PCR検査が何故少ないかを、専門家の意見と述べていた。

3、日本でのPCR検査は、国立感染症研究所・保健所が行う行政検査を中心として行われていたため、その検査能力に限界があった。それを民間検査に素早く移行することが出来なかった。その理由の一つとして、民間検査会社では、PCR検査を行うスキルがないと言われた。

以上、それらの理由が正しいのかどうか、検証しなければならないが、そうゆっくりと検証する時間はない。それほど感染爆発の状況、医療崩壊の危機が起こる切羽づまった状況にあるのではないだろうか。


E, 最もコスト高の感染症対策、 都市封鎖

さらに不思議なことは、日本ではPCR検査によつ感染確認者のあぶり出しを行う前に、何と小池東京都知事から、都市封鎖「ロックダウン」が持ち出された。ロックアウトは、感染者を非感染者から隔離するための最終手段とも言うべき方法である。

まず、感染者がどこに、何人いるのか不明であり、そうした状況の中で、感染爆発が生じている情況、例えば2月の中国武漢市の状況や3月の韓国テグ市のような場合に、緊急事態として取り挙げられる感染症緊急対策である。

平たく考えて、ある集団があるとする。その集団の中での感染者と非感染者の分離が極めて困難な状態があり、しかも、非感染者が急激に感染している状態の時、感染者と非感染者の物理的接触の可能性をすべて絶つというのがロックダウンのやり方であり、いわゆる家からの外出の禁止となる。

ロックダウンはすべての社会経済活動の中止を意味するため、それによる経済的打撃は非常に大きくなる。そのため、政治は出来る限りロックダウンを行わないように、まず、事前に出来る限りの対策を取るのである。それが徹底したPCR検査である。家、地域社会、町全体の閉鎖という方法でなく、病理的症状の違いによる隔離を行うこと、つまり感染確認者を症状に応じて、韓国が行ったように、生活治療センター、病院、高度医療病院に振り分けて隔離・入院させ、治療を行い、陰性になった患者(非感染化を確認した者)から退院させて行く方法が、最も経済的な方法であると言える。

最も高くつく方法は、すべての人、非感染者も感染確認者もすべて、感染者として扱い、それらの人々を物理的に隔離し、その中で、重症者を、集中治療室に入院させるという方法である。まず、すべての人々の社会・経済活動が奪われる。そのために支払われる犠牲が、想像を超えて大きいこと。さらに、軽症者の感染者が重症化するまで放置される可能性が高いことである。そして、それことは結果的に莫大な医療費負担が伴うことを意味する。

2021年になるまでもなく、韓国や台湾と日本の今後の経済状況への影響が、この事実を証明するだろう。PCR検査を行わない日本のCOVID-19感染症対策による経済的負担、社会的損失が明らかになるのは時間の問題であり、その犠牲を払うのは、私たち国民であることを忘れてはならない。
 

2020年5月4日、フェイスブックに記載


三石博行 ブログ文書集「パンデミック対策にむけて」

COVID-19感染防止に対して、日本政府は正常な科学的判断力を持っているだろか。(3)

3、感染者数でなく感染確認者数、それは国別の感染状況を理解するデータなのか。


日本の報道から流れる大きな誤解情報、それは日本のPCR検査陽性者を「感染者」として、その数を「感染者数」とし、他の国々の「感染者数」と絶対比較していることである。PCR検査を制限し、その制限された検査数によって陽性になった感染(確認者)者の数を、徹底して検査を行っている世界の国々の感染(確認者)数と絶対比較しているのである。この比較は、そもそもその母数(検査件数)とその母数を導く検査条件が異なることによって、不可能であるという科学的理解すら日本の感染対策を担う専門家には、不思議なことに、ないのである。

ある集団の感染者数という概念は仮定の数を意味する。何故ならその集団の全ての人々の感染状態を調査した上ではじき出された数を意味するからである。保健所の判断基準にしろ、医師の判断基準にしろ、そこからPCR検査を行って検出された感染者は「感染確認者「」であり、その感染者数は「感染確認者数」と呼ぶことが正確な呼び方・概念になる。

では、何故、公衆衛生のプロ中のプロ、WHOで活躍した専門家、そうした人々が「厳しく制限されたPCR検査によって陽性と判断された日本の感染者の数と、徹底してPCR検査をおこなっている国々の感染者数とを、絶対比較するという科学者らしからぬことを平然と行っているのだろうか。不思議な話である。それにはもっと深い理由があるのではと思われる。

その理由とは何か、それがむしろ重大な問題に見えてくる。世界的に評価されてきた日本の公衆衛生や感染病や感染対策の専門家に対して、彼らの科学的合理性に問題があると言い切れる人はそう多くないだろう。また殆どの科学者がそう言わないだろうと思う。しかし、私は、どう自分の論理を疑っても、PCR検査を積極的に行わない専門家の判断に対しては、腑に落ちないのである。

何が彼らの判断の基準なのか。これほど不可解なことはない。

2020年5月4日、フェイスブックに記載
三石博行 ブログ文書集「パンデミック対策にむけて」

COVID-19感染防止に対して、日本政府は正常な科学的判断力を持っているだろか。(2)

2、日本政府(COVID-19感染拡大防止対策の司令塔)の判断は正しいのだろか。

日本政府の取ったCOVID-19感染拡大防止対策は、第一段階が2月初期からの中国武漢から入国者への対策・クラスター対策であった。この対策は一応評価できた。徹底したクラスターの調査と感染者可能者への調査による感染確認者のあぶり出しによって、感染拡大は食い止められた。

しかし、感染源が判明できない「市中感染」が広がった段階からは第一段階の感染対策(クラスター対策)では対応できない状態になっていた。

しかも、第一段階の感染可能者の判明基準が現実的ではなかった。それをいち早く指摘したのが病院でのCOVID-19感染が起こった和歌山県の対策であった。この教訓を厚労省・感染対策本部は学ぶことはなかった。何時までも、「37.5度以上の熱が4日以上続く場合」「中国からの帰国者」等々の条件に拘っていた。

ましてや、PCR検査を行うことを判断するのは保健所の職員であり、医療の現場で患者に接する医師ではなかった。数少ない保健所の職員が電話で相談してくる人々に対して、一人30分以上の時間を掛けて、きめ細かい行動・移動歴を調べ、また発熱等の症状を事こまめに聞き取り、基準に合う人々に対してのみ、PCR検査を行った。その数は相談者数のなかのほんのわずかな数に過ぎなかった。。

PCR検査の普及拡大が問題にあっても、あた総理大臣がお願いしても、国会で一日万件できますと答弁しても、検査件数は検査を希望する数に比例して増えなかった。

こうした現実に対して、PCR検査は技術的にも難しく、それが出来る専門家がいないとか、PCR検査をこなう装置や検査試薬がない とか、耳を疑うような話がまことしなやかに報道されている。もしそうなら、「医先進国」日本と言う形容詞をやめて「医療後進国」日本であると、まず厚生労働省の官僚、日本政府は自覚しなければならないだろう。

2020年2月初めから一貫してCOVID-19感染拡大に関する報道を行い続けてきた「報道1930 BS-TBS」で、PCR検査の必要性が常に課題になっていた。2月初旬から4月初旬の2か月間の時間が経っても、PCR検査は普及しないのである。この原因は何か。それは単に、PCR検査体制を阻止している人々(集団)がいるという問題と言うよりも、もっとその原因を生み出している問題の深さを感じるのである。

つまり、日本ではPCR検査によって陽性となった感染者を「COVID-19感染者」と呼んでいる。その数が世界の他の国々に比較して少ないことが「日本でのCOVID-19感染対策が成功している事実を示すデータ・現実」として評価されてきた。今でも、その評価は変わらない。

しかし、「慶応大学病院のHPには、4月6から12日では97人の検査では0%、4月13日から19日までは、67人中5人、7.46%、4月13日から19日までは67人中4人、5.97%、そして4月20日から26日までは60人中2人、3.33%、さらに4月27日から30日までは34人の検査で誰も陽性者はいなかったと報告されている。」(1) 同時に、「その後同じ病院で研修をしていた医師99人に対してPCR検査を行なったところ、18人が陽性となったことが明らかになっている」(2)と報道されていた。

この事実から、慶応大学病院では外来患者や医師のPCR検査を行うことで、院内での感染状況を調査し、その対策を取り、院内感染を防止する努力がなられた。しかし、他の多くの病院では、このような対策が取られているかが問われる。医療機関はCOVID-19パンデミック対策のための基幹機能である。その意味でも、院内感染をまず防止するための政府の一貫した対策が急がれる。

この現実は、言うまでもなく、病院の外(院外)に多くの感染者がいて、それらの未確認感染者が通院や入院をしていることによると理解しなければならない。そのことが、最も恐れる「医療崩壊」の原因となっているという今後の状況を予測させていることである。

この深刻な事態を理解できないほど、日本の厚労省官僚や政府、感染症対策本部の専門家たちは無知なのだろうか。無知という次元で語っていいのだろうか。私が恐ろしく思うのは、この国を滅ぼしかねない人々がCOVID-19感染拡大防止対策の司令塔にいるということなのだ。


2020年5月4日、フェイスブックに記載

2020年7月8日、修正
(1) 高鍬博医師からの情報で修正を行う。
(2)https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5ea0dbfcc5b699978a32fbbc
三石博行 ブログ文書集「パンデミック対策にむけて」

COVID-19感染防止に対して、日本政府は正常な科学的判断力を持っているだろか。(1)

1、民主主義国家の中でのCOVID-19感染爆発対策への二つの成功事例

COVID-19感染爆発に最も合理的(少ない労力で多い成果を得る方法)に対応した国は韓国と台湾である。

台湾は中国のご機嫌を伺うWHOの支援もなく独自にCOVID-19の中国大陸での感染情報を昨年12月に入手し、徹底した水際対策と検査体制を構築し、感染を食い止めた。

韓国は最も経済活関係の深い、しかも陸続きの中国からの人々の移動を敏速に制御することは出来なかったが、その後、政府中心の合理的で強烈な感染拡大防止の対策(疾病対策の実務をこなす専門家集団でなる疾病管理本部・コントロールタワーの設置、3月17日に1兆円の感染拡大防止対策予算の成立、選別診療所・国民安心病院・ドライブスルーで行う徹底したPCR検査体制、軽症感染者の医療を担う生活治療センターの設置)を取った。韓国式のCOVID-19感染対策は世界のモデルとなり、ドイツや米国カルフォルニア州のモデルとなった。


2020年5月4日、フェイスブックに記載

日本社会は、COVID-19感染対策として正しい判断を行っているだろか。(1)

1、何が9月入学なのだろうか?


今、COVID-19感染爆発で教育を受けられない子供・青年たちが抱えた深刻な問題は大きく二つある。一つは学習環境の問題だ。この課題の二つの具体例を示す。

1、例えば、自宅でのインターネットを通じての学習環境がない。タブレット学習のためのインフラや機材がない特に、貧しい家庭の子供たち。

2、また、タブレット学習教材を作成しなければならない教師たちへのサポートが不十分であること。

二つ目は経済的な問題だ。この課題の二つの具体例を示す。

1、例えば、、高い授業料の大学・高等教育を受けている学生たちの13%が退学を考えているという。この学生たちをサポートしなければならない。

2、また、これまで給食等のサポートを受けていた子供たちが長い休校のためにそのサポートが受けられない状態にある。その子供たちのサポート(こども食堂等のボランティア運動のサポートも含め)が必要である。

それらの二つの課題以外にも、深刻な問題が多くあるだろう。

例えば、家庭内暴力の苦しむ子供たち、また、貧しい家、自宅環境の悪い家、遊びを奪われた子供たち等々、多くの課題、貧困からくる課題が噴出している。

それなのに、何だろう、全国知事会では9月入学(新学期を9月にする)の問題が話し合われたとか。少し、現実離れしていないのか。確かに、その課題も話し合ってもい今も知れないが、その課題の優先順位は、上記した深刻な二つの課題に比べると、低いと思う。

今、困っている問題に集中しなければならない。そのことを優先的に解決するのは、敵(COVID-19感染爆発)が余りにも大きく、その闘いに我々の力・資源が余りにも限られているからなのだ。

問題を有効に解決するためには、取り組むべき課題の優先順位を考えなければならない。そうでないと、結果的に、国民に犠牲を強いることになるだろう。

また、そのこと、つまり自分たちが出す指示によって国民が不必要に経済的な負担を負うこと、生活や生命を犠牲にすることを理解できないリーダーは、その資格を持たないと言える。そうしたリーダは、さっさと辞めて欲しい。この戦いで、出来るだけ多くの犠牲者を出さないために、私たちは、有限な私たちの力や資源を集中させなければならないのである。

2020年5月4日、フェイスブックに記載
三石博行 ブログ文書集「パンデミック対策にむけて」

目次、「パンデミック対策にむけて」

ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策

21世紀型の災害、パンデミックの構造

三石博行


第1部 21世紀型災害COVID-19̶̶パンデミックの構造とその対応

1章  災害の三つの形態:自然要因、人工要因と自然・人工要因
   http://mitsuishi.blogspot.com/2020/07/1.html
1-1  自然現象による災害、自然災害
1-2  人工物による社会や人への災害、人工災害
1-3  自然現象と社会的要因による災害、ハイブリッド型災害

2章  ハイブリッド型災害としてのパンデミック
   http://mitsuishi.blogspot.com/2020/07/b.html
2-1  病原菌による疾病(自然的要素)
2-2  疾病大流行の社会経済的被害(社会経済的要素)
2-3 二つの災害形態:安全管理可能と安全管理不可能な疾病災害
   http://mitsuishi.blogspot.com/2020/07/d.html

3章  日本政府の COVID-19 対策を検証する
3-1 民主主義国家の中での COVID-19 感染爆発対策への二つの成功事例
3-2 日本政府(COVID-19 感染拡大防止対策の司令塔)の判断は正しいのだろうか
3-3 感染者数でなく感染確認者数、それは国別の感染状況を理解するデータなのか
3-4 公衆衛生学の基本、隔離の概念


第2部 パンデミックへの三つの対策戦略

1章 予防策のない新型感染症対策期間:第一期

A 最も重要かつ最優先の課題(国、大学、企業が担う防疫政策)


A1 病原体の遺伝子、感染媒体、感染症の病理的特徴に関する情報
 A2 ワクチン・治療薬の開発
 A3 検査キットと検査体制の確立
 A4 予測される危機的状況に対する公衆衛生・医療体制の確立

B 科学的でより現実的な対策(健康保険行政と医療行政)
 B1 感染拡大を防ぐ人と人との空間的隔離(ソーシャルディスタンス)の設定
 B2 検査体制確立、経済的な感染者隔離
 B3 既存治療薬の援用

C 合理的、経済的な政策(政府)
 C1 既存の体制の敏速な援用と最適な体制のための改革:
 C2 人命や生活被害と社会や経済被害の双方を最小限に食い止める政治的判断:
 C3 国民と国家の負担を最小限に食い止めるための経済政策:
 C4 感染症拡大と格差社会
 C5 総合的にパンデミック対策を担う政府機関と地方自治体の体制
この後の記載予定(2020 年 7 月 6 日現在)

D 民主主義社会の文化、教育政策(報道、教育機関、文化施設、NPO、市民運動、自治体運動)
 D1 感染症恐怖と感染者差別への対応
 D2 人権問題、教育、育児問題への対応
 D3 文化施設、イベント、娯楽施設の保護
 D3 感染症対策の主体が問われる( 国家か市民か)

E 防災 緊急時の安全対策 (防災関係の政府・地方行政、等々)
 E1 移動制限
 E2 生活活動の自粛
 E3 プライバシー保護と感染防止、ソフト開発
 E4 地方自治体の課題、
 E5 複合災害対策


2章 ワクチンや治療薬開発後から始まる医療・社会経済対策:第二期

A マクロ社会学的課題
 A1 第一期の被害の修復作業
 A2 防疫安全保障と国際協力
 A3 経済安全保障と国際連携

B ミクロ社会的課題
 B1 新しい社会経済活動や生活スタイルの普及 経済活動の在り方
 B2 民主主義社会の在り方 市民参加型
 B3 総合的パンデミック対策を課題にした社会インフラ


3章 パンデミックが繰り返し起こり、常態化する時代:第三期

A 社会文化的課題
 A1 21 世紀の災害パターン:繰り返し起こるパンデミック
 A2 第一期での被害を最小限に食い止めるための対策
 A3 第二期の重要な作業内容の再確認
B 地球環境的課題
 B1 環境問題、熱帯雨林の保護、地球温暖化対策
 B2 国際協力体制に向けた課題とその解決の道筋

 B3 関連課題との連携 (エネルギー問題、食料問題、教育、公衆衛生、生活文化、民主主義文化の成長への協力)


2020年4月13日月曜日

パンデミックの中で、何が今問われているのか

パンデミック(新型コロナウイルス肺炎爆発的感染)に見られる現代社会文化の構造的問題を語らなければならない。
ここでの大きなテーマは、医療体制に関する二つ、経済政策に対する一つの三つがある。

1、何故、日本はPCR検査(感染状況の科学的調査)が普及しないのか。

2、日本を含め医療崩壊(感染症への合理的医療戦略の失敗)が生じている国々の政策上の問題とは何か。

3、行動規制を行うことが、感染病対策、医療崩壊を防ぐために取られる唯一の手段であると提案される。経済活動の保護と感染症対策が二律背反(二つの異なる原則)として語られるのは何故か。

この議論を進めるための前提条件を理解する必要がある。
何故なら、まずこの感染症の基本的な課題を前提にして、対策を取らなければならないからである。つまり、この感染症対策を考える上で大切な視点で最も大切なことは、COVIC-19(新型コロナウイ)への感染を防ぐためのワクチンがないと言うことである。

さらに、感染症に対する治療薬がまた確定していないことも大きい。感染し重症化すれば死亡してしまうのである。そのために、重篤な状態になった感染者の治療は大変な状況となる。
これらのことはすでに2月中旬に明らかになっていたのであるが、その対策がここまで遅れ、そしてその結果、感染爆発を引き起こしているのが現状である。

それにも関わらず、日本の感染症対策は、迅速で広範なCPR検査(感染状況の科学的調査)体制を構築しない世界の例外中の例外であると言える。

こらまで、議論の優先順位、感染防止対策上の合理的戦略、経済政策上の優先順位、社会資源活用上の合理的戦略を決定するための姿勢(考え方)等々の基本的な議論が不足していると思われた。
今後、出来る限り、この課題に関する考察を行うことにする。

2020年4月6日フェイスブックに記載