2014年12月18日木曜日

詩 「連作障害を避けたいのです」

三石博行

岩本拓郎作(2014年12月13日)


















‐岩本拓郎氏の幻想的な絵から‐


三石博行


太陽の光の中では
色彩畑の野菜たちの話は終わらない

昨日は
一方は自由が一番だ
すると、もう一方が
平等がなければ
と言い始めた

今日は
一方は社会福祉が大切だ
すると、もう一方が
自由が必要だ
と言いだした

すると
畑のまわりの雑草が
野菜たちの議論を聴きながら
「君たち連作アレルギーを知ってる」と
笑い出した

色彩畑も
「だから、去年は青色野菜で
今年は赤色野菜なのさ」と
タクトを両手に握った

こんどは
色とりどりの野菜音色に包まれて
補色多様のリズムがわき上がり
「色彩畑では
連作障害がないのさ
来年も野菜が育つのさ」と
雑草たちのコーラスが始まった

色々野菜も雑草も
まちまち楽器を持ちもんで
色彩畑の音楽会がはじまる

南天する光の中で
色彩畑の演奏曲は
クライマックス
リズムに乗って進行し
「自由か平等か」と奏でる

やがて
夕日に照らされて
色彩畑の音楽会は
静かに終わりを迎え
「福祉か市場か」とソロが響き

赤紫夕闇の拍手がわきおこり
色彩畑の指揮者は
静かにタクトを置き
「競争か共存か」とフィナーレに進み

薄暗い闇夜のカーテンが舞降りて
形象音色の補色多様のリズムは
消えてゆき
「社会か個人か」と余韻が
色彩畑を覆う

それでも
色彩畑での野菜たちの議論は
明日もつづく
来週もつづく
来月もつづく
来年もつづく
つづく、つづく
ずーっと、つづく

そうであってほしいと
色彩畑は願った
それで連作障害は避けられると
雑草たちは考えた




2014年12月13日

2022年9月1日 修正

詩人学校 2022年9月号 記載予定


三石博行 詩集 『心象色彩の館』

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