2011年1月11日火曜日

国際化する人権思想・民主化過程

三石博行

自由主義経済の導入は民主主義制度・人権思想の発展を導く


現在、日本社会のみでなく世界の多くの社会が資本主義経済によって運営されている。北朝鮮を除く中国、ベトナムやその他の社会主義国家やイスラム宗教国家でも資本主義経済を基本とする社会運営が行われている。その場合、自由な経済的行為や財や富への欲望を肯定しない限り資本主義経済は成立しない。

富への欲望肯定は個人主義の発展に火をつけ、全体主義を維持するために必要であった禁欲主義を解体しつつある。21世紀社会に軍事的植民地主義を呼び戻すことが出来ない限り、富国の条件として自由な経済行為を認めなければならない。その富国の条件と全体主義や禁欲主義は拮抗することになる。

人権思想は、資本主義経済の推進力を果たす個人主義、自由主義に支えられ歴史的に発展してきた社会思想である。その意味で、資本主義経済の発展は同時に人権思想の普及を意味する。つまり、中世社会・封建制度を維持してきた社会思想は資本主義経済の発展と共に駆逐され、消滅を余儀なくされる運命にある。

好むと好まざるに関わらず、富国政策を資本主義経済発展によって推進する場合、資本主義経済を維持するための社会制度(法律や行政機構)が発展し、その中で働く人々の効率のよい労働、役割、社会的機能を保障しなければならない。それらの社会的機能を維持する個人の役割が、個人の社会観念形態の基本を作るのである。

その集合表象形態、つまり共同主観性によって、社会的常識や社会習慣は形作られて行くことになる。資本主義経済の発展は、それを担う多くの社会要素や機能、つまり大衆的な役割集団を形成し、それによって資本主義経済制度をより強固に、より大きく展開し続けることになる。換言すれば、資本主義経済システムは個人主義や自由主義を再生産する人々を生み出し、それらの人々の占める社会での量的変化やその社会機能の質的変化が、全体主義的国家であろつと民主主義を基盤とする社会制度へ導くのである。

さらに、今日、21世紀の社会では、科学技術の進歩、つまり科学技術的知の生産力が経済発展の推進力となっている。20世紀の資本主義経済は、新しい文明形態(21世紀の科学技術文明社会形態)、国際化社会や情報化社会の社会文化形態を生み出した。国際化社会や情報化社会によって、科学技術的知の伝達や交流、知識人たちの国際的交流や移動が盛んになって行く。海外の情報が自由に持ち込まれ、国内の政治や社会が国際的な視点から相対化され始め、国民はマスコミを通じて経済的に進んでいる海外の社会モデルを知ることが出来るようになる。

現代社会では、すべての国と民族がその存続を掛けて世界経済競争のトラックを走っている。富国富民のために競争が繰り広げられている。そして、その過程で、それぞれの歴史や伝統文化を前提にした民主化過程が生まれるのである。例えば、社会主義政治制度やイスラム共和主義制度の国々においても、豊かさを求める国民は経済的行動や政治的行動の自由を国家に求めことになる。

資本主義経済を推し進める以上、民主主義制度への移行は避けられないし、民主主義制度の確立へ向かう以上、人権思想が社会に根付くことは避けられないのである。

参考
三石博行 「中国の近代化・民主化過程を理解しよう」
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/12/blog-post_1850.html

三石博行 「イラン・イスラム国家の近代化過程と日本の国際戦略」
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/12/blog-post_2293.html






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