- 2016年に起こった国際社会の激動の幕開けの意味する課題とは -
今、私たちは現状をどう理解し、そして、今後、どこに向かうべきなのか
三石博行
トランプ氏や民族国家主義はグローバリゼーションの流れを止めることが可能か
昨年は、イギリスの国民投票の結果、イギリスはEU離脱をすることになった。また、アメリカではポピュラリズム扇動したトランプ氏が大統領選挙を制した。こうした背景の一つに、これまでのグローバリゼーションへの反発がある。グローバリゼーションによって、安価な商品が流れ込み、国内の産業が大きな打撃を受けた。例えば、フランスの農業、アメリカの製造業、日本の農業等々、関税を撤廃する協定を結ぶことによって、先進国をはじめ発展途上国、世界の国々の産業構造が、グローバリゼーションによって、大きな影響を受けた。グローバリゼーションによって発展した産業、その逆に打撃を受けた産業が、それぞれの国々の状況によって、異なりながらも、結果的には、大きな産業構造の変革が起こった。その結果、倒産や海外移転する産業で働く人々は職を失うことになった。そして、2017年は、アメリカやヨーロッパの国々では、反グローバリゼーションの流れ、つまり保護主義が台頭し、これまでの自由貿易協定の変更を迫るだろう。
どの時代でも、国がある限り、自国第一主義と言うのは当たり前の政治スローガンだろう。だから、アメリカ第一と言うのは、別に、トランプ氏だけではなく、アメリカの全ての政治家の考えであり、また政治行動である。問題は、アメリカの利益を第一にする政治や経済政策である。グローバリゼーションによって、それを実現しようとしてきたこれまでのアメリカの政治の修正を行おうとトランプ氏は提案している。しかし、海外から輸入する製造産業物に高い関税を掛けながら、アメリカから輸出する農作物は自由貿易協定で、低い関税を他国に要求することが出来るだろうか。また、アメリカの国際金融資本の自由な取引を維持しながら、多国籍企業化したアメリカの巨大産業の海外事業に制限を掛けることが出来るだろうか。
トランプ氏の主張は、結果的にアメリカ経済に混乱を持ち込むことにならないか。そして、ご都合主義のアメリア第一政策は、結果的に、アメリカを国際社会の中心から逸脱していく過程を早めないだろうか。すでに、中国はそのことを理解し動き出しているともみられる。
高度情報化社会と経済グローバリゼーションと言う二つの産業システムの歴史の流れを、今更、止めることは出来ない。そのことを、結果的にトランプ政権は理解することになるだろう。何故なら、この産業構造の歴史の流れを創ったのは、今、グローバリゼーションに批判的な態度を示すアメリカ社会ではなかったか。それにも拘らず、その結果に異議申し立てを行っている。自らが起こしたグローバリゼーションの流れを反省することも、自覚することもなく、メキシコに壁を造れと言っているわけだが、メキシコ人からすると、おかしな話に聞こえるだろう。それと同じように、日本の安倍政権も困惑をしている。農業を犠牲にしてまで、これまでアメリカの国際経済政策・グローバリゼーションに追従して来た。そして、何とか国内産業構造の改革を行うことで、新たに進化するグローバリゼーションの流れに対応しようとしてきたが、ここに至って、グローバリゼーションの先導者であったアメリカから、もうグローバリゼーションは止めましょうと言われているのである。
日本が焦る理由は、中国主導のグローバリゼーションの流れが進む中で、何とかアメリカと手を組んでアメリカ・日本主導型グローバリゼーション(環太平洋パートナーシップ TTP)を行いたいという国際戦略が、トランプ氏によって崩壊しそうになっているからである。そして、その崩壊は、結果的に中国主導のグローバリゼーションの流れを助けることになると理解しているからである。つまり、安倍政権の国際外交政策は、トランプ氏の反グローバリゼーション政策に翻弄されることになるだろう。
しかし、いずれにしても、トランプ氏のアメリカ第一主義は、アメリカ社会・経済に大きな混乱をもたらしながら、アメリカ自体が、グローバリゼーションの歴的流れを阻止できないことを証明するだろう。
世界経済共同体化と多様性をもつ地域社会経済システム構築
問題は、それからなのだ。つまり、高度情報化社会と経済グローバリゼーションと言う二つの産業システムの歴史の流れが生み出す経済的、社会的問題を、どのように解決することが出来るかが問われる。つまり、一国経済主義、民族国家主義と呼ばれる歴史の歯車を逆回転させることによって、グローバリゼーションの基盤である高度情報化国際経済社会構造の進化から生み出される多くの課題を解決しなければならないのである。
そう言う私も、その答えを知らない。共に、その答えを求める仲間がいないかと考えている。それらの課題を検討するために、必要な政治経済政策を考え、研究する仲間がいないかと考えている。
例えば
1、進行するグローバリゼーションの中で、国内の産業構造の改革の視点、方法、制度プローセス等々の研究。例えば、農業を農産物生産産業だけでなく、エネルギー生産、環境保全産業、観光産業として多様化し、多様な価値を生み出す産業構造にすることによって、海外からの安価な農産物に対する国内的、国民的サポートを考える。その視点は同時に、食料安全保障とエネルギー安全保障を前提とした政策と合わせて、グローバリゼーションの流れの中での国内農業政策を打ち出す。
2、経済のグローバリゼーション、低賃金労働、格差社会、中産階級の貧困化等々、グローバリゼーションによる負の社会経済スパイラルの進行を抑制するための政策や国家間協定、制度作りが問題となる。特に労働環境やその条件、育児や教育、医療福祉等々、社会保障制度に関する国際的な協定、支援基金制度、また、同時に国内的な制度形成を行い、国民の犠牲の上に成り立つことを前提にして進行するグローバリゼーションの流れを是正する、国際的な社会政策制度が必要となる。
3、グローバリゼーションによる負の社会経済スパイラルは、科学技術力の格差によって引き起こされている。この課題を解決するために、国際的な科学技術研究開発機構の形成と、それらの成果を公平にどの国にも配分、もしくは、共同化する国際科学技術政策が必要となる。
今、世界は新しい社会観念論(政治哲学)とその具体的な政治経済政策を求めている。
21世紀の社会が、これまでの20世紀型の社会とは異なる新し社会であることは理解されていた。その一つとして、グローバリゼーションがあった。グローバリゼーションとは、具体的言うと、政治制度の国際化、経済活動の国際化を意味するが、それを支えているインフラが国際的な流通制度、高度情報化、国際的な文化交流が挙げられる。この流れは、今後も更に加速的に増大し続けるだろう。
19世紀ヨーロッパで起こる産業革命が巨大なエネルギーと物質の利用を可能にした機械製大工業の形成による社会経済の変化であるとするなら、21世紀で進行しつつある産業革命とは、エネルギー物質に情報を取り入れ、より効率的な生産システムを開発する社会への変化を意味する。つまり、今、私たちの社会で起こっているグローバリゼーションの流れは、その入り口を指している。
これらの歴史の流れが、果たして今後、人類の未来に繋がるのか、それとも人類の滅亡に繋がるのか、この問い掛けを常に秘めながら、進んでい居ることを自覚的に理解しなければならない。先の産業革命では、生産に必要な資源(物質的資源、人的資源等々)は無限にあるという仮説の下に行われていた。巨大のエネルギーと物質の消費は問題にならなかった。しかし、今、資源の有限性が生産条件となっている。また、先の産業革命では、人的資源も無限にあり、国内の農民、労働者層から、また海外、植民地から無限には収奪可能であった。しかし、現在は、それらの人的資源を育成するための社会経済的資源価格が、過去の時代と比べて非常に高くなっている。その原因の一つに、高度科学技術力を前提にした生産システムの形成が挙げられるだろう。言い換えると、今後の21世紀型の社会経済システムでは、これまでにない新しい社会契約(例えば、次世代市民社会契約、環境社会契約、国際社会契約、地球資源社会契約、等々)の新しい社会経済思想とその思想に支えられた政治体制(例えば、市民参画型社会、地域国際社会経済文化共同体、国際安全保障体制)が必要となっている。
そして、私たちは、今、そのために問われる課題に対する研究や社会活動を展開しなければならない。
フェイズブック記載 2017年1月7日
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