2020年11月13日金曜日

詩、それは心象風景のスケッチ (詩)

三石博行

 

詩は癒しの森で生まれ

詩は救いの海辺で見つかった

ことばのスケッチ


書くことで救われた青春時代

書くことで癒された日々


詩は日記の中に

湧きだすことばの泉

溢れる感性の流れ


書くことで救われた私

書くことで癒された私


詩は

書く快感の森で生まれ

書く想像の海辺で見つけた

ことばのスケッチ


書くことで救われた世界

書くことで癒された世界


詩は書かれ

詩は忘れさられ

詩は書かざるゆえにただつづけられる


2020年11月13日

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ブログに書いてきた詩、詩は私にとって癒しであり、こころの休憩である。湧き上がることばを書き連ね、その文体が詩となる。詩を書く行為自体が意味があり、書かれた詩は私にとっては過去の心象スケッチにすぎない。

私の詩は他の人々に見せるために書かれた訳ではないが、友人へ読んでもらうためにブログに記載し、それがいつの間にか集まって「詩集」になった。また、画家の岩本拓郎氏、写真家の森一生氏や所幸則氏の作品、偶然、HOTOHITO 「日本の風景」で見つけた日青さん写真「幻想曲」に心を揺さぶられ飛び出してきたことばが詩になった。

しかし、私の詩は執拗に繰り返される課題から出ることなく、繰り返される呪縛の森を彷徨っているようだ。何故なら、私は仲間と共に詩を書いてきた経過がないからだろう。この課題を超えることは出来るか。そこで、インターネットで紹介されている詩人クラブを探してみた。関西詩人協会のサイトがあった。そこに連絡を取った。関西詩人協会の事務局長永井ますみ様から返事が来た。

この詩は、永井ますみさんへ自己紹介を書いたときに出て来たことばのスケッチである。


関西詩人協会 http://kpapoem.web.fc2.com/

2020年11月13日

詩集 『心象色彩の館』 目次

2020年11月12日木曜日

世界の国々での疫学・医療対策の共通点と相違点が示す課題

 日本の新型コロナウイルス対策を評価するために、現在までの世界での対策に関する評価を行いながら「合理的対策」について考える。合理的対策の存在に関する疑問と「首尾一貫しない日本の新型コロナウイルス感染症対策」への苛立ちは同じ課題に根差しているように思える。もし、合理的対策が無いなら、首尾一貫しない日本の感染症対策への苛立ちは根拠を失う。そして、むしろ、合理的対策とは何かが問われることになる。防疫や治療に関する感染症対策は新型コロナウイルス対策の一部であるが、ここでは、感染症対策に限定した議論を行いながら、「合理的対策」とは何かという課題、それは取りも直さず「一貫性を欠いた日本の感染症対策」に関する分析へとつながると思う。


A、世界の多様な感染症対策

世界の国々の新型コロナウイルスによるパンデミックへの対応は国々の社会、経済、政治や文化によって異なる。しかし一方で、災害源がコロナウイルスである以上、それへの対応は共通しているだろうと思われるが、それぞれの国に共通する対応とそうでないものがある。とは言え、病原体が同じである以上、防疫に関する対策は共通していると思われる。もし、その対策までも国々の事情によって異なるのであれば、それらの原因を理解しなければならない。

防疫対策として

1、検査体制充実とクラスター対策

2、陽性者の隔離

3、接触感染防止対策(三密対策)

医療対策として

1、軽症者の隔離・監視と治療法

2、中・重症感染者の治療法

3、重篤感染者の治療法

以上の防疫と医療に対する考え方は殆どの国で共有できると思われた。実際は防疫対策に関して大きく二つの流れがあった。その理由は「検査体制充実」に対する重点の置き方の違いから生じていた。一つは、2020年2月から6月までの日本に代表されるようにPCR検査を重視しない立場で、その主な理由は「検査によって多発する陽性者を収容することで生じる医療崩壊を避ける」ためと言われてきた。

こうした問題は、防疫対策と医療対策を別々に行うことが不可能である現実から生じている。「隔離」が伝統的な疫学対策、防疫の基本である。病原体の検査技術が進むことで、感染者の物理的「隔離」をより正確に行うことが出来るようになった。つまり、検査で陽性者と非陽性者を判別し、陽性者を隔離することで、隔離空間を縮小することが出来る。隔離空間の縮小によって、まず、合理的内陽性者の管理(隔離と治療)が可能になる。そして、すべての人々を隔離しなくてよいことで非感染者の経済や生活活動を守ることが出来る。細菌学、遺伝子学、検査技術の進歩によって検査隔離法が疫学対策の主流となっている。


B.防疫対策

防疫対策の具体事例に関して、世界の国々での共通した疫学・医療対策や異なる対策、もしくはその対策の程度の違いがある。それらの4つの防疫対策の具体事例に関する課題を以下に示す。

防疫対策に関して

1、検査体制充実とクラスター対策を巡る対応

・PCR検査を巡る意見や対応(検査条件の違い)

・クラスター対策(濃厚接触者に限定するか)

2、陽性者の隔離を巡る対応

・軽症感染者の徹底した隔離か、自宅待機か

・無症状感染者の徹底した隔離か、自宅待機か

・感染者の隔離日数

3、接触感染防止対策(三密対策)を巡る対応

・マスク着用の義務化

・ソーシャルディスタンス

・閉鎖空間での飲食、イベント等の禁止

・換気、通気設備の設置要請

4、その他

・検温対応の義務化

・消毒液の設置義務化

・感染拡大の評価と隔離対策のレベル設定

世界の国々での防疫対策に関しては、共通点と相違点がそれぞれ見られた。では、医療対策はどうであったか。


C.医療対策

医療対策に関して以下、殆どの国で行われた治療

1、軽症者の隔離・監視と治療法

・軽症感染者及び無症状感染者の医療施設への隔離

・軽症感染者及び無症状感染者の準医療施設への隔離

・軽症感染者及び無症状感染者の自宅待と自己治療要請、(厳密な隔離を行わない)

2、中・重症感染者の治療法

・感染対策を行っている医療施設での治療

・抗ウイス剤、免疫抑制剤等、臨床事例から有効性を確認すた薬剤の投与

3、重篤感染者の治療法

・集中医療施設での治療

1で示した「軽症者の隔離・監視と治療法」では、国によって対応の相違があった。しかし、どの国で2の「中・重症感染者の治療法」や3の「重篤感染者の治療法」で、共通した医療が行われた。もちろん、医療施設の整った先進国とそうでない国々での医療格差による対策の違いはある。


D、異なる対応の生まれる背景

世界の国々での疫学・医療対策の共通点と相違点を生み出している要因は、以下4点に列挙することができる。

1、未知の新型コロナウイルスへの疫学的理解の相違

2、医療崩壊を危惧することによる検査体制への疑問

3、疫学対策(疫学専門家集団)と医療対策(感染症医療専門家集団)の二分化

4、今回の新型コロナウイルス感染症のパンデミックはワクチン(予防対策・安全管理)がない状態によって引き起こされている。つまり、感染を防ぐための手段を持たない状態で取られる感染症対策である。

この状況から合理的な対策がどのようにして生まれるのだろうか。むしろ、この状況では、その行方も、また実験的に講じられた対策を検証すること以外に予め合理的対策なのないのが現実の状況ではないかと思える。


2020年11月12日



三石博行 ブログ文書集「パンデミック対策にむけて」

2020年11月11日水曜日

私という現実 (詩)

三石博行


もういいのです

私はそう言いながら、隠し立てしていら不都合な現実を眺めていた


もういいのです

私はそう呟きながら、見たくもない事実を冷たく見つめていた


もういいのです

私はそう嘆きながら、苦々しい過去を後悔していた


それらの不都合な事実は、内攻され、私の今という意識となる

それらの隠蔽された真相は、内向し、私の今し方という欺瞞に化ける


どうすべきか

どうしなければならないか


向き合う力は残っているか

受け止めるこころはあるのか


すでに二か月になる逃避の傷咎め

もう遅いのか

それともまだ間に合うか


私に残された時間がない


2020年11月11日

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詩「私という現実」について

脊髄異形成症候群と言われ、おまけに余命3年と言われ、その現実を受け止めながらも、それを公にすることを避けて来た。家族や親しい友人、仕事上迷惑を掛けられない人々にそのことを告げた。しかし、フェイズブックでそのことを書くことを避けた。物書きもどき(プロの物書きではない、趣味でものを書く人たちという意味、私もその一人だと思う)にとって、自分が最も深刻に受け止めている現実を語らないで、ものは書けないことを理解できた。では、どう表現すべきなのか。それをもう2か月間も悩んだ。

結論として、私の現実について別に宣言することも告白することも必要ない。しかし、もし、私のことばにそれが滲み出るなら、そのことを敢えて否定し隠蔽することはないと思った。今年(2020年)7月から今日(11月11日)まで、自分の現実を受け止めるために時間が必要だったようだ。それほど、私は弱い存在であると思う。

考えると過去にあった不都合な事実から逃げまとって来たように思う。その不都合な事実について赤裸々に書きあらし、自己弁護のないことばに私が包みこまれるなら、その時、私は自己の現実により近づくことが出来るのだと思う。しかし、この困難な作業、多分、多くのもの書きたちが苦闘しつづけた課題、その課題に向き合う最後の機会だと思う。そう思いながらも、そうならない自分があるようだ。

2020年11月11日


詩集 『心象色彩の館』 目次

問い掛けの中の私 (詩)

三石博行


飽きることなく

問い掛けの波に洗われ


転がりながら

反復する蛇紋石


寄せて引く刹那の波

溶け込む湧きだす轟音のリズム

世界という意識


衝突行列に振動する砂浜

繰り返す泡と渦の消滅のクロッキー

私という意識


私は

寄せては引く波

刹那の振動


私は

微分定数

何れゼロになる


それでも私は

問い掛ける

反復という存在現象


9月8日作

9月25日修正


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詩「問い掛けの中の私」について

この詩は、繰り返し自分を課題にする自分とは何かということをテーマにして書いた詩である。と言うのも、私の詩の課題はつねに自分なのだ。殆どの私の詩はその課題から生まれ、この課題の中から出ることはない。

何故、それほど私は自分に執着し、その課題から解放されることなく、思索を続けているのだろうか。自己への執着、もしくは自己とは何かという解明不能な問い掛けと言う呪縛。しかし、それらの問いかけも、ある意味で「刹那の意識」であり、それを生み出す肉体やその肉体に刻まれた情報(記憶)である。

仮に、私の命が消えるなら、この問いかけや刹那の意識も存在しないだろう。残されて現実とはこの問いかけが消滅し、それが私の意識から観れば虚無であり冷たい死の世界である現実の世界となる。つまり、私は自分に執着するこの刹那の意識は、この世界のどこにも存在しないことになる。
この倒錯した結論をあざ笑うようにつぶやく「私の命が消えるなら」と言う現実に出会う。

しかし、こうした自己への問いかけや刹那の意識とは無縁の会話がある。

例えば、現実という状況の中で主観を無視した会話、つまり、科学者の会話、その会話では自分とは主観のない人間一般集合の中の一つにすがいない。その科学的会話から、現実の自分がより正確に理解できる。

また、未来という幻想(主観)を現実化という言及、つまり、社会運動家(宗教家)のことば、そのことばの中では、自分がより良く生きられるようにより良い世界を求めるという理想(幻想)が、現実の自分を超えて存在している。

更に、生活するという行為の中で選ばれる結論、つまり、日常の自分の姿、その現実の中で、私は生きている。その現実の私から出発することしかない。しかし、そうした当然の理解は日常という生活の雲の中でぼやけてしまう。

そして、日常生活の現実を理解し受け止めるためにこそ、自己存在を問い掛け(反復)を行うために哲学が必要とさる。しかし、その哲学は知る方向の逆ベクトル的な存在であることを求められているようだ。その逆ベクトル的とは何か。
 
9月25日作
11月11日修正


雲 (詩)

三石博行


雲は湧き、雲は流れ、雲は消えて行く

病室から静かに去る人


青い空は

いたずらな雲たちに落書きされ

病室で静かに消えていく命


雲は湧き、雲は流れ、雲は消えて行く


白い窓から

せっかちな雲たちが奏でる

光と影のリズム

病室の沈黙、消えていた命


雲は湧き、雲は流れ、雲は消えてゆく


灰色の病棟の壁

わた雲の会話が描かれたスクーリン

病室で私を待つ「現実」


雲は湧き、雲は流れ、雲は消えて行く


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この日、入院していたK病院の病棟で、前の病室に入院していた人がベッドに横たわり、顔を覆われ、多くの病院のスタッフや家族に付き添われ、病棟から去って行く光景を見てしまった。不治の病白血病で亡くる運命にある人々の集う病棟の風景である。その人の名前は知らない。その人に対する鎮魂歌はそのまま私への鎮魂歌(詩)でもあった。

2020年9月23日作

2020年11月11日修正


2020年7月6日月曜日

パンデミック対策にむけて(d)

ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策(4

21世紀型の災害、パンデミックの構造

三石博行



3-2、予防策のない新型感染症対策期間:第一期


COVID-19のように、新型感染症に対する予防策・ワクチンや治療薬はない場合、疾病流行を根本的に抑えることはできない。しかも、ワクチンや新薬の開発に長期間の時間が必要とされる。こうした条件下で感染症の流行を抑えなければならない。この状況は「武器を持たないで戦う」ことを意味する。
その場合、まず、防御(感染予防の対策)を固めなければならない。そして、出来るだけ早く武器(ワクチンや治療薬)を手に入れなければならない。また、COVID-19の感染を防ぐための武器になりそうなもの、少しでも有効なものを集め、当分は、それらを総動員して闘わなければならない。このような不利な条件では、人命と経済への被害を最小限に食い止めながら、有効な攻撃手段(ワクチンや治療薬)を得るまで持ちこたえなければならない。こうした状況が現在の我々の置かれている現実である。つまり、この状況下では、完全に被害を防ぐことは出来ないため、より被害を少なくするための戦術を選ぶしかない。
このような状況の期間を第一期と呼ぶことにする。第一期の感染症流行防止対策は主に三つのテーマ、重要かつ最優先の課題、科学的でより現実的な対策と経済的かつ合理的な政策に分類することができる

A、最も重要かつ最優先の課題

A1、病原体の遺伝子、感染媒体、感染症の病理的特徴に関する情報 
未知の病原体である以上、その病原体の微生物学的分類や解明、遺伝子解析とその解明、また感染媒体や感染経路の疫学的特徴、さらに感染症の病理的特徴に関する情報が必要となる。COVID-19感染症の場合、中国の医学論文がそれらの情報提供に大きく貢献した。COVID-19の遺伝子構造、症例、特に無症状の感染者の存在、年齢層による死亡率の違い、特に持病者や高齢者の高死亡率、肺炎の特徴等々、多くの情報が提供された。最初にCOVID-19感染症と闘った中国の医療従事者、科学者の努力に感謝しなければならない。彼らの治療、調査、研究の努力によって、ワクチンや治療薬の開発への基本的な知識や情報が提供され、検査キットの開発、検体方法、感染対策、防疫方法、臨床判断、治療方法等、初期の感染症対策が可能になった。
A2、ワクチン・治療薬の開発 
最も優先される課題の一つがワクチンや新治療薬の早期開発である。今回のCOVID-19感染症に関するワクチン開発は、527日時点で、世界全体で125件の開発案件が報告されている。その中の10件がすでに人に直接投与する臨床試験まで進んでいると言われている。また、治療薬に関しては既存の治療薬で新型コロナウイスに援用可能なものを見つけ出すのが最も経済的である。しかし、同時に新薬の開発を進める必要がある。すでに、武田薬品工業は米CSLベーリングなど10社と提携協力しながら抗SARS-CoV-2高度免疫グロブリン製剤の開発が進み、2020年の夏には成人患者を対象としたグローバル試験を始める予定である。その他、米国の国際的な製薬会社であるイーライリリー・アンド・カンパニーによるSARS-CoV-2に対する抗体医薬「LY-CoV555」、米メルクによる抗ウイルス薬「EIDD-2801」、米ビル・バイオテクノロジーによる抗ウイルス抗体(VIR-7831VIR-7832)等々、新薬の開発は進んでいる。[i]) 
A3、検査キッドと検査体制の確立 
同じように急がれるのが、検査キットの開発と生産である。COVID-19の遺伝子情報が記載された中国の科学論文から、COVID-19の検査キットの開発は他の国でも可能になった。また、中国の医学論文からCOVID-19感染症の特徴が世界へと伝わった。それにより、他の国々で、逸早い疫学的対策が検討された。そして、COVID-19に対する検査キットは現在大量生産されている。
A4、予測される危機的状況に対する公衆衛生・医療体制の確立 
この段階では、公衆衛生や医療体制が崩壊しないための対策が急務である。そのために、現存する体制、組織、制度、資源の状態を精査しその限界を評価委分析し、予測される危機的状況に対する課題を明確にしておかなければならない。そして、改善対策をいち早く行うために必要なすべての対策、政策に至急取り掛からなければならない。例えば、今回、医療現場では、医療従事者が感染から身を守る最低限の防御、医療用マスク、感染防御服等々の不足が問題となった。それらの状況を解決できない状態で医療や福祉等の現場では混乱、集団感染の発生、それらの病院機能の停止という最悪の事態が起こっていた。特に、医療機関で集団発生が頻繁に起こっている日本の事例に関して詳細に調査しなければならない。そして、人工呼吸器等の重症患者の治療機器が全く不足したイタリアや米国、ニューヨーク州での医療崩壊の原因に関する調査も今後課題となる。その一方で、例えばベトナム、台湾や韓国等、医療崩壊が起こらない課題に成功した国々もあった。失敗した国々や成功した国々の第一期の公衆衛生や医療体制に関する対策を比較検討することで、第一期の最重要課題、公衆衛生や医療体制の危機管理にかんする課題をさらに分析することができるだろう。

B、科学的でより現実的な対策

B1、感染拡大を防ぐ人と人との空間的隔離(ソーシャルディスタンス)の設定 
感染者を非感染者から隔離することが感染症学の最も初歩的な防疫の手段である。感染者を特定できない状況では人と人との間に隔離(ソーシャルディス)を設けることで感染を防ぐことができる。特に、検査方法が確立していな時代、感染を防ぐ方法としてこの隔離方法が用いられた。今回のCOVID-19感染予防にソーシャルディスが殆どの国で用いられた。
我が国でも、感染を防ぐために、例えば、国は三密(三つの密な空間)、一つが密閉空間(換気が悪い場所)、二つめが密集空間(人が集まって過ごすような場所)と三つめが密接空間(不特定多数の人が接触する可能性の高い場所)の三つの状態を自主的に避けること国民に要請した。三密状態のある交通機関等を避けるため不要不急の外出の自粛、また、休校や休業が市民に要請された。しかし、日本で取られた感染防止のための行動要請は強制力を持たないものであった。
一方で、感染爆発が起こったイタリアでは外出規制は強制された。イタリアの感染者は2020221日に3人から32日に2036人と10日間で679倍も増えた。この感染爆発を食い止めるため、タリアでは町、市の封鎖(ロックダウン)が行われた。ロックダウンは究極的な隔離対策である。中国武漢でもロックダウンが行われ、感染を食い止めることに成功した。ロックダウンは非常に効果的な感染防止策であるのだが、他方において、ロックダウンは市民生活、経済や社会活動に大きな負担や犠牲を強いる。
感染拡大を防ぐためにソーシャルディスタンスを置くことは必要である。人と人との空間的隔離の設定には、不要不急の外出自粛、休業、移動制限、町の閉鎖による移動禁止(ロックダウン)はは必要である。特に、感染拡大を防ぐための行動規制は感染流行の状況によって変化する。最も軽いものは、外出した場合に一定の空間的距離を要請することから、最も厳しいものが完全な外出禁止やロックダウンである。
B2、検査体制確立、経済的な感染者隔離
また、病原体に対する精度の高い検査(PCR検査)がある場合には、検査によって感染者を判明し、それらの感染者を医療機関へ隔離し、感染拡大を防ぐ方法が有効である。今回、COVID-19感染流行を防ぐ手段としてPCR検査が活用された。日本では、225日に厚生労働省の中に、新型コロナウイルスクラスター対策班の設置し、COVID-19検査によって感染者を見つけ、その行動履歴を調べ、感染経路や感染集団(クラスター)の発生を調査した。
PCR検査は感染者を特定する唯一の科学的手段である。感染の爆発的拡大が起きている場合には、その方法を活用して、感染者集団を物理的に社会から隔離することができる。PCR検査による隔離方法は、感染爆発が起きている場合に、感染確認者を全員入院させなければならないため、医療機関の崩壊の原因となると言われた。しかし、PCR検査をしないで感染者を放置するなら、それが感染を拡大する原因となることは明らかである。つまり検査体制を強化することと、それによって確認できた感染者を何らかの方法で隔離することは一体化した感染対策である。
医療機関での感染患者の受け入れ体制を確立すること、そして十分なPCR検査を行うこと、それらの二つの条件を整備することによって、感染者をもれなく見つけ出し、社会から隔離することが出来る。感染者を特定の空間(医療施設)に集めることで、社会空間全体の中の感染者の隔離の効率は高くなる。高い隔離効率はより経済的効果を生み出す。何故なら非感染者の多い社会では、人々の社会経済活動への規制を強化しなくても済むからである。その意味で、科学技術の進んだ社会では、徹底的なPCR検査による感染者の隔離方法が用いられるのである。
B3、既存治療薬の援用 
新型感染症に対する治療薬の開発は時間を要するため、すでにある治療薬を利用・活用する必要がある。例えば、COVID-19感染症に対して、米国のFDA(食品医薬品局)が51日に使用を許可し、日本でも5月7日に厚生労働省が特別承認されたレムデシビル(製品名・ベクルリー)が治療薬として活用されている。
また、2014年に日本で承認された抗インフルエンザウイルス薬ファビピラビルはCOVID-19感染症には正式に使用できないものの、新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスであるので、ウイルスの遺伝子複製酵素であるRNAポリメラーゼを阻害する効果を示す可能性があると期待されおり、臨床現場では試験的に使われている。このように、すでに治療薬として使われていたものを援用することは、安全検査はクリアーされており、もし、医療効果が確認されるなら、新薬の開発よりはコスト安となる。


目次、『ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策 -21世紀型の災害、パンデミックの構造-』



2020年7月3日金曜日

デジタル日記を書くこと



6月から、デジタル日記を書くことにした。一日の予定やその進捗状況の点検、毎日が連続しているために、今日のテーマは昨日のテーマの延長線上にある。そして、昨日の結果から今日の作業が始まる。こうした連続した毎日毎日の作業の予定や点検は、デジタル化した日記で反復される文章が簡単に記述化される。これも一種の「知的生産の技術」ということになるだろう。

ふと湧き出る詩も、その日記の中に書いている。その意味で、これまでフェイスブックに書いていたものが、日記になった。その分、自分の中の自分と会話が出来る。

本来、人にみせることを前提にしてわたしごとを書くもの、例えばエッセイ、感想、評論等々の書きものは、かなり難しい。私の姿を本音で書くためにはかかなり勇気が必要だ。多分、偉い小説家はそれが出来るのだろうが、しかし私にはそれは出来ない。

その意味で、フェイスブックに日記を書くということが出来るのは、よほどの人だけだろう。私は余りにも未熟なので、と言うか、欺瞞的な人間なので、それは出来ない。しかし他方で、それが出来るようになりたいとも思う。

哲学の意味は、現実の自分と向き合う力や方法を得るための思索活動だと思う。もし、自分の在りのままを書ける力を得るなら、もう哲学は必要ないでろうと思う。

2020年6月29日フェイスブックに投稿

時間の中の私 (詩)

三石博行


私という存在、
それは現実のいう混沌の世界
問題と呼ばれる現象の中に、
問題発生の中、問題提起の中に、
ただ、
呼吸し、
脈打ち、
生きているのだ。


私という存在、
それは過去という微分された時間
記憶と呼ばれる評価の中に、
悔いや痛みの導火線として、
安らぎや拘りの深海の底で、
耳を傾け、
声を発し、
生きているのだ。


私という存在、
それは未来という一次元方向への確信
それは希望という幻想
それは打ち続く脈拍
それは瞬間という現実

2020年6月12日 作成 
6月29日 フェイスブックに投稿

詩集 『心象色彩の館』

2020年7月1日水曜日

パンデミック対策にむけて(c)

ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策(3)

21世紀型の災害、パンデミックの構造

三石博行



3、災害学的視点からのパンデミックへの対策 

災害としてのパンデミックの特徴を理解しなければならない。その特徴を災害学の中で検討された課題に照らし合わせて分析することで、パンデミックへの科学的、合理的な対応を検討することが出来る。まず、今回の今回のCOVID-19感染症にはワクチンや治療薬がない。つまり安対策がない状態の災害である。

3-1、二つの災害形態:安全管理可能な疾病災害と安全管理不可能な疾病災害

パンデミックの特徴を災害学の中で検討された課題に照らし合わせて分析することで、その科学的で合理的な対応を検討することが出来る。まず、疾病災害の中には予防対策が出来ている安全管理可能な災害と予防策が全くない安全管理不可能な災害の二つの形態があることを理解しなければならない。毎年流行するインフルエンザは前者に分類され、COVID-19感染症は後者に分類される。その二つの感染症流行に関して安全学の視点に立って分析する。
一つ目はインフルエンザ、つまり、ワクチン・予防対策がある感染症の流行の事例である。毎年、インフルエンザが流行している。その意味で、インフルエンザウイルス(病原菌)による世界的流行は日常化している。そして、それに対する対策、例えばワクチン開発やその接種も常態化し、日本では、毎年、春先にそれまでに流行したインフルエンザから、その年の秋から冬にかけて流行する可能性のある複数のインフルエンザを予測し、ワクチンを開発している。ワクチン開、言い換えると感染症災害への安全管理体制が確立している場合には、人々の生命を奪い、生活経済を破壊し、医療や経済の社会インフラを危機に導く感染爆発や流行を防ぐことができる。
二つ目はCOVID-19感染症、つまり、ワクチン・予防対策の全くない感染症の流行の事例である。未知の病原菌によっておこる感染症の流行に対して予防手段は最初からない。つまり、安全対策がない状態で危険なものに接することになる。未知の病原菌による疾病とはそれを事前に防ぐ方法(安全対策)を取ることが不可能な状態として登場する。そのため甚大な被害が生じる。例えば、1918年から1920年にわたって世界で初めておこったインフルエンザの大流行(スペインかぜ)に対して疫学的、医学的対処は取られず、その結果、ヨーロッパで1700万人から5000万人が犠牲になったと言われている。
未知の病原菌によっておこる感染症では感染原因の解明が急がれる。病原体の微生物学的、遺伝学的解明、感染者の症状、病理的特徴の調査、感染者の検査方法の確立が急がれる。これらが新型の感染症への最初の基本的な課題である。そして、病原体の感染に関する疫学的調査、感染媒体や感染経路の判明を急がなければならない。何故なら感染拡大防止策の遅れによって甚大な被害を出すからである。そして、それによって引き起こされる感染患者数の多発は、医療機関への過大な負担を招き、医療崩壊の原因となる。医療崩壊によって多数の犠牲者が生まれることになる。
予防策、安全対策のない場合の災害で最も恐れることは破局的な被害である。つまり、感染症の場合には医療崩壊による爆発的な犠牲者の発生、それによって人々の生活は奪われ、結果的に甚大な社会経済的な被害の原因となる。
この場合での感染症への基本的な対策は、ワクチンや治療薬の開発である。それらの開発が最も優先的な課題となるのであるが、ワクチン開発は新型感染症の場合には最低1年、長くて2年の期間が必要とされると言われている。と同時に、安全対策のない災害では甚大な被害を避けることは出来ないため、それらの被害を最小限に食い止める他の臨時の対策を見つけなければならないのでる。


目次、『ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策 -21世紀型の災害、パンデミックの構造-』

パンデミック対策にむけて(b)

ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策(2)

21世紀型の災害、パンデミックの構造

三石博行

2、ハイブリッド型災害としてのパンデミック

ハイブリッド型災害としてパンデミックを位置付けること、さらに、この種の災害は21世紀社会で常態化することを前提にして、ハイブリッド型災害の自然的要素、社会経済的要素、そして文明的要素を分析し、総合的な対策の検討が必要となる。

2-1、病原菌による疾病(自然的要素)

疾病災害を引き起こす病原菌も地球上に存在している生命の一つであり、生態環境系の中の一つの生物に過ぎない。その意味で、病原菌による疾病は生命現象の一部である。そして、疾病は生物の進化史と共にあり、また人類の歴史と共にある。疾病は生物・人が病原体によってその生命活動を破壊される病理的現象に過ぎない。
つまり、病原体による人の感染被害は自然現象の一つであり、人の病気は人と病原体(細菌や微生物等)との生物的生存競争や共存の一形態である。また、人が病気になることによって、その病原体は彼らの生存領域を拡大し、また人を病死させることでその生存環境を失うことになる。
さらに、人が病原体に対する抵抗力や抗体を持ち病気にならないことは、人がよりよい生存条件を獲得したことを意味する。逆に、そのことによって病原体は彼らの生存領域を失うことである。そこで、病原体も進化し、人の抗体を無効化させながら種を維持しようとするだろう。また、人が治療薬を開発し病気を治癒することは、病原体にとっては生存環境を失うことを意味する。そこで病原体は治療薬に対して抗体や無毒化する代謝経路を確立してその治療薬(化学物質)から身を守る。
人も細菌も生存競争と共存の関係を繰り返しながら、生命体の進化に関係し、生命活動の持続に寄与してきた。そして、今現在も、生命現象の一部として人と病原体(微生物)の生存競争や共存は終わることなく続いている。その意味で、生命現象の一部として疾病があり、疾病とは生命活動とよばれる自然現象であるともいえる。

2-2、疾病大流行の社会経済的被害(社会経済的要素)

パンデミックは人類が都市を建設した時代から存在している。そして、パンデミックは、古代社会より中世社会に多く発生し、また中世社会より近代社会や現代社会で、大型化していきた。パンデミックとは、病原菌による感染症であると同時に、都市化、人口増加、熱帯雨林の開発等々によって引き起こされている人工災害の側面を持つ。パンデミックの特徴を理解するために、その感染拡大の人工災害としての解明が求められる。例えば、以下の課題が挙げられる。
1、感染拡大の要因としての社会経済的要素
2、感染拡大の要因としての生活文化的要素、生活文化習慣
3、感染拡大の要因としての生態文化的要素
4、感染拡大防止対策、政策、制度等の社会政治的要因
パンデミックの人工災害的要素を理解することで、病原体の特性、その感染経路や感染媒体等の疫学調査対象を社会や生活環境に広げることが出来る。

2-3、ハイブリッド型災害としてのパンデミックへの三つの課題と解決のための対策

上記したようにパンデミックは、生物、医学的課題としてお疾病とその爆発的感染の背景となる社会文化的課題のハイブリッド型の災害であるため、その対策は、自然科学系の学問を土台とする感染症、疫学、医学的処置と同時に社会経済学的知識を基本とする公衆衛生、医療、社会、経済政策が求められる。さらに、パンデミックが都市化、人口増加、環境破壊等によって引き起こされているとすれば、その地球規模の文明論的課題も検討されなければならないだろう。
つまり、パンデミックへの対策は基本的には三つある。一つは公衆衛生、防疫や医療対策である。二つ目は、社会経済対策である。三つ目が地球温暖化対策と類似した文明論的対策、つまり持続可能な人類社会を構築するための対策である。
これらの基本課題の中で、ここでは、ハイブリッド型の災害であるパンデミックへの公衆衛生や医療対策に関して述べる。まず、自然科学系の学問を土台にする対策を以下に列挙した。
1、病原菌の微生物学的理解、遺伝子解明
2、感染症学的理解、COVID-19感染につての科学的理解、
3、疫学的理解、感染経路、感染媒体の調査、クラスター対策
4、免疫遺伝学的研究、ワクチン開発、PCR検査、抗体検査
5、臨床学的理解、感染症に関する臨床医学的調査、医療の確立
それらの上記した対策は、それをサポートする公衆衛生や医療体制の課題に繋がる。つまり、敏速に疾病対策を行う公衆衛生や医療政策や、その政策を決定する立法、その政策を実行する行政機関の課題が問題となる。
1、感染症を治療するための医療体制の確立
2、感染拡大を防ぐための防疫、公衆衛生制度の確立
3、感染拡大を要因となる社会経済的要因の解明とその解決策
さらに、ハイブリッド型の災害であるパンデミックへの生態文化・文明論的課題とその対策に関して述べる。
1、病原体の起源に関する調査研究とその対策
2、感染症の歴史に関する研究
3、感染経路や感染方法の生活文化的要素に関する調査研究
4、各国の感染防止対策やそれらの制度の調査、比較研究
以上、三つの異なる課題と対策に関して述べた。それらの課題に関する調査や研究は異なる専門分野の人々によって担われることになる。そのため、以下に示す三つの課題、専門分野毎の調査研究チーム、首相をリーダとして、各省官僚、政治家と専門家チームの代表による俯瞰的立場に立った横断型の対策会議、さらに、上記二つの議事録や調査資料の情報公開による大学や民間研究機関でのパンデミックに関する持続的な研究活動の推進のための組織化(制度化)について述べる。
1、各専門分野の委員会を構築する。例えば、病原体の微生物や遺伝子学の研究チーム、防疫や感染対策研究チーム、感染症の治療チーム、検査、検査体制の研究チーム、感染予防や公衆衛生制度に関する研究チーム、経済的影響に関する調査研究チーム、海外の感染対策に関する調査研究チーム、社会や生活、文化環境への影響に関する調査研究チーム、教育や保育、女性の社会的活動への影響に関する調査研究チーム等々、課題別にそれに関する多様な視点を持つ専門家を幅広く集め研究チームを組織する。それらの異なる分野の専門家による現状の理解と問題解決の対策を提言してもらう。
2、政府は異なる専門家集団による意見を俯瞰的に理解し、現状にマッチした政策検討を行う「対策会議」を組織する。この会議は官邸、各省官僚、政治家と専門家チームの代表によって構成される。首相が対策会議の議長を務め政府として対応する。
3、さらに、これらの専門分野の委員会や対策会議の議事録や調査資料は保存され、情報公開されなければならない。何故なら、21世紀の世界では、パンデミック(ハイブリッド型災害)は常態化する可能性が大きく、これらの研究調査資料が大学や企業研究者の次のパンデミック対策の研究資料となり、近未来に必ず起こるパンデミックに対して強い社会文化を構築するための材料になるからである。
21世紀社会で常態化するパンデミックに対して強い社会文化を構築、ハイブリッド型災害との闘いは上記した三つの課題、公衆衛生、防疫や医療対策、社会経済政策、学術的研究による文明論的検討が必要とされる。

目次、『ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策 -21世紀型の災害、パンデミックの構造-』

パンデミック対策にむけて(a)

ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策(1)

21世紀型の災害、パンデミックの構造

三石博行

1、災害の三つの形態:自然要因、人工要因と自然・人工要因

災害は、その原因や災害要因によって大きく二つのパターンに分類することができる。一つは自然現象によって引き起こされる災害パターンである。これを自然災害と呼んでいる。もう一つは人間が作り出した人工物によって引き起こされる災害パターンである。これを人工災害と呼ぶことにする。また、この二つの要因を同時に持つ災害パターンがある。これを、ここでは自然要因と人工要因のハイブリッド型災害と呼ぶことにする。しかし、現実の災害は、純粋に自然災害や人工災害に分類されるより、自然災害であったとしても人工的要素を含むものが多い。 

1-1、自然現象による災害、自然災害

地球の自然環境とは、地球の大気、海洋の運動、気象現象や地球のマントルや地殻、そしてプレート等の運動、火山活動、地球を取り巻く太陽系の運動、さらには太陽系や太陽系外の小惑星の運動等々によって地球環境が受けきたあらゆる自然現象を意味する。これらの自然現象の中に、自然災害と呼ばれる自然現象が含まれる。自然環境による人間社会への破壊的影響を自然災害と呼んでいる。
人々が自然現象に支配され、その自然の成り行きをそのまま生産や社会文化活動に活用する近代以前の社会では、自然災害は絶対的な自然の姿の一つとして受け止められてきた。しかし、人類が自然現象を支配する法則を理解し、それらの法則を活用するようになることで、自然現象としての自然災害も、その原因を科学的に理解することができた。
自然災害の原因を解明することで、災害の根本原因を防ぐことはできないのだが、それによって被害を受ける建造物等の人工物の災害防止策を検討し改良することが出来た。

1-2、人工物による社会や人への災害、人工災害

人間活動の結果引き起こされる災害を人工災害と呼んでいる。例えば、食料生産や消費活動に付随する食品被害、移動の手段の開発、発展してきた交通手段、自動車や道路等によって生じる交通事故や交通災害、生産活動、技術の開発や発展の中で生じる労働災害や職業病、住環境の改善、建築技術、生活環境の改善によって生じる火災等、劣悪な都市衛生環境等々が例に挙げられる。また、社会経済活動を支える巨大なエネルギー生産、電力産業によって引き起こされる環境破壊、原発事故、そして、国家防衛のための最新兵器開発や大量殺人兵器・原子爆弾等による被害、戦争災害も人工物による社会や人への被害、人工災害の一つであると言えるだろう。
人工災害は、生産活動の巨大化によってその規模を拡大してきた。18世紀から19世紀に掛けて欧米社会でおこった産業革命、20世紀の重化学工業化、巨大工業地帯や巨大都市の形成によって、自然生態系の破壊、大気汚染、ヒートアイランド現象等々、環境汚染が深刻化した。また、人工物による環境汚染(公害)は、工業化の進む発展途上国でも現在深刻な問題となっている。

1-3、自然現象と社会的要因による災害、ハイブリッド型災害

近年の災害の殆どが自然・人工災害、つまりハイブリッド型に分類される。例えば、大雨が洪水という災害を引き起こすが、同時に、荒れ果てた人工林の森から伐採し放置された木材が増水した河川を流れ出て、下流域の人家を破壊する洪水と廃棄木材によるハイブリッド型の水害が起こっている。
近年、このハイブリッド型の災害の事例として、人々の生活や産業活動によって排出される化学物質、例えばフッ素化合物によるオゾン層の破壊、また地球温暖化ガス(二酸化炭素やメタンガス)による地球温暖化、そしてその温暖化による異常気象、巨大台風や大雨、異常乾燥とそれによる森林火災、また海面上昇による高波や田畑の海面への沈没被害等々が報告されている。
ハイブリッド型災害に関して、以下三つの課題、多様な災害形態、総合型災害学、国際協力による解決が挙げられる。
1、ハイブリッド型災害は、21世紀社会、科学技術文明社会化、情報社会化、国際経済化、巨大都市化の形成と共に、広範で多様な形態を取りながら発生し続ける。人類がこれまでに経験したことのない未来社会の災害のパターンである。しかも、世界では多様な産業化、工業社会化があるため、この種の災害もそれぞれの国によって異なる特徴を持つ。それらの共通する形態や多様な形態を同時に理解する必要がある。
2、これまでの甚大な災害は自然災害(大雨、洪水、地震、火山活動、台風等々)であると考えられた。従って、災害学のテーマは自然災害の研究が中心であった。しかし、この後、全世界に被害を与える地球温暖化等ハイブリッド型災害が課題となる。その対策は災害原因である自然的要素や人工的要素の分析やそれに対する文理融合型の対策が求められる。つまり、この災害科学は総合型災害学を必要としている。
3、ハイブリッド型の災害、例えば地球温暖化やパンデミックの特徴は被害の範囲が国を超え、世界の至る所で起こることである。ある特定の地域で発生した温暖化ガスは簡単に国境を越え世界に広がる。また、病原体も社会経済の国際化による人々の国際的な移動によっての世界に広がる。そのため、この災害の解決方法は国際協調によって行わなければならない。一国内で温暖化ガスを削減したとしても地球温暖化を防ぐことは出来ない。同様に、一国内で感染病の流行を抑えたとしても、国際化社会では感染は他の国々から常時侵入し続ける。自然災害では災害国内で対策が取られていたが、ハイブリッド型災害、パンデミックでは一国内での災害対策は通用しなくなる。国際協働機関と歩調を合わせながら、国際協力の基にした一国の災害対策が求められる。パイブリッド型災害の解決方法として、国際機関(WHO等)の形成と改善、感染症の調査研究、ワクチン、治療薬開発の世界的連携が求められる。


目次、『ハイブリッド型災害としてのパンデミックとその対策 -21世紀型の災害、パンデミックの構造-』

1章、災害の三つの形態:自然要因、人工要因と自然・人工要因

1-1、自然現象による災害、自然災害
1-2、人工物による社会や人への災害、人工災害
1-3、自然現象と社会的要因による災害、ハイブリッド型災害


2章、ハイブリッド型災害としてのパンデミック

2-1、病原菌による疾病(自然的要素)
2-2、疾病大流行の社会経済的被害(社会経済的要素)
2-3、ハイブリッド型災害としてのパンデミックへの三つの課題と解決のための対策


3章、災害学的視点からのパンデミックへの対策 

3-1、二つの災害形態:安全管理可能な疾病災害と安全管理不可能な疾病災害

3-2、予防策のない新型感染症対策期間:第一期

A、最も重要かつ最優先の課題(国、大学、企業が担う防疫政策)
A1、病原体の遺伝子、感染媒体、感染症の病理的特徴に関する情報
A2、ワクチン・治療薬の開発
A3、検査キッドと検査体制の確立
A4、予測される危機的状況に対する公衆衛生・医療体制の確立

B、科学的でより現実的な対策(健康保険行政と医療行政)
B1、感染拡大を防ぐ人と人との空間的隔離(ソーシャルディスタンス)の設定 
B2、検査体制確立、経済的な感染者隔離
B3、既存治療薬の援用 

C、合理的、経済的な政策(政府)
C1、既存の体制の敏速な援用と最適な体制のための改革: 
C2、人命や生活被害と社会や経済被害の双方を最小限に食い止める政治的判断:
C3、国民と国家の負担を最小限に食い止めるための経済政策:
C4 、感染症拡大と格差社会
C5 、総合的にパンデミック対策を担う政府機関と地方自治体の体制