2020年11月11日水曜日

雲 (詩)

三石博行


雲は湧き、雲は流れ、雲は消えて行く

病室から静かに去る人


青い空は

いたずらな雲たちに落書きされ

病室で静かに消えていく命


雲は湧き、雲は流れ、雲は消えて行く


白い窓から

せっかちな雲たちが奏でる

光と影のリズム

病室の沈黙、消えていた命


雲は湧き、雲は流れ、雲は消えてゆく


灰色の病棟の壁

わた雲の会話が描かれたスクーリン

病室で私を待つ「現実」


雲は湧き、雲は流れ、雲は消えて行く


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この日、入院していたK病院の病棟で、前の病室に入院していた人がベッドに横たわり、顔を覆われ、多くの病院のスタッフや家族に付き添われ、病棟から去って行く光景を見てしまった。不治の病白血病で亡くる運命にある人々の集う病棟の風景である。その人の名前は知らない。その人に対する鎮魂歌はそのまま私への鎮魂歌(詩)でもあった。

2020年9月23日作

2020年11月11日修正


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