2010年12月8日水曜日

21世紀の課題、生活大国日本に向かって何をなすべきか

三石博行

GDP(MER)とGDP(PPP)

国内総生産(Gross Domestic Product ・ GDP)とは、一定期間内(一年間)に国内で生み出される付加価値(ふかかち)の総額を言う。原則として市場で取引された財(物的な商品)やサービスの生産のみが計上されるため、家事労働やボランティア活動は国内総生産には計上されない。GDPの算出方法には二種類ある。

一つは、ドルなど国際通貨(外貨)によって、国際市場で決定されたレート(Market Exchange Rate)でGDPを計上したものをGDP(MER)と表現している。

もう一つは、商品の物価(円)をアメリカでの同じ商品の物価と比較し、双方の国での生活物価指数を前提にしながら、GDPを計上する方法である。基準になるのは米国での商品価格で、同じ商品の米国での価格と他の国での価格を比較し、為替レートに関係なく同じ商品の価格は一つに決まると考える。これを一物一価の法則と呼ぶ。

この一物一価が成り立つとき、国内でも海外でも、同じ商品を同じ価格と考えることが出来る。これを購買力平価(こうばいりょくへいか)と呼ぶ。この購買力平価によってGDPを評価したものをGDP(PPP)と表現している。そして一人当たりのGDP(PPP)が実際の国民の経済生活の質を示す評価により近いと言える。


一人当たりのGDP(PPP)から観る日本の経済力

2008年の東アジアの主な国のGDP(PPP)を比較すると、日本は43,560億ドル、韓国は13,423億ドル、中国は79,164億ドル、台湾は6,818億ドルである。つまり、2008年度でも、中国のGDP(PPP)は日本のそれを越えているのである。

しかし、2008年度の東アジアの上記の国々の国民一人当たりのGDP(PPP)を比較すると、日本は34,115ドル、韓国は27,646ドル、中国は5,962ドル、台湾は30,100ドルである。つまり、2008年度の、中国の一人当たりのGDP(PPP)は日本のそれの約6分の1である。そして、日本、韓国と台湾は殆ど同じレベルであると言える。

今後、日本は国民生活の向上、国民一人当たりのGDP(PPP)を基準にしながら、国の豊かさを議論する必要がある。2009年の国際通貨基金(IMF)の調査による日本の国民一人当たりのGDP(PPP)は32,443ドルで、世界23番目である。因みにシンガポールは50,701ドルで世界4位、香港は43,826ドルで世界8位である。また、2009年度の世界銀行(World Bank)の評価では、日本の国民一人当たりのGDP(PPP)は世界で29番目と評価されている。

世界で二番目とか三番目の経済大国と自称した日本は、2009年度の国民一人当たりの国内生産力は世界の二流国家であると言える。そして、生活経済大国を目指すために、これかの日本での国民経済のあり方を検討する必要がある。


一人当たりのGDP(PPP)から観る日本の経済力

国内総生産(GDP)は、市場で取引された財(物的な商品)やサービスの生産のみが計上される。つまり、家事労働やボランティア活動はGDP(国内総生産)には計上されない。

市場で交換された商品(物やサービス)だけでなく、地域社会での共同作業、家事、家での育児教育、文化活動、ボランティアなどによる労働が行われ、社会経済システムの機能を担っている。国民の社会経済活動は、市場経済、生活経済と文化経済の三つの活動も含まなければならない。


成熟した民主主義社会・日本へ向かうために

2010年12月2日の深夜、NHKハイビジョンの番組「マイケル・サンデル「白熱教室」を語る」で、サンデル(Michael Sandel)教授は、共同体主義者(コミュニタリアン)として自らの社会思想的立場から、日本のこれからの社会発展に関して意見を述べた。

簡単に述べると、日本が第二の経済大国から中国にその地位を奪われ、第三番目になったことは大きな問題ではなく、21世紀の日本が成熟した民主主義社会に向かうことが問われていると言うのが彼の意見であった。

この見解を受け入れ、展開するために、市場経済主義で計られる豊かさの概念を生活経済から了解できる豊かさの概念に転回しておく必要がある。生活の豊かさの中に市場経済では計量し難い、精神的満足度や幸福感を入れなければならない。

さらに、経済効果をもたらす資源に関する考え方を変えなければならない。生活環境を豊かにするために最も重要な資源は人的資源である。つまり、明治初期に、貧しい国・日本を豊かにしてきたこれまでの経過を振り返り、我が国に非常に豊かにある資源・高度な教育を受けた人的資源の生産と再生産、そしてその十分な活用を行う社会文化経済政策を展開する必要がある。

また、国民生活の豊かさを示す評価基準として、国民生活指標(新国民生活指標・PLI)という概念を用いて、生活経済を豊かにする活動を社会的に評価する必要がある。

まだまだ、多くの課題があるが、以上述べた基本的な課題を今後の社会経済活動の中で再度位置づけなければならない。






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