2011年11月27日日曜日

ブログ文書集「持続可能なエネルギー生産社会を目指すために」の目次

日本社会のエネルギー政策の提案

三石博行
 

1、再生可能エネルギー促進法とその問題点について
 
1-0、はじめに
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_26.html

1-1、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号)(RPS法)について(2002年から2007年まで)
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_9263.html

1-2、住宅用太陽光発電の固定価格買取制度の導入(2008年-2009年) 
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_4777.html

1-3、「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム」による再生可能エネルギーの全量買取制度の提案」と「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」(2009年-2011年)  
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_5505.html

1-4、3.11(東電福島第一原発事故)以後、問われたエネルギー基本計画と「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」成立(2011年)
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_5505.html

1-5、「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の簡単な解説 
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_27.html

1-6、「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の問題点  
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_3610.html

1-7、まとめ 
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_3610.html


論文「再生可能エネルギー促進法とその問題点について」のダウンロード
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_03_04/cMITShir11a.pdf


2.太陽光発電の将来性と問題点

2-0、はじめに
近日公開


2-1、エネルギー消費量からみた現代社会の課題
http://mitsuishi.blogspot.com/2012/02/blog-post.html

論文「エネルギー消費量からみた現代社会の課題 -太陽光発電の将来性と問題点- 」のダウンロード
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_03_04/cMITShir11b1.pdf


2-2、市場からみた太陽光発電システムの課題
http://mitsuishi.blogspot.com/2012/02/blog-post_20.html

論文「市場からみた太陽光発電システムの課題 -太陽光発電の将来性と問題点- 」のダウンロード
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_03_04/cMITShir11b2.pdf


2-3、社会経済システムからみた太陽光発電システムの課題
http://mitsuishi.blogspot.com/2012/02/blog-post_579.html

論文「社会経済システムからみた太陽光発電システムの課題 -太陽光発電の将来性と問題点- 」のダウンロード
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_03_04/cMITShir11b3.pdf


2-4、未来社会からみた太陽光発電システムの課題
近日公開


2-5、まとめ
近日公開


3.風力エネルギー・発電をめぐる課題
未完成

4.水力エネルギー・発電をめぐる課題
未完成

5.地熱エネルギー・発電をめぐる課題
未完成

6.バイオマスエネルギー・発電をめぐる課題
未完成


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ブログ文書集

1、ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_3562.html

2、ブログ文書集「東日本大震災の復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/blog-post_23.html

3、ブログ文書集「日本の政治改革への提言」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_9428.html

4、ブログ文書集「21世紀日本社会のための大学教育改革の提案」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/04/blog-post_6795.html


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再生可能エネルギー促進法とその問題点について(6)

持続可能なエネルギー生産社会を目指すために

三石博行


1-6、「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の問題点


住宅用太陽光発電の全面買取制度と余剰買取制度(設置者の多様なニーズを満たす仕組みの開発)

固定価格買取制度(FiT法)は、基本的には再生可能エネルギー電気の全量を固定価格で買い取る制度を指している。しかし、「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」(FiT法)では、住宅用太陽光発電に対して剰余買取制度を適用している。これは、2002年に公布された「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS法)と2009年11月から実施された住宅用太陽光発電への買取固定価格制度の経過が関係していると言える。

RPS法は再生可能エネルギーの利用を促進するために利用割合を定めた法律である。しかし、TIF法は再生可能エネルギーの固定価格買取制度を定めた法律である。その意味で、厳密に言えば、RPS法制定下で存在した部分的な買取制度(余剰電気の買取制度)もTIF法では全面買取制度に変更すべきであると考えることが出来る。

しかし、オール電化による安い夜間電気を利用しながら太陽光発電を行う住宅用のシステムでは余剰固定価格買取制度を維持することで、家庭での省エネルギー対策が進むということから、住宅用太陽光発電に関しては余剰買取制度を維持するという意見もある。

しかし、オール電化制度では10時から17時までは高額電気料金が設定されているため 発電量の小さい、例えば4KWh以下の太陽光発電パネルを設定している住宅では、オール電化制度を活用しない場合がある。その場合、上記した省エネ対策促進の意味が失われることになる。剰余電気の固定価格買取制度を維持するのであれば、住宅用の太陽光発電に関しては、よく検討した上で、設置パネルの規模の下限を決め、そのための補助金制度を導入することも考えられる。つまり、余剰買取制度の意味を活かすための政策が必要であると言える。

しかし、オール電化制度では10時から17時までは高額電気料金が設定されているため 発電量の小さい、例えば4KWh以下の太陽光発電パネルを設定している住宅では、オール電化制度を活用しない場合がある。その場合、上記した省エネ対策促進の意味が失われることになる。剰余電気の固定価格買取制度を維持するのであれば、住宅用の太陽光発電に関しては、よく検討した上で、設置パネルの規模の下限を決め、そのための補助金制度を導入することも考えられる。つまり、余剰買取制度の意味を活かすための政策が必要であると言える。


曖昧な全再生エネルギー電気の買取義務規則と発送分離制度の導入

この法律の第二章で、電気業者は発電施設から再生可能エネルギー電気を供給する者からの接続請求及び電気の供給に対して契約(特定契約)の締結を原則として拒否することはできないとされているが、同じ第二章の第五条二項で「当該電気業者による電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがあるとき」電力会社は再生可能エネルギー電気の供給者からの接続を拒否することが出来るとされている。

すでに、この点は上記の法律の簡単な説明でも述べたのだが、この第二項での「電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれ」という曖昧な条文の表現が、今後電力会社によって適当に解釈され、接続を拒否される理由になる可能性を秘めている。2011年11月21日、第二回自然エネルギー協議会(会長、石井正弘・岡山県知事)が開催され、この法律の第五条二項について同協議会事務局長の孫正義氏が厳しく批判をした。

孫氏は固定価格買取制度(FiT法)の導入によって自然エネルギーを活用する社会を実現するためには発電施設と送電施設を独占している現在の電力会社の制度では不可能であると述べた。自然エネルギー供給者が電力会社の独占している送電網に接続を要求した場合、これまで「電気の円滑な供給の確保に支障」があるという理由で特に風力発電所からの接続が拒否されてきたことを考えれば、発電と送電の所有を分離する必要がある。


再生可能エネルギー促進付加金(サーチャージ)制度と電力自由化(市場原理の導入)

2002年からRPS法によって太陽光発電を普及させていた日本に対して、ドイツは2001年からFIT法によって太陽光発電を急速に普及し、2004年まで世界一であった日本を抜き2005年には世界一の太陽光発電国となった。つまり、この事実は太陽光発電を普及するためには固定価格での買取り制度が有効であることを示している。そして、日本でも住宅用に関しては2009年から余剰電気の固定価格買取制度を導入した。

FiT法は再生可能エネルギーの普及を促進する非常に有効な制度であるが、もう一方で、高価格に設定された再生可能エネルギー電気の損失部分を誰が埋め合わせるかという疑問が生じる。独占企業である日本の電気業者にその埋め合わせを負担させることは困難である。そこで再生可能エネルギー促進付加金(サーチャージ)制度を導入し、その負担部分を国民全体で賄うことになった。太陽光発電施設を持たない住宅も、太陽光発電住宅の電気料金の一部を負担するのではないかとサーチャージ導入に対して批判が生じている。

再生可能エネルギーを普及させるためには、国策として補助金や買取価格固定制度の導入は避けられない。しかし、そのための負担を電力業界に押し付けるのは限界がある。日本の場合、電気事業者は独占企業である。その意味で、一定の負担を押し付ける権利を国も国民も持っているといえる。もし、電気事業者がそれを否定するなら、電気業界に自由競争原理を導入して再生可能エネルギーの普及を計る必要がある。

もし、電力業界に自由競争原理を持ち込み、自由に新規電力企業が市場参加できる環境があり消費者が自由に電気業者を選ぶことが出来るなら、また消費者が電気商品を選ぶことができるなら(フィンランド等の北欧での買い取り制度の仕組みであるが、発電システムの違いを商品化した電気商品を電気業者は売ることができる、例えば風力電気1kWhの価格、原子力電気1kwhの価格を表示して売るなら)、明らかに消費者が再生可能エネルギー電気利用による価格上昇分の負担を負うことになる。つまり、電力消費者の需要によって再生可能エネルギー電気の普及が行われることになる。その意味で再生可能エネルギー促進付加金(サーチャージ)制度は基本的に不要となる可能性を持つ。


調達価格等算定委員会機能と意思決定のあり方

固定価格買取制度は再生可能エネルギー電気普及の黎明期に必要な制度であることはすでに述べた。すべての商品に共通することであるが、商品生産量が多くなることによって商品価格は廉価になる。これは自由経済の原理である。固定価格買取制度とは、この自由経済の理念に反する行為、つまり国家が商品の価格を決定する行為を行うことになる。その目的は再生可能エネルギー電気を普及することであるが、具体的には太陽光発電システムが普及する、つまり廉価な太陽光電池の生産が可能になり、廉価な太陽光電気が生産できることを意味する。そのため、太陽光発電システムを普及するための初期起動を国が後押ししている制度が固定価格買取制度であると理解すべきでる。つまり、この制度は、廉価な再生可能エネルギー生産を目的としているのである。

その意味で、固定された価格に関する検証が必要となる。つまり、再生可能エネルギー電気はその普及と同時にその価格は廉価となってゆく。その場合、国は普及速度を低下させないように、固定価格買取制度によって国民全体が負担している生可能エネルギー促進付加金(サーチャージ)を軽減しなければならない。そこで買取価格の調整が必要となる。今回の法律では3年間を期限として買い取り価格の見直しを行うことが決まっている。

買取価格の見直しを行うために設けられた検討委員会が調達価格等算定委員会である。この委員会に価格提言は大きな影響力を持つといえる。上記したように、再生可能エネルギー社会化の黎明期、発展期、展開期と成熟期によって買取価格を調整しなければならないだろう。その調整が一つでも誤るなら、2005年の補助金打ち切りによって生じた国内太陽光発電産業への影響と同じ歴史が繰りかえされることになるだろう。

この委員会が5名によって成り立っていることに疑問を持つ。もし、慎重な検討が必要であるなら各界の専門家を集め、恒常的に調査や検討を繰り返し、その上で固定価格設定の見直しと決定を行うべきである。


費用負担調整機関(高度な専門家集団による)運営は可能か

今回のFiT法 第四章「費用負担調整機関」第17条(費用負担調整機関の指定等)で、経済産業大臣が費用負担調整機関を指定することが出来る。今までの慣例から考えると、費用負担調整機関の指定は経済産業省の特権となるだろう。つまり、一般社団法人や一般財団法人として費用負担調整機関が天下りの受け入れ組織となる可能性は十分にある。

勿論、官製シンクタンクである各省の機関で働く専門家(官庁役人)は国の重要な人的資源であり、その十分な活用によって国が機能することは言うまでもない。それらの人材とともに民間や大学等の専門家も一般社団法人や一般財団法人として費用負担調整機関に参加でき、またその費用負担調整機関を立ち上げる機会を与えるべきである。

つまり、問題となるのは、2030年度の再生可能エネルギーで国内のエネルギーの殆どを自給できる社会の構築のために現在のすべての人的資源(有能な人々)を活用できる費用負担調整機関の構築が求められている。専門性の高い業務を担う人々を社会(他の専門機関)が評価し、その機関が有効に機能するように検討する必要がある。


再生可能エネルギーの定義(一般廃棄物焼却炉発電を除外)

2011年3月11日(3.11)以後、日本のFiT法は福島原発事故と切り離して議論することは出来ない。つまり、再生可能エネルギー特別措置法の基本に化石エネルギー電気及び原発依存型のエネルギー電気政策を推進する政策がある。それが新しく始まったエネルギー基本計画の指針である。その意味で、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を確立した「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」(TIF法)の制定の意義が大きい。

この法律の不備を訴える意見の中に、今回の「FiT法は現時点で最も発電単価の高い太陽光発電が優遇される一方で、最も安価な廃棄物発電はFiTの対象から除外」したという意見(2011年9月30日の日経ビジネス)がある。この記事によると「現在、廃棄物発電の能力は一般廃棄物焼却炉167万キロワット、産業廃棄物焼却炉64万キロワット、合計231万キロワットである。これは原発約2基半に相当し、太陽光発電(263万キロワット)や風力発電(219万キロワット)に匹敵する実力である。」そして補助金をえるために、自治体の廃棄物焼却炉の発電能力が向上してきた。自治体の清掃工場の発電施設の平均熱回収率は11%、民間企業の産業廃棄物焼却炉では熱回収率23%以上(施設規模により15.5%以上~25%以上)補助金の対象となるため、非常に高い発電効率の高い炉が開発されている。しかし、民間企業の炉での発電は電力会社から剰余電力の買取が拒否されているため、自家発電用の小型発電施設になっている。

「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」(TIF法)第2条4項(再生可能エネルギー源の定義)によると、産業廃棄物を原料とする電気は、バイオマスの規定から外れることになる。同法第2条4項第五番目に「バイオマス」が記載されているが、化石燃料から製造された製品を除くと記載されている。つまり、ゴミの中には、化学合成製品が含まれているので、この法律で定める再生可能エネルギー源の定義から除外される。そのために廃棄物焼却炉から生まれる発電能力231万キロワット(原発2基分)のエネルギーが使われていないのである。

上記したように化石燃料や原発による電気利用から再生可能なエネルギー電気を生産し消費する新しいエネルギー基本計画を実現するためには、廃棄物焼却炉による発電もバイオマスと同列に置き、価格固定買取制度の中に組み入れるべきである。
さらに、廃棄物焼却による方法だけでなく、廃棄物を活用したバイオチップの燃料開発によるエネルギー電気もFiTの対象とすることで、現代の社会問題の一つであるごみ処理問題への解決を与えると思われる。


1-7、まとめ

この論旨は、今年度公布された「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」(FiT法)の成立までの歴史を振り返りながら、この法律の簡単な解説とその問題点を指摘した。来年7月にこの法律が施行されるまで、これまでのエネルギー政策を検討し新しいエネルギー基本計画の検討も今年10月から始まっている。

しかし、その検討会は、再び原子力依存型社会を目指す議論を始める可能性もある。この法律はそのとき意味を失うかもしれない。特に注意しなければならないことは、調達価格等算定委員会による価格決定と費用負担調整機関の認定である。そして、再生可能エネルギー電気供給者の電力会社が送電線接続拒否を行う権利を持つことである。今後も、この法律が骨抜きにされ今までのように原発依存社会が続行する可能性も大きく、まったく予断は許されないと思う。

そのためには、今後の日本社会の基盤であるエネルギー政策を決定するエネルギー基本計画の中で脱原発と再生可能エネルギー社会をまず明確に打ちたてるべきである。そのことによって、今回の再生エネルギー促進法がその基本計画に即して運用されるのである。


引用、参考資料

1. 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案要綱」
2. 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(平成十四年法律第六十二号)
3. 「電気業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成23年法律第108号) 第五章 調達価格等算定委員会 
4. 調達価格等算定委員会令
5. 経済産業省 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」の概要、発表資http://www.meti.go.jp/press/20110311003/20110311003.html
6. 神田慶司、溝端幹雄、鈴木準 経済社会研究班レポートNo4「再生可能エネルギー法と電気料金への影響」大和総研、2011年9月2日、15p  http://www.dir.co.jp/souken/research/report/japan/mlothers/11090201mlothers.pdf
7. EICネット「ドイツ、太陽光発電に対する電力買い取り補償価格を15%引き下げる提案を公表」http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=24613&oversea=1  2011.01.20
8. bloomberg.co.jp(News)「太陽光エネルギー業界で大規模再編が加速-価格下落で提携か廃業へ」http://www.bloomberg.co.jp/  2011/08/31
9. 新華社通信 「独、太陽光発電産業が窮地に陥る 中国産業への影響も」2011年09月15日、http://www.xinhuajapan.com/open/2011/09/post-85.html 
10. 日経ビジネス 「原発5基分の電力が燃料費タダで手に入る 廃棄物発電の潜在力と再生可能エネルギー全量買取法の弱点」2011.09.30 http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110930/222923/
11. 経済産業省「平成23年度の太陽光発電促進付加金(太陽光サーチャージ)の単位の確定に伴う電気料金の認可について」 News Release経済産業省平成23年1月26日
12. 「自然エネルギーの買い取り、ルール確立をソフトバンク・自治体連合が提言」産経ニュース (2011.11.21 )http://sankei.jp.msn.com/life/news/111121/trd11112119070015-n1.htm


論文「再生可能エネルギー促進法とその問題点について」のダウンロード
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_03_04/cMITShir11a.pdf


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ブログ文書集

1、ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_3562.html

2、ブログ文書集「東日本大震災の復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/blog-post_23.html

3、ブログ文書集「日本の政治改革への提言」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_9428.html

4、ブログ文書集「21世紀日本社会のための大学教育改革の提案」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/04/blog-post_6795.html


12月8日、誤字修正

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再生可能エネルギー促進法とその問題点について(5)

持続可能なエネルギー生産社会を目指すために

三石博行


1-5、「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の簡単な解説

目的
「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の第一章総則では、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス(再生可能エネルギー)源の利用を促進し、それによって国民経済が健全に発達することを目的することが謳われている。この同法第一章総則の第一条(目的)と第二条(定義)は「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号)の第一条(目的)と第二条(定義)と殆ど変りない。

固定価格の決定
同法第二章「電気業者による再生可能エネルギー電気の調達等」第三条では 調達価格(再生エネルギー電気1KWhの価格)の決定は経済産業省設置法第18条によって資源エネルギー庁総合政策課が管轄する資源エネルギー調査会の意見を聴き経済産業大臣が行うことになっている。修正案によって資源エネルギー庁に国会の承認を得て経済産業大臣の任命した5人の委員による調達価格等算定委員会を設置し調達価格に関する意見を纏め経済産業大臣に提出することになった。

全再生エネルギー電気の買取義務
また、同法第二章では、電気業者は発電施設から再生可能エネルギー電気を供給する者からの接続請求及び電気の供給に対して契約(特定契約)の締結を原則として拒否することはできないとされている。これによって、今まで電力会社は風力発電所等からの電気購入を拒否してきた。しかし、今後はそれが出来なくなるのである。つまり、経済産業大臣が定める一定の期間・価格で電気業者は再生可能エネルギー電気を買い取る義務が生じた。固定価格買取制度によって社会が再生可能エネルギー発電設備へ投資を行うことを促進するのである。

しかし、同法第二章第五条二項で「当該電気業者による電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがあるとき」電力会社は再生可能エネルギー電気の供給者からの接続を拒否することが出来るとされている。この第二項での「電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれ」という曖昧な条文の表現が、今後電力会社によって適当に解釈され、接続を拒否される理由になる可能性を秘めている。

図表6 再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度



10kW未満

10~500kW

500kW以上

住宅用

余剰買取

全量買取

全量買取

非住宅用

全量買取

全量買取

全量買取

発電用

全量買取

全量買取

全量買取

図表7 太陽光発電以外の買取価格想定 



太陽光発電以外

太陽光発電

住宅用    

左記以外の事業所用、発電事業用等

買取価格

15~20円/kWhの範囲内

当初は高い買取価格を設定。

太陽光発電システムの価格低下に応じて、徐々に低減させる

買取期間

15~20年の範囲内

10年

15~20年の範囲内

引用 経済産業省「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」の概要


国民負担金(サーチャージ)の地域格差の是正
同法第三章「電気業者間の費用負担の調整」では、地域間でサーチャージの負担に不均衡が生じないよう前年度電気事業者が再生可能エネルギーの発電者から買い取った資金を一括でまとめ、その一括分を賦課金(サーチャージ)として電気の需要家から一律価格で回収する費用負担調整機関の「再生可能エネルギー促進付加金(サーチャージ)」回収(電気業者からの納付金)とその分配等を規定している。

費用負担調整機関の役割
同法第四章「費用負担調整機関」では、費用負担調整機関の組織、業務内容、義務と権限等に関する規則が述べられている。

同法の国民への周知と効率的運営
同法第五章「雑則」では、第29条でこの法律の広報活動による国民への周知、第30条では再生可能エネルギー電気の安定的で効率的な供給の確保のための研究開発の推進、第32条では再生可能エネルギー源の利用に伴う環境保全について環境大臣との緊密な連絡と協力を定めている。

費用負担調整機関の違反行為に関する罰則
同法第五章「罰則」では、費用負担調整機の業務違反に関する罰則が規定されている。

「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の特徴を以下に簡単に次の5点に纏めてみた
1、 再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度(FIT法)
2、 全再生可能エネルギー電気の買取義務(電気業者の買取義務)
3、 調達価格等算定委員会による買取価格調達作業の導入(買取価格見直し制度)
4、 再生可能エネルギー促進付加金(太陽光サーチャージ)の導入(国民負担)
5、 費用負担調整機関によるサーチャージの地域格差の是正


解説

1、太陽光発電促進付加金(太陽光サーチャージ)による太陽光発電の剰余電力買取制度によって、月々の電気料金の一部として,買取に要した費用を「太陽光発電促進付加金」とし,電気のご使用量に応じて国民が負担することになる。

引用 中国電気ホームページ http://www.energia.co.jp/taiyo_fukakin/

2、太陽光発電促進付加金単価の算定方法は、太陽光発電促進付加金単価は,買取に要した実績費用に基づき,以下の算定式により年度ごとに算定する。

引用 中国電気ホームページ http://www.energia.co.jp/taiyo_fukakin/

太陽光発電の買取から「太陽光発電促進付加金」によるご負担までの流れを説明すると、まず、1年間の買取に要した実績費用を翌年度の1年間に「太陽光発電促進付加金」とする。(太陽光発電促進付加金単価は年度を通して均一である。)

引用 中国電気ホームページ http://www.energia.co.jp/taiyo_fukakin/

3、費用負担調節機関はサーチャージ(国民の負担金額)の地域間格差をなくするために設けられたものである。固定価格買取制度によって電気業者の経営的負担が生じることを防ぐために設けられたのが「再生可能エネルギー促進付加金(サーチャージ)」である。再生可能エネルギーを導入する設置者の負担を国民が担う「再生可能エネルギー促進付加金(サーチャージ)」を導入した。電気料金にサーチャージを科すことで、再生可能エネルギーを買い取ることによって生じた負担金を消費者(国民)が支払うことになる。そのことによって、再生可能エネルギー電気を国が定め固定価格で買い取る電気事業者は経営的負担を被らないことになる。全量買い取り制度では「特定電気事業者」や「特定規模電気事業者」が再生可能エネルギー電気の供給が出来るようになった。再生可能エネルギーの発電所が、一般家庭以外にPPSや特定電気事業者が加わり、地域によって異なる再生可能エネルギー供給が生じ、全国に10ある電力会社ではサーチャージが異なる事態が発生する。例えば、実際2011年4月に徴収される額を例にとると、最も少ない北海道電力と北陸電力の1銭(0.01円)/KWh(キロワットアワー)と、最も多い九州電力の7銭(0.07円)/KWhでは7倍の開きが生じている。関西電力と東京電力は3銭(0.03円)/KWhのサーチャージ料金が発生する。例えば、サーチャージ料金が0.01円(北陸電力)と0.07円(九州電力)の場合、1ヵ月の電気使用量が300KWhの標準的な住宅の消費電力の場合にひと月約3円から約21円程度の負担となる。それらの地域間の不公平を解決するために「費用負担調整機関」が設立された。この機関の役割は、電気事業者が再生可能エネルギーの発電者から買い取った資金を一括でまとめ、その一括分をサーチャージとして電気の需要家から一律価格で回収した後、全国一律価格にして各電力会社に再配分するというものだ。それによってサーチャージ(負担請求金額)の地域間格差は実質なくなるのである。 (News Release経済産業省平成23年1月26日)


引用、参考資料

1、 経済産業省 資源エネルギー庁「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案について」 NewsRelease平成23年3月11日 資源エネルギー庁
2、 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案要綱」
3、 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(平成十四年法律第六十二号)
4、 「電気業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成23年法律第108号) 第五章 調達価格等算定委員会 
5、 調達価格等算定委員会令
6、 経済産業省 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」の概要、発表資http://www.meti.go.jp/press/20110311003/20110311003.html

つづき

1-6、「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の問題点  
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_3610.html


論文「再生可能エネルギー促進法とその問題点について」のダウンロード
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_03_04/cMITShir11a.pdf


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1、ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」目次
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2、ブログ文書集「東日本大震災の復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」の目次
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3、ブログ文書集「日本の政治改革への提言」の目次
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4、ブログ文書集「21世紀日本社会のための大学教育改革の提案」
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12月8日、誤字修正

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2011年11月26日土曜日

再生可能エネルギー促進法とその問題点について(4)

持続可能なエネルギー生産社会を目指すために

三石博行


1-3、「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム」による再生可能エネルギーの全量買取制度の提案」と「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」(2009年-2011年)

2009年9月に政権を取った民主党のマニフェスト42項で地球温暖化対策を強力に推進すること、同マニフェスト43項で再生可能エネルギーによる電力の全量買い取り方式の固定価格買取制度を導入すること、44項で環境に優しく、質の高い住宅の普及を促進すること、そして、45項で環境分野などの技術革新で世界をリードすることが述べられていたつまり、これまでの自民党政権の原発推進を基調とするエネルギー政策に対して民主党は選挙前では再生可能エネルギーを重視する政治的視点を持っていたと言える。

2009年9月に成立した民主党政権下では、それまでの原発政策への基本的な方針転換は打ち出されなかった。それでも一応、政治公約に挙げた再生可能エネルギーによる電力の固定価格買取制度を検討するグループ「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム」が2009年11月に組織された。このプロジェクトチームは政治指導体制で行われ、経済産業省の政務三役と柏木孝夫東京工業大学教授を委員長する有識者5名によって構成された。「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム」の会合は2009年11月6日の第1回目から2010年7月23日の5回目まで続き、平成22年8月4日に経済産業省(資源エネルギー庁)からプロジェクトチームの再生可能エネルギーの全量買取制度の基本的な取り決めが報告された。

プロジェクトチームは「再生可能エネルギーの全量買取制度の導入に当たって」の意見の中で三つの基本的な考え方を示した。 一つ目は、「再生可能エネルギーの導入拡大は、「地球温暖化対策」のみならず、「エネルギーセキュリティの向上」、「環境関連産業育成」の観点から、低炭素社会と新たな成長の実現に大きく貢献する」ものであり、二つ目は、「再生可能エネルギーの導入拡大」、「国民負担」、「系統安定化対策」、の3つのバランスを取りながら現実的な全量買取制度の設計に即して、最大限の国民負担の抑制と同時に最大限に導入効果を追求することであり、そして三つ目は、再生可能エネルギーの全量買取制度の大枠について国民に発表し、詳細な制度設計、地球温暖化対策のための税や国内排出量取引制度の議論を行い、その動向を見極めつつ、検討を進めることが大切であるという考え方である。そして、この導入によって、2020 年までに再生可能エネルギー関連市場が10 兆円規模となることを目指すと述べられている。

プロジェクトチームの「再生可能エネルギーの全量買取制度の導入」の提案に即して、政府・経済産業省はあの東日本大震災の日、平成23年3月11日に「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」を第177回通常国会に提出すること報告したのである。
この法案には再生可能エネルギーの固定価格買取制度と太陽光発電買取費用を国民が負担するサーチャージ(太陽光発電促進付加金)が導入された。


1-4、3.11(東電福島第一原発事故)以後、問われたエネルギー基本計画と「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」成立(2011年)

平成23年3月11日東日本を巨大地震と未曾有の大津波が襲い、東日本大震災によって甚大な被害が発生した。東京電力福島第一原子力発電所(以後東電福島第一原発と呼ぶ)も地震と津波の被害に晒された。そして、原子力発電所が全電源喪失を起こし、冷却機能を失った原子炉でメルトダウンが進行し、水素爆発を起こし、広島に投下された原子爆弾100個分の放射能物資が大気中に放出されたとも言われている。

東電福島第一原発事故(以後福島原発事故と呼ぶ)は深刻で広範囲の放射能物質による汚染を引き起こしている。そして、未だに原子炉の冷却作業が続いている。原発事故のもたらした被害総額は莫大なものと予測されている。公益社団法人日本経済センターは、「今後10年間で20兆円の処理費用がかかるとの試算結果を7月19日公表した。一方、政府は事故処理には数十年必要との見通しを発表している。」(Wikipedia)さらに、植草一秀は、今後の事故処理や損賠賠償に関して、1999年に発生した茨城県東海村のJOC原発臨界事故と比較し、JOC原発臨界事故での避難エリア(350m)で150億円の賠償責任が生じたので、今回の原発事故での避難エリアは約半径20kmとして、その面積の倍数に賠償金を単純に乗じて得られる約50兆円の数値を示す報告をしている。

こうした広範で長期化を避けられない福島原発事故への賠償問題(東電の賠償金支払い能力を越えた課題)に対して、国は「原子力損害の賠償に関する法律」の3条1項と16条1項に基づき、自然災害によって生じた甚大な事故として福島原発事故への損害賠償への補助を決定した。それに対して、日本弁護士連合は2011年6月20日、「福島第一原子力発電所事故による損害賠償の枠組みについての意見書」を内閣総理大臣及び経済産業大臣に対し提出し、少なくとも東電は5億近い賠償資金を資産売買によって得られることを説明し、東電が事故賠償責任の回避をしないように働き掛けている。

広範な地域の放射線汚染物質の除去、汚染地域での生活や経済活動への被害、健康被害等々、そして風評被害まで含め福島原発事故が与えた経済的打撃は計り知れない莫大な金額であることは疑えない。この事態を重くみた政府はこれまで続いてきた原子力政策とエネルギー基本計画を見直す作業に取り掛かった。

2011年5月10日管直人首相は今後のエネルギー政策について従来の計画を白紙に戻して議論する」と述べ、原発への依存を減らす方針を表明した。管総理はエネルギー基本計画に示された2030年の総発電量のうち50%を原子力と想定したエネルギー基本計画を見直し、太陽光、風力発電などの再生可能エネルギーと省エネ社会実現を2本柱とする意向を示した。新たなエネルギー基本計画では2030年に向けた目標ではエネルギー自給率の向上とゼロ・エミション電源比率の引き上げが掲げられた。

日本のエネルギー政策を決定していた「エネルギー基本計画」の抜本的見直しを検討するために、経済産業省・総合資源エネルギー調査会基本問題委員会の第1回会合が2011年10月3日、第2回目が10月26日に開催された。

脱原発への社会世論が起り各地で脱原発を訴える市民運動が盛んに行われるようになった。管首相の浜岡原発の稼働の中止要請を受け中部電力は5月9日に原子炉を止めた。また、2009年11月から始まった「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム」の提案を実現する「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」作りが始まった。この法案が2002年の「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」のように骨抜きにならないために、活発な提案が社会から行われた。

政府もその動きに反応した。例えば、2011年6月12日 太陽光や風力など自然エネルギーの普及について菅直人首相と孫正義氏を含む民間有識者が意見交換する懇談会を首相官邸で開催した。孫正義氏が主導し、全国の35道府県が協力して太陽光や風力などの発電を普及させる「自然エネルギー協議会」(石井正弘・岡山県知事会長)が6月13日に秋田市内で第1回総会を開き、電力の全量買い取りの制度の早期制定など6項目を柱にする政策提言「秋田宣言」をまとめた。

3月11日に閣議決定した「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法案」は与野党協議を経たその修正案(第177回国会閣第51号に対する修正案)が8月23日に衆議院経済産業委員会で可決され、8月26日に成立した。この法律は2012年7月1日から施行される。


参考資料

1、 日本弁護士連合会「福島第一原子力発電所事故による損害賠償の枠組みについての意見書」2011年6月20日 http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2011/110617_2.html
2、 原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年六月十七日法律第百四十七号)http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S36/S36HO147.html
3、 Wikipedia 「福島第一原子力発電所事故」
4、 植草一秀 「原発事故加害者が被害額大幅圧縮に突き進む暴挙」http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-ea3c.html
5、 YOMIURI ONLINE 「菅首相、原発依存見直しを表明」2011年5月11日 読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110510-OYT1T00978.htm
6、 WWFジャパン公式サイト「エネルギー基本計画」を審議する第1回会合が開催されました」http://www.wwf.or.jp/activities/2011/10/1018105.html
7、 寺島実郎「エネルギー基本計画の見直しで問われるもの」日経BP社 BPnet http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20111028/109141/
8、 産経ニュース msn 「自然エネルギー普及で意見交換 12日に首相と孫正義氏ら」2011.6.10、http://sankei.jp.msn.com/
9、 産経ニュース 「「自然エネルギー協議会」が初総会 「秋田宣言」まとめる ソフトバンク孫社長が主導」2011.7.13、http://sankei.jp.msn.com/
10、 経済産業省 資源エネルギー庁「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案について」 NewsRelease平成23年3月11日 資源エネルギー庁
11、 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案要綱」
12、 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(平成十四年法律第六十二号)


つづき

1-5、「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の簡単な解説
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_27.html


論文「再生可能エネルギー促進法とその問題点について」のダウンロード
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_03_04/cMITShir11a.pdf




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ブログ文書集

1、ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_3562.html

2、ブログ文書集「東日本大震災の復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/blog-post_23.html

3、ブログ文書集「日本の政治改革への提言」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_9428.html

4、ブログ文書集「21世紀日本社会のための大学教育改革の提案」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/04/blog-post_6795.html


12月8日、誤字修正
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再生可能エネルギー促進法とその問題点について(3)

持続可能なエネルギー生産社会を目指すために

三石博行


1-2、住宅用太陽光発電の固定価格買取制度の導入(2008年-2009年)

日本では再生可能エネルギーに対する普及促進策としては電力会社による自主的な買い取り、RPS法や各自治体による助成などが用いられてきた。 これにより太陽光発電パネルをいち早く売り出した日本の電気メーカの供給も重なり、太陽光発電では2004年度まで世界一の生産量や市場を有していた。(Wikipedia)

図表2、2001年から2010年までの世界の太陽光電池生産量(Wikipedia)


しかし、2005年に政府の太陽光発電パネル設置への補助金が打ち切られると、国内の需要が減った。2005年度に約300MWあった生産量が2006年度に減少に転じ、2007年度は約200MWまで減少した。それまで世界一の生産量を誇っていた日本はドイツ、中国、そしてアメリカにまで抜かれてしまった。(Wikipedia)

図表3、日本における太陽光発電池出荷量(国内用と海外用)(Wikipedia)


2005年に補助金がなくなり、しかも、当時、家庭で発電する太陽光電気の買取価格は一般電気事業者10社で少しの格差はあったが1KWh当たり約22円-23円であったため、太陽光電池国内需要は急速に衰えた。何故なら、この売電価格では、太陽光発電施設の設置費用に投資した資金の回収は不可能であるからだ。これまで政府の補助金で僅かではあったが太陽光パネルを設置しようとしていた国民の自然エネルギー活用の意欲は失われたと言えるだろう。

図表4、2001年度から2007年度までの太陽光発電の国内出荷量(MW)
出典:JPEA(太陽光発電協会)ウェブサイト、「統計・資料」)

2005年に新エネルギー財団(NEF)による助成が終了して以降、2007年まで国内市場は縮小し、日本の太陽光発電の国内出荷量は減少し、総出荷量も伸びず、結果的に太陽光電池生産量世界一の座をドイツに奪われた。明らかにこれは日本のエネルギー政策の不備によって生じたといえる(それについては日本の太陽光電池産業の問題を指摘する考えもあるが)。世界一の太陽光電池の生産国となったドイツでは固定価格買い取り制度を導入した。ドイツは1990年のStromeinspeisungsgesetz (StrEG電力供給法)、そして2001年のErneuerbare-Energien- Gesetz(EEG、再生可能エネルギー法)、および2004年のEEG法改正と3段階の固定価格買い取り制度を導入することで太陽光発電の普及を促したと言われている。

日本の太陽光発電の国内出荷量の減少に危機感を募らせた政府(経済産業省)は、2008年に福田ビジョン(2008年6月9日、第91代内閣総理大臣福田康夫により発表された日本の地球温暖化への対策としてポスト京都議定書の枠組み作り、国際環境協力と技術革新の三つの提案・クールアース推進構想の温暖化ガス排出量削減構想)による太陽光電池の大幅な増産を目標に掲げた。そのビジョンにそって2009年1月に経産省が緊急提言に沿って補助金を復活させた。また、また2009年2月には環境省も再生可能エネルギーの導入に伴う費用や経済効果の試算を発表し、太陽光発電の普及政策として固定価格買い取り制度の採用を提案した。(Wikipedia)

2009年2月の環境省による太陽光発電を含む再生可能エネルギーの普及による費用や経済効果の試算によると、2020年までに太陽光発電37GWp、2030年までに79GWpの導入を仮定すると、再生可能エネルギー全体の導入の費用は2030年までに25兆円にのぼり、その経済効果はその2倍以上になる。そして、数十万人の雇用を生み出すだろうと述べられた。環境省の発表と同じ時期に、経済産業省も太陽光発電設備の初期投資を10年程度で回収できる助成策を導入することを発表した。環境省と経済産業省が共に太陽光発電の推進を行うことで一気に普及政策として固定価格買い取り制度の土台が整った。

2009年9月16日、民主、社民、国民新の3党連立政権が発足した。民主党は同年の衆議院選挙公約(マニフェスト)43項「全量買い取り方式の固定価格買取制度を導入する」の中で、再生可能エネルギー固定価格全量買取制度の早期導入、効率的電力網(スマートグリッド)技術開発・普及促進を公約した。民主党政権の成立によって更に2008年の福田ビジョンにそって2009年2月の環境省と経済産業省が具体化しようとした太陽光発電の推進構想が展開したといえるだろう。
2009年11月から固定価格による余剰電力買取制度が始まった。買取期間を10年とした日本の固定価格全量買取制度が出発したのである。この制度では、10KW未満の住宅用の太陽光発電は1KWHあたり48円(2011年申込みでは42円)で、非住宅用では24円(2011年申込みで40円)で、10KW以上で500KW以下では住宅用でも日住宅用でも1KWHあたり24円である。しかし、大型の発電施設、500KW以上では一般電気業者の買取は行われない。

図表5 買取期間10年の太陽光発電余剰分買取価格(Wikipedia)



10kW未満

10~500kW

500kW以上

住宅用

48円/kWh

(42円)

24円/kWh

買取なし

非住宅用

24円/kWh

(40円)

24円/kWh

買取なし

発電用

買取なし

買取なし

買取なし



( )は2011年度契約申込みの場合


不十分とは言え、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号)施行から7年後の2009年に太陽光発電施設による新エネルギー等電気のうち、太陽光発電の剰余電力買取制度」が始まった。つまり、2009年11月から太陽光発電の剰余電力を電気事業者は買取る義務を負う制度(特定太陽光電気買取制度)が出発した。それは、RPS法第3条により政府が定める新エネルギー電気利用目標に対して同法第4条及び第5条により電気事業者は基準利用量の使用が義務とされたことを意味する。これが2002年に小泉政権によって成立し福田ビジョンで展開した自民党発のRPS法の功績であったと言える。

言い方を変えるなら、2009年11月から始まった固定価格による余剰電力買取制度は、2005年に政府の太陽光発電パネル設置への補助金が打ち切られたため太陽光電池の国内需要が減少、その結果としての国際競争力の減退が生じたことへの対策として始まったと言える。日本の先端産業部門である太陽電池産業の危機を救うためにRPS法を活用した政策、2008年6月の福田ビジョンが示された。そして、政府(環境省と経済産業省)は太陽光発電の普及政策として固定価格買い取り制度の採用を提案したのである。つまり、住宅用太陽光発電の固定価格買取制度(RPS法の実施)は日本の先端産業部門の危機を救うために導入されたと言ってよい。そのため風力等の他の新エネルギーに関する固定価格買取制度は作られなかったのである。

住宅用太陽光発電の固定価格買取制度(FiT)が2009年11月から始まったにしろ、原子力を中心したエネルギー基本計画がある限り再生可能エネルギーの活用の普及は基本的に進展することがなかったと言える。この流れは2009年9月に民主党政権が発足した後も変わらず2011年3月11日の東電福島第一原発事故まで続くことになる。


解説

FIT(FiT)法とは、1978年アメリカ合衆国カルフォルニア州での風力発電の普及のために、固定価格買取制度が始まった。その制度を定めた法律をFIT(Feed-in Tariff)法と呼んでいる。(Wikipedia)


参考資料

1、 Wikipedia「太陽光発電」http://ja.wikipedia.org/wiki/
2、 太陽光発電協会 HP http://www.jpea.gr.jp/
3、 Wikipedia「固定買取制度」http://ja.wikipedia.org/wiki/
4、 Wikipedia「福田ビジョン」http://ja.wikipedia.org/wiki/
5、 Wikipedia「クールアース推進構想」http://ja.wikipedia.org/wiki/
6、 経済産業省HP 「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチームの動き」 http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004629/index
7、 経済産業省HP「再生可能エネルギーの全量買取制度の大枠について」2010年8月4日資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部 電力・ガス事業部http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004629/framework.html
8、 再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム「再生可能エネルギーの全量買取制度の導入に当たって」 平成22年7月23日 3p
9、 再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム「再生可能エネルギーの全量買取制度の導入に当たって」参考資料 15p
10、 資源エネルギー庁 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案について」 News Release経済産業省平成23年3月11日 
11、 経済産業省「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案の概要」平成23年3月 経済産業省
12、 資源エネルギー庁 「新たなエネルギー基本計画の策定について」News Release経済産業省平成23年6月18日
13、 Wikipedia「固定価格買取制度」


つづき

1-3、「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム」による再生可能エネルギーの全量買取制度の提案」と「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」(2009年-2011年)  
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_5505.html


論文「再生可能エネルギー促進法とその問題点について」のダウンロード
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_03_04/cMITShir11a.pdf


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ブログ文書集

1、ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_3562.html

2、ブログ文書集「東日本大震災の復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/blog-post_23.html

3、ブログ文書集「日本の政治改革への提言」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_9428.html

4、ブログ文書集「21世紀日本社会のための大学教育改革の提案」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/04/blog-post_6795.html


12月8日、誤字訂正

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再生可能エネルギー促進法とその問題点について(2)

持続可能なエネルギー生産社会を目指すために

三石博行

1-1、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号)(RPS法)について(2002年から2007年まで)

日本社会の「聖域なき構造改革」を訴えて成立した小泉政権下、2002年6月7日に「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号)が成立し、同年12月6日から施行された。この法律は、「経済的社会的環境に応じたエネルギーの安定的かつ適切な確保に資するために、電気業者による新エネルギー等の利用に関する必要な措置を講ずること」を義務化し「環境の保全」と「国民経済の健全な発展」を目的として公布された。この法律で定める新エネルギーとは、風力、太陽光、地熱、水力とバイオマス等とされていた。

2007年3月30日に「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法施行令」(平成19年3月30日政令第97号)が出され、RRP法が施行された。この法律によって平成19年度(2007年)以降8年間、2014年度までの新エネルギー等電気の利用目標量が示された。2007年度は86.7億KW、2008年度は92.7億KWであった。2009年度に出された新エネルギー等電気の利用目標量では同年度(2009年度)の新エネルギー等電気の利用目標量は103.8億KWであった。

2011年度の電気事業者53社(一般電気事業者10社、特定電気事業者5社、特定規模電気事業者38社)に、総量約110.1億KWの新エネルギー等電気の利用の義務が課せられた。2007年度の日本の年間総発電量が約12000億KWである。2011年度の新エネルギー等電気の利用目標量を2007年度年間総発電量に比較したとしても、その総発電量の1%弱しか新エネルギーの占める電力は生産されていない。

図表1 日本の一次エネルギー供給量
使用データ:EDMC/エネルギー・経済統計要覧(2010年版)

また、IEA 統計における再生可能エネルギー導入量と対一次エネルギー総供給シェアの1990年と2006年の比較から、日本はその16年間(1990年1.7%と2006年1.8%)で0.01パーセントしか増加していない。デンマークは(1990年6.1%と2006年14.5%)で8.3%、 スウェーデンは(1990年11.1%と2006年18.2%)で7.1%、ドイツは(1990年1.1%と2006年5.3%)で4.2%増加している。

中でも平成22年度(2010年度)の新エネルギー等電気の総量は102.5億KWであり、その中で太陽光発電は13.4億KWを占めている。つまり、日本の年間総発電量が約12000億KW(2007年度)であるとしてもその総量の0.1%しか新エネルギー電気量は占めていないのである。このことから2002年6月7日に「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号)は、その法律の目的であった電気事業者による新エネルギー等の利用を促進することは出来なかったと理解すべきである。

言い換えると、2002年の「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」の目的である「環境の保全」と「国民経済の健全な発展」のために、自然エネルギー(風力、太陽光、地熱、水力とバイオマス等)の生産とその利用を促進し「経済的社会的環境に応じたエネルギーの安定的かつ適切な確保に資する」と謳ったが、現実には、電気業者による新エネルギーの利用量は僅かなものであり、経済システムを改革する力にはなりえなかった。

21世紀になり国のエネルギー政策は大きな課題を抱えていた。一つは地球温暖化防止を進めようとする国内外の政治や社会の傾向である。非化石エネルギー利用の開発が急がれていた。もう一つは中国を始め急速に経済成長し始めた国々によるエネルギー需要の増加とそれに伴うエネルギー価格の上昇である。こうした課題に素早く対応するために、政府、経済産業省の総合資源エネルギー調査会需給部会は2002年3月に「2030 年のエネルギー需給展望」を示した。そして、自由民主党の議員立法により2002年6月7日にエネルギー政策基本法(平成14年法律第71号成立、同月14日公布)が施行された。このエネルギー政策基本法の第12条第4項の規定に基づき総合資源エネルギー調査会総合部会基本計画委員会が発足し、2003年10月に「エネルギー基本計画」が作成された。
 
「エネルギー基本計画」はその後、2007年、2010年と出された。2003年の「エネルギー基本計画」と2007年のそれを比較するなら、国のエネルギー政策が原子力発電に大きくシフトしていることが理解できる。言い換えると、原子力エネルギーの利用によって、2 030年に向けた国のエネルギー基本計画の基調である非化石エネルギーの利用拡大政策を推し進めた。このエネルギー基本計画(エネルギー政策基本法)と新エネルギーの利用拡大を目的にしたRPS法「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号)は基本的にその方向性を異にすることになる。当然、原子力発電を基本とする電気エネルギー生産を中心におくエネルギー基本計画が再生可能エネルギーを利用するRPS法よりも優位に立っていたために、地球温暖化対策として二酸化炭素を排出しない原子力発電によって電力は十分に補給でききると考えていたために、地球温暖化対策や脱化石燃料エネルギー利用の切り札としてコスト高の再生可能なエネルギー(風力、太陽光、地熱、水力とバイオマス)の開発に敢えて投資する必要を感じていなかったのである。

2007年6月と2010年6月のエネルギー基本計画によると、政府は原子力を非化石エネルギーの代表とし、2020年までに9基(ゼロ・エミッション電源比率50%)、2030年までに14基(ゼロ・エミッション電源比率70%)の原子力発電所を新増設する計画を出していた。政府が非化石エネルギーである原子力も新エネルギーの中に入れ、原子力エネルギーを中心とするエネルギー基本計画を立てるなら、他の再生可能エネルギーを活用する必要はないのである。つまり、このエネルギー基本計画によって再生可能エネルギーを生産する社会経済システムは進行しないことになる。RPS法によって電気事業者が風力、太陽光、地熱、水力、バイオマス等の新エネルギー等を利用することを促進しようとしても、エネルギー基本によって、このRPS法は形骸化されてしまったと言えるだろう。


解説

1. 電気の単位
1Wは 約0.860cal (1ccの水を約0.86度C上げるエネルギー)
1000Wが1KW(キロワット)
1000KWが1MW(メガワット)つまり100万W(0.1万KW)
1000MWが1GW(ギガワット)つまり10億W(100万KW)
1000GWが1TW(テラワット)つまり1兆W(10億KW)
  例えば
3KWが平均的な家庭用エアコンの能力、40KW- 200KWが一般的な自動車の出力、6MWがドイツの電気機関車の定格出力、18.2MWが新幹線500系電車の編成出力、2.074GWがフーバーダムの最大発電電力、3GWが世界最大の原子炉の最大発電電力、1.7TWが世界の平均消費電力(2001年)、3.327TWがアメリカ合衆国の平均消費仕事量(ガス・電力など全ての合計)、(2001年)13.5TWが世界の平均消費仕事量(2001年)(Wikipedia)

2. 一般電気事業者10社とは現在は、「北海道電力㈱、東北電力㈱、東京電力㈱、中部電力㈱、北陸電力㈱、関西電力㈱、中国電力㈱、四国電力㈱、九州電力㈱、沖縄電力㈱」である。特定電気事業者5社とは「限定された区域に対し、自らの発電設備や電線路を用いて、電力供給を行う事業者(六本木エネルギーサービス㈱、諏訪エネルギーサービス㈱が該当)」である。特定規模電気事業者38社とは「契約電力が50kW以上の需要家に対して、一般電気事業者が有する電線路を通じて電力供給を行う事業者(いわゆる小売自由化部門への新規参入者(PPS))」である。
参考 経済産業省 資源エネルギー庁 「我が国の電気事業制度について」
電気事業の概要 (1)電気事業者の種類 (図:電気事業者の概要)
http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/genjo/genjo/index.html
Wikipedia 「電気事業法」

3. 特定太陽光電気とは、「太陽光発電施設による新エネルギー等電気のうち、太陽光発電の剰余電力買取制度により電気事業者に買取義務のある電気であり、RPS法の義務履行に充当できないもの」を言う。
参考 経済産業省資源エネルギー庁 「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法の平成22年度の施行状況について」 News Relesse、平成23年7月15日

4. RPSとは「Renewables Portfolio Standard」の略語で、日本語に訳すと「再生可能エネルギー利用割合基準」となる。


参考資料

1、 「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号)平成14年6月7日公布
2、 「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法施行令」(平成14年法律第62号)改正 平成19年3月30日政令97号
3、 「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法施行規則第二十条各号に規定する手続を行う者に係る計算機に係る基準」平成14年経済産業省告示第410号 平成14年12月6日公布(平成15年2月3日一部改正、平成15年2月13日最終改正、平成15年4月1日施行)
4、 「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法施行規則」(平成14年12月6日 経済産業省令第109号)改正 平成15年2月3日、法律第62号)改正 平成19年3月30日政令97号
5、 経済産業省「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)と下位法令との対比表
6、 「平成19年度以降8年間について電気事業者による新エネルギー等電気の利用目標」 経済産業省告示第279号 平成21年8月31日公布
7、 IEA, Renewables Information, Energy Balances of OECD Countries 
8、 総合資源エネルギー調査会需給部会 『2030年のエネルギー需給展望』平成17年3月 http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g50328b01j.pdf
9、 経済産業省 「エネルギー政策基本法」平成十四年六月十四日法律第七十一号)http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H14/H14HO071.html
10、 Wikipedia 「エネルギー政策基本法」
11、 経済産業省 資源エネルギー庁『エネルギー白書2009年』p148
12、 経済産業省資源エネルギー庁 「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法の平成22年度の施行状況について」 News Relesse、平成23年7月15日
13、 経済産業省 (2003)『エネルギー基本計画』平成15年10月、37p
14、 経済産業省 (2007)『エネルギー基本計画』平成19年3月、69p
15、 経済産業省 (2010)『エネルギー基本計画』平成22年6月、65p


つづき

1-2、住宅用太陽光発電の固定価格買取制度の導入(2008年-2009年) 
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_4777.html


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ブログ文書集

1、ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_3562.html

2、ブログ文書集「東日本大震災の復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/blog-post_23.html

3、ブログ文書集「日本の政治改革への提言」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_9428.html

4、ブログ文書集「21世紀日本社会のための大学教育改革の提案」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/04/blog-post_6795.html


12月2日 誤字修正
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再生可能エネルギー促進法とその問題点について (1)

持続可能なエネルギー生産社会を目指すために

三石博行


目次

持続可能なエネルギー生産社会を目指すために
 

1、再生可能エネルギー促進法とその問題点について
 
1-0、はじめに

1-1、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号)(RPS法)について(2002年から2007年まで)
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_9263.html

1-2、住宅用太陽光発電の固定価格買取制度の導入(2008年-2009年) 
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_4777.html

1-3、「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム」による再生可能エネルギーの全量買取制度の提案」と「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」(2009年-2011年)  
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_5505.html

1-4、3.11(東電福島第一原発事故)以後、問われたエネルギー基本計画と「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」成立(2011年)
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_5505.html

1-5、「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の簡単な解説 
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_27.html

1-6、「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の問題点  
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_3610.html

1-7、まとめ 
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_3610.html


論文「再生可能エネルギー促進法とその問題点について」のダウンロード
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/pdf/kenkyu_03_04/cMITShir11a.pdf



はじめに

今年「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」(FiT法)が成立し、来年7月に施行される。この法律の成立過程を2002年に公布された「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS法)から振り返ってみる。

法律は政策の道具である。政策は政治的方針を実現する手段である。政治的方針とは政治理念を具体化するための方法である。こう考えると、再生可能エネルギー電気の利用普及や、その固定価格買取制度も、この国の将来計画、将来ビジョンに基本的な課題があることを理解できる。我々はどのような社会を実現しようとしているのか。そのためには、どういう政策をどの時代にどのように適用するかということが政治家や政策立案者たちの作業となるだろう。

今回、「電気事業者による再生可能エネルギー等の利用に関する特別措置法」の簡単な解説とその問題点について語るのであるが、その前に、それらの問題がどこから来ているかを説明するために、上記したようにRPS法からFiT法への成立過程を分析した。

この議論は、当然、これからの再生可能エネルギー社会を実現するための議論の一端であり、その長い困難な政治的(政策的)、経済的、技術的、生活文化的課題に対する議題の提供を行うためのものである。この法律に関する評価と課題分析を行うことは、明日の再生可能エネルギー社会の実現に役立つものと信じるのである。

この文書は2011年11月19日おおつ市民環境塾講座で行った講演の資料を基にして作成したものである。


つづき

1-1、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号)(RPS法)について(2002年から2007年まで)
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_9263.html


見引用・参考資料

1. 「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号)平成14年6月7日公布
2. 「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法施行令」(平成14年法律第62号)改正 平成19年3月30日政令97号
3. 「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法施行規則第二十条各号に規定する手続を行う者に係る計算機に係る基準」平成14年経済産業省告示第410号 平成14年12月6日公布(平成15年2月3日一部改正、平成15年2月13日最終改正、平成15年4月1日施行)
4. 「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法施行規則」(平成14年12月6日 経済産業省令第109号)改正 平成15年2月3日、法律第62号)改正 平成19年3月30日政令97号
5. 経済産業省「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)と下位法令との対比表
6. 「平成19年度以降8年間について電気事業者による新エネルギー等電気の利用目標」 経済産業省告示第279号 平成21年8月31日公布
7. IEA, Renewables Information, Energy Balances of OECD Countries 
8. 総合資源エネルギー調査会需給部会 『2030年のエネルギー需給展望』平成17年3月 http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g50328b01j.pdf
9. 経済産業省 「エネルギー政策基本法」平成十四年六月十四日法律第七十一号)http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H14/H14HO071.html
10. Wikipedia 「エネルギー政策基本法」
11. 経済産業省 資源エネルギー庁『エネルギー白書2009年』p148
12. 経済産業省資源エネルギー庁 「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法の平成22年度の施行状況について」 News Relesse、平成23年7月15日
13. 経済産業省 (2003)『エネルギー基本計画』平成15年10月、37p
14. 経済産業省 (2007)『エネルギー基本計画』平成19年3月、69p
15. 経済産業省 (2010)『エネルギー基本計画』平成22年6月、65p
16. Wikipedia「太陽光発電」http://ja.wikipedia.org/wiki/
17. 太陽光発電協会 HP http://www.jpea.gr.jp/
18. Wikipedia「固定買取制度」http://ja.wikipedia.org/wiki/
19. Wikipedia「福田ビジョン」http://ja.wikipedia.org/wiki/
20. Wikipedia「クールアース推進構想」http://ja.wikipedia.org/wiki/
21. 経済産業省HP 「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチームの動き」 http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004629/index
22. 経済産業省HP「再生可能エネルギーの全量買取制度の大枠について」2010年8月4日資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部 電力・ガス事業部http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004629/framework.html
23. 再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム「再生可能エネルギーの全量買取制度の導入に当たって」 平成22年7月23日 3p
24. 再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム「再生可能エネルギーの全量買取制度の導入に当たって」参考資料 15p
25. 資源エネルギー庁 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案について」 News Release経済産業省平成23年3月11日 
26. 経済産業省「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案の概要」平成23年3月 経済産業省
27. 資源エネルギー庁 「新たなエネルギー基本計画の策定について」News Release経済産業省平成23年6月18日
28. Wikipedia「固定価格買取制度」
29. 日本弁護士連合会「福島第一原子力発電所事故による損害賠償の枠組みについての意見書」2011年6月20日 http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2011/110617_2.html
30. 原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年六月十七日法律第百四十七号)http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S36/S36HO147.html
31. Wikipedia 「福島第一原子力発電所事故」
32. 植草一秀 「原発事故加害者が被害額大幅圧縮に突き進む暴挙」http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-ea3c.html
33. YOMIURI ONLINE 「菅首相、原発依存見直しを表明」2011年5月11日 読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110510-OYT1T00978.htm
34. WWFジャパン公式サイト「エネルギー基本計画」を審議する第1回会合が開催されました」http://www.wwf.or.jp/activities/2011/10/1018105.html
35. 寺島実郎「エネルギー基本計画の見直しで問われるもの」日経BP社 BPnet http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20111028/109141/
36. 産経ニュース msn 「自然エネルギー普及で意見交換 12日に首相と孫正義氏ら」2011.6.10、http://sankei.jp.msn.com/
37. 産経ニュース 「「自然エネルギー協議会」が初総会 「秋田宣言」まとめる ソフトバンク孫社長が主導」2011.7.13、、http://sankei.jp.msn.com/
38. 経済産業省 資源エネルギー庁「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案について」 NewsRelease平成23年3月11日 資源エネルギー庁
39. 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案要綱」
40. 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(平成十四年法律第六十二号)
41. 「電気業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成23年法律第108号) 第五章 調達価格等算定委員会 
42. 調達価格等算定委員会令
43. 経済産業省 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」の概要、発表資http://www.meti.go.jp/press/20110311003/20110311003.html
44. 神田慶司、溝端幹雄、鈴木準 経済社会研究班レポートNo4「再生可能エネルギー法と電気料金への影響」大和総研、2011年9月2日、15p  http://www.dir.co.jp/souken/research/report/japan/mlothers/11090201mlothers.pdf
45. EICネット「ドイツ、太陽光発電に対する電力買い取り補償価格を15%引き下げる提案を公表」http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=24613&oversea=1  2011.01.20
46. bloomberg.co.jp(News)「太陽光エネルギー業界で大規模再編が加速-価格下落で提携か廃業へ」http://www.bloomberg.co.jp/  2011/08/31
47. 新華社通信 「独、太陽光発電産業が窮地に陥る 中国産業への影響も」2011年09月15日、http://www.xinhuajapan.com/open/2011/09/post-85.html 
48. 日経ビジネス 「原発5基分の電力が燃料費タダで手に入る 廃棄物発電の潜在力と再生可能エネルギー全量買取法の弱点」2011.09.30 http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110930/222923/
49. 経済産業省「平成23年度の太陽光発電促進付加金(太陽光サーチャージ)の単位の確定に伴う電気料金の認可について」 News Release経済産業省平成23年1月26日


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ブログ文書集

1、ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_3562.html

2、ブログ文書集「東日本大震災の復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/blog-post_23.html

3、ブログ文書集「日本の政治改革への提言」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_9428.html

4、ブログ文書集「21世紀日本社会のための大学教育改革の提案」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/04/blog-post_6795.html


12月2日 誤字修正
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2011年11月2日水曜日

PBL教育を日本の大学に普及させよう(「PBL教育フォーラム2011」に参加して2 )

参画型授業の開発(2)


三石博行



社会の教育力を活用して成立するPBL教育

同志社大学PBL推進支援センターが主催して2011年10月22日に同志社大学新町キャンパスで開かれた「PBL教育フォーラム2011」で配布されたフォーラムのプログラム(予定項目)の副題に「学生のヤル気を引き出すPBL ‐実践的な学習をサポートする支援としかけ‐」と記されているようにPBLの教育目的は学生の学習意欲を引き出すことである。

学習意欲とは学習課題への関心であり、その課題を探究したいという要求である。まず、この課題への関心は、無理に作ることは出来ない。学びを強制されて、また卒業要件を満たすための手段として受講している科目に対して、始めから積極的な学習意欲を感じる訳がないのは当然である。PBL教育は学生が企画し運営する授業である。そのため、学習意欲を持つことが、この教育の成立条件の必要十分条件となっている。

しかし、PBL教育の第一の難関は、まさにこの課題となる。積極的な学習姿勢を予め学生に要求することは困難である。その姿勢が無ければしかし、PBL教育は成立しない。PBL教育が成立しなければ「主体性をもって学ぶ」姿勢を教育することは出来ない。学ぶ姿勢はPBL教育の目標であり、その成立条件である。つまり、どのようにしてPBL教育を成立させるのかが、実は、多くの大学がPBL教育を導入するにあたって抱え込んでいる問題の一つであると言える。

今回の「PBL教育フォーラム2011」に参加した大半の大学のPBL教育に共通している点は企業活動、大学教育改善活動、国際支援活動を課題にし、そこで問題となっている課題の解決をプロジェクト科目のテーマにしていたことであった。学生は、直接、現実の問題を触れ、そこで問われている課題を受け止め、その解決を巡ってプロジェクト科目の授業が始まる。つまり、問題提起者としてこれらのPBL教育が活用したのは社会の教育力であった。社会には解決しなければならない問題は山のようにある。その現実を知らせる。そしてその現実を受け止めることからプロジェクト科目が始まるのである。

アメリカの医学教育に導入されているPBL教育でも、まず学生は大学付属病院の臨床の現場で患者さんの治療を考えることから始まる。そして日本では看護学部に導入されているPBL教育も看護現場の問題を受け取る形で学習プロジェクトが始まる。つまり、PBL教育で必要な問題提起者はつねに現実の社会であると言える。換言すると、社会の教育力を大学教育のシステムに導入することが出来ない限りPBL教育は困難であるとも言える。


悩みぬく力を身に付けた

「PBL教育フォーラム2011」の第2部「学生による取組発表」で、早稲田大学プロフェッショナル・ワークショップのグループは「2011年KUMON×早稲田プロフェッショナル・ワークショップ」のについて発表した。明治大学商学部特別テーマ実践授業のグループは「グッド・イノベーション講座 ~新聞のプロモーション~」の成果について報告した。広島経済大学興動館教育プログラムのグループは「インドネシア国際貢献プロジェクト ~インドネシアの復興を目指して~」について国際支援活動の経験を報告した。甲南大学 CUBEプロジェクト科目のグループは「‐MyKONAN改善プロジェクト 学生が欲しい学内ポータルサイトの企画」について発表した。そして最後に同志社大学プロジェクト科目のグループは「京都の織物文化活性化計画!~織物の伝統技術について考えよう~」を発表した。

そのすべてのPBL教育プログラムが企業、自治体、NGO、地域社会、大学で働く人々の参加によって運営され、それらの現場や職場の課題解決をテーマにしていた。学生は協力してくれた会社、学校法人やNGOに解決策を提案し、それらの提案が受け入れられ、実際に活用されているケースもあった。つまり、学生は学ぶ立場でなく、問題解決に参画する立場を自覚していた。そこで与えられた責任を全うするために努力していた。

第3部のパネルディスカッション「学生と共に考える学習環境」の中で、学生の発言したことは、多くの参加者にとって貴重な意見であり、そこから多くのことを学ぶことができたと思えた。PBL教育プログラム(プロジェクト科目)に協力した企業の人々から学んだことや実際の社会統計作業に必要な社会統計の学習を専門の教員から受講したこと等々の経験、成果や反省点を述べた。そのすべてをここで紹介することはできないがどの発言や提案も素晴らしいものであった。発言の中には、大学へのPBL教育のための体制や施設充実の要求、PBL教育を担う教員への要求、その一つひとつが教える側には身にしみる内容であった。真剣に学習に取り組できた学生の意見だけにそれらの発言には迫力があった。そして、何よりもそれれの提案には説得力があった。

ディスカッションの中で、パネラーの甲南大学マネジメント創造学部3年生の川井健太さんの「このPBLを通じて、悩みぬく力を身に付けることができた」という発言は、このPBL教育の成果の大きな一つであると感激した。学ぶ姿勢、いやもっと問題を解決するために、それと格闘し続けるために、問題を持続して受け止め続ける力、悩みぬく力が必要であと知った。そしてその力を付けることを課題にした。これがPBL教育の成果なのだ。これ以上の教育は日本の大学学部教育にはないだろうと思う。


問われた大学と教員(私)

このフォーラムに参加して、素晴らしい教育成果(学生)に出会い、そして、彼ら彼女らの姿勢や発言から真剣に問われていることは、学生の学ぶ姿勢を問いかけたPBL教育の成果として、教える側、大学、教育環境と教職員の教育力の質を問いかけており、現在の高等教育の在り方や教育者としての大学教員の問題の解決なくしてはPBL教育を普及することは出来ないことに気付かされるのである。

今後、同志社大学で開催された「PBL教育フォーラム2011」のように、PBL教育を参画した学生が主役となるフォーラムを続ける必要がある。各大学で、各大学コンソーシアムで、各地域、関西で、そして全国で、多くの大学にPBL教育を普及する活動を行い続けなければならないと思う。

PBL教育の普及によって、学ぶ姿勢を身に付けた学生から教員や大学に対して、真剣に、そして切実に大学教育改革の具体的な問題が提起され、我々(大学教職員)は、正に彼らと(学生たちとともに)その問題解決のための研究をしなければならいだろう。つまり、我々は学生と同じ立場でPBL教育に関わり、我々、大学の教職員がこのPBLの参加者となり、教える側でなく、共に学習する仲間の一人として、そのプロジェクト科目を参画する(PBL教育活動を行う)中で、我々(教職員)自体が成長する機会を得ることができると確信できた。その確信こそ、PBL教育を普及する力になるだろう。そのためにはまず、始めなければならない。そして、PBL教育を模索検討している仲間(学生、社会の協力者、大学教職員)と協働して、相互の経験を語り合わなければならない。


参考資料

1、2011年10月22日に同志社大学新町キャンパスで開かれた「PBL教育フォーラム2011」2009年度の文部科学省大学教育・学生支援推進事業「プロジェクト・リテラシーと新しい教養教育 -課題要求能力を育成するPBL教育の方法論的整備‐」の研究成果の発表の場として提供された。

2、三石博行 同志社大学「PBL教育フォーラム2011」参加して
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/pbl2011.html

同志社大学PBL推進支援センター 
http://www.doshisha.ac.jp/academics/institute/ppsc/suishin.php


三石博行 河村能夫
「最先端医学教育 UCSFのJMB(Joint Medical Program)・複数専門知識修得の意味 」 
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/ucsfjmbjoint-medical-program.html

A

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ブログ文書集

1、ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_3562.html

2、ブログ文書集「東日本大震災の復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/blog-post_23.html

3、ブログ文書集「日本の政治改革への提言」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_9428.html

4、ブログ文書集「21世紀日本社会のための大学教育改革の提案」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/04/blog-post_6795.html


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2011年11月4日 誤字と文書表現の修正

同志社大学「PBL教育フォーラム2011」参加して

参画型授業の開発(1)


三石博行



PBL(Problem Based Learning )教育の必要性

2011年10月22日、同志社大学の新町キャンパスで同志社大学PBL推進支援センター(山田和人センター長)の主催、株式会社SIGELの共催で、「PBL教育フォーラム2011」が開催された。このフォーラムの参加定員は300名であった。私はこのフォーラムに関する情報を河村能夫龍谷大学経済学部教授や高等教育研究会事務局の佐々江さんから教えてもらって、開催日前の19日になって慌てて参加登録をお願いし、何とか参加することが出来た。

PBL教育に関しては、以前から非常に興味を持ち、河村能夫龍谷大学教授とUCSF(カルフォルニア大学サンフランシスコ校)のM.Kevin教授(不幸にして8月に交通事故で他界された)を龍谷大学の教育開発研究センターの協力を得て、2回龍谷大学に招待し講演会を開催したことがあった。

PBL教育は世界中の大学で課題となっている。何故なら、大学は高度に発達してゆく知識社会を担う人々を育てなければならない。自ら学ぶ力、つまり学ぶ姿勢を持つ人材教育が大学教育の重要な柱となっている。そして、参画型授業の一つとしてPBLが開発されてきた。しかし、PBL教育は日本の大学教育では十分に普及している訳ではない。

早稲田大学や同志社大学のようにいち早くPBL教育を大学教育制度改革に取り入れようとしている大学がある。そして、今回、同志社大学で開かれた「PBL教育フォーラム2011」はこれまでのPBL教育成果を報告した始めての試みであったと言える。


同志社大学PBL教育、社会連携型PBL教育方法によるプロジェクト科目

同志社大学ではPBL教育の土台となるプロジェクト科目を2006年に全学共通教養教育科目に設置した。このプロジェクト科目はPBL教育をベースにした学生主体の社会連携型のチームで行われた。このPBL教育方法でのプロジェクト科目は2006年度の現代GP(文部科学省による大学教育支援プログラムの一つで「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」)にも採択され、2008度末までPBLをめぐるシンポジウムや報告書、調査訪問、PBL研究会の活動等を同志社大学は行ってきた。

2006年からのPBL教育方法でのプロジェクト科目の試みは、2009年度「プロジェクト・リテラシーと新しい教養教育~課題探求能力を育成するPBL教育の方法論的整備~」として展開され、その斬新的教育プログラムは評価されGPに採択されました。2006年度のGP採択は学生主体の社会連携型のチームを課題にしたプロジェクト科目による地域連携教育であったのに対して、2009年度GP採択は、教養教育PBL(プロジェクト科目)が目指すプロジェクト・リテラシーの育成が評価の対象となった。

こうした社会連携型、つまり社会の教育力を大学に取り入れるPBL教育でのプロジェクト科目や、全学部対象の教養教育PBL 推進を進める中で同志社大学では共通教育センターに所属したPBL推進支援センターが2008年11月に発足したのである。


同志社大学PBL教育推進支援センターの活動と教育思想

同志社大学のPBL教育推進支援センターが主催した2011年10月22日の「PBL教育フォーラム2011」で、同センター長の山田和人教授が挨拶を行った。山田教授は「PBL教育フォーラム2011」の主人公は学生であると述べた。この「PBL教育フォーラム2011」はPBL教育を実現した学生たちが中心となって、PBL教育をサポートした企業関係者、大学職員や教員と共に、その経験を交流する会であること、また、フォーラムでの発表を通じて、学生が自らの成果を確認し、さらには、他の大学でのPBL教育を実践した学生たちの発表を聴き、その成果や反省と自らのそれとを比較検討しながら、今後の学習に活かして欲しいと山田和人教授は話した。

そして「PBL教育フォーラム2011」で発表し討論する学生の姿(姿勢)を通じて、PBL教育の成果を理解することが出来ると、山田教授は参加者(企業関係者、大学職員、教員)に述べた。このPBL教育を実現するために、協力した企業の関係者、大学職員も今回のフォーラムに多数参加していた。このフォーラムがPBL教育プログラム(プロジェクト科目)に参画した学生たちが参加していることと同様に、PBL教育を支援した企業関係者や大学職員が多数参加している点も、これまでの大学でのフォーラムとは異なっていた。


山田和人教授の挨拶(YouTubeで公開)
http://youtu.be/8av13DzsUTA





PBL教育には、明らかにこれまでの教師の立場から観た教育スキル論である大学教授法と異なる視点や思想が求められていた。そのことを山田和人教授は「このフォーラムは学生さんが主役です」と述べた。つまり、学ぶ姿勢を身に付けるためには、学生が自ら、学ぶ場の主体となり(学生による授業企画や運営)、学生のための授業内容が検討され(学生が授業進行段階で授業評価を行う)、学生によってその成果が評価される(参画した学生の主観的な満足度や充実観が評価の大切な基準となる)。

つまり、PBL教育を推進するためには、大学が、教員や職員が自らを変えなければならないことが問われているようだ。


PBL教育の成果としての学生の姿

フォーラムは3つの課題(三部)に分けられて構成されていた。第一部では、アップル・ジャパン株式会社の益田玲子さんの「社会で求められている実力とは Why PBL?」と題する基調報告が行われた。 益田玲子さんはアップル社がその創設期から教育という課題を常に追求してきたことや、現在でも教育へ貢献する企業戦略を持ち続けていることを述べた。

第二部はPBL教育を経験した学生たちの発表で、早稲田大学、明治大学、甲南大学、広島経済大学と同志社大学のPBL教育を担当した教員とそれを企画した学生たちが発表した。殆どの大学の発表者は一回生から4回生までの学生たちで、学年を越え学部を越えてプロジェクト科目に参加しPBL授業を運営していた。それらのすべての発表はどれも素晴らしいものであった。ここまで、学生が成長するのだと、参加した我々は痛感したと思う。

しかし、これらの学生の成長を痛感させてくれたのは第三部のパネルディスカッキョンの時だった。全く、予行練習もなく、発表した5つの大学から一人づつパネラーが壇上に上がり、ディスカッションの司会役の山田教授が「このパネルディスカッションは学生によって運営されるため、私(山田教授)は司会といっても、ディスカッションの中には入らない」と最初に述べた。一体、このパネルディスカッションのどうなるのだろうかと参加した多くの人々は思っただろう。しかし、パネラーの中から早稲田大学教育学部3回生の池ヶ谷英里さんが自然と司会者役を担い、他の4つの大学のパネラー達の発言を誘導し、ディスカションの進行を務めた。

この彼女のみごとな司会ぶり(みごとなパネルディスカッションのリード)に、参加した我々から一種の驚きや最高の評価としての「笑い」が生じた。そして、会場は活気づいていった。参加したパネラーは堂々と自分たちのグループで議題になったことや、自分の意見を述べた。

まさに、この学生たちこそがPBL教育の成果である(フォーラムの挨拶で山田和人教授が冒頭に述べとことば)のだと深く感じ入ったのであった。


参考資料

GP(大学教育の充実 –Good Practice)
文部科学省ホームページ(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/gp.htm)
「文部科学省では、国公私立大学を通じて、教育の質向上に向けた大学教育改革の取組を選定し、財政的なサポートや幅広い情報提供を行い、各大学などでの教育改革の取組を促進するため、「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」、「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」及び「質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)」を実施しています。
 平成21年度からは「大学教育・学生支援事業」のテーマA「大学教育推進プログラム」において大学教育改革の取組を推進しています。」

文部科学省大学教育・学生支援推進事業【テーマA】大学教育推進プログラムシンポジウム
2009年度「未来を切り拓くPBL-「教育」の壁を越えて-」
同志社大学PBL推進支援センターホームページ
http://www.doshisha.ac.jp/academics/activity/sympo100220.php

同志社大学PBL推進支援センター 
http://www.doshisha.ac.jp/academics/institute/ppsc/suishin.php


三石博行 河村能夫
「最先端医学教育 UCSFのJMB(Joint Medical Program)・複数専門知識修得の意味 」 
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/ucsfjmbjoint-medical-program.html


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ブログ文書集

1、ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_3562.html

2、ブログ文書集「東日本大震災の復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/blog-post_23.html

3、ブログ文書集「日本の政治改革への提言」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_9428.html

4、ブログ文書集「21世紀日本社会のための大学教育改革の提案」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/04/blog-post_6795.html


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2011年11月4日 誤字修正

2011年11月1日火曜日

大学教育改革の課題としての「知識、スキルと学ぶ姿勢」の教育方法の開発

科学技術文明社会での大学改革の課題(5)


三石博行


スキル教育が重視される社会的背景

日本の大学教育で、15年程前から、「知識、スキルと学ぶ姿勢」という三つの教育課題が取り上げられるようになった。知識の向上は以前からある課題である。しかし、スキルの向上や学ぶ姿勢に関しては、新しい教育課題である。こうした大学教育に投げかけられた新しい教育課題は日本の社会や時代的背景から生じている。そのため、この三つの教育課題を展開するためには、大学内の教育改革のみでは不可能な問題を投げかれられている。スキルの向上と学ぶ姿勢を課題にするようになった日本の大学(世界の大学も)の時代や社会的背景を一通り理解して置く必要がある。

例えば、急速に進む情報化社会に対応するため、大学では情報処理教育(スキル教育)が1990年代から教養教育の中に取りいれられ、教育環境の情報化が進んだ。スキル教育の向上はこの時代的ニーズを背景としている。スキル教育は、現在、大学教育の社会貢献を問われる重要な要素となろうとしている。

つまり、伝統的に日本の企業は企業内教育制度が充実していた。学生は卒業後、就職して企業活動に必要なスキルを、企業内教育によって学んでいた。しかし、次第に日本の企業が終身雇用制度を廃止し、即戦力のある労働力を市場に求めるようになることで、実務作業の基礎的スキルを持つ人材を採用するようになってきた。

就職のために学生が実務作業の基礎的スキル資格を取るのは、企業がその資格を重視しているからであった。そのため大学では、スキル教育を重視しなければならなくなった。勿論、そればかりでなく、情報処理機能を活用する大学教育にとっても学生のスキル教育(情報処理能力の開発)は重要な課題であることは言うまでもないだろう。


学ぶ姿勢を教育するという課題の社会的背景

さらに、「学ぶ姿勢」については、大学教育の基本的な課題の変換がその背景にあることを理解しなければならない。少なくとも1960年代までの古い大学教育のイメージをもっている教員にとって、学ぶ姿勢を教えることは大学教育の課題ではないと思っているだろう。何故なら、大学とは学生が自分で学ぶことを前提にして教育が成り立っていると信じているからである。この考え方は、今や古い大学のイメージとなろうとしている。

急激なスピードで大衆化した大学・大学教育が「学ぶ姿勢」を教育課題にしなければならない背景にある。大学教育の大衆化の背景にはこれまた急激なスピードで進む科学技術文明社会(知識社会)が背景にある。1950年代や1960年代中期までは大学進学者の割合は10%台であった。その時代、大学生は知識人であり、大卒はエリートに属していた。

しかし、1970年代以後、大学進学率は増えはじめた。そして、1990年代になると同世代の半分以上の若者が高校卒業以後、大学、短大や専門学校に進学している。現在では、その殆どが何らかの高等教育を受けている。高度な科学技術の知識が生産現場で必要となり、それなしに機能しなくなった社会では、基礎教育の底上げが必須であり、そのため、大学教育が大衆化することになる。もはや、大学を卒業した人はエリートコースの入り口にいるのでなく、社会一般の仕事の基礎的知識を持つと判断された集団となっている。

大衆化した大学には、学力のみでなく、主体的に学習するという学び方を知らない若者も多くいることは避けられないのである。これらの若者を古い大学教育のように、試験で振い落し、留年させ、最後はそれの学生が中退していくことを学生の自己責任であると言うことが、社会から求められている大学の教育機能(高等教育の大衆化を行う役割)を満たしていないことになる。その意味で、古いエリート教育主義を貫くことで、大学の社会貢献度は低下することになる。

そして、大学で「学ぶ姿勢を教えること」が深刻な教育課題になるのである。だが、学ぶ姿勢を教えるということは殆どの大学教員にとって苦手な課題の一つである。何故なら、教員採用時に、研究成果に関する評価のみが重視されているため、教授法は教育学に関する知識はそれが専門でない限り、殆ど持ち合わせていないのが現実だろう。

もし、現在の大学教育で「知識、スキルと学ぶ姿勢」を真剣に課題にするなら、この問題を解決する方法を提案しなければならないだろう。そうでない限り、大学教育改革が進むことはない。


「学ぶ姿勢」の教育に必要なこと

伝統的に卒業研究は大学の学部教育の最も大切な教育であった。そのため、学部では1年次で、教養教育の殆どを終了し、2年次と2年次に掛けて専門基礎教育がなされた。4年次は殆ど授業はなく、学生は卒業研究に没頭することが出来た。

この時代では、大学教育が学ぶ姿勢を課題にする必要はなかった。何故なら、1年間掛けてその殆どの時間を研究室に所属し卒業研究を行うことで、学ぶ姿勢は自ずと身についていた。卒業研究を重視する理工系学部では学ぶ姿勢の教育は卒業研究時に十分可能であると言えるだろう。

しかし、多くの大学が教養教育を4年間の猶予をもって終えるようにしている。つまり、現在の学部教育は教養教育化しているのである。仮に専門科目を履修したとしても、専門基礎教育のレベルであると評価されている。そのため、卒業研究に一年間掛けて、しかも、他の科目の履修を殆ど行わない条件で卒業論文に時間を割くことは出来くなってきた。

そればかりではない、卒業研究を必修としていない学部もある。また、卒業研究までの学部教育の段階が必修科目として配置されていない場合もある。一年次の基礎ゼミ(前期と後期)、二年にゼミ1(前期)とゼミ2(後期)、そして2年次に専攻分野別に行うゼミ3(前期と後期)等々。卒業論文を書くための基礎的知識やスキルを習得する段階を十分配慮し配置していない場合には、卒業研究は不可能である。

つまり、学ぶ姿勢の教育は講義式の教育でなく、参画型教育でなければ不可能である。その意味で、卒業研究のレベルに目標を与え、それを学部で一貫して教育する制度、ゼミ教育を充実しなければならないだろう。

さらに、学ぶ姿勢はインターンシップなど社会での経験で大きく成長する。主体的にかかわる姿勢を育てることが学ぶ姿勢の基本である。企業での実習、ボランティアへの参加、さらにはクラブ活動なども学ぶ姿勢を育てる教育である。大学は教育環境の充実の一環として、インターンシップ、海外短期留学のサポートのみでなく、ボランティア活動やクラブ活動の部室や大学の支援体制を作る必要があるだろう。

その時、大学が社会の力を教育資源として活用することが出来れば、さらに豊かな「学ぶ姿勢を教える」大学教育が可能になると思われる。


参考資料

ブログ文書集「21世紀日本社会のための大学教育改革の提案」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/04/blog-post_6795.html



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ブログ文書集

1、ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_3562.html

2、ブログ文書集「東日本大震災の復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/blog-post_23.html

3、ブログ文書集「日本の政治改革への提言」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_9428.html

4、ブログ文書集「21世紀日本社会のための大学教育改革の提案」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/04/blog-post_6795.html


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2011年11月2日 誤字修正