2011年1月6日木曜日

欧州連合国の成功が21世紀の国際化社会の方向を決める

三石博行

困難を乗り越えながら進む欧州連合国の形成


歴史的実験としての国際連合国・EU

第一次世界大戦と第二世界大戦の戦場になったヨーロッパはこれまでの歴史には記憶されていない程の甚大な被害(二つの大戦での数千万人の犠牲者数)が発生した。この凄惨な傷跡から立ち上がるために、そして二度とヨーロッパを戦禍の焦土にしないために、ヨーロッパ連合の構想が掲げられ、半世紀以上の長い時間を掛けて、ヨーロッパ連合国家の形成を進めてきたのである。

第二世界大戦直後の1946年9月19日にチャーチルがドイツのチューリッヒ大学の講演で提案した「欧州合衆国」の構想から、1949年5月5日ロンドン条約によってヨーロッパ評議会が発足する。1951年パリ条約によって欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)によってヨーロッパの経済共同体の歩みが始まる。1957年の欧州6カ国のローマ条約によって次世代エネルギー(原子力)や資源のヨーロッパ共同管理が決まり、1958年に欧州原子力共同体(EURAOM)が発足、1958年に欧州経済共同体(EEC)が発足、1960年に欧州自由貿易連合(EFTA)が形成され、1965年にブリュセル条約で欧州共同体(EC)が生まれた。

ヨーロッパはECの形成によって大きく変化していく。1969年のEC加盟国(6カ国)間での関税同盟と農業共同市場が発足、1986年までにEC加盟国はイギリス、西ドイツ、フランス、イタリア、スペイン等のヨーロッパ主要国を入れた12になる。そして、1973年からECは先進国首脳会議(サミット)にEC代表を送り、1979年からEC加盟国の市民による欧州議会の直接選挙を実施、1985年にはEC加盟国の共通パスポートを発行する。

ヨーロッパは第二世界大戦以後の世界経済への影響力を維持するために、軍事と産業の要であるネンルギーと資源の争奪戦を防ぐために共同管理を行い、経済大国の米国や第二の経済大国となった日本に対抗するために経済共同体を形成し、またヨーロッパの内紛の火種であった大気汚染や河川の環境問題を共同で解決し、ヨーロッパ市民社会を作るためにEC加盟国市民の選挙によって選ばれた議員による欧州議会を発足し、世界政治へのヨーロッパの影響力を維持するためにヨーロッパ共同軍を形成し、着実に欧州連合(EU)発足の土台を形成しつづけ、1992年のマーストリヒト条約に基づき1993年にEUが発足した。


歴史的実験としての国際連合国・EU

発足の段階から失敗するだろうと言われ続けてきたヨーロッパ連合は、現在も多くに課題を抱えながらも、類似文化圏内での国際共同体という新しい国の形を求めて試行錯誤を続けている。EUの形成は、20世紀にはじまった国際化社会の第一段階とも言うべき類似文化圏内での連合国形成の実験である。 

欧州の共同経済領域を形成する欧州経済領域(EEA)を1994年に形成、1995年に共同経済領域内の出入国管理体制・労働力移動の自由化をEUに加盟していない欧州の国々を入れて28カ国でジェンゲン協定を確立、1999年からEUの共通通貨ユーロを創り、現在、欧州憲法を批准する活動を展開、2007年には27カ国がEUに加盟している。

今、世界は新しい連合国家を目指す欧州連合の実験を注意深く観察している。この実験は21世紀の国際化社会の進化の方向を決定づけるだろう。EUが成功するのか失敗するのか、人類の歴史にとって大きな課題となる。


問題を解決しながら整備される連合国の機能

2010年にはEUはギリシャの赤字財政問題から大きな課題を抱えることになった。そして、現在でも財政危機を抱える他のEU加盟国、スペインやアイルランドが存在している。その解決のために、2007年に成立し2009年に発効したリスボン条約を見直すことになっている。

つまり、これまでEU、ヨーロッパ連合が連合国となるための文化、教育、軍事、治安、外交政策を決定執行する機能を創り上げてきた。さらに、新たな問題を抱えることで、EU、ヨーロッパ連合が連合国となるための国家的機能が整備がされていくだろう。

もはや、後戻りできない。連合国家の行政機構の整備が急がれる。これまで成立した色々な連合国家としての行政機能に不足していたものを、今回の財政問題でも指摘された。そして連合国の財政政策を決定し執行する機能が形成されるだろう。

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6. EU関係及びEU協会運動

6-1、生活運動としての国際交流運動

http://mitsuishi.blogspot.com/2007/12/blog-post_14.html

6-2、日欧学術教育文化交流委員会ニュース配信
http://mitsuishi.blogspot.com/2007/12/blog-post_8507.html

6-3、文化経済学的視点に立った国際交流活動
http://mitsuishi.blogspot.com/2007/12/blog-post_26.html

6-4、新しい国際交流活動のあり方を模索して
http://mitsuishi.blogspot.com/2009/06/blog-post.html

6-5、我々はEUに何を学ぶのか
http://mitsuishi.blogspot.com/2009/07/eu.html

6-6、東アジア諸国でのEU協会運動の交流は可能か
http://mitsuishi.blogspot.com/2009/09/eu.html

6-7、東アジア共同体構想と日本のEU協会運動の役割
http://mitsuishi.blogspot.com/2009/10/eu.html

6-8、欧州連合国の成功が21世紀の国際化社会の方向を決める
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/01/21.html

6-9、Eddy Van Drom 氏のインターネット講座 ヨーロッパ評議会の形成史
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/10/eddy-vandrom.html

ブログ文書集「国際社会の中の日本 -国際化する日本の社会文化-」 から




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