2011年2月3日木曜日

中東・北アフリカの政治的安定に向けた我が国の外交路線

戦後60年の経済協力の蓄積を活かす日本の国際外交の展開

三石博行



激動するエジプト・深刻化する貧困と失業問題

北アフリカでの大規模な反体制運動の原因は、報道されているように深刻化する貧困と若年層の失業問題が直接の関連である。半年前に、小麦の価格上昇で、エジプトで暴動が発生したことを記憶していると思う。世界中をだぶついた投資マネーが俳諧し、気象変動やバイオエネルギーの需要を見越し食料への先物取引が行われ、食料価格を上げる結果となった。

そして、長期化した政権の内部で生じている政治家や官僚達の腐敗が、国民の不満を募らせていた。今年9月に予定されている大統領選挙に対して、動き出す野党勢力を弾圧し、現在の政権を維持しようとしたムバラク大統領に対して、国民は必死に抵抗をしている。

ついに、「野党勢力による「100万人デモ」の呼びかけに応じて、2月1日過去最大級のデモが実施され。カイロ中心部では同日夕方までに数十万が抗議集会に参加」(日経新聞 2011年2月1日朝刊)したと報道されている。

事態はさらに深刻化しつつあった2月2日、ムバラク大統領は9月の大統領選挙に出馬しないことを判断した。この判断によって、事態はこれ以上悪化することは無いと言われている。しかし、この状況が今後どのように収拾の方向に向かうかは不明のままであり、先進国をはじめとして我が国日本も、今後の状況に神経を尖らしている。

中東・北アフリカの政治的安定に必要なアメリカの外交

一連の中東や北アフリカ(アラブ諸国)での政治的不安は、国際問題化しようとしている。スエズ運河を持つエジプト、世界最大の石油産油国とその周辺諸国に属する国々の政治的に不安定な状態は国際化した経済構造に直撃することは明確である。

特に、アメリカは危機感を募らせている。何故なら、これまでムバラク大統領率いるエジプトがアメリカの中東政策を支援してきたからである。アラブ諸国で大きな影響を持つエジプト政府の親米路線が崩壊することは、イラク戦争で失敗したアメリカにとっては大きな損失となる。そのため、アメリカは、この事態収拾に乗り出す必要がある。

その時、アメリカは、過去のイラン革命の起きた1979年当時のイラン市民の反政府運動への対応を思いささなければならない。そして、今回、アメリカの対応は、そのイラン民主化運動・イラン革命当時の失敗を繰り返さないための慎重な動きをしている。その点に関しては、現民主党政権の外交を十分評価すべきである。


重要なアメリカの外交姿勢

中東問題の鍵は、イスラエル・パレスチナ問題である。このイスラエル・パレスチナ問題の解決を、今日まで先送りにし続けてきたことが、中東の政治的不安定の大きな原因である。イスラエル問題の根源は、古代ローマ帝国からの経緯が絡むヨーロッパ・地中海の2000年の歴史を前提にして、ヨーロッパで繰り広げられたユダヤ人迫害の歴史を前提にして語られなければならない課題を抱えている。その意味で、イスラエル・パレスチナ問題の解決は、今後、長期間に及ぶ努力が求められていることは前提となる。

そして、アメリカの中東での外交政策が、中東でのエネルギー産油国への影響力の維持と国内のユダヤ資本に影響受けるアメリカの政党にあることも、同時に理解しておかなければならない。

非常に難解なイスラエル・パレスチナ問題の解決に対して、アメリカは常に現イスラエル政府の入植地拡張政策を支援もしくは黙認し続けてきた。そのために、土地を奪われたパレスチナ難民が発生し、それに対して中東戦争が繰りかえさ、その結果、周辺諸国での過激なイスラム勢力の増大を結果的に生んだといえる。

すでにムバラク親米政権の今年(2011年)9月の終焉を前提にしている 今回のエジプト民主化運動が、結果的にアメリカのこれまでの中東・北アフリカ諸国への政策の延長を許さない状況が生まれることを理解しているだろう。アメリカはその離反しつづける親米勢力の政治地図に対して、新しい外交姿勢が求められている。 つまり、この国際的に重要な地域が、イランのように反米化しないための対応をアメリカは迫られているのである。


求められる日本の外交力

そして、この困難で重要なアメリカの外交を支援するために、日米同盟を結ぶ我が国の外交力が同時に問われる。

日本は中東や北アフリカ諸国とは友好な関係を続け、それらの国々の国民にも親近感を与えてきた国の一つである。その主な理由は、第二次大戦で日本(大日本帝国)がそれらの国々に侵略した歴史がないこと、そして戦後、日本はこれらの国々の発展協力し続けてきたことが考えられる。その意味で、政治的に不安定化するこれらの国々に対する日本の働きかけは、これらの国々の国民から不信と疑惑の色眼鏡を掛けられて見られることはない。この条件を持つのは、先進国の中で、日本、韓国と中国である。

つまり、東アジアの国々の協力を背景にしながら、日本は積極的に、中東・北アフリカ諸国(アラブ諸国)への経済支援を進めることである。

これまで日本は、政府の国際協力事業や企業の国際的な貢献活動を背景に、現地の人々と共に、現地に国民の要請に即して、多様で質の高い事業と政策を提案してきた。そして、日本は、これまでの蓄積を基にして、さらに貧困化や高失業化社会になろうとするアラブの国々を支援する力と技術を持っている。

この日本の力を米は勿論、韓国、中国、台湾、シンガポール等のアジアの先進国と協力しながら推進することが必要なのではないだろうか。

以下、提案できる課題を簡単に述べる。(それだけではなく、もっと多くの課題があると思うが)

国際和平政策

1、イスラエル・パレスチナ問題を解決するための東アジア(日本、中国と韓国)の参加した国際的な会議を呼びかける。


経済産業政策

1、 過剰な投資マネーによって上昇する食料物価への国際的な対応、つまり、食料を投資の対象から外す国際協定を作る呼びかける。

2、 中東・北アジアでの食料生産に必要な砂漠地帯の農業技術の開発(すでに多くの基盤技術を持つ日本が中心となって進められる計画である)

3、 さらに、広大な砂漠を活用した太陽光発電所と生産された電気エネルギーを水素やアルコール等の運搬可能なエネルギーに変換する大プロジェクトを立ち上げ、新しい産業育成を支援する。


教育・研究開発政策

1、 JAICAプログラムで、河村能夫氏がすすめたインドネシアでの住民参加型開発事業と龍谷大学経済学部が進めている発展途上国の知的生産力を向上されるための教育支援(大学院での教育機構の形成)を参考にしながら、さらに日本の大学の国際化も視野にいれ、その二つの課題を展開するために、中東・北アフリカ諸国の大学と日本の大学が共同で、上記した経済産業政策を推し進める人材を育て、また研究機構を提供・発展させる。


参考資料

三石博行 「中東、北アフリカでの市民抗議運動を欧米型民主主義運動と誤解してはならない -日本外交にとってビジネスチャンスとは何か-」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/02/blog-post_23.html




修正(誤字脱字)   2011年2月3日、
修正(参考資料追加) 2011年2月23日






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