三石博行
日中友好運動と反日反中運動
尖閣列島での中国漁船衝突事故があって世論が大騒ぎしている最中、10月2日から3日まで、吹田市日中友好協会と西日本中国留学生学友会が主催し、吹田市、吹田市国際交流協会が協賛して、「留学生との交流会」が吹田市自然体験交流センターで開催された。私は、友人の吹田市日中友好協会理事であるE氏から、私の所属している大学への協力要請を受け、学長や副学長に相談して、学生の参加を呼びかけた。
当日、10月2日、私も交流会の会場に行ってみた。大阪大学を始めとして吹田市にある大学のクラブ、京都芸術大学の演奏クラブ、地域のボランティア団体が中国からの留学生を中心とした吹田市の大学に留学している約130名の学生の前で音楽やダンスなどを披露した。中国の留学生も歌や楽器で参加した日本の学生や市民に答えた。
尖閣列島問題で両国が厳しい状況にある中でこそ、市民の草の根の国際交流運動の意味があるのだと感じた。つまり、国が国土問題でもめたところで、それは長い時間をかけて解決してゆく外交上の課題である。しかし、両国の友好関係は、それよりも長い歴史の上に成立しており、また、それよりも日常的な生活の場で実現しているものである。その友好の流れを誰も止めることは出来ない。
縮まる日中文化格差・若ものたちの世界
このイベントに参加していた中国の学生の横に座り、共にイベントを楽しみながら、1973年に確か大阪の生野区で日中友好協会が主催した訪日団歓迎集会に、日中友好協会運度をしていたI氏に誘われて参加したことを思い出していた。あの当時、中国の人々はみんな人民服だった。女の人の髪型もみんなオカッパスタイルだった。男性もみんな短く髪の毛を刈り上げていた。見るからにストイックなイメージだった。
このイベント会場の中国留学生達は、殆ど日本の学生と変わらない服装や髪型をしていた。当時の人民服の訪日団の労働者たちとまったくちがう雰囲気、そして歌う音楽も日本と若者が歌っているような音楽と変わらない。あれから30年の時間が流れの中で、中国の人々の姿は大きく変化した。彼らの自由な服装とヘアースタイルをした彼らに、あの当時の人民服を着せることは不可能だろう。
改革開放は、中国国内の経済を活発にし、資本主義化し、多くの人々が豊かさを手に入れ、若者の多くが大学で学び、多くの学生が国外留学し、日本にも来て、結果的に日本との文化的格差を縮めた。
豊かな生活を獲得することが解決の糸口
現在、中国の各地で広がる反日運動、その主役が学生であると言う。
考えてみれば、その中国各地で学生が行う反日運動、日本での尖閣列島中国漁船衝突事故を巡る中国政府の対応への反発と反中国運動、吹田市での中国留学生歓迎イベント、そして多分中国での日本人との家族的な付き合い等々、この地平から本当の日中友好関係が生まれるのだと思う。
今までは、中国からの友好活動は、官製型だったともいえる。日中戦争当時の旧日本軍(大日本帝国)による侵略戦争と国土分断(満州国)による中国人の莫大な被害。その戦争の後に、捕虜となった日本兵への寛大な対応、それはあの偉い周恩来がトップにたって、つまり中国共産党の指導の下で行われた官製型の日中友好活動ではなかったか。
周恩来の非常に理想的な、そして戦略的な日中友好のための捕虜政策、その立派過ぎる模範をまるで中国の典型とした我々日本人の大きな誤解が、今日の反日運動を理解できなくしているのかもしれない。
何しろ、戦中時代、日中戦争のときに、どれだけ多くの中国人が犠牲になったか。今でも、日本人を許すことが出来ない人がいても不思議ではないだろうか。
しかし、日本人で今、アメリカをうらんでいる人がどれだけいるだろうか。東京空襲や広島と長崎の原爆投下を例にとっても無差別爆撃で多くの日本人を殺害した歴史は消えないし、それはアメリカが行った戦争犯罪であることは否定できないだろう。
だが、戦後の日本人が手にした豊かさ、そしてその豊かさを実現できた自信が、多分、あの憎しみを超える力を与えているのだと思う。日本人の殆どがアメリカの協力で、今日の日本の豊かだがあることを知っているのだ。そのことが、戦時中の悲惨な出来事をいい続ける意味を失わせていることは確かである。
この我々の経験から、中国国民の生活が豊かになることによってしか、日中戦争の悲惨な歴史を中国の国民がのり超える方法を見つけ出すことが出来きると考える。中国の経済的発展と国民の豊かな生活に日本が寄与することが、日本が行った過去の戦争の傷跡を癒す方法となる。
すでに、これまで日本は中国の経済発展に貢献してきた。そして、これからは中国と共に豊かな東アジア経済共同体を創る努力を続けることであろう。それが中国(韓国も含めて)日本がこれから出来る、過去へのもっとも有効な謝罪方法である。今まで、日本政府はそれを(中国の経済発展の支援を)し続けてきた。その路線を、経済発展する中国とさらに相互の国が繁栄する方向で、展開する必要があるだろう。ここで、私が言うまでもなく、すでに日本政府はその方向で外交の舵を取っているのである。
日本人の国際理解力を鍛えよう
世界中、どこでも国家というものは常に、領土問題を抱えている。国とはそんな存在だ。双方の国が双方の領土をつねに主張しあうのは国というものがあるためだ。尖閣列島問題で国民は驚くことはない。またやっているというぐらいでいいのだろう。これは、そんなに簡単に解決しないだろうし、長い時間が必要だ。
つまり、この領土問題が外交の入り口なのだ。領土問題から本当の国と国の関係が始まるのである。尖閣列島も竹島も、北方領土も日本は堂々と自分の領土だと主張し続ければいいし、それで、中国、韓国やロシアと外交の始まりに過ぎない。
人権問題も、日本の立場、つまり日本は一応日本国憲法で国民主権、基本的人権尊重、民主主義国家を原則にしている。中国は共産党一党国家である。その二つの政治体制に良いも悪いもない、それは歴史的に確立した制度で、現在の制度で、永遠未来につながりもしないし、永遠過去からにもつながらない。その違いを認め合って、現在の日中両国の外交が生まれ、行われる。
中国の民を貧困と大日本帝国の植民地支配から開放したのは毛沢東を先頭にした中国共産党である。中国共産党がなければ、現代の中国はない。そして、現代の中国の経済発展を導いたのも鄧小平を中心とする中国共産党である。中国の共産党一党支配を批判する前に、その長く苦しい中国人民の歴史を知らなければならない。それが事実で、そこから全てが始まるからである。
つまり、国が異なれるということは、国の成り立ちの歴史も制度も違うのであるから、それを相互に認め合って外交は成立する。つまり、他の国の内政に対して良いとか悪いとかという問題でなく、どうその異なる制度や法律をもつ国と共存するかということが問題となる。
そして、もし日本人がその国で仕事をするなら、まず日本人を守ること、それが日本が中国と取り決めなければならないことである。多く日本企業が中国に進出し、多くの日本人が働いている。その現状で、日本人の安全を中国政府に求めることがまず問われる。今回、中国側は、フジタ建設の現地社員を逮捕した。その行為は、中国にとって大きな誤りを犯したことを意味するだろう。国際的な視点からしても、中国側の主張は受け入れられないだろう。
日本政府は堂々と国際的視点から、自ら主張を言い続ければいい。そして、同時に関係を続ける努力を払うことだろう。どの点を、お互いを認め合うか、どう利害関係(当然存在している)に折り合いをつけるかという議論にすべきだろう。現実に日本政府はそれを実行している。
一方から他方への、解釈を前提にすると、多分、違いばかりが気になる無毛な議論になる可能性があることを双方、日本政府も中国政府の理解している。
今後、我々が真剣に問題にすべきことは、日本人の国際理解力ではないだろうか。つまり、国境問題など、どこでもある問題をまるで致命的問題が発生したかのように考える我々の国際的視野を問題にしなければならないだろう。
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2、日中関係
2-1、「日中友好に未来あり」)
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/11/blog-post.html
2-2、中国の人権問題で思うこと
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/11/blog-post_03.html
2-3、経済的発展か軍事的衝突か 問われる東アジアの政治的方向性
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/12/blog-post_13.html
2-4、中国の近代化・民主化過程を理解しよう
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/12/blog-post_1850.html
2-5、中国との経済的協力関係の展開と中国への軍事的脅威への対応の二重路線外交を進めよ
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/01/blog-post.html
2-6、米中関係の進展は東アジアの平和に役立つ
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/01/blog-post_5428.html
2-7、中国共産党による中国の民主化過程の可能性
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ブログ文書集「国際社会の中の日本 -国際化する日本の社会文化-」から
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