2010年11月3日水曜日

中国の人権問題で思うこと

三石博行


中国の民主運動家、人権活動家の劉暁波氏がノーベル平和賞授与してもう一ヶ月近く時間がたった。当時は彼のノーベル賞受賞に慌てて、中国政府は劉暁波氏へのノーベル平和賞授与を批判した。このみっともない振る舞いをした中国政府のニュースが日本では報道されていた。尖閣列島問題で、約1000名の日本人招待学生の招待を突如として取りやめただけに、その大人気ない中国政府の対応と相まって、今夏にノーベル平和賞への対応も、中国政府の失態として後々の人々に語られるであろう。

劉暁波氏が中国国内で中国の民主化を訴え、一党独裁体制を批判したことは、勇気ある行為として評価できるだろう。また彼が民主主義社会の規則を提案したことなどで、11年の実刑判決を受けて刑務所に投獄されていることも、このノーベル平和賞の受賞によって明らかになったので、国際社会から人権活動家の劉暁波氏への弾圧に批判的注目を集めている。今回のノーベル平和賞の意味は、その辺にあるのかもしれない。

しかし、歴史を振り返ると、中国を植民地化した列強及び大日本帝国との侵略戦争と戦い、植民地支配から中国を開放し、貧困と飢え、奴隷当然の扱いを受けていた中国人民を救ったのは毛沢東率いる中国共産党である。そして、毛沢東の大躍進や文革の国内大混乱を収拾し、改革開放路線を展開し、今日の豊かな国に向かう中国が誕生させたのも周恩来を尊敬していた鄧小平率いる中国共産党の力である。こうして現在、世界第二の経済大国が成立し、多くの中国人観光客が日本にやってくるのである。
そして、さらに中国共産党は、国を豊かさにし、経済を発展させようとしている。

2010年ノーベル平和賞授与者劉暁波氏は、まさしく、豊かになった中国が生んだ次の世代への掛け渡し人のように思える。
そして彼へのノーベル平和賞は、新しい中国の国の形を予告する課題のように思える。つまり、彼も中国を愛する一人であり、多分、毛沢東や周恩来と同じぐらい愛国者の一人なのかもしれない。
だから、人権侵害の国、中国というイメージでなく、人権侵害を訴える人民を持つ中国という観点から、政治指導者の動向でなく、人民中国の姿を理解したいと思った。

経済的豊かさは人々の自由な活動によって生み出される。経済的豊かさが、次の政治的民主主義を実現する基礎となると思える。

今回の人権問題を一面的に観るのでなく、中国の歴史の流れのなかでトータルに理解し、日本の社会常識から判断するのでなく、中国の社会、そしてその中での人権活動家の劉暁波氏の理解と、中国政府の人権迫害の一面だけでなく、貧困と飢餓から救われた人民の生活問題(これも人権問題の一つである以上)も含めて考えなければならないだろう。

勿論、劉暁波氏への人権侵害は国際社会から批判されるべきであるし、中国政府は速やかに劉暁波氏を釈放すべきであろう。国内法によって裁かれた人物がノーベル平和賞授与されたことを受け止めるべきだろう。
もし、そのことが出来なければ、大国中国の国際的信頼をそこなうだろう。そして大人気ない現在の中国政府の対応は顰蹙(ひんしゅく)をかうだろう。それは、あまり得策ではないように思う。


参考
三石博行「中国の近代化、民主化過程を理解しよう」
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/12/blog-post_1850.html

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2、日中関係

2-1、「日中友好に未来あり」)
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/11/blog-post.html

2-2、中国の人権問題で思うこと  
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/11/blog-post_03.html

2-3、経済的発展か軍事的衝突か 問われる東アジアの政治的方向性  
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/12/blog-post_13.html

2-4、中国の近代化・民主化過程を理解しよう
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/12/blog-post_1850.html

2-5、中国との経済的協力関係の展開と中国への軍事的脅威への対応の二重路線外交を進めよ 
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/01/blog-post.html

2-6、米中関係の進展は東アジアの平和に役立つ   
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/01/blog-post_5428.html

2-7、中国共産党による中国の民主化過程の可能性 
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/02/blog-post_3865.html

ブログ文書集「国際社会の中の日本 -国際化する日本の社会文化-」から





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