2010年12月13日月曜日

経済的発展か軍事的衝突か 問われる東アジアの政治的方向性

三石博行

世界経済の中心になる可能性をもつ東アジア経済圏

東アジア経済共同体の可能性を危機に落とす軍事的衝突

現在東アジアの国々では政治的や軍事的な衝突が頻繁に起こっている。例えば、2010年になって、韓国と北朝鮮の間で頻繁に軍事的衝突が発生している。例えば、2010年3月26日、黄海上で北朝鮮の魚雷によって韓国軍の哨戒艦「天安」が撃沈、2010年11月23日に北朝鮮軍による韓国の延坪島(ヨンピョンド)に170発の砲撃による民間人2名を含む4名の犠牲者と2010年10月の中国と日本の尖閣列島領有権問題等である。

さらに、北朝鮮の軍事行を抑止するために韓国と米国が共同で行った黄海での米韓軍事共同演習と日本と米国が東シナ海を中心に行った日米軍事共同演習に対して、中国(北朝鮮は当然なのだが)は不快懸念を示した。この二つの軍事演習が台等する中国軍への抑止力を示すものであることは明らかであった。

中国の軍事力の強化、つまり中国海軍の東太平洋への進出はこれまでの米韓日の東アジアの軍事同盟が作っている軍事的支配権に対抗し中国軍の存在を示すことになった。東アジアと東太平洋でのアメリカの軍事力指導権を維持するために韓米軍事共同演習が行われた。


東アジアを地域国際冷戦構造にしてはならない

この局面は、東アジアに地域国際的冷戦構造を持ち込む可能性が生じている。北朝鮮にとって東アジアが二つの勢力、つまりロシアと中国の勢力とアメリカ、韓国と日本の勢力に二分されていることが望ましいことは誰の目から見ても明らかだろう。

しかし、中国やロシアは、北朝鮮の望む東アジアの経済発展を犠牲にしてまでもアメリカ、日本や韓国と軍事的な対立を作り出す方針に賛成をしているわけではない。むしろ、中国は北朝鮮の瀬戸際外交に迷惑しているだろう。また、中国がその瀬戸際外交を利用するにしても、かなりのリスクを抱えなければならない。そのため、北朝鮮の外交路線への一時的な同調はするものの、常時、中国が北朝鮮の瀬戸際外交を承認する訳には行かないだろう。

そして、中国、ロシア、韓国と日本相互に進めている経済協力関係を犠牲にしてまでも、相互にある領有権問題を取り上げるつもりはない。一世紀前の帝国主義の時代と同じような日本の政治方針、つまり中国軍事力の対抗のために日米軍事同盟を強化し、その軍事力をもって中国と対立する方向で進むなら、日本政府は時代錯誤の政治を行っていると言える。


日本政府の現実的な外交力が求められる

今、大切なことは、21世紀の最大の国際経済圏としての東アジア経済共同体を創ることである。そのために、日本政府は努力しなければならない。

当然、こうしたことは、私が主張するまでもなく、日本政府や外務省幹部の方々は理解されていると思う。問題は世論、ジャーナリズム関係者である。報道は、視聴率を獲得するために、北朝鮮と韓国の軍事衝突、第二次朝鮮戦争の可能性とか中国軍と日米軍の尖閣列島での軍異衝突の可能性など、まるで劇場に行って戦争映画でも観るような刺激的な話(ストーリー)を面白半分怖さ半分で報道し続けるだろう。商売上の理由とは言え、こうした無責任な扇動を行うことを反省しなければならない。

もちろん、報道の自由は保障されるべきである。前回の尖閣列島中国船拿捕の問題への政府の対応は余りにも未熟であった。海上保安庁職員からの政府の言う「国家機密映像の漏洩」事件によって、正確な情報が国民に知らされた。こうした対応を続ける限り、報道機関は政府の対中国外交を批判するのは当然であり、その限りに於いて、国民の支持を得るだろう。

最終的な問題は、政府の外交力にある。国民に対して、現政権が昨年提案した東アジア共同体構想を維持し展開する政治姿勢を明確に示し続けなければならない。その理由、つまり、東アジア共同体の第一歩である東アジア経済共同体の実現が、近未来の日本の繁栄を導くこと、さらに21世紀の国際社会での日本の地位を東アジア共同体の中で発揮できることを明確に語り続けなければならないだろう。


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2、日中関係

2-1、「日中友好に未来あり」)
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/11/blog-post.html

2-2、中国の人権問題で思うこと  
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/11/blog-post_03.html

2-3、経済的発展か軍事的衝突か 問われる東アジアの政治的方向性  
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/12/blog-post_13.html

2-4、中国の近代化・民主化過程を理解しよう
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/12/blog-post_1850.html

2-5、中国との経済的協力関係の展開と中国への軍事的脅威への対応の二重路線外交を進めよ 
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/01/blog-post.html

2-6、米中関係の進展は東アジアの平和に役立つ   
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/01/blog-post_5428.html

2-7、中国共産党による中国の民主化過程の可能性 
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/02/blog-post_3865.html

ブログ文書集「国際社会の中の日本 -国際化する日本の社会文化-」から





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