2019年3月13日水曜日

人間社会科学の成立条件(4)

科学技術文明社会に関する人間社会科学とは何か


科学技術文明社会(Science and technology civilization society・STCS)に関する人間社会科学の課題とは、これまで人間社会学科学が対象としてきた人間社会文化構造や機能に関する研究対象、例えば、言語、精神、心理、個人的行動、集団的行動、生活(衣食住、家族、生活経営)、文化、風俗、風習、地域社会、経済、政治、司法、行政、生態地理文化環境、国際地域関係、国際関係、防災、防衛安全保障、社会福祉、教育、育児、保健等々に関する研究対象が科学技術との関係によって生まれた社会文化の構造(科学技術文明社会)に関するである。

科学技術文明社会(Science and technology civilization society・STCS)に関する人間社会科学、科学や技術に関する人間科学的、社会科学的、生態文化人類学的、歴史学的研究、とはどのようなものが考えられるだろうか。以下に、列記した。
1、科学や技術に関する人間科学的研究(言語学、心理学、精神科学、認知科学)的研究
2、科学や技術に関する社会科学的研究(社会学、経済学、政治学、法学、行政学、政策学)的研究
3、科学や技術に関する生態文化人類学(生態文化学、文化人類学、社会文化環境学、民俗学、風俗学、生活学)的研究
4、上記した科学や技術に関する歴史学的研究

また、STCSに関する人間社会科学は、科学や技術の人間学的、社会文化的、歴史的構造を理解しなければならない。つまり、人間社会科学と呼ばれる科学文化に関しても、それを世界認識の分析手段としている研究者がその手段自体を、自らの研究課題の中に組み入れなければならないということが、これまでの人間社会科学と異なる新しい視点の導入になる。

その意味で、STCSに関する人間社会学は科学認識論や科学技術哲学がそれらの研究課題の前提になっている。その理由の一つは、ヨーロッパで起こった近代的知の理解を深めるために、その知(近代科学)のヨーロッパ社会の特殊な精神風土や精神・経済的合理性に関する理解が問われているからである。この問い掛けは、近代科学の文明論的解釈によって始まる。つまり、社会学史の中で、初めて科学・知を社会文化的に理解しようとした「知の社会学」では近代科学の知の社会文化的解釈は為されたが、文明論的解釈は存在しなかった。近代科学以前、中国を代表とする他の国々の科学史の研究から、近代科学・知のヨーロッパ社会での特殊な精神風土や精神・経済的合理性の上に成立している構造が分析された。その理解によって、近代科学を他の文明社会で形成された知・科学や技術との歴史的関連や、その知の特殊性の理解、つまり相対化が行われた。

ここで課題にしている科学技術文明社会(STCS)の研究とは、中国科学技術文明圏であった日本が明治維新後、日本の近代化政策によって、工業化を進め、近代国家を形成し、現代のSTCS化した日本の社会を作ったのであるが、日本社会のインフラとして形成されている科学技術社会文化やその歴史の分析や解釈である。この研究対象は研究者である私たちの社会文化環境である。

科学や技術に関する研究の目的は、私たちがSTCSを正しく理解し運営するために、現在と未来をより良く生活し共存するために行われる。その意味で、この科学は科学技術文明社会の形成や発展過程で生じる問題に対して、その問題の構造を解明し、問題解決のための方法、技術、改良、作法、政策、規制、制度、点検機能等々を提案し、それらの実践可能過程を設計し、組織し、そしてその結果を検証する作業が課題となる。

この研究はSTCSに関する人間社会科学の普遍的な理論の形成を目的にしたものではなく、今ある社会文化環境を少しでもよりよくするために取り組まれている作業の一つである。その意味で、私はこの研究を行う一人の人間としての時代性や社会文化性を、この作業の中で、よりよく自覚することを課題にしなければならない。



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