三石博行
イースター(復活際)
西方教会の復活際の日2012年4月8日、友人夫婦の誘いで同志社教会に行った。
教会に行ったのはフランスに住んでいた時以来もう20年前になる。
無神論者の私は、以前から教会の雰囲気は好きだった。
キリスト教は宗教の中で、教義をもっとも分かりやすく教えている。
そして常に人々に分かりやすい言葉で書いた聖書が配布される。
また、教会によって多少の違いはあるが、お祈りのことばは、常に、今の生活世界に関する話題に触れている。
私は信者ではないので、讃美歌を歌うことも儀式に参列することもしない。
しかし、自分なりのやり方で教会のお祈りに参加している。
こうした無神論者の訪問すら、この教会の礼拝では違和感なく認められている。
ヨハネによる福音書から
この日の教会でのお話は「ヨハネによる福音書」の一節であった。
聖書を広げて、ヨハネによる福音書を読む。
「言(ことば)が肉となった」新約聖書 日本聖書協会 p163
「初めに言(ことば)がある。
言は神と共にあった。
言は神であった。
この言は初めに神と共にあった。
万物は言によって成った。
成ったもので、言によらずに成ったものは何一つなかった。
言の肉に命があった。
命は人間を照らす光であった。
光は暗闇の中で輝いている。
暗闇は光を理解しない。」
NHK ETV特集「失われた言葉を探して」2012年4月15日
偶然だった。NHKのETV特集「失われた言葉を探して」を観てしまった。
津波で跡形もなく消え去った実家、壊れた母校の姿を前にしながら、失われた言葉を探そうと苦悩する小説家辺見庸。
彼がであった「命・肉の言(ことば)」は死刑囚が独房の中で書き綴った俳句であった。
短い句に凝縮された肉の叫び。
表現の虚無化を意味することばの大量生産
余りにも簡単に言葉が流れでる仕組みを創った情報文化
余りにも多くの新語を生産し続ける高度知識社会
余りにも商品化された言葉の洪水・豊かな経済発展
辺見氏の問い掛けは、
現代文化が生産した物化した言(ことば)への問い掛けのようであった。
それは同時に生が死と分離したバーチャルな世界
それは同時に生活者と経済人が分裂しいがみ合う世界
詩人河津聖恵氏のブログに
「なぜ辺見さんは大道寺氏に句を作れと言ったのか。句集を出せと言ったのか。
それは同氏が癌に侵されているからだというだけではありません。
どんな時でも人間を救うのは言葉だからです。」
と書いてあった。
お前は語ることをやめよ
肉の言(ことば)は十字架に架けられた者の叫びから生まれる。
一人の死刑囚が永遠に負わなければならない十字架
一人の死刑囚が実存を掛けても報いきれない罪(原罪)
この死刑囚のためにイエスが現れたのだろう。
そして、この死刑囚のために、ヨハネが福音書を残したのだろう。
言(ことば)は
生に必然的に与えられた死を受け止める力
死というすべての命に与えられた不可避的自然
そのことを解し、
そのことを受け止める
我々の在り方のために
用意された言(ことば)
宿命を受け止める言(ことば)
沈黙から絞りでる血肉の言(ことば)
そして、その暗闇こそ、言の意味を教えるのだ。
暗闇は光を永遠に理解しない。
お前がその光で暗闇を照らそうとしたいなら、
もうその口調で、勇ましく暗闇を照らそうと語ることをやめよ。
引用、参考資料
辺見庸
http://yo-hemmi.net/
NHKETV特集「失われた言葉を探して」2012年4月15日 辺見庸出演
http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2012/0415.html
大道寺将著 『棺一基 大道寺将司全句集』(太田出版)
http://mmall.jp/item/170872390?aff_id=src0101&l=true
河津聖恵氏のブログ
詩空間「2012年4月16日 (月) 4月15日放送ETV特集「失われた言葉を探して」(1)」
http://reliance.blog.eonet.jp/default/
「河津聖恵(かわづ・きよえ)1961年東京都に生まれる。京都大学文学部卒業。1985年第23回現代詩手帖賞受賞。詩集に『姉の筆端』、『クウカンクラーゲ』、『Iritis』、『夏の終わり』(第9回歴程新鋭賞)、『アリア、この夜の裸体のために』(第53回H氏賞)、『青の太陽』『神は外せないイヤホンを』『新鹿』『龍神』『現代詩文庫183・河津聖恵詩集』。詩論集に『ルリアンス――他者と共にある詩』。野樹かずみとの共著に『christmas mountain わたしたちの路地』『天秤 わたしたちの空』。『朝鮮学校除外反対アンソロジー』発行」(詩空間 津聖恵氏のブログから引用)
2012年4月18日 誤字修正
(120417a)
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